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tsumiki no koi
何度も再読している作品。
相手を騙すつもりが、いつしか本気の恋に落ち……というミイラ取りがミイラに……という時々見かけるパターン。
それを凪良さんが書くと、こんな心にしんと響くような話になるのかぁと初めて読んだときに思いました。
生まれ育った環境は全く異なるけれど家族の愛に恵まれなかった点は共通している二人の地道な恋愛というか、蓮は加賀谷の深い深い愛情に包まれて生き直すといった感じかな。生まれ変わるじゃなくて。
いくつか好きなシーンがあります。
●詐欺師として逮捕された蓮は、服役中ずっと加賀谷を騙した事を後悔し続けてもう二度と嘘はつかないと心に決めた。
それなのに、出所の際に迎えに来た加賀谷に対して嘘をつくところ。
●多くの人たちが『平凡』とか『普通』と思っているものは、実はすごいバランスの上に成り立っている。とか、
アドベンドカレンダーをめくるのを楽しみにしているところか、クリスマス過ぎてもそれを捨てずに大切に取っておいてるとか、蓮がいじらしすぎてキュウウウウっとなる。
●クリスマスの夜。
生まれて初めて乗った観覧車から眼下に広がる夜景を見て「一粒一粒に誰かの暮らしがあって、その全てが完璧な幸せで作られているわけじゃない。でもとてもきれいだ。」というところ。
そして、あの蓮が初めて願いを口に出せたところ。
確かに一章、二章は蓮視点は切ないし苦しい。
服役して更生しても前科持ちということで色眼鏡で見られてしまうエピソードは苦しいけれど、仕方ないかなと思うんです。
読んでてすっっっっっごく悔しいのだけどね。
理解ある懐深い夫婦の元で働けてハッピー!万事OK!みたいなご都合主義ではないところがいいと思う。
そして三章の加賀谷視点が、ご褒美ターンというかとにかく愛に溢れていて好き。
かなり自制心の強いお方だと思っていましたが、クリスマスツリーは2本買おう!とか、時折タガが外れてしまってる様子が微笑ましい。
そして「勝手に色々なものを贈ろう」と密かに決意なさいましたね!
「もう!聡、買い過ぎ!!!」って蓮に叱られるくらい、あれこれ何かと買い込んでほしい。
先生の「美しい彼」「未完成」「全ての恋は病から」「累る」などが好きな作品。
こちらはしばらく積み本となっていたのですが、やっと読みました。
不幸な生い立ちの末恋愛詐欺師となった蓮と、そのターゲットになった裕福な医師加賀谷の恋を描く作品。
本編は全体の真ん中くらいまで。
蓮が加賀谷を嵌めていくんだけど、加賀谷の誠実さや一途さにだんだん絆されていく。
蓮がかなり辛い生い立ちで、孤独でやさぐれている描写が切ないです。
紆余曲折あって、本編最後に結ばれる二人。
最後は加賀谷の一途で深い愛に、胸が締め付けられました。
後半の『CHRISTMAS BOOK』は、同棲し始めた二人のお話。
一緒にいても、この生活がずっと続くとは信じられない蓮。低い自己肯定感はそんなに簡単になくせない。それで時々ギクシャクしてしまう二人。
加賀谷にお見合い話が来たり、蓮が仕事を見つけても前科者のため雇い主とうまくいかなかったり。
単純に幸せとはいいきれないお話が進んでいきます。この辺はちょっとお話が重たくて、なかなか読み進むのが難しかったです。
加賀谷の見合い相手として登場した万里は、明るくてさっぱりしてて、蓮と友達になる様子もほっこりしてよかったです。こういう女子でいい子が出てくる作品、好きです。
最後はようやく本音でぶつかり合えた二人が、ロマンチックに仲直り。こんなふうに、時々衝突しながらも、ずっと一緒に過ごしていって欲しいなぁ、と感じさせるラストでした。
最後のSS『NEW YEAR’S BOOK』は、初めて二人で過ごすお正月。とにかく甘々な短編。着物を着たままの濡れ場がエッチでした。
濡れ場は数回あるんですが、普段は優しくておとなしい感じの加賀谷が、その時はちょっと強引にグイグイ求めるのが、ギャップ萌えで良かったです。
後書きによると、本編は文庫デビュー前に書かれた作品に加筆修正し、後のニ編は書き下ろしとのこと。かなり初期の作品なんですね。
本編は、この先どうなるのか、とどんどん読み進んだのですが、後半の書き下ろしはちょっと内容が重かったからか、あまり没入感は得られませんでした。
先生の作品は、もう少しコミカルさのある方が好きみたいです。
シーモア 挿絵付き
じんわりと胸にしみる。
基本的に甘々が好きですけど、こんな甘いだけじゃないお話もやはりいい。
受け様は、男専門の恋愛詐欺師の蓮。本名は透。
今回新たにターゲットにしたのは、大病院の息子で医者の聡。
詐欺師とカモ、という出会い。
でも、聡から対価を求めない掛け値なしの愛情を向けられ、罪悪感を覚えるように。
「好き」という気持ちを自覚して葛藤する透。
透の気持ちに引き込まれて、私も苦しくて切なくて。
とてもリアルで胸にくるー(¯―¯٥)
CHRISTMASのお話もとても好きです。
罪を償っても、世間や人の気持はハイそれでおしまいって訳にはいかない。
頑なな透が歯がゆい聡。
普段は穏やかな聡が、透が欲しくてままならなくて激昂するのが嬉しい。
NEW YEAR'Sのお話は聡視点で、ご褒美みたいな気持ちで読みました。
聡の透への気持ちはよく伝わってましたけど、やはり攻め様視点はいいわ~。
聡の着物フェチも知れましたしね。
いや~聡もちゃんと男なのねぇ( ´∀`)
積木のようにいつ崩れてもおかしくない不安定さ。。
一つ一つ、愛情や約束を積み上げていく2人の姿が、本当にとても好きです。
また、凪良先生の言葉選びが美しくて秀逸。
もちろん、朝南かつみ先生のイラストも儚く美しくて、もう新しくは見れないんだな、と改めて残念に思います。
作者買いです。
開業医の長男と、その資産狙いの恋愛詐欺師の物語でした。
最近読んだBL小説の受けがどれも不幸な生い立ちの子ばかりだったので、またか思いましたが不幸な受けが幸せになるお話は好みですし、まあまあと思いながら読む。
辛い暗いシーン多めなので、加賀谷がひたすら蓮に甘々なのが救いでした。
加賀谷が好きだったという後輩や、お見合い含めた家のアレコレ、公園でで会ったおばあさんの件についてはもうちょっとその後が知りたいと思いました。
それと、生まれ育った環境の違う2人がやっていくには、愛だけではなかなか乗り越えられないものもあると思うので、完全にハッピー!って感じに思えなかったのは私だけでしょうか?
何度崩れ落ちてもその度に一つ一つと積み木のピースを積み直せる2人であって欲しいです。
攻め目線のNEW YEAR'S BOOKが好きです。
蓮が子供時代に味わえなかった幸せな時間を2人で取り戻そうとしてくれる加賀谷の優しさに癒されました。
恵まれない生い立ちから恋愛詐欺師となった蓮
蓮は、結婚詐欺を繰り返す自分の本当の動機理由を、自覚していなかった。
連は、積み木遊びのように積んでは崩す、恋愛ごっこ=詐欺を繰り返す。
でも、標的にした相手・総合病院の長男である医者の加賀谷から、とんでもなく本気の愛を注がれて、
自分の中の凍った心の歪み・・詐欺を繰り返す動機になっていたしこりが氷解していく。
幸せそうな人を憎く思う訳は、裏切らない無償の愛を手に入れたかったから。
愛を注がれて、自分の今までの生き方を思い返す事ができるようになる蓮。
蓮のカモになった加賀谷は医師。
心理学の素養があるので、蓮の心の傷には手当てが必要だと感じることが出来たのかもしれない。
積み木のように崩れない愛、安定した心の土台を蓮に与えてくれた人。
なぎら先生らしい、心理攻め、マイノリティを見つめる目、がこの物語にもありました。
主人公の心の揺らぎが、面白かったです。
なぎら先生の登場人物の設定は、性善説。悪人は居ないって前提の世界感なんでしょうね。
いつも後半でグッと流される作家さんですが、前半から涙が止まらず、切なくて苦しいお話でした。特に、自分の気持ちを自覚するシーン、過去を後悔するシーン、クリスマスを心待ちにする描写…。心の揺れる様子を丁寧に書かれていて何度も読み返してしまう話です。
でもバイト代はもらって欲しかったし誤解も解いて欲しかった。脳内EDで誤解の解けたシーンが流れたので良いのですが、そこがスッキリすればもっとよかった!
2人でずっと幸せになってほしいし、安心して生活していってほしいです。
凪良先生の作品は3冊目です。先生の作品は切ない系しか読んでいないのですが、暴力的で打ちのめされるような絶望感はなく言葉が優しいというか、、なんとなく心地よいので気負わずどっぷり浸れるのが気に入っています。
この作品の主人公である蓮は詐欺師なのでこの先必ず良心の呵責に苛まれる展開になると容易に想像できちょっと面倒だなとも思いましたがさほど構えることなくすんなりストーリーに入り込めました。
蓮の生い立ちとこれまでの生き方を考えると価値観や複雑な心情は簡単に変えられるものではないだろうしどうやってこの世間知らずなボンボンと?・・・ってある意味ワクワクに似た感じでページをめくる手が加速しました。結局蓮が詐欺行為を重ねながらも会う度に疑うことなく注がれる加賀屋の無償の愛情が蓮の心の柔らかい部分に積み重なっていったからなのかなって思ってます。
加賀谷と優しい時間を過ごすほどに増していく罪悪感、やがて加賀谷の存在が失いたくない心安らぐ場所なのだと自覚し重ねた身体で初めて感じる快感。この場面は切なくてやるせない気持ちになりました。
この直後厳しい現実に向かい合う事になるのですが、蓮がこれ以上傷を拡げずに済んだと少しホッとしました。加賀谷も加賀谷で蓮に似た誰かを想い夢中になったという事実を隠していたのだけど、蓮も自覚している通りさすがにこれは同系列に並べられないですよね。。
2年の服役を終え出所した時に加賀谷の靴の先が目に入った場面、本当にうれしかったです。再会はもうちょっと先になるのかなと思っていたので、一緒に生きたいと食い下がる加賀谷に初めて男前を感じキューンとしました。
加賀谷と蓮が一緒に暮らし始めて一安心と思いきや現実はそう上手くいかず、蓮は生まれて初めて安定した幸せを味わいながらもいつか失ってしまうのではないかと不安に思っていて、いつその時が来ても大丈夫なようにと心から甘えることが出来ないんですよね。そんな中加賀谷は母親にお見合いを強制されるし、その母親は蓮の存在さえ認めようとせず、、やっと見つけた飲食店のアルバイトも前科者というハンデによって失ってしまう訳だし、、。いろいろ辛いです。でも世間なんてそんなものですものね。犯罪歴があってそれが詐欺なら誰だって警戒します。でも!賃金の未払いはめちゃくちゃ気になりました。これは労働法にふれるのではないでしょうか。このお店での話は以降出てきませんでしたが気になってしかたありません。それからお祖母さん、蓮は下心があって近づいたわけじゃないからね!っと言いたいです(涙。まあこれらの件があって二人の心の距離が縮まったり蓮に同年代の友達ができたりするわけですが、、、。
最後に加賀谷視点でのお話が入るのですがはじめて加賀谷の心の中が知れて嬉しかったです。蓮は何も欲しがらず一緒に暮らし始めてしばらくたっても元から少ない私物を増やさないのでいつかいとも簡単に消えてしまうのではとやっぱり不安だったのですね。蓮の思い出になる物を増やしたくて少しずつ贈り物をしていく加賀谷の心情も切なくて胸にくるものがありました。この先だって遠慮なしに寄りかかるような関係にはならないと思うけど、二人と一匹がいつまでも平穏無事に暮らしていけますようにと願わずにはいられません。
だけど加賀谷はなぜここまで大きな器で蓮の事を粘り強く受け止め続けられるのだろうか、、、。愛してしまうことに理由なんてないのかな。。
ゲイ相手の恋愛詐欺師と、カモられるお医者さんのお話。いいお話でまとまっているのだけど、話自体が短くて、本の半ばで本編が終わってしまうのが物足りない。特に、じっくり読みたい後半の、恋愛の自覚→葛藤→逮捕→服役の流れが急ぎ足に感じられてしまった。
恋愛詐欺師としていろんな男を手玉に取っていたはずの蓮が、加賀谷に惚れたきっかけが、お金を渡した後にセックスをしなかったから、というのはちょっとピュアすぎでは。好きになってからも、いっそ加賀谷に正体をバラそうか、という葛藤が読みどころなのに、サラッと流されているように感じてしまった。
加賀谷の過去の恋も含め、騙される側の心理、騙されたとわかってから許すまでの葛藤なんかも掘り下げてほしかった。それがないと、もと詐欺師の蓮を「心がきれい」とまで言い切る加賀谷の気持ちに共感できない…。
後半は出所してからのエピソード。クリスマスのお話は、バイト先に誤解をされたままなのが、どうにも後味が悪い。というか、蓮がこれから生きていく上であんな重要なセリフを加賀谷に言わせたのだから、それを受けた蓮が自ら誤解を解きに行くという行動をしなければ、話が完結したことにならないのでは?
あの感じならば、きっとおばあちゃんから奥さんは話を聞くのかもしれないけど、罪を犯した人間が、当たり前の日常を手に入れるのがどれだけ大変か、というお話ならそこは曖昧にしないでほしかった。
ラストはお正月、加賀谷視点の着物エッチのお話で可愛いんだけど、本編と続編が未消化のままだったんで、モヤモヤが残る。仕事はどうなったんだろう、これはハピエンなのか? 受けの夢は田舎の一軒家だったけど、結局住んでるのは都会のマンションだし。
買うきっかけになった朝南先生のイラストは、繊細さと透明感が素敵。観覧車デートのカットが特に好きだった。
凪良ゆうさんの作品は評判の高いものを何作か読んだけど、この作品が一番気に入りました。
あとがきに、凪良さんの積木のイメージは「すぐ崩れるもの」だけど、担当さんは「ひとつひとつ積み上げていく感じ」と返事したとあり、私のこの作品の積木は積み上げていく方の印象だった。
出所後、同棲するまでが一段、クリスマスにケンカし仲直りしてもう一段、この先は、加賀谷の実家と戦って一段、蓮が無事就職して一段と、積み上がっていくのではないでしょうか。
この先も前科持ちの連は苦労するだろうけど、万里とその恋人の先生や、話には出てこなかったけど、バイト先の夫婦がおばあさんに叱られて謝罪し親しくなり、味方になってくれると思う。
その縁で御近所さんなんかと知り合い、連はこれまで縁のなかった人とのふれあいに馴染んでいき、笑顔が増え、加賀谷が喜ぶ・・幸福な未来を感じさせる作品だった。
これはとても良かった。
受は最初は恋愛詐欺で金を得るの為、攻めは最初は昔の片想いの相手に似ていたから。
きっかけはそれでもお互いが少しずつ相手の存在を確かめ合うようになってからの~受逮捕。
出所の時に攻めが迎えに来てくれて本当に良かった。
それからの二人の少しずつ心の距離を縮めていく様子に、うん積木の恋だな。と。
二人とも不器用なのはお互いを思いやるばかりに。
でも、ちゃんと向き合っているからこそ揉めるんですよね。
攻めの見合い相手とは良い関係のようですけど、これはあんまりいらなかった。
受けにとっては人と交流すること自体が大切なのでしょうけど。
設定はリアルではないけど、二人の心の動きみたいなのはとても自然で納得できる。
BLの世界の話で現実の世界の話ではないというスタンスで読めば恋愛模様を楽しめるお話です。
正反対なんだけど、だからこそ共通する部分もあり、惹かれあってしまう…そんな二人が出会って、もつれたりほぐれたりしながら、「恋」を積み上げていく物語。
それぞれの心情描写の繊細さを堪能する作品です。ストーリーそのものを言えば、そもそも「男相手の恋愛詐欺師」なんてショーバイが割に合うとはあまり思えないし、フィクションだからね、という部分は多々あります。
しかし、欠けた部分のある者同士が出会い、ゆっくりと二人に応じた関係性を築いていく様子にじんわりとさせられるお話ではあります。
恋って確かに脆いものだし、まだまだ不安要素も多いカップルですが、色々と乗り超えて行ける未来を祈りたくなります。
ふふ、「神」101個よ、このぽちで。
心に残りすぎている当作品。本棚整理中に出てきたもんだから
さあ大変。読み途中の本をやっぱり放り出し、夢中になって再読。
何が心に残ってるって、
受けさんが自分の感情を自覚するシーン。
未来想像図として構築している「自分の家」に攻めさんがいる と認識するシーン。
自分の家 に 誰がいるか、帰ると誰がいるか、誰が待っているか
そして、待っていてもらえることを嬉しく思えるか。
家って、とても重要なファクターなんだなあ
とつくづく思った作品でした。
この作品ととてもあった絵で、好き~ ってわけではなかったですが
存在を強く認識していた 当作品の絵師様。
まさか二度と新作を拝見できないとは知りませんでした・・・涙。
今更ながらではありますが、素晴らしい絵をありがとうございました。
教えてくださったレビューアの皆様、ありがとうございました。
凪良はコミカル系から入ったので、シリアスは初読。もともとヒューマンな感動物語は苦手なのです。
が、やはり文章力でしょうか、ぐいぐいと読ませますね。サスペンスの趣もあり、ストーリー展開が気になって一気読みでした。
雑誌掲載の中編に続編をつけたような構成。1つ目はハピエンで、これで物語としてはいったん終わったように思います。
恵まれない境遇で詐欺師となった受けを、純朴でまじめな医者が癒やす、という構図。はじめは詐欺とかもだった関係が、攻めの底なしの優しさにだんだんと受けがほだされ、お互いにかえがえのない存在になります。
しかし、こんな自分が幸せになれない。という発想はあまり好きではない。というかリアリティに乏しい。しかし、詐欺を働いている以上、身をあかせず本当に幸せになれないと感じるのはごく自然な流れでした。
最終的に受けがいい人になるのは気分がよいです。ただ、現実には、こういう境遇で詐欺師になった人間が、こんなにピュアなままいるのだろうかという疑問はついてまわりました。
映画のような、出所シーンはよかったですね。
時折みせる、優しい責めの強引さが魅力的です。
結果的にぐいぐい、すいすいと読ませてくれたのでよかったですが、大感動というわけではなかった。
続編は同性愛の悩みをテーマとしつつ、明るいテイストを工夫されたというのがよく分かって、女性の登場など脇役も絡んで面白かったと思います。
ただ、バイト先と、仲良くしていたおばあさんとの関係が悲しいまま終わってしまったのは残念でした。
凪良ゆうさんの作品には毎回泣かされています。また、タイトルも秀逸で読んだ後に“あぁ、これはそういう意味なんだ”と納得させられます。
ただ重ねただけの積木は、ほんの少しの衝撃で崩れてしまう。幸せをひとつひとつ積み上げていっても明日になれば、崩れてしまうかもしれない。そんな不安を抱えながら、これから先も透は生きていくのかなぁ。
透が出所した後に勤めてた定食屋の夫婦、いずれは透のことを受け入れてくれるのだろうと思ったのですが、結局は透の“前科持ち”という事実が障害となってしまったんですね。読んでるときは、なにこの夫婦ムカツク!と感じましたが、悲しいかなこれが現実なんですよね。
聡は聡で両親から透のことを認めてもらえるのには時間がかかりそうですし、その間にもお見合いを勧められたりするでしょう。二人の行く末は様々な困難が待ち受けてるんでしょうけど、力を合わせて乗り越えていってほしいものです。
今回、イラストを描かれて朝南かつみさんという方の絵は凪良さんの書く切ないストーリーにぴったりですね。もう、この方のイラストで凪良さんの作品を見れないのが残念です。
作中、蓮の心情で
「加賀谷との恋人関係が長続きするとは思えない。加賀谷が信用出来ないわけじゃなく、幸せという形の無いものが信用できない」というところ、
悲しいですよね・・・自分を愛してくれている人は信じてるけど、自分に愛してもらうだけの価値がないから、この幸せは続かないって思ってるんです。
だから、加賀谷が自分に興味が無くなった時のダメージが大きくならないように、蓮は自分の中の意地を捨てられません。
頼りすぎて加賀谷に嫌われたくないし、甘えすぎて別れた後に自分独りで立てなくなるのも怖い。だから意地を張ってしまうし、そんな自分に気付いてもどうすればいいのか分かりません。
愛された経験が無いから、愛される自信が無い。自信が無いから、胸の中をさらけ出すような喧嘩も出来ない。ただただ、どうしていいのか分からなくて蓮は強がるしかありません。
ましてや自分は前科持ち。周囲が自分を疑いの目で見るのも仕方が無い、と蓮は思います。周囲の正論がまた自信の無い蓮を追い詰めます。
もう、健気とはちょっと違うけど、全部黙って自分で飲み込んでしまう性分の蓮が悲しいです。
読みながら、こんなに内面のきれいな蓮が、どうして恋愛詐欺師なんかやってたんだ!加賀谷の前にも詐欺を繰返していたはずなのに、引っかかったカモ達は蓮の外側しか見てなかった金を巻き上げられて当然のクズヤロウだー!と叫びたくなりました。
本当に、加賀谷が蓮を愛してくれて良かったと思います。蓮の味方でいてくれて良かったって。
出会いは詐欺師とそのカモだったけど、加賀谷が蓮の内面に惹かれていって、騙されたと知っても蓮を愛してくれたことに、本当に救われました。
あと、掻きまわしてくれた明るい万里にも(笑)
あとがきで凪良さんが書いていらっしゃる、蓮が服役→更生→加賀谷とのハッピー同棲生活!には絶対ならない・・・というより、そんな簡単な話にされなかったところが、この小説の一番の魅力だと思います。
人間そう簡単に変われないよなぁ、だけど変わることを怖がったり諦めたりするのは、まだまだ早いんじゃないの?って読み返すたびに言われてるような気がしています。
人への甘え方
人への心の開き方
喧嘩をした後の仲直りの仕方
こういうこって自然に自分達の身についているものだと思っていましたけど、これらは子供の頃からの経験で身につくものだということに改めて気づかされました。
親の愛も家族愛も知らずに生きてきた蓮。
まるでカタキのように男を騙し、金を騙し取り、でもお金が貯まったら手に入れたいのは家だという。
そんな蓮にカモにされたのは医師の加賀谷。
口下手で不器用だけど、蓮への愛情表現はとてもストレートです。
蓮が加賀谷を騙すためにつく少し真実を含めた嘘を信用して、親身に蓮のことを心配し援助を申し出る加賀谷の態度を見てると、蓮の心の変化も仕方ないと思わされます。
でも、蓮が加賀谷への気持ちを自覚した後の、得も言われぬ罪悪感がすごく切ない。
金を騙し取ることは犯罪で、それは生まれ育った環境なんて言い訳にならない真実なのですが、「好き」という気持ちを知ってしまった蓮の戸惑いと後悔が伝わって本当に胸が苦しくなってしまいました。
この2人の間には常に厳しい現実がつきまといます。
蓮の服役という現実を乗り越えたと思ったら、前科者への偏見との闘いであったり、加賀谷の母親との確執であったり…。
しかも、当の2人の気持ちも微妙にすれ違っているんです。
どちらもが相手を愛し、大切に思っていることは手に取るようにわかるのに、その想いが真っ直ぐに噛み合っていないところが本当に歯がゆい。。
蓮にもっと心を開いて甘えてもらいたいと思う加賀谷と、本当の家族愛を知らずに育ちうまく甘えることもできない蓮。
いつか終わりが来てしまうんじゃないかという不安も蓮が素直になれない要因の一つなのですが。。
喧嘩をするほど仲がいいといいますが、喧嘩をして本音をぶつけ合って乗り越えていくことってありますよね。
この2人なら、そのような経験を積み上げて行って本物の恋人且つ家族になっていくんだなぁと思います。
何があっても決して離れない。
そういう強い愛と意思が感じられるところがすごく素敵だと思いました。
こんな2人の関係、大好きです。
最後に、加賀谷目線の書き下ろしがすーっごく良かった!
蓮が幼いころもらえなかった幸せを、できるかぎりあげよう。
その確かな幸せが彼を笑顔にしてくれたら、それだけできっと僕も幸せだろうから。
この加賀谷の気持ちを知ることができただけで、私も幸せな気持ちになれました。
脆くて崩れやすいかもしれないけど、1つ1つ積み上げていく恋。
秀逸ですね。
凪良さんの小説は、勿論BLで濡れ場もありますが、テーマは「居場所」なのではないかと毎回思います。
このお話もそうでした。
主人公の詐欺師が本当に欲しいものは、「家」。建物という意味だけではなく、自分を受け入れてくれる人と場所という意味で。
カモにしようとしていた男に恋をして、初めて自分の罪に気付くあたりがとても好きです。
罪を償った後、前科持ちの蓮に世間は冷たいけれど、加賀谷という居場所を手に入れました。
凪良さんの話は、どんな展開でも救いがあるので安心して読めます。
イラストレーターさんは全く詳しくないので知らなかったのですが、挿絵の方は亡くなられたのですね。残念です。
恵まれない生い立ちから恋愛詐欺師として生計を立てている受けと、総合病院の長男でお金持ちで何不自由なく暮らしている攻め。生きてきた環境が真逆のふたりが出会い、人間不信の受けが真面目で心優しい攻めに少しずつ心を開いていく物語です。
受けの蓮がカモにしていた加賀谷のことを心から好きだと感じたとき、受けは初めて今まで他人の気持ちを弄び騙して犯してきた罪の重さに気付くんですね。私は人間の弱い部分、醜い部分を描きつつ、あたたかい部分で救済していく、凪良さんの文章がすごく好きです。
詐欺容疑で逮捕されて、二年という長い年月を経て結ばれたふたり。何度も何度も積み上げて、時折崩れることもあったけど、それでもあきらめずに時間をかけて積んだ恋が実り、本当に幸せになってくれて良かったです。
とてもいい話でした。
評判が良くて表紙の絵にも惹かれたのですが、あらすじを読むとなんだか暗くて痛そうな話だなと思ったらなかなか手が出ませんでしたが、もっと早く読めばよかったと思いました。
貧しく親からの愛情もなく人は裏切るものだと思って生きてきた蓮。
やがて、自分が貧しくて苦労しているのは誰かが奪っているからだと考えるようになり、ならば返してもらってもいいはずと、騙して奪っていつか自分の家を買うことを目標に生きてきた。
今度蓮が目をつけた加賀谷は人のいい大病院の長男。
入院していた母親の治療費の借金のためにバイトを掛け持ちしているというかわいそうな身の上話を信じて、返済のために金を与えてしまう。
初めはお金をだまし取ったらさっさと消えるはずが、忙しい加賀谷のマンションに通い家事をすることに。
そして、だましているのが心苦しくなった時、加賀谷の隠していた秘密を知ることになる。加賀谷への想いを自覚したと同時に自分のことを思っていないのだと分かってしまった。
そして、もう二度と会わないと決めてマンションを出て帰宅したところを過去に騙した男から訴えられ詐欺容疑で警察に連れて行かれてしまうのです。
2年の刑期ののち、出所した蓮を迎える人も家もないと知っていながらも寂しい気持ちで歩いていく場面が切なかったです。
そんな蓮を加賀谷が呼び止めてくれて泣きそうになりました。
加賀谷の2年間の葛藤や想い、蓮の素直になれない気持ちが分かり合えたらいいと思いました。
後日談の短編が2作あります。
1作は本編終了から1か月後くらい。
クリスマスプレゼントが買いたくてアルバイトを始める蓮。
前科者であることと加賀谷を騙していたことで心を開ききれないまま。
遠慮やこの幸せが長く続くわけがないという諦めで内向的かつ自虐的。
レストランの店主夫婦の偏見が哀しかった。
前科者だということで怯えたり疑いの目で見るばかり。
給与の不払いはいけませんね。疑いはあってもまじめに働いていた青年に即刻クビ&給与不払いはあまりにひどい。いくら本人がいらないと言っても。
世間の目は前科があればいくら償っても厳しいものだという現実があっても、その部分はきちんと希望のある終わり方にしてほしかったです。
親切を詐欺の準備ととらえた若夫婦はともかく老人にはもう少し人を見る目があればよかったのにね。
万理といういい友人ができたことは僥倖でしたが、この先に多々あろう障害には負けずに乗り越えてほしいと思わずにはいられませんでした。
そして、ひとつひとつ乗り越えるごとに絆が強くなることでしょう。
朝南さんのイラストはカバー絵はもちろん中の挿絵も素晴らしい物ばかりでした。
綺麗で気が強くプライドの高そうな蓮も、人が良さ気な優しそうな加賀谷もイメージ通りのイラストでした。
以前の作品で見るたびに新たな作品ではお目にかかれないのだと残念に思います。
不幸キャラを書かせたら右に出るものはいない凪良さん。今回の主人公はオトコ相手の恋愛詐欺師。需要あんの?それ?と思わず突っ込まずにいられませんでした。ストーリーとしては、どんでん返しもなく安心して読めた。かもにしていた病院の長男、加賀谷のひたむきさにほだされ、ミイラ取りがミイラになる受けのの図。まあ、そうなるよね。うんうん。
一見、控えめに見える加賀谷が、蓮に見せる執着がよかった。
「君になら何度だまされても構わない。君が好きなんです。もうどうしようもない」
「僕は君を愛しています。今度こそ、さらってでも放しません」
いいですねえ。たぶん、蓮は、ここまで同じ人を思ったことはないだろうし、欲しいと思った人に欲しがられたこともなかったんだと思う。本当に欲しかったものが手に入ることって、やっぱりいくつになっても嬉しいもんなあ。
その後も、無くしてしまう怖さから、なかなか加賀谷に甘えられない蓮だったけど、ケンカして、セックスして、来年の約束をして、すこしづつ距離を縮めていく二人がよかった。加賀谷の「家族になるんです、僕たち」というセリフもよかった。
あとがきで先生が書いていた通りまさに積み木のような話だな、と思いました。
今まで蓮が積み重ねてきたもの、その土台は脆く、一瞬でがらがらと崩れ落ちてしまう。
でも崩れたってそこで終わりじゃない。
加賀谷の存在のおかげでまた一から積み重ねていくことができる。
攻めの加賀谷がとても完璧な男というわけではなくて、金はあるけど冴えない退屈な男なところが人間くさくて良い。
家を持ちたいという蓮のささやかな願いを叶え、さらに満たしていこうとする、空っぽだった蓮の部屋や心が幸せでいっぱいになっていけばいいな。
思ってたほど重い話ではなくクーや万里も可愛くて読みやすい作品でした。
BLと言っても、ちょっと犯罪がらみの考えさせられる内容でした。
たしかに蓮は詐欺師で決して褒められたことではないのだけど
それまでの生い立ちを知ると、蓮ばかりを攻められないとちょっとだけ思ったり。
みなさんレビューで書かれていますが、タイトルがいいですね。
積み木という言葉でいろいろな発想が生まれる。
単純に考えればこどものおもちゃなのに、すごく意味深い。
「恋愛詐欺師」よりいいと思いました。
最初は騙して搾り取るだけ搾り取ってやると意気込んでいた蓮だけど
少しづつ少しづつ、蓮の心の中に聡が入り込んできて
いつの間にか、ホントにいつのまにか聡でいっぱいになってた。
服役して塀の外に出たときに、そこに聡がいて・・・
蓮よりも読んでる私が泣きました。
前科と言う消したくても消せないもの。忘れたくても忘れられない過去。
忘れてはいけない真実。
いろんなことが蓮を追い詰めていくけど
近くに愛する聡がいることで、がんばれる乗り越えられると思いながらも
どうしても崩しきれない壁があって、その壁を二人で時間かけて崩していく。
そう二人で約束する・・・何年も何十年もかけて。
それが二人の愛の形なのかな・・・
一度犯罪者と言うレッテルを貼られたものは、更生してもその先の人生を
どんなに真っ当に頑張って生きて行っても
世の中には蓮のような人間を、よく思わない人もいて
そんな現実にぶち当たって、それもやっぱり二人で乗り越えていく。
蓮にとって、聡と出会ったことが今までのどん底人生の中で
一番のラッキーポイント、こんな蓮のことをすべて受け止めてくれるのは
すべて受け入れて愛してくれるのは、世界広しとも聡だけ。
庭付き一戸建てではなくても、聡と一緒にクーもいて
夢が1つ叶った蓮に良かったね・・・人生まだまだ捨てたもんじゃない
って言ってあげたくなりました。
何もかもすべてうまくいって終わるというわけでなく、あ、主人公とその相手との関係はうまくいくんだけど。
周りの環境が。
バイト先の嫁さんのお母さんがあのおばあちゃんだったと出てきた時はもしかして、警戒心がとけて仲良くなれるのかと思いきや、余計に警戒心を増幅させてしまってバイトも解雇されちゃうとか。
甘くないんだなって。
後書きやレビューにもあった、タイトルの積木、ひとつひとつ積み上げていくってのがいい( ;∀;)
崩れるイメージのが強いと思うけど、その逆っていうのがこの本にぴったりだった。
当初の恋愛詐欺師というタイトルよりいいなと思った。
愛によく似たものが降ってくる灰色の空を見上げた―
本編の最後に二人が結ばれる場面で、それでもなお、「愛」を溶けてなくなる雪に例える蓮(受)が非常に切なく、愛しく感じました。
加賀谷(攻)のような、馬鹿がつくほど誠実な人間に惹かれる反面、どうしようもなく劣等感を掻き立てられる蓮の心境がよく分かり、私は終始、蓮に肩入れしながら読みました。
加賀谷が蓮に惹かれた切っ掛けが、長年の片思いの相手と蓮の容姿が瓜二つだったからだということが後から分かり、やや私の地雷設定ではありましたが、加賀谷の弁明にもあるとおり、それはほんの些細な切っ掛けだったのだなと思わせる程度だったので、さほど気にはなりませんでした。
番外のChristmas Bookでは、蓮がアルバイトを不当解雇されたことや、おばあさんへの親切心を疑われたことへのフォローがなく、後味の悪い話でしたが、そこが逆に、リアルな展開で良かったと思います。
蓮がアルバイトをしていた理由が自分のためだったと知り、加賀谷が嬉し涙を浮かべる場面では、加賀谷の愛情の深さを知り、他人と口論になることを恐れ、自分の考えを心に押し込めてきた蓮が、生まれてはじめて自らの望みを口にします。
二つ目の番外New year's Bookは加賀谷視点の甘々なお話で、これまでのストーリーの重たい雰囲気をうまく緩和しています。
ひとつ目の番外に出てきた百合カップルも再登場して、蓮が前科持ちだと知ってもなお、偏見を持たずに接してくれる友人ができて嬉しく思いました。(私は近所のおばちゃんか…)
見所は着物Hでしょうか。
何よりこの作品を読んで、普通のHに激しく萌えた自分に愕然としました。
そこそこ長くBLを読んでいると、色々ありますものね…。
ストーリーは勿論のこと、大好きな穏やか攻め×美人受けということも相まって、神評価です。
タイトルからいって切なそうですよね。
凪良さんのこの作品は、挿絵の朝南さんのご不幸と合間って、よく色々なところで目にしましたが、なかなか踏ん切りがつかずにズルズルと。
なので、やっと読むことが出来ました。
受けの蓮は美しく目立つ容姿を利用し恋愛詐欺を繰り返す、21歳。
中学卒業と同時に施設を飛び出し、今に至ります。
攻めの加賀谷は、平凡で生真面目そうな風貌。
実家は総合病院という環境に恵まれた医師で、32歳。
蓮は幼少時代の教訓から、人を信じず、無闇に必要とせず、生きてきました。
加賀谷とも、いいカモだというくらいの出会い。
本編だけだと120ページほどしかないため、ひじょうに短いです。
その間に騙して、惹かれて、逮捕されて、服役してと駆け足です。
ただ、騙した後に惹かれていくさまにページがさかれているので、いきなりな感じはありません。
蓮の心の変化をくどくどと語ることよりも、細かい背景の描写で表現されていて、素直に心に染み込んできます。
本編とSSが二本のこの作品。
最後のSSだけ、加賀谷視点です。
二本のSSがあって、はじめてふたりが心から結ばれたと納得できます。
地味な作品だと思いますが、小さな幸せを喜べるのがすごく良かったです。
そしてやっぱり朝南さんのイラストは美しいです。
もう新しいものが見れないなんて本当に残念です。
バーでじっと蓮のことを見つめる加賀谷は、このときすでに蓮のターゲットになってしまいます。蓮は恋愛詐欺師で、裕福な男性からお金を巻き上げるのです。
母の残した借金があると古典的な嘘をつき、お金をだまし取る。体は感じても、本当に嬉しいわけではないのです。
ところが、加賀谷の方から、自分のマンションのハウスキーパーをお願いしてきます。恋愛詐欺師とターゲットとの奇妙な同居生活の中、加賀谷は蓮にそっとキスしてきます。
ずっと蓮をだましているのに、相手はどんどん本気になっていくのです。
やがて蓮はその他の余罪も含めて逮捕されてしまいます。刑務所での刑期を終えたとき、加賀谷は「ではもう一度僕を騙してください。」と言うのです。すべてを知った上でもう一度加賀谷からやり直したいというのです。
ちょっと重い設定かなと思っていたとき、もう一度騙して欲しいとの、プロポーズに似た台詞にぐっときました。蓮は自分の犯してしまった罪を抱えながら生きていくのですが、どうしても加賀谷のほうが大人で、暴れる受けを大人しく手なずける攻めに思えました。
恋愛詐欺師な主人公・透(仮名:蓮)と有名な病院の長男である攻め・加賀谷の切なくてあたたかいおはなし。
透はよくいる性悪な主人公かと思いきや、おはなしが進んでいくにつれて愛に飢えている可哀想な少年だということが分かりました(それでも詐欺はダメですけどね!)。
加賀谷はどこまでもお人好しで、優しくて、透が唯一騙したくないと思い、好きになってしまったカモです。
犯罪者が主人公というのはよくあるのですが、クリスマス番外編の、罪を償った彼が社会に出ていく話がとても心に響きました。
当たり前のことなのですが、前科持ちというだけで色眼鏡で見られてしまう透に自業自得だと思う反面、哀れに感じてしまいます。
凪良先生の繊細な文章も相俟って、本編よりも胸が締め付けられるおはなしでした。
また、朝南先生のイラストが小説の雰囲気にとてもあっていて素敵でした~!
表紙に惹かれて(あと作家さん買い)買った本だったので、挿し絵にいちいちトキメイてしまいました。
余談ですが、作中に出てくる東山魁夷先生が大好きな画家さんだったので変に興奮してしまいました(笑)
表紙の白い馬はなんなんだろう…と思っていたのですが、あれは東山先生の絵の中の白い馬だったんですね~。
詐欺師(蓮)がカモ(加賀谷)相手に本気になってしまうというありがちな話でしたが心の変化が丁寧に描かれていて良かった。
互いに不器用でコミュニケーション下手。
出所する蓮を迎えに行き、逃げようとする蓮をバスから引きずりおろした加賀谷はよくやってくれました(笑)
後日談は、クリスマスと加賀谷視点のお正月の話。
一緒に暮らしはじめても幸せになることに臆病な蓮を根気よく愛し続ける加賀谷に安心しました。
万里と蓮のコンビもなかなか良かった(笑)
そして、挿絵の朝南さん・・・とても残念です。ご冥福をお祈りいたします。
何が泣けるって詐欺師をしている蓮の唯一の願いが、いつかどんなに小さくても田舎でもいいから自分の家を持ってそこで犬と暮らすって、もうその夢に出だしから涙。
罪を償って受け入れられた後も、何も欲しがらず一人で立とうとする健気さが歯痒く泣ける。
きっと幸せな環境で素直になれたら、加賀谷さんが困っちゃうくらいもっとかわいくなるんだろうなと思う。
暗い話が苦手なので、あらすじを見てちょっと躊躇してたのですが、最後はあったかい気持ちになります。
ひとつひとつ積み重ねた積木が崩れ、また重ねられる再生の話。
泣いたー(*TДT*)
胸がしめつけられ、喉がくぅぅっ!となること数知れず。
3部に分かれていて、1部は本当の始まりへのスタートライン、2部は二人三脚のぎこちなさ、3部はゴールへと顔を上げる明るさ。
2部のクリスマスの話が特に好きです。
始めることより続けることの方がうんと難しい。
キラキラした光は翳りをも映します。
そんなに世の中、甘くないし、都合よくいかないよ…だけど、さ?
その、『だけど、さ?』に続く部分が描かれています。
笑顔になれるような。
……………………
待って待って待ち続けて…諦めて…そして男性相手の恋愛詐欺師になった。
そんな透と、そのカモとして選別された加賀谷。
透が待ち続けていたのは『愛されている実感』という盾。
その盾を幼年期に保護者(母親)から受け取ることしかできなかった透は常に北風にさらされて生きてきました。
嘘という堅く乾ききった幹の根元に染み込むような加賀谷の柔らかい想い。
頑なでイラついていた透が潤い、緩む…それが初めての恋だと自覚する戸惑いが切ないです。
小さい頃から諦めるばかりで望むことすら諦めてきた不器用な透は問題から逃げることが癖になっています。
そんな透に説明下手の加賀谷が立ち止まって向き合い、ふたりで辿り着こうと諭す姿が残り火みたいに読む側をあたためてくれます。
根を張り幹を伝い枝葉が伸びるように広がる家族。
ゲイカップルである限り家系を紡ぐのは難しい。
でも【家庭】なら【家族】なら築けます。
環境の違いこそあれ【あたたかい家庭】というものに恵まれなかった彼らは少しずつ心を通わせ季節を重ねて【ふたりの家庭】を熟成していくのでしょう。
朝南かつみさんの描かれている表紙の背中合わせのふたり。
読んでいる最中は向き合うことを怯えているように見えましたが、読後に見ると安心します。
背中をあずけるって相手を信頼していないとできないことだもの。
泣きました。もう、号泣です。すごく良い場面だから集中して読みたいのに、涙と鼻水が止まらなくて。何度も中断しながらやっと読み終えました。
読み終えた後に自分の横を見るとティッシュの山が(笑)
大体いつもこれは泣いちゃうだろうなっていうものは覚悟して挑むんですが、覚悟したところで結局涙をセーブできるわけもなく。
1番好きなシーンは、蓮の誕生日のところから1話ラストまで全部です。蓮の描いた理想の未来。田舎の庭付きの家と、雑種の犬、そして……ああ切ない。
懲役2年の刑務所での生活は淡々と描かれていながらも、加賀谷への変わることのない想いだけがすごく強くて。切なくて胸がギューっとしめつけられました。
出所日の展開は予想しててもやっぱり泣いちゃいましたね。
加賀谷がまた良いんですよ!全ての行動、言動が理想的すぎる。
蓮を絶対に離すまいという執念。いや愛ですね。素晴らしいです。
2話目は、観覧車ですべて持っていかれました。「来年も」そして「毎年」この言葉を蓮が言葉にできたことが嬉しかったです。
良いことがあれば今度は不幸が訪れる、今の幸せはいつか壊れるという不安を常に抱えていた蓮がやっと前を向けた。とても良いシーンでした。
3話目は加賀谷視点。とにかく蓮への愛に溢れてます。
着物エッチ萌えました!クーちゃんを別の部屋にわざわざ移すところが加賀谷らしい(笑)
本当に読んで良かったです。朝南さんのイラストも素晴らしい!
読んだ後に幸せな気持ちになれる素敵な作品。
ハッピーエンドになる、落ち着いた恋愛物。
過激な神評価作品と言うより、今後、BLのスタンダードとして、安心してお勧めできる作品として長く残って欲しい本。
恋愛物語の基本構成をきっちり押さえ、
出会って、
恋するようになるのだけど、
その出会い方に問題があって、
別れがあって、
再会して、
再び愛し合うようになって、
一緒に暮らして、
心のすれ違いがあって、
それを乗り越えて
二人で過ごしていく将来を認める。
3部構成で、最後のパートで視点が変わって、激甘後日談がついてくるところも、
作中に登場するアイテムを上手く取り入れた表紙のイラストもパーフェクト。
評価の高さからも、ずっと、読もうと思っていたのですが、
きっと泣けるだろうな・・・
沁みるだろうな・・・と思い
読むタイミングを図り、待ってしまいました。
読んでみて、
ゆっくり沁みてくる世界観に感じるせいか、
一字一句を読みながら、漂うような気持ちで読めました。
男専門の恋愛詐欺師である蓮とそのカモとなった
総合病院の長男加賀屋の物語。
騙しているのに、常に誠実な加賀屋に対して、
蓮は、今まで思わなかった罪悪感を感じてしまう。
加賀屋だけは、騙したくない。そんな思いにとらわれてしまう。
でも、今までの犯歴から逮捕されることで、
加賀屋に詐欺で近づいたことがバレてしまう。
蓮の考え方。
自分が恵まれて育ってこなかった。
恵まれ、お金の心配も無く生きている人を騙してお金をかすめ取るのは、
「返してもらうこと」と考えるのが、心が痛くなりました。
本来であれば、ダメな考え方かもしれませんが、
「そうか」と思わされました。
こういった蓮の考え方が丁寧に書かれていることが、
本作を沁みる本に成し得ていると思います。
人の優しさ、暖かさ、愛を知らない受が、目いっぱい愛されて~なお話。
各地で評価が良かった作品なので、読みたいな~読みたいなぁ
と常々思っていた作品のひとつでした。
面白かった。
男相手の恋愛詐欺。
いつものようにお金を巻き上げて、おさらばする予定が
これでもか!これでもか!と優しさに漬けられて最終落とされてしまうというな。
でもな、こういう子が愛されて、甘やかされてふやふやにされるって話。
きらいじゃないです。
これまでなかったぶん、相手になにか返せないか、返したい。
ちょっとでも、とバイトを始めたりする後半。
可愛かった。
というか、子犬と戯れたり~な幸せほっこりなシーン。
思わず気持ち悪い顔でニヤケてしまいました+( ノ∀`)ポッ.+゚
そんなん見たら、攻じゃないが、甘やかしたいっちゅーねん。
むしろ閉じ込めてしまいたいwwww
そうバイト!
前科もち~ということでなエピソード。
ちょっとつらかったですね。
うんうん。
ばあちゃんとのホッコリなお話もなかなかに好きだったんだけど。
というか・・というかですよ。
結局のところ私がひっかかっているのは、そのばあちゃんとの話が結局なにもフォロー無いのかなと。
幸せこれからもハッピーなエンドはすごく良かったんだけど
最終的に、ばあちゃんとはあれでお別れなの?
むしろいつも娘にあたまが上がらないみたいなばあちゃんだけど
ここはビシっと娘にでも・・と思ってしまったのは
私のエゴでしょうか。
ホッコリあたたかいお話。だけど、そういうちょっと細かいところが気になってしまいました。
追伸。友人にこの読後話をしてました
「え?その攻って豹変するのよね?」
・・・・・・・しなかったのが凄いwといまさらww
この作家さんの作品は、好きなものと受け付けられないものとぱっきり分かれます私。
すごくグッとくるお話もあれば、ええ~(´Д`|||) 無理~みたいなのと。だけど一貫してるのは、焦れったい進行…
先がどうなるのか気になって気になって、おかげでどの作品も一気読みをせずにはいられず寝不足必至です。寝る前に読むからだよね。
この作品は、淡々としていて派手な展開があるわけではないけれど、惹きこまれてしまいました。
タイトルも簡潔でいて、このお話の全てを表しているとこが素晴らしい!
生まれ育った環境が不遇な蓮は、同性対象の恋愛詐欺師。
カモにした相手は、何不自由なく育ち、立派な地位を確立している加賀谷。この人がまた「金持ち喧嘩せず」の代表みたいな穏やかな人なのです。
生きていくためには、心を固く閉ざすしかなかった蓮なんだけど、加賀谷から受ける誠実な愛によって、ちょっとずつ溶かされていく過程も焦れったい。
加賀谷に恋心を抱いていると自分で気付くまでがまた焦れったい。
だから、どうなるの?どうなるの?となるわけです。うまいなあ。
蓮は自分の想いに気づいたからこそ、これまでの罪に向かい合わないといけなくなる。
嘘をつくことの罪悪感と、そんな自分への嫌悪感。自分の感情を殺して誤魔化し続けることの苦しさ。そういった感情は、大なり小なり誰しもが経験したことがあるんじゃなかろうか。
だもんで、けっこう蓮に感情移入しちゃって、なんとか幸せになってほしいと願いながら読みました。凪良さんだから救いはあると信じながら(笑)
ただ、お話としてはご都合主義な終わり方をしてほしくないという歪んだ読者心理(笑)
なので、これこそがこの二人が進むべきベストな道といった終わり方に、読後感すっでした。
いやあ、泣かされましたッ(´;ω;`)
みなさんおっしゃるように、感動大作で号泣ってんじゃないんですよ。
じんわり、きます。胸の奥に。
あらすじだけ抜き出せば、騙した相手を好きになっての定番もの。
展開だって、とりたてて目新しい部分もない。
それでいて、泣けます。
凪良さんの文章のうまさ、読者の掴み方のうまさを堪能できる一作だと思います!
脇役もいい人ばっかりじゃないんですよネ。
そこがまた泣ける。。。。
透が誤解されて仕事辞めたシーン、おばあちゃんの家に行けなくなったシーン、悲しかった。
だっておばあちゃんきっと待ってるよッ!
最後まで読んで、ようやく二人の幸せな未来を実感できましたッ!
いいお話でした!
イラストがまたストーリーにぴったり合っててヨカッタです♪
今までなんとなく敬遠してきたBL小説ですが
もう何で今まで読まなかった!と思わざるを得ないくらい積木の恋良かったです。
性悪な受けが読みたくて本作を読むに至ったのですが、正直性悪成分は前半でなくなります。
それでも一番素直な蓮の気持ちや、それを受け止めたい加賀谷の葛藤
すべてが本当に良くて、感動も萌えもありました。
これから先も二人暮らしていくんだなあ、と簡単に想像できて、でもその続きを見たいなあと思います。
個人的に、蓮が恋を自覚する過程が一番の見所だと思っています。
お互いに依存気味な関係ってやっぱりいい。
こちらのサイトで評価が良かったので、初めて購入した作家さんでした。
表紙も綺麗でとても今風だったので、期待せずに読み始めました(ごめんなさい)。
1話目(蓮視点)は「まぁ、そうならなきゃBLとして成立しないよね」ぐらいにしか思わなかったのですが。
2話目(蓮視点)は、どちらの言い分もよく分かる。染み付いた不幸体質のせいでマイナス思考から抜け出せない蓮の気持ちも、甘えてもくれない・本音も見せない恋人に対する加賀谷の淋しさも。
無欲であることで自分を保とうとする蓮が、クリスマスの夜に加賀谷へ欲したものは、それを願うことすらも蓮にとっては怖いことだったんだろうと思います。
でも、蓮はそれを言葉にして伝えるほどに強く望んだ。それは蓮にとってさぞ勇気の要ることだったんだろうなぁ、と思うと、思わずほろりときてしまいました。
3話目に加賀谷視点を持ってきたことで、1話&2話の蓮の切なさがすべて報われたような気がします。
加賀谷がプレゼントを贈ろうと思った経緯や想い・願いに、加賀谷の静かだけれど深くて揺るがない想いをひしひしと感じました。
決して大号泣するような、派手な作品ではありません。
しかし読了後、温かくて心地の良いものがじわじわと心に沁みてきます。
それは日に日に大きくなり、気がつけばこの本を手にとって読み返してしまいます。
まさに表紙イラストのように、ゆっくりと水面に広がる波紋のような、灰色の空に静かに降り積もる雪のような、そんな癖になる本です。
蓮はあんまり自分の感情を出さないし、加賀谷もすごく穏やか。
そんな2人なので話が淡々と進んでくなーって印象でした。話としてはおもしろいし嫌いじゃないんですが、この2人の性格のせいでしょうか?あまり入り込めなかった…
あと加賀谷のお見合い相手の女性がレズっていう設定は話がうまくできすぎてて違和感があります。別にレズじゃなくてもよかったんじゃないかなぁ(●´`●)
でも話としては前科のある蓮がなにか悪いことをしようとしてるんじゃないかと疑われてバイトをクビになったり、それを隠したことが原因で加賀谷とけんかになったりと、甘いだけでなく前科をもった者に対する社会の厳しさも書いてあるのはうまいバランスだなぁと思います。
話題の作品、ということで手にしました。
本編とその後のお話2作の3作からなるこの作品、本編を読んだあと、ものすごく読みやすく、分かりやすい心理とお話の流れに、純愛があいまって・・・すごくよくできたお話だな、と思い、がっくりしました。
やさぐれた大人にはできすぎたお話で、ダークな過去とかやってきたことにもそれなりの制裁をたたきつけられる、などいろいろあるのですが、美しくまとまりすぎて、痛感が痛感として伝わらなかったです。はっきり言って以前も、あちこちで話題になった作品を読んだ時、同じ感想で「めっちゃハズした・・」と後悔したことを思い出しました。そして、世間一般に親しまれている作品は、ひねくれやさぐれ大人な自分には向いていないんだな、と虚しく思ったんです。
それが、その後の2話を読んで、「あれ、あれ??」という間に虚しさが埋められ、最後には、ほっこりとして読了している自分がいました。なんというか、本編はグレーのイメージだけだったのが、どんどん色を足してゆくような。久しぶりに、もう一度はじめから全部、読み返したい、と思える本に出会えました。
あまりにも美しい表紙に思わず、ジャケット買いしてしましました。
最近、気が付くといつも朝南さんの表紙でジャケ買いしている…
普段はジャケ買いはあまりしないのですが。
白馬が東山魁夷みたいだなあとうっとりしていましたら。
中味を読んでお楽しみください。
とても好感のもてるお話だなあとおもいました。
あまりにも主人公に都合の良いお話だと、読後にすこし気持ちが萎えることもあるのですが、このお話はそのあたりがとても真っ当で。
静かに進んでいく二人の距離や世界との関わり合い方に、この表紙がとてもピッタリです。
この二人のお話、もう少し読んでみたいなとおもいました。
読み終わって、ラブラブハッピーエンドってイメージじゃないけど
今後もきっと二人で積み木を積み上げて行くんだろうなぁ~って
良い感じの余韻が残るお話だったと思います。
不幸な境遇から詐欺師になった受け様と凡庸な攻め様。
考えも、環境も何もかもが正反対みたいな二人の恋愛は
少しずつ進んで行きますがモヤモヤする事も無く読んでるとのめり込みます。
前半ではお互いが相手に対して秘密があるのですが、
受け様はもちろんサイアクな詐欺師ですがいつの間にかカモだった
攻め様に心を囚われてしまい好きな事を自覚して苦悩する姿は
同情すら沸き起こるから不思議、凪良先生マジック!
攻め様の秘密は長年片思いの人と受け様が似ている事で
好きになってしまった受け様にとってはかなりの痛手です。
攻め様自身もその事を打ち明ける事が出来なかったのですが
受け様は偶然知ってしまい・・・
罪を償うための2年の歳月が過ぎ、再会をする二人。
受け様は攻め様から逃げようとしますが攻め様の必死の願いに
心を打たれ共に暮らす事になります。
お互いの気持ちが通じ合ったからハッピーへ!なんて簡単には行きません。
どこか頑ななまでに攻め様に甘えないようにしている受け様。
それが分かっているのにどうする事も出来ずに焦れている攻め様。
受け様の心の闇の深さが見えるようでした。
世間の冷たい冷遇も、仕方ないみたいな受け様の様子は痛々しいです。
幸せな事に不慣れな受け様を攻め様が焦らず見守る姿もあり
だけど、焦れすぎて初めて喧嘩をしてみたり、
そしてまた二人の距離が近づいて行く。
本当に積み木を積んで崩れそうになったら今度はもっと頑丈に
二人で積み上げていく=恋人として家族としての暮らしを的確に
表しているようなタイトルに納得の作品でした。
心に残る情緒的なお話で、とても素敵でした。
男相手の恋愛詐欺師の蓮(受け)とお坊ちゃま育ちの加賀谷(攻め、年上)。
よみはじめてすぐ、「ああ、こりゃーよくある展開にしかならないだろう、どう読ませるかだな」と作者のお手並み拝見な気分になってしまいました。
あらすじはぶきます、ほかの方が上手に書いてらっしゃるし。
読んでいって、「フツウ」な感じがして。ええ~、凪良先生だろう(期待したのに)…、と思って、途中であとがきを読むと、雑誌掲載の初期作品、プロになって2作目の作品だとのこと。それでは型にはまってても無理ないわ、とおもいましたが、
それでも…キラキラと光るようなエピソードや、表現のうまさで読ませてくれました。
こと、2話目や3話目が再読できました。
ベタに切ない(いじらしい)(泣ける)部分と、現実の厳しさをバランスを崩さない程度に描かれていて、気持ちが冷めることがなかったです。
連(透)の過去にしろ、ヘタに書いたらベタ過ぎて陳腐で読めないくらいなのに、さらっと踏み込みすぎない程度で。うまいなあ、とおもいます。
3話目に関しては攻め視点がうれしい、というわたしの趣味かもですが、
「単にいい人」のようだった攻めの、内面が描かれることで肉付けされた気もしてよかったと思います。
カレンダーや仔犬といった小道具も切なさを盛り上げ、あざとすぎず、甘すぎず。全体に地味な印象の作品ながら、わたしは気持ちよく泣けました。
攻めに関し、おばっちゃまのイメージと母親にビシビシ言うイメージとが多少重なりあわなかった…人物造形をあと少し、掘り下げて、わかりやすく読者に見せてほしかったな、とは思いました。
無条件で作家買いしてます。今回もよかった・・・
発売を楽しみにしていましたが期待通りでした!
男専門の恋愛詐欺師の蓮(本名・透)が
狙った獲物の加賀谷に次第に惹かれていくという
よくある内容なんですが、そこは凪良先生。
蓮(受)の恵まれなかった生い立ちからによる人間への不信感や、
その不信感と加賀谷(攻)へ気持ちの葛藤などの心理描写が
上手いこと書かれていてしっかりと読ませてくれます。
3話構成で、1話と2話が蓮視点で3話が加賀谷視点です。
この蓮がまた可哀想で可愛いんですよ~
父親はわからず、母親には捨てられ、
親戚にも見捨てられ家族というものに恵まれなかった蓮。
人間不信の蓮にとって加賀谷の真っ直ぐで真面目な愛情や、
彼に対する感情は全部初めてのものだったんですね。
加賀谷に恋をして、彼を不幸にしたくないと思う蓮が
とっても切ないです。
蓮が服役を経て、想いが通じ合って同棲を始めてからも、
幸せをかみしめつつも、いつか終わりが来るんじゃないかと
考えています。
不安でもそれを口に出来ない蓮に加賀谷も歯がゆさを
感じます。
やっと決まった仕事先でも、前科持ちというハンデから生じた誤解から
解雇されたことを打ち明けなかったことからケンカになりますが
ここも切なくてうるうるしました。
凪良作品には必要以上に泣かされます・・・。
3話目の加賀谷視点では、蓮が今まで手に入れられなかったものを
自分が与えてあげたいという深い愛情が感じられます。ここも感動。
また、着物エチがあるんですが、
加賀谷から贈られた着物を汚したくないと
健気にがんばる蓮に萌えました。
全体的に切ない内容なんですが、読後は
心がほんわかとなる一冊でした。ほんとオススメです。
凪良先生はコメディもいいですが、
ガッツリ切ないのが私は大好きです。一生付いていきます。
来月も新刊出されるっぽい?ですが、
今から心待ちにしています!!
今回の凪良作品、しみじみと心に沁み入ってきます。
主人公達は突出した派手なミラクル設定でもなく、とても人間臭いです。
その雰囲気が朝南かつみさんの表紙にも、カラー口絵にもあふれていて、イメージにぴったり。
読み終わったあとに、胸にちょっと重いものが残りながら、彼等の幸せを願わずにいられません。
キャラに萌えるー!とか、このシチュが好き!とか、本当にそういう派手さがないです。
彼等がどういう心の動きをしていくのか、どう思って、どう考えて、
その変化と寄り添いと、すれ違いと、本当に題名通りにまるで不器用な幼児が積木を積み上げて、時々壊してしまって、泣いたり怒ったりしてまた積み上げていく、そんなお話だったのかな?とも思えるのです。
男専門の詐欺を働く透の狙いは当たり、目星をつけていた加賀谷は、まんまと彼の策にはまる。
しかし、透を信じ切って健気に親切にしてくれる彼に透が今まで感じなかった罪悪感が掘り起こされて、彼に気持ちが傾いていることを知った時。
相手に下心や狡気持ちがあれば、詐欺行為を働いてもさほど罪悪感を感じずに済んだのでしょうが、加賀谷は違いました。
純粋に信じて、透を心配して、本当だったらバカだな、と、とっとと捨てられてもいいはずなのに、加賀谷の正直さが透に裏切る気持ちへのためらいをおこさせたんです。
つい、透が話てしまったお金をためてどうしたいのか、何が欲しいのか。
彼は愛情が欲しかったんですよね。
それを具体的に「家」とこたえているのですが、そこにはまぎれもなく、家族や愛があふれているはず。。。と自分はとったのですが。
また加賀谷もその誠実な性格とともに、対人スキルが低く、有名な個人病院の家の長男であるに関わらず、大学の研究室で働いていると言う自分への少しの自信のなさや、ゲイであることのコンプレックス、そして家族愛への飢えも抱えていて、必ずしも透と一緒ではないですが、家族のいる家が欲しいと望む気持ちは一緒だったのかな?と思うのです。
加賀谷は本当に真面目です。
透に声をかけられて誘うきっかけになったのも、実は昔の好きだった人に似ていからと言う、たったそれだけの理由なんですが、ものすごく透に罪悪感を感じるのですから。
この本編のラスト・・・絶望とも希望ともとても複雑な、それでも軽い感動と思わず涙が誘われました。
ということで、その後の二人についてクリスマスとお正月のお話があります。
クリスマスの話はとっても辛かったです。
周囲の偏見がせっかくの透の夢を砕いてしまう。
本当だったら自棄になってもいいところかもしれませんが、彼はそれをごまかそうとして耐えます。
それを黙っていたことを怒る加賀谷。
加賀谷が怒る部分がそこであることに、透の幸せが見えました。
お正月は加賀谷視点です。
これを読むと、透の健気さに、加賀谷の透を想う気持ちに、この一冊の総てが回収されてよかったなーって幸せな気持ちになれます。
加賀谷のお見合いの相手だった女性の存在は、、、あまりつっこまないほうがいいかな?
とにかく、今回もすごく素敵なお話でした!!