孤高の天才・源義経と、運命を共にした弁慶。日本歴史上、最も有名な主従愛がBLで登場! !

桜花 咎の契

sakurahana toga no chigiri

桜花 咎の契
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神30
  • 萌×223
  • 萌15
  • 中立3
  • しゅみじゃない4

--

レビュー数
18
得点
290
評価数
75
平均
4 / 5
神率
40%
著者
吹屋フロ 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

媒体
漫画(コミック)
出版社
Jパブリッシング(ジュリアンパブリッシング)
レーベル
G-Lish Comics
発売日
価格
¥733(税抜)  
ISBN
9784864570961

あらすじ

五条大橋の上で出会ったふたりは、互いに惹かれあい、主従の契りを交わす。深い絆で結ばれながら、その身を挺してまで自分を護ろうとする弁慶の強い想いに、義経が選んだ未来とは…。日本史上最も著名な主従愛をもとに圧倒的スケールで華やかに紡がれる、歴史“恋"絵巻。

表題作桜花 咎の契

義経の家来
源氏の御子

同時収録作品第一話 鬼ノ島

島流しにされた僧
俊寛の侍童

同時収録作品番外編 詠う青山

修行僧
平家の公達

その他の収録作品

  • 第一話 鬼ノ島
  • 第二話 鞍馬の天狗と花義経
  • 第三話 義経と頼朝
  • 最終話 船義経(描き下ろし)
  • 番外編 詠う青山
  • 後記(描き下ろし)

レビュー投稿数18

戦国オムニバス

吹屋さんの迫力ある絵で時代もの。読み応えあります!

平家、源氏、どちらも悲喜交々ある中、有名な弁慶と牛若丸や、経正と行慶などのカップルが短話で登場するオムニバス形式です。
稚児と僧侶の許されぬ愛、立場により共にいることが出来ない悲恋もあれば、どこまでも共にという弁慶牛若もあり。
必ずしもハッピーエンドでない話もありますが、読後グッと来るものがあります。

そして、妖として登場する天狗の色気や、平家の物怪の迫力はやはりこの作者さんならではの画力に支えられています。

とても良い本なのでぜひお手に取ってみてください。

1

史実へのb的脚色が楽しい

同先生の「仇椿ゆがみて歯車」がツイッターで神作品とか、この作品の感想を述べる語彙力がない…などのツイートを目にし、仇椿の前に本作を読んでみようと手にした次第です。

平家物語を題材にしたお話が3本。
メインが弁慶×義経(表紙)。
お互いすぐに惹かれて?命を共にするくらいの間柄になるのが熱かった。

静御前がまさかのオネエで笑いましたがw
それも愛嬌と気高さがあってよかった。

頼朝が…へら〜としたキャラかと思ったら一筋縄ではいかず、歴史を思い出し、なるほど!と+エロかったですね〜ww
(ホ○ばっかりw)

お坊さん×平経正の話は切なかった。

あと、稚児ってえちいですねw

余談ですが
知ってる神社仏閣がよく出てきて楽しかった☺️
高野山、鞍馬寺、貴船神社、六波羅、比叡山、仁和寺とか。

1

源平時代の美少年は平家に多かった

労力を評価したい歴史BL
和ものは、調べることも、描く作業も大変。
特に、鎧は時代時代の流行りが異なるので、考証や衣装の資料集めが大変だったと思います。途中で力尽きたのか、画風がガラッと落ちている部分がありました。疲れちゃったみたい。

全て源平時代の有名な美丈夫が主役の悲劇で、歌舞伎や能や舞台の演目になっています。
「滅びの美学」の無常観が、描かれています。

当時の士族の死生観は「良く生きること=良く死ぬこと」で、平家物語で語られる出来事は士族なら当たり前、でも士族以外には憐れを感じる生き方だったみたいです。
誰かが命を捨てなければ立ち行かない状況で、主を守るために自分を盾にする。敬愛する人の為に義を貫く「滅びの美学」を幼少時から洗脳教育されていた武士は、大儀がある死を受け入れ、抗わない。

武運知力が足りないから敗ける、死を潔く受け入れる。戦国時代の士族は、強い者が生き残る「淘汰」を与えられていました。武士の生き残りゲーム「合戦」によって、統治を委託する武士の「資質を上げて数を減らす」為に、仕掛けた当時の天皇や朝廷の考えはむごたらしい。

原作を壊さない範囲のアレンジなので、読後に原題の作品や歌舞伎や能に関心を持つ人が出たらいいな、と思いました。
綺麗な作品でした。労力を評価して、神。
---

▶「有王」と「俊寛」: ★能/歌舞伎「俊寛」
「赦文 俊寛赦免されず 足摺」舞台は、長月重陽の頃  (舞台では、「足摺岬」などで上演)
★治承元年(1177年)6月1日に発覚した「鹿ヶ谷の陰謀事件」の咎で、流刑された俊寛。
有王は、法勝寺の俊寛僧都に兄と共に仕えた童。
★鬼界が島へ流罪となった3人のうち、 藤原成経と平康頼は赦され帰京する。
大赦を聞き、有王は鳥羽に迎えに行くが、俊寛は戻らない。
有王は両親に告げず、俊寛の娘の手紙を元結いの中に隠して、独り鬼界が島に苦労を重ねて渡り、ついに再会する。
俊寛は有王と再会した後、食断ち、師の死を有王は看取る。師の骨を抱いて持ち帰り、俊寛の娘に届け、娘は出家。有王は、高野聖となり行脚中に客死した。

▶「義経」と「弁慶」・・有名すぎるので省略。

▶「行慶」と「経正」;能「経正」
平曲では経正は二度主役として出てくる。一つが「竹生島詣」二つ目はが「経正都落」
★経正は、平清盛の甥で歌人。平経盛の長男で、超美少年で有名な「平敦盛」の兄。経正もやはり有名な美少年。
★仁和寺の「青山(セイサン)」という琵琶の名器にまつわる哀切なエピソードが残って居る。
★平経正は、平経正は幼い頃に仁和寺で稚児として仕える。藤原俊成や仁和寺五世門跡覚性法親王等の文化人と親交が深く、覚性に楽才を認められ、琵琶の銘器『青山』を下賜されるほど寵愛を受けた。
★寿永2年、平家都落ちの日、平経正は仁和寺を訪れ、和歌を残し、賜った琵琶「青山」を守覚法親王に返上する。
  「あはれなり老木若木も山桜 おくれ先立ち花は残らじ」
返歌「旅衣 夜な夜な袖を片敷きて 思へば我は遠く行きなん」

★能「経正」あらすじ
御室御所・仁和寺で、一の谷で討ち死にした琵琶の名手・経正の法要が行われた。仏前には愛用の琵琶「青山」が供えられ、僧(ワキ)が管弦講を催すと、そこに現れる経正の霊(シテ)が現れる。
「風枯木を吹けば晴天の雨。月平沙を照らせば夏の夜の。霜の起居も安らか・・」と白楽天の詩を詠う。
そして愛用の「青山」で「諸行無常の響き」を奏でる。
---
▶稚児
平安時代頃から、真言宗、天台宗等の大規模寺院において、剃髪しない少年修行僧(12~18歳くらい)が現れはじめ、これも稚児と呼ばれるようになった。
皇族や上位貴族の子弟が行儀見習いなどで寺に預けられる「上稚児」、頭の良さを見込まれて世話係として僧侶に従う「中稚児」、芸道などの才能が見込まれて雇われたり腐敗僧侶に売られてきた「下稚児」がいた。 禅宗では喝食と呼ばれた。

戦国時代の侍の主従関係の男色は「強い信頼関係を生むための手段」で、中国にあった契兄弟と似ています。裏切らない愛を部下との間に育む方法として情を交わしていたことは、武田信玄の恋文が残っているので、有名です。信玄の恋人 春日源助は、その後有名な猛将になっています。
 武田四天王(四名臣)の一人『春日虎綱』(高坂昌信)

3

史実とフィクションとBLが上手く調和している

 有名な史実(説止まりの話も含め)をなぞらえながら、BLに落とし込む吹屋先生の手腕がお見事でした。もちろん若い男同士の絡みがメインでありながら、冒頭の『鬼ノ島』では耄碌した僧に若いかつての侍童が自ら抱かれるシーンも描いていたりと、当時の綺麗なだけではない同性同士の関係にも挑戦されていました。この作品を読むと、当時の僧侶や武士は男しかいない世界だから皆女の代わりに男を走ったのではなく、性別は関係なくやはりその人間に心底惚れたからこそ抱き抱かれたのだと感じます。尊敬、嫉妬、羨望、愛憎、畏怖、様々な感情が入り乱れるそれぞれの関係性は、どれも非常に読み応えがありました。

 源義経は歴史を学べば誰もが同情を覚える人物ですよね。牛若丸と弁慶の逸話も、日本人なら一度は聞いたことがあるもの。そこに義経の運命を見守る天狗を交え、彼らの行く末を劇的に、でもどこか客観的に描いていて。後の展開を知っている話だけど、本当にこんなやりとりが交わされていたら、こんな情景があったなら素敵だなと、また新鮮な気持ちで楽しめる作品だと思います。1人でもここまで自分に尽くしてくれる人がいたなら、義経の魂も浮かばれたでしょうね。最後に収録されていた、平経正の物語『詠う青山』も、余韻の残る作品でした。源氏に肩入れしがちだけど、平家にもいろんな人物がいたわけで。好いた相手を想い琵琶を弾いていた佳人が、戦いで追われ不利な身分に堕ちていく悲運が、切なかったです。

1

悲恋だからの美しさ

歴史になぞらえた物語です。
どれも悲恋でありハッピーエンドではないのですが、
幸せだった時を支えに生きている様に胸を打たれます。

近年は江戸時代BLが流行っておりますが、
戦乱の中だからこそのドラマがあると思います。
戦国時代を舞台にした作品や、
実在した人物が登場する物語も面白いなと思いました。
まさかの静御前も男だったりと、
意外なキャスティングも良かったと思います^^

どのお話もハッピーエンドではないけれど、
読後感は悪くなかったです。
もしかして生まれ変わってまた出会ったり?
なんて思ったりしています。

1

平家物語をBL解釈

紙本
修正…見えない描写
カバー下…なし
カバー折り返し部分…なし
あとがき…あり

0

切ない主従関係に涙します!

時代に翻弄される2人がどうしようもなく儚くて辛いです。
源氏、平氏が争っていた平安時代のお話で、歴史が分からないわたしには政治情勢の話はさっぱりでしたが、それでも感動モノです。

ハッピーエンドとはいかず結末に胸が痛くなります。ストーリーメインなので、濡れ場は薄めですかね?
タイトル、絵が気になった方は迷わず読んだ方がいいです!

2

ほんとに涙が止まらない。。。

私は全然歴史に興味がなかったので、メインの弁慶と義経くらいはわかるけど、他の2つのお話の登場人物は正直に読み方もわからなかった…
けど!けど!!それでも2人の愛の深さとか、結ばれないつらさとか、なんかもう色々と美しくて哀しくて、読み終わってレビュー書いてる間も後から後から涙が出てきます。
や、ほんとに、涙止まらない。

有名な通り、義経は兄(頼朝)に殺されるような形になってしまうんだけど、私は頼朝も憎めなかったなぁ…。ひどい人だけど人間って感じがして、好きではないけど嫌いではない!

私的には番外編の「詠う青山」が1番切なくて、だけど綺麗なお話だなって思いました。
きっと行慶さんはいつまでも、遠くにいる経正に届くように青山を弾き続けるんだなと思ったら、もう、、もう、、、涙が止まらない。
青山が2人の気持ちを詠うって意味のタイトルだと思うんですよね。奥が深いなぁ。

あと個人的に静香さん(男)がツボでした。オネエみたいだけど芯があってたくましくてかっこよかった笑

歴史に詳しい方が楽しめると思うけど、あんまり知らなくてもちゃんと楽しめる作品だと思います。
だけど所々分かりにくかった(昔の言葉とか、出来事を知らないからどうしてそうなったのかわからないところとか、名前とかの読み方と思い出しに何度も戻ったりとか、すんなりは読めなかった)ので、私の知識不足が原因ですけど萌2の評価にします。
これからもう少しここの歴史を勉強し直して、もう一回読みます!!

0

切なく、面白い。

こちらのサイトで知り、早速、電子書籍で読みました。
源平合戦の時代、義経、弁慶、頼朝…彼らを取り巻く人々が、それぞれの運命を背負いながら輝きを放ち、生きている姿が胸に迫りました。その中で愛もまた様々な形で描かれていて、私はやはり弁慶と義経が魅力的でした。結末が悲しいのが分かっているから苦しくもなるのですが、義経の達観した様子がまた切ない。
もっと長いお話や、他の主人公のお話も読みたくなりました。
個人的には、エロは短いですが、艶っぽくて好きです。

2

歴史物好きにはたまらない!

代表作である弁慶×源義経のお話も素敵でしたが、他の2作品も読んでて楽しかったです。
歴史物なので内容が固めでしたが、繰り返し読むことで理解が深まりより作品の良さが伝わってくると思います。負けるとわかっていても戦に立ち向かっていく主人に感動もしました。歴史もののBLが好きな方は楽しんでいただけるのではと思います。

2

当たりでした

このマンガ家さんは初めて読みました。
表紙は微妙でしたが、中身はおもしろかったです。
一作目が痛そうで、つらい話だったんですが、その後から続く牛若丸、源義経をメインにした一連の話はよかったです。三白眼が苦手なので、弁慶のキャラはイマイチだし、源頼朝もオネエが入っている悪役で、ちょっと残念でしたが、九郎義経がよかったので、差し引きゼかも・・・・・・絵柄もクセはありますが、独特の世界観があってよかったです。他の作品も読んでみたくなりました。

1

ただ春の夜の夢の如し

答姐にて「日本の歴史が好きな方へ」とお勧めいただいた作品です。
読んでみて、私は自分が歴史に苦手意識を持っている事を恨めしくすら感じているのです。
なぜなら、この作品に描かれている元の平家と源氏の物語、その背景、史実、そんなものの元々の知識や解釈を自分が持っていれば、より大きくより深く、この作品を楽しめたのではないかと思うから。
俊寛は歌舞伎で見たことはあるし、弁慶と牛若丸も、兄頼朝の義経討伐も知ってはいる。でもそれじゃ足りない、もっと知りたい。
この「桜花 咎の契」を読んで猛然とそう感じました。そう思わせる圧倒的な物語の力が、この一冊にはある。
絵柄はかなり細かく、背景なども書き込まれて一読して目からの情報量は凄いです。
一番好きなシーンは、義経が天狗に弁慶との最期の幻のヴィジョンを視せられる場面。
それを見ても笑って戦いに赴く義経。まだ少年のような義経の、何かを超越したかのような姿にゾクッとしました。
また、ラスト収録作「詠う青山」の最終ページ。蓮の花が浮かぶ池に、琵琶の音色が確かに響いたよう…

5

運命の歴史絵巻

まずはじめに。この作者さまは2次創作で作品を描いてた人です。
なので、多分そこで描いてたジャンルの影響もあるのかな?
と思いながら読みました。 趣向などが随所に出てたもので(笑)

作画は少年漫画っぽい印象です。線が太めでしっかりしてます。
私は、そこがいい!と 逆に萌(燃)えたのですが。(^^;)
そこは、好き嫌いのシュミが分かれるかもしれませんね。

この作品は『平家物語』を題材に描かれています。
歴史ものですが、読みやすくファンタジー要素も取り入れて下さっているので夢中になって読みました。
キャラも魅力的で、義経(受)や弁慶(攻)の愛し合う様が熱烈すぎて眩暈がします。 これは主従萌え♡というやつでしょうか。
作画やセリフは見事!で圧巻!!です。グッとくるものがあるんです。
隅々まで読み応えがある作品です。じっくり読ませて頂きました。
表現方法やセリフがイキイキと輝いて躍動感があります。

ラストでの、弁慶(攻)「貴方へのこの執着は私の咎・・・」のくだりから 
義経(受)「未来永劫共にいよう」と誓い合う場面はもう号泣・・・。
まるで、映画でも観てるようでした。心に深く刺さり残りました。

最近読んでるBL本がマンネリだなー。と思ったあなた!
ぜひ、これを読んでみてはいかがでしょうか?
違う世界観で楽しめるのに、ちゃんとBLしてる歴史物語。 神作品です。

7

ヘタレワンコと男前

日本史上では最も大好きな平安末期が題材ということで購入しました。
義経と弁慶の絆、そして頼朝義経兄弟の愛憎には一度感じてしまったら抑えられない腐女子的な情熱が詰まっていると思います笑

史実+軽いファンタジーといったところで、激しいぶっ飛びはありません。寧ろ、うまい具合に史実を絡めて濃いキャラをまとめてるなぁって感じでした。特に脇役の佐藤兄弟と静(オネェ)がお気に入りです。短編で脇役の掘り下げがないのが残念なくらいで、もっともっと長く読みたかったです。

何より不器用で一直線なワンコ攻めの弁慶が可愛くて愛しくてとてつもなく好きです。相思相愛な二人と、美しいラストに心奪われました。弁慶ほんと可愛い。イラストも綺麗で読み易いので、歴史に興味がない方にもお勧めです。

4

隠れぬ隠し味

恐らく、ここまで重苦しい愛着で雁字搦めに
なった牛若丸は居ないでしょうね。
この物語で彼に絡みつく愛着の一つは義経を
語る際に一度は触れられるものなのですが、
この作中ではそれを皮一枚剥ぎ取って
隠し味として絡めています。

一冊を通して語られたと評者が読み取ったのは
勝者側からの視点ではない諸行無常。
そう言う中で繰り広げられる絆の物語ですので、
いささか腑に落ちない部分もあるのやも知れません。
その辺は実際の歴史と同じ様に、紐解く一人一人が
それなりに埋めてそれぞれの結末を作っても
良いのかも。

5

もののあはれと主従

『平家物語』を題材に、少年誌風のスタイリッシュな絵柄とオリジナリティの強いストーリー/キャラクターで魅せる三つの短編集。


★「第一話 」
平家打倒を企てたとして島流しにされた僧・俊寛(攻)。
俊寛の侍童であった有王(受)は主人の身を案じ鬼ヶ島を訪ねるが…。

『平家物語』では、有王が痩せ衰えた俊寛を膝にのせその憔悴ぶりを嘆いたという話がありますが、本書の俊寛は(見た目は仙人のようですが)すこぶる頑強でワガママ。
元から癇癪持ちで有王を折檻していた俊寛は、島でも有王を殴り凌辱する。
それを「抱いていただく」と表現し、主人が死を望めば自身の手を汚すことも厭わない有王はどこまでも健気。
ある意味子供のように有王に執着する老人にとことん尽くす侍童に、菩薩のような包容力を感じるお話でした。

★「第二話」~「最終話」「後記」
弁慶×源義経。
忠犬だけどときに猛獣のような執着を見せる弁慶の雄々しさと
やんちゃな童から青年へと華麗な成長を遂げる義経の男前誘い受っぷりが良い。
大人と子供ほどの体格差があるのに
武力や立場は義経の方が上、
濡れ場では義経を激しく攻め立てるけど
普段は義経に絶対服従な弁慶・・・
という主従設定の美味しいところを詰め込んだような二人。

「関所越え」「立ち往生」等の有名エピをこの二人で見てみたかったです。
ベタすぎるから敢えて外したのかもしれませんが、クライマックスをぼかしたことで良く言えば上品、悪く言えば戦の迫力やストーリー的な盛り上がりに欠ける作りとなっているのが残念。

ヤンデレブラコンな源頼朝や
ただのカマキャラかと思いきや
バトルもこなす静御前など
ややぶっ飛んだキャラの性格やヴィジュアルには某戦国ゲームが連想されました。

★「番外編」
行慶×平経正(平清盛の弟)
修行のため寺に預けられた稚児・経正と僧・行慶の琵琶を通した交流とあまりに切ない恋。

平家全盛期の「第一話」から
最後に没落期の「番外編」を持ってくることで
栄枯盛衰の哀しさを感じさせる構成。

義経の物語を含め、歴史の大きな流れの前にあえなく散っていった命と恋の刹那的な輝きを作家さんらしい個性で魅せる作品集でした。

8

誰もが知っているアノ人がどんな風に料理されているのか?

誰もが知っているであろう「平家物語」からのそれぞれの登場人物達。
謀反の罪で島流しになった俊寛僧都と侍童であった有王。
敦盛の兄で琵琶の名手とされた経政と、仁和寺の行慶。
そして、言うもがな弁慶と義経、同時に景時と頼朝。
これらの物語を読む時、非常に原点のようなものを感じずにいられなかった。
萌え妄想を覚えずとも、本能が感じていたその絆の底にある腐の原点。
改めて、作品として出されると様々な作家さんが題材として取り扱ったであろう彼等の話が、フロさんの決して美麗ではないもののふを感じる荒削りな筆から息づいて感じ取られ、それは新鮮なのです。

属性とか何とか自分にはどうでもいいです。
確かに3作品通して主従の繋がりがありますが、すでに物語として知っている身にはそれらをどう料理表現するのか、それが大事でした。
弁慶と義経に至っては、義経ってビッチ?
結構緩さがある関係の中、そこにどうして生死をともにする決意が生まれるのか、義経に誰もが魅力を感じて惹かれるという、その点ももう少し欲しいとか、色々読み終えて見れば、あります。
しかし、すでに知っている物語であるがゆえに、その既知という点で補完されるという有利な部分もあるかもしれません。

ただ、非常に魅力的に描かれていたのが頼朝でした!
面白い!食えない男というか、深く考えているんだかいないんだか。
きっと多くの人が驚く頼朝じゃないだろうか?
この作品を見て、こういうキャラの頼朝もアリだよな、と密かに関心するのでありました。

経政と行慶の物語は能の題材にもなっていますが、これはなかなかに雰囲気のある、まとまった作品になっていたと思います。

この世界の話にはバッドエンドはね~とか、恋愛の機微はね~とか、史実に沿ったとか、そんなこだわりを一切捨てて、既知のキャラクターが作家によっていかに生き生きと描かれ、どんな創作がされているのか、愉しむのが一番いいな、と思った次第でありました。
敢えてこの題材で一冊を構成した出版社と、侍もので活躍されているフロさんに期待を込めてちょっぴり割増の評価です。

8

誰しもが一度は妄想しますよね!

ちるちるユーザーであれば、誰しもが日本史の時間にしたであろう妄想が詰まっておりました。
何より絵が上手い作家さんで、BLというよりもマッグガー○ンあたりの一般誌の雰囲気です。ちょっと描き込みが多いので、BLの大ゴマ画面に慣れてると見辛いかもしれません。

絵柄や画面構成等の画力は申し分ないのですが、惜しい所が少々。
まあ、一冊で義経を描き切るのは難しいと思いますが、見せ場が省かれたりアレンジされ過ぎていてちょっと物足りないかも。
五條の橋の出会いも、静の舞も(例えオネエだとしても!)、弁慶の最期も!

そうなんですよ!弁慶の最期がなんで未来の幻影で終わってしまうのか。
義経と弁慶で此処描かなかったらあかんですよ。
いや、描いてありましたが、こういう形じゃない方がよかったかなあ。

あと個人的な趣向なんで作品評価とは関係ないですが、オネエの静はありだとしても、頼朝が好みじゃなかったかなあ。この人じゃ、政子たんの尻に敷かれないですよねえ。それとも、政子がこの頼朝すら黙らせるゴリマッチョなのか。(※私は尼将軍が大好きです)こればっかりは仕方ないのですけれど。
弁慶もガチムチがよかったんですが、BLじゃ駄目ですかねえ。
何か元ヤンっぽい。いや、元ヤンっちゃ元ヤンですが(笑)

こういう題材を描ける作家さんは貴重なので、これからもBLでは珍しいネタ(前のコミックスは学生運動でしたし)で色々描いていただきたいなあと思うのでした。

ちびっこ烏天狗がえらい可愛かったです。

6

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