野良犬にさえなれねぇ

norainu sae narenee

流浪犬都比你威

野良犬にさえなれねぇ
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神16
  • 萌×215
  • 萌2
  • 中立0
  • しゅみじゃない1

--

レビュー数
10
得点
146
評価数
34
平均
4.3 / 5
神率
47.1%
著者
語シスコ 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

媒体
漫画(コミック)
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
バーズコミックス ルチルコレクション
発売日
価格
¥630(税抜)  
ISBN
9784344831261

あらすじ

子供の頃からつるんでは多少の悪さなどもしてきた保(たもつ)・洋平・蓮。
親の再婚で保に小さい弟・央登(ひさと)ができ、3人+チビは相変わらずの日々を送るはず……だったが、蓮と洋平はある事件をきっかけに《ダチ》以上の関係となってしまう。
やがて時が過ぎ、それぞれ道を進んだ彼らは……⁉︎

奇才・語シスコが贈る伊達ワル系BL!
描き下ろし短編も収録。

表題作野良犬にさえなれねぇ

高校生
幼馴染の仲良し3人組のひとり・高校生

同時収録作品ハートに風穴 前編 / 後編

受の兄の親友・刑事
高校1年生・16歳

その他の収録作品

  • 28日後…(描き下ろし)
  • あとがき

レビュー投稿数10

これも高校生もの

高校生祭りもそろそろ打ち止めかなぁ。

爽やかとも、かわいいとも、かけ離れているけど、これも紛れもなく高校生もの。

冒頭の「ハートに~」は、高校生になったばかりの央登は子どもの頃から近所に住む兄の友達洋平が大好き。
洋平としては、まだまだ子供の央登を相手にするわけにはいかず拒み続けるのだが、兄と喧嘩し、洋平にも追い出された央登は、兄と洋平ともう一人の仲間だった蓮に街で偶然で会います。
この後の展開が、なかなかハードなんだけど、逆に説得力あるというか、
ここまでのことがないと、大人の方からは子どもに手を出す「淫行」の壁は乗り越えられないよね。

そして、続く表題作「野良犬にさえ~」で保と央登、洋平、蓮の高校時代が語られます。

なんと言っていいか、年期?覚悟?格の違い?
ズシンと来る。

その上、最後はちゃんと洋平と央登の現在話でちゃんと明るくオチを付けて終わる。
大満足です。

3

BL・社会学編

懐かしさ溢れる絵柄だ……。本単行本収録中一番古いものはだいたい10年前に描かれた作品ですね。こういう絵柄流行ってたなあ。顔長めでくちびるが厚くて目が大きくて……。いまは二次元でも三次元でも塩顔全盛だなあとあらためて思いました。

それはさておき、ストーリー……。重いです。
受けの子がレイプされるBLで泣いたのは初めてかも。涙が止まらないとかではないのですが、お義姉さんがベッドでふとんにくるまってる央登の頭を撫でるところでじんわりと涙が滲みました。央登(受け)が全然わめいたり泣いたり発狂したりしないのがリアルで……あまりのことになにも考えられず手足を動かすこともできずにベッドでただ横たわってるだけのとき、なにもきかない母親のような女性がただそばにいて頭をなでてくれるのってどれだけ安心するだろうと思います。央登がかわいそうすぎて、攻めとのお清めエッチがセカンドレイプにしか見えなくて「やめてあげて!」と本気で思いました。本人は喜んでたのでいいんですけどね……。

で、表題作。レイプ犯・蓮の話。蓮は悪い奴です。美貌のクズ。本人のクズさを家庭環境のせいにすべきではないんですけど、親からの愛情をいっさい与えられずに育った子供が落ちるところまで落ちていく過程を救いなく描いた話です。たぶん彼はこれからも引き返せずに落ち続けて最後はどこかで野垂れ死ぬんだろうなあ。父親に犯され、母親代わりの姉には捨てられ、この子いったいなんのために生まれてきたんだろう?

蓮が央登を見付けてターゲットにすることを決めた理由はなんとなくわかる。得られなかったものと社会への復讐のつもりだったのかな。でも央登は蓮とは違ってたくさんの人に愛されて立ち直って、蓮の行為は蓮の思うようには功を奏さなかった。出所してきた父親に声を掛けられて子供のように怯えて失禁していた彼のことを思うと、悲惨さや憐憫を通り越してただ無常感だけが残る。

1

本領発揮!のアウトローもの

5月の予約購入本のひとつ、語シスコさんの新刊。
ワクワクしながら開いたら、口絵にいきなり女装っ子が!
まさか女装モノ?!と一瞬たじろいだものの(苦手なんです、女装モノ)、本編には女装シーンはありませんでした。めでたし、めでたし(゚ー゚;A

ていうか、この口絵、「赤ずきんちゃん(=女装っ子)たら気をつけて(オオカミが狙ってるよン)の図」だったんですね。
冒頭の「ハートに風穴」は、そう言われてみればそんなお話。
主人公は、高校生の央登(ひさと)。央登には、父が再婚した関係で血の繋がりのない(年の離れた)兄が一人。
自分も昔はヤンキーだったクセに、央登を掌中の珠のように大切に厳しく育てようとする兄と、兄の悪友たち――マル暴刑事の洋平と、ヤクザでムショ上がりの蓮――にユーワクされたい年頃な央登の、バトルな日々を描いたコミカルな作品です。

表題作も一連の作品で、こちらは「ハートに風穴」から少し年月を遡り、央登の兄と悪友たち3人の悪ガキ時代と、洋平と蓮の切ない恋の顛末が描かれています。
ワケありの家庭に育った3人がつるんで、酒・タバコ・麻雀・喧嘩三昧の日々。
といってもフツーにやんちゃな高校生だった3人の中で、一人蓮だけは、暴力団関係者とも付き合い始め、次第に闇社会へと足を踏み入れていきます。
変わっていく蓮を一途に想い続ける洋平ですが、犯罪に手を染め、いっぱしのヤクザへと変貌を遂げていく蓮を止めることはできず…という、語さんお得意のやるせないアウトローもの。
あとがきによると、「ハートに風穴」連載中、蓮が好評だったことから「野良犬にさえなれねえ」が生まれたとのことですが、後出しで生まれたという「野良犬~」の部分が圧倒的に面白い!
これほんとに「キュートでスウィート」が謡い文句のルチル?とレーベルを見返すほど、ヤクザに染まっていく男の姿が躊躇なく描かれています。
この本の表紙絵はマル暴刑事の洋平なんですが、レーベルカラーに配慮してか、中身よりもずいぶんキレイめ。本編では、洋平は顎鬚有りのワイルド路線だし、ヤクザ顔負けの派手な雰囲気なんですがね(苦笑)
表紙を見て、「あれ?語さん随分マイルドになった?」と感じた方、中身はもろに語シスコ節なので、安心してください。

何度カラダを重ねても洋平の愛が届かない、蓮の空虚な眼差しや、ヤクザの世界でのし上がるために手段を選ばない蓮の非情さ、そんな彼が自分を虐待していた父親と再会して失禁するほど怯える姿など、蓮というキャラが、まるで実在の人間であるかのように生々しくてリアル。
これほど暗く、救いが見いだせない人間を、ドライに、容赦なく、しかも魅力的に描ける作家さんは少ないんじゃないでしょうか。

「ハートに風穴」に較べると「野良犬~」は、濡れ場の数は少ないものの、雰囲気は逆に淫猥。
「野良犬~」の暗さを、「ハートに風穴」がうまく中和する形で、両者のバランスも絶妙です。それでいて、どうにもならない人間の性(さが)は曲げることなく描き切っている辺りに、語シスコさんのゆるぎない世界観を感じます。
や、面白かった。良い意味で、ルチルのイメージを壊してますね。

7

ダークヒーローの肖像

シリアスで重いけど、端々に挟まれるギャグと
男たちのタフなカッコよさのおかげで
読後感はカラリと痛快。
ビターでエッジの効いた青春エンタメ劇です。


【ハートに風穴】は
明るく可愛い高校生・史登の身に起こった不幸な事件と
その後のめっけものなラブ展開を描いたプロローグ。

その後の【野良犬にさえなれねぇ】は
史登の兄・保と、その幼馴染み二人の過去編。
幼馴染みの一人で史登の片想い相手・洋平(表紙の男性)が
主人公です。


幼馴染みの洋平、蓮、保。
父から虐待を受け酷い家庭環境で育った蓮は、
成長するにつれ薬やヤクザと関わるようになり
洋平たちから離れていく。
蓮に想いを寄せる洋平は、蓮を放っておけず
頼まれるままヤク流しの仕事に加担するが…。

史登の憧れのお兄さん・洋平にも当然あった青春時代。
好きな人を守る番犬にも
欲望のまま生きる野良犬にもなれない
洋平の焦燥感が伝わってきて切ないです。

蓮の側にいたいけど
愛してくれる家族がいて根が常識人な洋平は
蓮と一緒に堕ちることができず、二人は道を違う。
別れ際の会話は子供時代の感傷に溢れ切なく、
更に冒頭の現在編の彼らを思うと
成長するにつれ否応なしに変わっていく
人間関係の虚しさを感じさせます。

洋平の、ニヒルな風貌の下に
過去の恋の痛手や優しさを隠した佇まいには
アニメや特撮物に出てくるダークヒーローのような
哀愁、カッコよさがあり、そこに男のドラマを感じました。
(なんか俳優の某ジョー氏に似てるような…v)


移り変わっていく人間関係に絶対なんてない、
何がきっかけで愛が芽生えるかなんて
誰にも分からない
そんなメッセージを感じる本書。

このまま史登が成人して、H解禁になったら
二人は意外とラブラブバカップルになるんじゃないかな。
そんな未来まで見届けたかったです!
そして悲嘆に暮れる保の姿もw

6

読むほど染み入る

2008年~2010年にルチル掲載されたものに、描き下ろしを加えたものでした。
表紙の洋平の思春期と大人になってからの恋のお話。

導入?の「ハートに風穴」は、洋平の親友・保の弟、央登視点で、洋平への思いが軸になっていました。が、洋平とレンの複雑な思いは匂わせてあって、何があったのか非常に気になる。そこから表題作(洋平×蓮)につながっていきます。

語作品おなじみのろくでなしモノなんですが、これまでのものと一味違うのは、洋平が蓮と一緒に落ちていかないところ。それぞれが自分の道を自分のものと認識して進むのが潔く、切なかったです。

最後まで読んでから「ハートに風穴」に戻ると、洋平と蓮の短いやり取りに思いが凝縮されていたことがわかって、それがまた切ない。
保のキャラや、壊れた感に隠されてますが読み返すほど染み入るものがあり、やっぱり語作品。好きです。

3

変わるものと変わらないもの

◆『野良犬にさえなれねぇ1~5話』
 家族でも恋人でも普通の友人でもない「保」「連」「洋平」の3人。道が別れても敵対してもどこか信頼し認め合っている男同士の絆が熱い表題作でした。
 それぞれが自分の道を見つけ、大切な人を見つけます。1人まだ自立できずに彷徨っている男がおりますが、他2人から同情されないうちはまだ大丈夫なのでしょう。

「そいつとは今もダチのまんまだ」
大事なものが1つでもあれば強くなれる、男の単純さとロマンチストぶりに憧れます!
 そんな3バカの話はさておき、3人にとってそれぞれ違った意味で大切な存在である「ヒサト」を主人公とした同時収録作が萌え×2でした!↓

◆『ハートに風穴』『28日後…』『280日後…』
 酸いも甘いも噛み分けたような顔で余裕ぶっている隙のない男が好きじゃないのですが、まさに表紙の男・洋平がそのタイプ。そんな男の「大人の余裕」を揺るがすワンコ受け・ヒサトの登場。オッサン、枯れたふりしてないで起きて来いよ! な展開にウキウキでした。

 ヒサト16歳。兄とその悪友達に憧れて育った少年時代。片想いの相手に振られて迎えた反抗期。小さい頃から「連」だけは自分を子ども扱いしなかった。そして久しぶりに再会を果たした今も…。

 傷つけられたヒサトを初めて「大人」として扱ってくれた洋平。それが嬉しくて幸せで。切なさを上回る若いパワーに元気づけられます。

 そして、粘り押しに押したヒサトの恋の行方は…。
公僕となった洋平はヒサトの兄である保の手前もあり、「こいつが成人するまでは何もしねー」と言いますが、日々成長する色気にふらっと口づけしてしまったり。

「ま、こんくらいセーフだろ」

汗かいて言い訳してる時点でアウト!
高校卒業までは待つけど成人までは待てないに1票です(笑)

2

ダブルパンチのやるせなさ

これまでに読んだ語シスコ作品の中でどれが一番やるせないかって言ったら「上等だベイビー」収録の『リハビリ中断』かこの作品か。
もしかしたらこちらの方がよりやるせないかもしれません。
読めば読むほどやるせないです。

小学校からの腐れ縁3人組〔洋平〕〔保〕〔蓮〕+保の義弟〔央登〕の4人が作品の主要な登場人物で、高校生の央登を主人公に現在の4人を描いた関連作と、洋平を主人公に3人の高校時代を描いた表題作で構成されています。

『ハートに風穴』(全2話)
兄の親友〔洋平〕に恋する〔央登〕が主役のお話です。
全体的にはコミカルトーンだけど、中盤で痛ましいレイプ事件が起こります。
子供の頃遊んでくれた蓮を「ヒーロー」だと言って、会わなくなって以降も慕い続けた央登を見事に裏切る蓮のクズっぷりが情けない…
一方で洋平が見せる男気にはホロリときます。
保は保で弟思いのいいお兄ちゃんです。

『野良犬にさえなれねぇ』(全5話)
〔蓮〕に恋心を抱いていた〔洋平〕が主役のお話です。
この表題作がなんともやるせない。
哀しきクズ男〔蓮〕がどんな風にして出来上がったかが明かされます。
語シスコさんと言えば、弱者を光のある処へすくい上げる(もしくは向かわせる)ストーリーをお得意とされている印象が強いので、その最も象徴たるキャラ(蓮)が切り捨てられてしまったところに個人的にものすごいショックを受けてしまいました。
ただその分、リアリティがあります。
親の再婚で央登という守るべき存在ができて真っ先に見切りを付けた保のドライさもリアルだし、堕ちてく蓮をどうにかして救ってあげたかった洋平の足掻きもリアルで、どうしようもない蓮の空っぽさもリアル。
蓮が洋平を自分の道連れにしなかっただけマシなのかもしれないけれど、最後に洋平に見せる蓮の良心は悲しさを誘います。
それから月日が過ぎて大人になった洋平は大人になったなりの方法でもう一度蓮を救おうとするのですが、その行く末が『ハートに風穴』の蓮な訳ですから、もはや蓮には同情のしようがなく、そこにまた更なるやるせなさを感じます。

『28日後…』(描き下ろし)
央登と洋平のその後。
再びのコミカルトーンで表題のやるせなさをちょっぴり和らげてくれます。
兄の無言の牽制虚しく、そう遠くない未来に洋平は央登に手を出しちゃうんじゃないかな。
央登の成人を待つのは無理でしょ~(笑)

1

やりきれなさとシリアス度が80%くらい占めてる

冒頭の【ハートに風穴 前編後編】は高校生の央登が主人公。彼には央登を溺愛する血の繋がっていない兄・保が一人います。
その兄には昔つるんでいた洋平と蓮というちょいワルの仲間が二人いて、央登はその二人に憧れて育った。その片方の洋平に恋心を抱く央登だけど、洋平はガキ扱いするばかり。
そんなある日、しばらく姿を見せなかったもう一人の仲間、蓮に久しぶりに央登は会うのですが、蓮に騙されて男たちに輪姦される羽目に…というハード展開。

【野良犬にさえなれねぇ】
保、洋平、蓮という幼馴染三人組のお話。蓮の生い立ちや転落、そして洋平と蓮の刹那的な関係が描かれています。

蓮は父親から暴力&性的虐待を受けて育ち、やがてその父親は窃盗でムショ行きに。それでも三人で相変わらず仲良くつるんでいたのだけど、次第に何かがずれ始めて…
やがて悪い奴らと付き合い始めるようになった蓮は、坂を転げ落ちるように転落していきます。

父親よりも体格も力も上回るほど成長しているはずなのに、出所したきた父親につきまとわれて失禁してしまった蓮は恐怖のあまり父親を殴り殺してしまい、一緒にいた洋平とその秘密を共有する事になります。その異常な興奮状態のままセックスする二人は読んでて痛々しい限り。

蓮のことを好きな洋平は何とかして蓮を救いたいと思うし、何度も身体を繋げるのだけど何度抱いても、何かを共有する感覚を満たすどころか喪失感が増すばかりの洋平。
失神するほどのスタンガンを自分の身体で試してしまえる狂気を孕んだ蓮、すでに空っぽで何も失う恐れもないはずの蓮が、ヤクザの襲撃に向かう前に「間に合うよ お前はまだ引き返せる」と洋平に別れを告げたシーンが印象的でした。

その後、洋平は父親に倣って警察官になり、犯罪者として追われる蓮とまさかの再会をします。俺を守ると昔言ってたんだから見逃してくれよ、助けてくれよ、という蓮を逮捕する洋平。逮捕されたあとのパトカーの中での二人の会話が胸に迫る…。なのにその真意を理解する事もなく更生する事もなかったのは、冒頭に収録されていた【ハートに風穴】の様子で明らかになっているのでほんと切ないです。。。。

元は同じようなところにいたはずの人たちが、全く別の人生を進んでどうやっても戻れないところにお互いそれぞれがいる、というのを容赦なく描いていてそこがヒリヒリとするような痛みを伴います。

語さんの作品はアウトローやゲスが多く登場しますが、突き抜けたような描き方、そしてどんなに痛い展開でも最後の最後に救済してくれるというイメージが強かったのだけど、これはそういった救済はなくやりきれなさが残ります。

でも終始重い空気が漂っている訳ではなく、最狂のブラコンである保の央登に対する過保護っぷりが面白くてニヤニヤ笑える箇所が散りばめられているのが、らしいです。

1

ヘヴィさと脱力のせめぎ合い

何の予備知識もなく読み始めたはいいが、こんなにヘヴィな話だとは思わなかった…!
一見軽い。
一見チャラい。
一見楽しく、
一見クール!
しかーし!
幼い時に傷ついた心は、ねじ曲がったままなのか。
友情など嘘っぱちなのだろうか。
他人の幸せを憎むだけになるのだろうか。
この物語、4人登場します。
3人の幼馴染と、その内1人の年の離れた義理の弟。
3人はやんちゃで、それぞれ家庭が複雑で、いつも3人でつるんでた。
洋平は、父子家庭。父親は刑事で忙しく叔母に育てられた。一応普通ね。
保の母親は何度か結婚離婚。今度コブ付き男と結婚が決まり、やっと落ち着きそう。相手の連れ子が央登(ひさと)です。保は央登をとっても可愛がります。
3人目は蓮。彼は父親から虐待を受けていた。そして父親は刑務所に入って施設で育つことに。
洋平はずっと蓮が好きで、蓮が悪い道に染まっていく時もそばにいて自分も悪事の手伝いに手を出したり。
でも蓮は間に合わないのです。
洋平がいても、転落を止められない。
土壇場で洋平が最後の一線を越えて傷害事件に加担する前に、洋平を手放すのですが…
このタイトル、「野良犬にさえなれねぇ」とは誰のことか。
若き日に、半端な愛情で関わって蓮を全く繋ぎとめられなかった洋平の自嘲なのか。
悪の道に堕ちて、それでも結局捕まった蓮なのか。
だが道は分かれても洋平は諦めちゃいない。今度こそ助けてやれる。それがノラ犬のやり方さ…ってところなのかな。
ラストは語シスコ先生らしい?脱力系のおかしみ。
ゲイである洋平の許容範囲に笑い、央登の美少年ぶりと、央登を護るのに必死な保にいちゃんの奮闘に笑い。
こんなヘヴィな過程があってもユーモアの湧き出る彼らに感服する。

1

這い上がらないのもまた1つの生き方

 1冊まるごと洋平×央登の話だったら多分萌2にしていたと思います。でも、メインである洋平×蓮もこの作品の中では非常に重要な位置を占めていて、蓮との長年の付き合いがあったからこそ今の洋平がいるんですよね。蓮とのCPの方は私にとっては萌えが少なかったのだけど、常に彼から一線を引かれたまま、それでも執着してしまう洋平の葛藤は読み応えがありました。

 分かりやすく陽と隠を象徴する央登と蓮。どちらも複雑な家庭にいたのは同じなのに、片や義理の兄に溺愛され、片や犯罪の片棒を担ぐ人生。蓮が恵まれなかったのは蓮自身のせいではないし、運としかいえないのがもどかしいですね。彼が成長した央登にした仕打ちは許せるものではないけれど、同情の余地が1ミリもないかと言われれば嘘になる。そこで安直な展開にせずに、恵まれずに救いも拒む者は変わらないということを蓮の生き様を通して描かれたことは評価したいです。

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