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arashi no ori
爱人是背叛者
「愛したのは、裏切り者」というコピーに、帯にも堂々とメロドラマBLと書かれてある。
時代モノで、執着と愛憎、誤解、家の没落、主従、身分差、年の差、謎、加えて没落旧家とくれば、そうですよね♪
でもメロドラマっていうと、受けちゃんがなよなよしているとか、なんか女子っぽいとか、売られるとかいう設定も想像するけれど、
いい意味のメロドラマ風味設定で、割と硬派なメロドラマなんじゃないかと思いました。
いや、メロドラマって言うじゃないかも。時代モノ昼ドラ?
結構がっちりと、骨太なストーリーですよ。
カプたちのエンディングはメロメロではありますけどね(笑)
ある日、小学校教師の楷の元に以前奉公していた先の次男である義久が訪れる。
彼は楷を引手茶屋に連れ込み、10年前の出来事を持ち出し、そしてかつて住んでいた今は人手に渡り自分が買い戻したという屋敷に連れて行く。
大変に威圧的で厳しい祖父の元、少し身体の弱い兄・義高の側にいつもいたのは、身寄りがなく梅崎家で面倒を見ている遠縁の楷。
母親が亡くなり実家へ引き取られてきた義久にとって、優しい兄と、兄の側にいつもいるきれいで優しくて、勉強を教えてくれる楷は、心の支えでした。
しかし、大学生だった義高が急に祖父に呼び出されたのは傾きかけた家を立て直すための婚約を進めるため。
その翌日兄は崖から海に落ちて亡くなり、楷は姿を消していた。
兄の死の謎、楷と兄の関係、過去を邂逅しながら、現在の時間を過ごしながら、
その謎が明らかになったとき二人は。。。
これもどちらかというと、義久のひとり相撲ではありました。
まだ、そのとき子供だったから、兄と楷が恋人だと思い込んでいたから、楷が好きだったから。
執着と憎しみのごちゃまぜになった感情で楷を追い続けていた、その執念は凄まじいですが、案外に純情でヘタレで、実はワンコだったのでは?という気がします。
傲慢な振りはしますが、やっぱり年下だよね。な部分がヘタレになってでいているような気がします。
茶屋に連れ込んだのに犯せなかったり、かなり本人の中で嫌われたくないって葛藤が働いてる?
そして、楷は年上らしい落ち着きがあります。
義久のいいようにさせてます。
本当はなにもかも真実を知っているのに黙っているのは、義久の為ではあると思いますが、案外に年上の余裕であるのかも?
途中で、元兄の婚約者になるはずの女性が登場して、義久があれからどうやって生きてきたかがわかるように、
そして二人だけだと、中々進展しなかっただろう話の展開にメリハリを入れ、軽妙な軽さを演出してドロドロにならないように工夫されています。
この女性の登場に一体何の意味が?とも思うのですが、
この屋敷に兄の思い出があるという意味で過去との決別という一つの根本としていたのかな?とも取れました。
ただ惜しむらくは兄の義高があっけなく本当に死んじゃっていたことです(汗)
これに何かがかくされていて、ドンデンでもあれば、本当のドロドロメロドラマになったろうと思われます。
お兄ちゃん、ちょっとしか登場なくて(しかも死んじゃって)ちょっとかわいそうw
冒頭から時間軸を遡ったり、過去と現在が混在して進行しますが、その境目がまったくありません。一コマだけさかのぼってみたりという手法も使われます。
なのでうっかりしてると、アレ?ってなるときがあったので、その点が特徴として挙げられるかもしれません。ちょっとそこが見づらいかな?
しかし、堅実な絵柄が時代背景にとてもよく合っていて雰囲気作りはとてもお上手なのではないかと思います。
それに、何となくこの作家さんで、おっさんとかリーマンとかも見てみたい気がします。
かなり有望な新人さんなのではないでしょうか?
大正から昭和の時代にかけて、梅崎の家を舞台に繰り広げられる恋愛物語です。
梅崎の屋敷に引き取られた義久ですが、彼は祖父の娘、小春の子どもなのです。
そんな肩身の狭い思いをしている彼の教育係が櫂であり、義久はいつしか櫂のことを慕うようになります。
義久の兄である高久は、頭がよく、優しいできた人間だけれど、病弱故に無理はできない体なのです。義久と櫂が逢瀬を繰り広げているところを目撃してしまう櫂…。義久は駆け落ちの場所を言付かったのに、それを正直に言わなかったとずっと後悔しているのです。
二人が大人になって、再び郷里に戻ると、そこにはかつての梅崎の家があります。ただし、所有者は義久とその後継者である八重子というおまけがついているのです。
あの嵐の夜、何があったのか、義久、櫂の気持ちも楽しいのですが、一番楽しかったのは義久の後継者の八重子です。八重子がこの物語を握っているのです。復讐という穏やかでない言葉が出てくる物語で、攻めの義久が頑張るかと思いきや八重子が頑張っているのが、珍しいと思います。
メロドラマ…にしては汁気が足りないw
裏表紙のあらすじ、冒頭数ページからミステリー仕立てだと期待したら展開は少々、臨場感不足でした。
絵柄は好み!
色気と艶は足りないけど雑誌【怪】とかで京極夏彦さんの原作が似合いそうなレトロモダンな表紙に惹かれます。
顔マンガにならず、いろんな角度から全身を描いているのも好き。
回想を交えながら進むので同ページに現在・過去が同居することがあるのでコマ割的に見づらいことがたまにあるかもしれません。
少年時代に甘酸っぱい憧れを抱いていた書生:櫂(受)が義兄:高久の死に関わったかもしれない、と真相を突きとめようと義久(攻)は10年ぶりに櫂を探し当てる。
このテの話だと受は儚くて健気…なキャラ設定が多いイメージですが櫂は多彩な表情を見せ、飄々として気も強い。
予想外の動きをする櫂に義久は今も昔も心を揺り動かされている姿が軽快です。
タイトルにもなっている【嵐の檻】は義兄:高久の執着だった気がします。
病弱で穏やかな彼は健やかで利発な義弟に、想いを寄せていた櫂を奪われることを恐れていた。
成長という新しい時間を生きる義久相手に手出しも口出しも叶わず、どうすることもできない気持ちに身を妬かれていた。
長男ゆえ家にも縛られた彼の未練と絶望と執着をもう少しドロっとあからさまに描いてほしかったです。
高久があまりにも簡単に逝ってしまったのに物足りなさを感じる反面、いたずらに悲壮感を煽らない描き方から人生の中にあるユーモアと奥行きを感じることができます。
嵐の檻から出たふたりはこれから先も淡々と生きていくんでしょう。
展開自体は地味なんですが登場人物たちが生命力溢れる人柄だったので、この作品の魅力は増していたと思います。
特に八重子という高久の元:見合い相手の元気っぷりは花を添えるには十分な存在感でした。
初コミックということですが面白いアプローチの作家さんなので追っかけてみたいです!
とても好みの絵柄で、雰囲気もとてもいいと思います。
旧家の次男が昔姿を消した書生を10年後に探し当てるのですが、その書生は死んだ兄の恋人だったというお話。
10年前当時、兄の恋人に横恋慕いていた弟、ここまではいいんです。
兄は自分の婚約を親に勝手に決められ書生と駆け落ちしようとしますが、結局は書生は逃げず、兄だけ遺体で海辺に打ち上げられました。
それを10年後次男は書生が兄を殺したとなじるのですが、何故か次男はその時に何があったかよく覚えていない。
覚えていないのに、何でこんななじられるのかよく分からないので、そこでまず「?」
元書生さんも何も云わない。
で、真実は兄が弟に駆け落ちの待ち合わせ場所を弟に伝えたのに、弟は書生には告げず。
弟の譫言で書生はそれを知っても、弟を好きになっていた書生は、敢えてそこに行かなかったというのが真実。
此処で更に「?」
結局のところ、「兄を殺した」云々は兄と駆け落ちしなかった裏切り者の書生を次男が勝手に10年も恨んでいた(まあ、それは建前で好きなだけなんですが)だけという酷いオチでした。
書生が伝言を知ってしまった事を知らない弟は、10年後の自分の論理からすれば兄を殺したのは自分という事になりますよね。書生を裏切り者扱いはあまりに酷いのではなかろうか。
責任転嫁なのかもしれませんが、それも更に酷い話です。
裏切り者と罵られても書生が何も云えなかったのは、実際自分が弟に心変わりしてしまっていた事、駆け落ちしなかった事が実際兄への裏切りだと思っているからでしょう。
で最後、誤解が解けて、二人は結ばれました。めでたし、めでたし。って、兄が可哀想なだけなのですけれど。
そう考えると何とも弟が身勝手なだけの話でした。
記憶がなくていいので、その分からない部分を知る為に10年間書生さんを探し続けていたってだけで「恨んでいる」ってのはなかった方がいい気がします。
あとキャラは好きなのですが、八重子さんは出てこなくても良かったような。
絵も雰囲気もいいので、話の根本さえどうにかなったらとても好きだったと思うと残念です。