愛ってなんだろう? 亜希生の愛はハルにとって苦しくて痛くて、でも離れられない。

シュガーダーク

sugar dark

シュガーダーク
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神8
  • 萌×222
  • 萌18
  • 中立4
  • しゅみじゃない1

--

レビュー数
14
得点
186
評価数
53
平均
3.6 / 5
神率
15.1%
著者
恋煩シビト 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

媒体
漫画(コミック)
出版社
一迅社
レーベル
gateauコミックス
発売日
価格
¥647(税抜)  
ISBN
9784758073233

あらすじ

ハルと亜希生、その関係は…言い表すのが難しい。
恋人でも友人でもない、お互いの淋しさを嗅ぎ合いあたためあうだけ。
次第に深まる二人の関係をそのままに、ハルは亜希生とは真逆の優しい夏彦に出会う。
感じたことのない温かさに惹かれるハルだったが…

三人の男の愛の物語。

表題作シュガーダーク

無職,20歳

同時収録作品男は月曜日にゴミを出す

イケメン会社員

同時収録作品愛すべき馬鹿供の平和な日常生活

高校の同級生

レビュー投稿数14

ビターではなく、ダーク

「しあわせになりたい」
そう思わない人なんて、いませんよね。
誰だってしあわせになりたい。
でもしあわせの形は人それぞれということを、再認識した作品です。

母親に見放され、帰る家もないハル。
心酔するほどに憧れていた兄に裏切られた亜希生。
野良猫のようなハルを家に入れてくれた和菓子屋の夏彦。

暴力で押さえつけるような亜希生の愛し方に窮屈さを感じて、甘い匂いに誘われて、たまたま盗みに入った和菓子屋で、ハルは夏彦と知り合います。
最初はハルの生い立ちに同情的になって、夏彦のところへ行けばしあわせになれるのにと思うのですが、読み進めるうちにシビト流「人間の怖さ」が見えてきます。

中盤で出てくる亜希生の回想シーンは本当に痛い。
兄の底の深い闇に翻弄されて、家族はおろか他人なんて信じられなくなるのも、誰にも執着できなくなるのも頷けます。
そんなところにすっと入り込んできたハル。
自分を欲しがって貪欲に迫ってくる女性たちとも、自分を支配しようとする兄とも違うハルに、亜希生が見つけたものは果たして本当に愛だったんでしょうか。

主導権は亜希生が握っているようで、実はハルがそう仕向けたというのが、本当に怖い。
相手が100%自分に向かっていないと満足しないハルと、愛したらその人以外はいらなくなる亜希生は、似たもの同士のようで違っていて、ハルは仕掛けるけど、亜希生は受け身。ハルはわりと自由だけど、亜希生は自由じゃない。
ハルとのことも亜希生から始めたように見せているけれど、本当は違う。
ハルにとって失敗だったのは、亜希生の並外れた執着とそこから生まれる苛立ちを見抜けなかったことだけど、それと同時にここまで自分を愛してくれる人はいないことも気付いているんだよなあ。皮肉なことです。

夏彦の存在は、カフェの女性たちが語る甘味の話に見事に投影されていました。
こういう手法も見事です。

ハル、夏彦、亜希生という名前にも意味がありそうだけど、そこまで掘り下げるとものすごく長くなりそうなのでこの辺で。
「しあわせは 自分の心が 決める」と相田みつをさんは言っていましたが、その通りだなあとしみじみ思いました。

同時収録が2篇あります。
ちょっとゾワっとする話と、ぬぬぬ!?となる話でした。
ぬぬぬの方はまた語ると長くなりそうなので、やめておきます。ぬぬぬ!?です。

甘いの逆は苦いだけれど、この作品はあくまで闇。
2つの闇が合わされば、1つの闇になるように、どっちの闇がどっちを飲み込んだのか。
不幸に見えて、本当は不幸じゃないような、深い作品です。

2

表題作の閉塞感が好き

◆シュガーダーク(表題作)
 もっと読んでいたかったので萌評価にしましたが、この終わり方自体は嫌いではありませんでした。爽やかで誠実で人間の出来た夏彦に、盗みばかり働いていたハルが良い影響を受けて、さらには2人が恋にも落ちていくのかと思いきや、ダークホース・亜希生の存在感が相当増してきて、物語は逆方向に動き出します。ハルと亜希生の話を読むと、確かに亜希生だけがクズな男というわけではないんです。亜希生をそんな男にしたのはハル自身。なのに、そんな亜希生を差し置いてハルだけが明るい陽の光の元に出ていくというのは、かなり酷い仕打ちに思えてくるんです。

 亜希生はただのDV男ではない。彼はハルが他の男の匂いを纏って帰ってきた時だけ暴力を振るう。もちろんそれも褒められたことではないけれど、でも、他の理不尽なことでハルを殴ったりはしない。ハルに愛されたいばかりでもなく、彼自身もちゃんとハルに愛を注いでくれている。それは歪な形かもしれないけれど、相手に愛を与えたいという気持ちは誰よりも強い人なんですね。彼の背景を知ると、どうしようもなく彼に温かな愛が与えられて欲しいと願ってしまう。だから、ハルが最後に彼の元に戻ってきてくれた時、私は嬉しかったですし、たとえ陽の光の下を歩けなくてもこの2人なりの愛の巣を築いていって欲しいと思いました。もし夏彦が同性OKでハルと恋人になったとしても、夏彦が亜希生ほど他を味見できなくなるほどの甘さをハルに与えられたとは思えない気がします。

◆愛すべき馬鹿供の平和な日常生活
 真人から遠ざかった心の物語。時系列や相関図がややこしいので、できればこのシリーズは1冊にまとめて欲しかったなぁというのが正直なところ。5冊に亘ってあっちやこっちに散らばっているのはちょっと読みにくいですね。心も涼平も常に真剣に恋をしているけれど、2人を想う人は他にもいる。不毛な関係を続け、上手くまとまらないところにリアルさを感じました。

1

そうそう、そうこなくちゃ!と思える唯一の作家さん

【シュガーダーク】
荒んだ生活をしているハルが忍び込んだ和菓子屋でどら焼きを貪り食うところからスタートするお話で、そこの和菓子屋の後継息子の真っ当な感覚に、我が身を振り返り始めるハル。
普通なら和菓子屋の後継息子・夏彦と一緒に頑張って更生しましたという着地になるんでしょうけど、シビトさんなのでそうはいきません。
亜希生というダークな背景を持つハルの男が登場。

私は健全なハッピーエンドが好きなので、他の作家さんがこのストーリー展開を描いたら、うわー…ナニコレ…とドン引きすると思います。
しかしシビトさんに関しては、その歪みっぷりを期待して手に取る唯一の作家さんなので、この着地に納得です。そうそう、そうこなくちゃ!的な。でもたまに読むからいいんだと思う。

半年ぶりに読み返したら、亜希生のガチ兄弟の絡みをすっかり忘れてて、うわぁ!となりました。
自分用覚書:和菓子屋 三角関係 ガチ兄弟あり

【男は月曜日にゴミを出す】
イケメンだから色んなことがなんとかなると思っている男のお話。
短いけど、最後にものすごくダークなことがサラリと描いてあってゾワっ。

【愛すべき馬鹿共の平和な日常生活】
これ三角関係どころか どっちにも彼氏がいるので四角関係。同人誌の作品でこれだけ読むとなにこれ?と思うかもしれません。

布団干したりしてくれているという心の彼氏の真人が「図書委員の恋」に登場した表題作シリーズの主人公・桜井真人です。とにかくだらしない心のために文句を言いながらもあれこれ世話をしています。【愛すべき馬鹿共の平和な日常生活】だけを読めば、ふーん、涼平と心この際付き合っちゃえば?と思うかもしれませんが、「図書委員の恋」での真人の一連を知っていると、とにかく真人が可哀想でなりません…。
この短編の続きは「窓際の林檎ちゃん」の中の【足りないものそれは真心でした】そして涼平については同じ一冊の【ループループループ】に描かれています。
仕方なかったのかもしれませんが、三冊に渡ってちりばめないで、一冊の作品としてまとめてくれれば良かったのになぁ。。。

2

DVもあるけど意外と明るさのある話

恋煩シビトさんの描く美しい男が好きだ。なにかこう秘密めいて、蛇のような男たち。
「シュガーダーク」は甘い男と苦い男を比べてどっちを選ぶ?という話ではない。
ハルの恋人は亜希生。亜希生はハルに執着して、時に殴ったり。
ハルも亜希生も根無し草で。
ある日ハルが出会う夏彦は、家業の和菓子屋を継ぐために修行をしている真っ当な男。亜希生とは正反対で、なんとなく惹かれ何度も会いに行きもう一歩で恋になりそうな予感もあったけど、ハルは自分で苦さを甘い美味しさに変えていく決心をする。亜希生に感じる苦さはハルが作ってきたものだから…

「男は月曜日にゴミを出す」
「世にも奇○な物語」とかの原作になりそう。話のオチが見えないと思って読んでると、急転直下のホラーテイスト。あー気味悪い。

「愛すべき馬鹿共の平和な日常生活」
事の発端は高校時代。友人が同級生(男)を好きだと言い出し、それで自分もその彼を意識するようになって…という背景なんだけど、かなりな短編のため話の整合性よりも不条理を強く感じる。何がどうなる、を読むよりも複雑で不穏な空気を感じるべきお話。

2

奥深いのです

シビトさんの作品を魅力的にしているモチーフ、三角関係。『シュガーダーク』は、主人公ハルが、亜希生と夏彦の間で揺れる物語。

母親に心を掛けてもらえなかったハルは、同じような境遇で育った亜希生と逃避的で安楽な関係を続けていたさなか、空腹を満たすために盗み目的で入った和菓子屋の跡継ぎで修業中の夏彦と出会ったことにより、彼が今まで知らなかった厳しいけれどもあたたかい世間の一端を垣間見る。

亜希生の過去が挿入されているのですが、淫靡ながら悲しい。

亜希生は兄への「憎」を含んだ想いをハルに向ける。ハルは夏彦が掛けてくれた「愛」のある言葉でもって、亜希生との関係を考えなおす機会を得る。ハルと亜希生、二人の関係性の外に存在する第三者によって人物それぞれが抱く想いに読者も気づかされます。(あくまでも仄めかしから強引に読み取った解釈なのですが…。)

シビトさんの作品を読むと、やっぱり恋愛の神髄って心理的なSMの様相を帯びるものなのかしらんと思う今日この頃なのであります。…単なる個人的な萌えか。。

巻末に入っている二作品。「男は月曜日にゴミを出す」は、シュールなショートショートのようです。顔でなんでも許される(てきた)イケメンの不幸。「愛すべき馬鹿共の平和な日常生活」は、タイトルからしてシニカルですが、シビトさまの極意、三角関係の原型といってもよい一作品ではないでしょうか。

1

果たしてどちらが「甘い」のか

短編集の『愛玩マゾ教室』で心掴まれた作家さんです。
上の短編集同様、こちらの作品もベースに普遍的なテーマがあって、それをBL的に肉付けされている感じでした。
ページ数が多い分、短編集よりさらに深くて唸らされました。

そのタイトル通りに、恋愛における【シュガー(=甘い)】と【ダーク(=苦い)】をテーマに描かれているのが、表題作の『シュガーダーク』です。
このテーマの面白さは、ハルにとっての【シュガー】は果たしてどちらなのか、という一点に尽きるのではないでしょうか。
シュガーが夏彦、ダークが亜希生のように思いがちですが、果たして本当にそうなのか?
もっと言えば、そもそもハルが欲しているのは【シュガー】とも限りませんし。
何をどう取るかはきっと読み手自身の恋愛観と結び付いてくるのでしょうが、それによって結末の解釈がガラリと変わる面白さが良いです。
地獄を地獄と取るか天国と取るか(またその逆も然り)はその人次第ということで。
亜希生の過去がそれにしてもツラい(T_T)
亜希生にとってのシュガーは間違いなくハルでしょうなぁ。

他にあと2編、同人誌収録の短編が入っています。
何かのお話の番外編?のようですが、読んでいないため不明です。
『男は月曜日にゴミを出す』が短いながらに読ませてくれます。
イケメンは間違いなく大体においては生き易いと思うけどね、まぁ全部をそれで通すのは無理でしょう(笑)

1

そして、ここに戻る

やっぱりなぁ
さすが、恋煩さん、というか、、、

すさんだ生活をしていた主人公・ハルが、ある日忍び込んだ和菓子店。
そこにあった作りかけのどら焼きを盗んで食べていると、そのどら焼きを作った店の若い三代目・夏彦と遭遇し、、。

お砂糖の甘さと、真っ当な職人さんの真っ直ぐな広い意味での愛情に溶かされて、主人公はちゃんと自分の足で立つ大人になれるのか?

と、思わせておいての、亜希生の登場。
ですよねー、
恋煩さんだもの、そんな健全なハッピーエンドに着地する訳ないか。
同録の短編も恋煩期待値を裏切らないダークさ。
恋煩さんの救いのないお話が好きな方にはオススメ。

3

辛党、たまに甘味を食す。

主人公・ハルは病んでる執着系の男と付き合っているのですが、
途中で出会った爽やかな青年(どら焼き屋)に惹かれて、
そのお店に通い始めます。
が、結局、どら焼き屋の青年は主人公の男の子とは脈がなさそうなので、
元のさやに納まるという話でした。

基本甘いものはそんなに好まない漢嗜好なので、
たまにケーキとか食べると美味しく感じますが、
あんな感じかしらね。

でもケーキは一個食べたら十分満足です。
どらやきも一個で十分ッス。
女の人は甘いものが好きな人多いけど、
私はのしイカやコンブや梅が好きなのよ!

ビュッフェ形式のレストランなんか行くとお皿に山盛りケーキを詰めている友達を見て「女の子やな」と思う。私もついつい雰囲気でケーキを山盛り詰めるんだけど実際そんなに食べれないんで結局みんなに分けてしまうという。もりもりケーキを食べるっていう行為に憧れる。で、何の話だっけ?

そうそう、ハルは甘味の素晴らしさに気が付いたけど、
でも結局辛党派閥からははずれないんだぜ的な。

どら焼き青年とは友達として付き合って行ったらいいんじゃないかな。
それに執着男もちょっと表現はアレだったかもしれないけど、
十分ハルを愛してくれてるように見えましたしね。

他人の目から見ればどら焼き屋の青年のほうが一緒になった方が幸せになれるんじゃないかって思えるけど、
かと言ってあのどら焼き屋の青年はどノンケだし、
そこを無理に押してまで付き合ったとして、
果たしてハルは幸せになれるんだろうか?
と。
そう考えると元さやでいいんじゃないかなと思えました。

リアルにありそうな話を、
シビトさんの雰囲気ある絵で描くととても素敵。

2

愛と情のものがたり

恋情を情に変えてしまう『義務』の存在。

混沌とした心情がジャケ絵の色合いやキャラクターの表情に出ている。
初めて手にした時、そのたたずまいに眉をしかめてしまったが不思議とその強い視線から目を逸らせない。
『厄介そうだな…』と感じた直感に間違いはなかった(笑)
好き嫌いがハッキリわかれるであろう作品です。

【シュガーダーク】
笑いと恐怖が紙一重という意味にも似た甘いと苦いの狭間をいったりきたりしているハル。
痛苦を伴う病んデレDV亜希生、まっとうな大人で優しく導く夏彦との三角関係かと思いきや、恋愛関係に進展する前に決着。
描かれているのは、新しく始まる恋愛ではなく、のらりくらりしていたハルが古い恋愛関係から脱出するプロセスでした。
どんな形であれ人間関係を形成していくことは、その人にとって発展性のあることだと思います。
ハルも自ら選択したという意味では進んでいる…と信じたいけれど義務感を感じる関係は恋情と言いきるには甘味が足りなかったかなぁ~。

元々ノンケだった亜希生をハル一色にしてしまったと罪悪感を感じているハル。

ハルも亜希生も母親との関係にまつわる病理を抱えていて、寂しさから歪みが生じています。
でも亜希生は亜希生なりにハルを愛してるんですよね。
離れてほしくないなら、なぜあんなことを…というのがDVの闇なわけです。
場面的には多くないんですが暴力が苦手な方には勧めません。

自分を普通に叱り、まともに扱ってくれる夏彦の優しさに惹かれているハルに自らかけるブレーキの正体は『情』。
寂しがりだからこそ、寂しがりの亜希生の気持ちがわかるんですよね、ハルは。
夏彦といると、母といるときに味わえなかった子どもでいることを許されるのが心地よかったんでしょうね。

三者三様の愛情の形。
ひとりひとりが異なる愛と情を抱えていて、すこしずつすれ違っています。
『合致』はしないけれど、そのズレを抱えていくことを認めている話でした。

夏彦さん、すごいイイ人なんですよねぇ。
親からもらうような優しさはあたたかくハルを包んでも、いつかいなくなるかもしれない不安はなくならない。
時間をかければどうにかなったんじゃね?…という思いは否めないのでハルなりの決着は妥当とはいえ意外性のあるチョイスでした。
しかし、亜希生の兄は何がしたかったんだろう…拗らせ具合は亜希生より数段上だ…。

【男は月曜日にゴミを出す 】
可燃さん…貴方って人はいったい(笑)
イケメンは何でも許されると勘違いしているナルシストの話。

荒唐無稽な行動が重ねられて笑いに転じる話。
でも重いブラックではなく軽く渇いた黒さなのでスラッと読めます。
理性や常識に阻まれ、あり得ないようなことがパターン化する可笑しさ。
短くともサクッと纏まってる同人誌らしい一作。

【愛すべき馬鹿共の平和な日常生活 】
学生時代の友だちと、その彼氏を見つめているうちに彼氏の方が気になり寝とる話。
でも現彼氏どうなるんだろう…。
誰も閉塞感から脱出できないのでは?と心配したまま終わりました(笑)

3

苦くて、痛くて、じっとり甘い。

買う予定はなかったんですが、本屋で平積みにされたこの本の表紙に、眼が釘づけに。
ぐっはぁ!!よ、読み・・・たっ・・ぁはっ・・・いっ
言葉にするならこんな↑感じ、濡れ場で言えば指3本級の勢いで、心を揺さぶられました( ̄∇ ̄+)
シビトさんの表紙絵って、サイケな絵柄と色遣いのセンスが好みすぎて、毎度ガッツリ惹きつけられてしまいます。

ちなみに今回の表紙、裏表紙もひろげて眺めると、実は凝った構図だということが分かるんですが、ネットでは裏が見られないのが残念。
表紙上・主人公のハルの左手は、表表紙では下の男(夏彦)の方に伸びていますが、裏表紙側ではもう一人の男(亜希生)のほうにも。
左手が二本?という、ちょっとした騙し絵風なんです。

ハルの手は、表表紙の男・夏彦を選ぶのか、それとも裏表紙の男・亜希生を選ぶのか――この構図は、まさにこの作品の内容そのもの。
裏表紙のコピーの通り、「三人の男の愛の物語」です。
といっても、一人の人間を二人が奪い合う愛憎劇ではありません。ハルが亜希生と夏彦どちらを選ぶかという恋愛問題の先に、普遍的な人間の心理を描こうとした作品という意味で、敢えて三角関係ものという括り方は避けたいと思います。

主人公のハルは、仕事もなく、欲しいものは盗んで手に入れるという、野良猫みたいな男(20歳)。
ハルが人並みの幸せを手に入れられるよう、仕事と居場所を与えてくれようとする和菓子職人の夏彦に惹かれながらも、暴力的な愛で縛る亜希生から離れられないハル。
彼が亜希生から離れられないのは、暴力を振るわれるのが怖いからということもありますが、甘い幸せを与えてくれる夏彦と過ごしていると、何故か苦くて辛い亜希生との生活に戻りたくなってしまうから。
もともと亜希生とハルは共依存関係で、お互いの存在意義を確認するためにお互いを必要とするという関係性から抜け出せない・・・という問題も、根っこにありそうです。

作品の中では、
夏彦との関係=甘さ=シュガー
亜希生との関係=苦さ=ダーク
と位置づけられています。
ただ、展開を追っていくうちに、(意図的な描写なのかどうかはわかりませんが)逆の側面もあるような気がしてきます。
夏彦は和菓子職人の仕事をハルに仕込もうとしますが、職人の修業は定職に就いたことがないハルにとっては辛いもの。
逆に、亜希生と怠惰に過ごしている時は、何か空虚なものを感じながらも、暗く甘い依存関係で結ばれた同士ならではの居心地のよさが二人を包んでいるような。

この作品では、甘さと苦さの狭間で迷い続けるハルの心理が描かれている一方で、実は亜希生との関係の中に、苦さと同時に暗い甘さを見出しているハルも描かれているようにも見えます。
そう考えると、ハルが亜希生に縛られる運命から逃れられず、自ら夏彦との関係を壊してしまうという結末は、これ以外の顛末は考えられないと思えるほど自然で、どうにもならない人間の弱さとやさしさで・・・淡々としたラストなんですが、あまりにやるせなくて、心を抉られました。

観念的で乾いた描写。それでいてストーリーはじっとり湿って、倒錯的。
こんな作品を待ってました!
心の揺さぶられ度重視ということで、神。

11

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