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◆こどもの体温(表題作)
BL要素はありませんが、年頃の子供を持つ父親・酒井の目線で、男手ひとつで育てた我が子が持ち帰ってくるトラブルを見守るストーリーに共感しました。私もすっかり、親側に共感する歳になったなぁとしみじみ。子供の愚かさは愛おしくも煩わしくも感じるものですが、結局自分も同じ歳の頃には同じくらい愚かで親を悩ませていたんだよなと。男同士でも手を繋げる酒井親子は、なんだかんだで良い親子関係を築けていて微笑ましかったです。
◆僕の見た風景
酒井父の高校時代の後輩たちの話。この3人の関係性がなんとも切なくて、読み終わった後心がぎゅっとなりました。事故で亡くなった人と、不自由な体になって生き残った人と、事故当日誘いをかけた本人でありながら無傷で生還した人。一体誰が一番辛いでしょうか。本当は比べられるものでもなく、それぞれに別の苦しみがあるはず。もらい事故であるが故に、恨みたくても恨みきることもできない。綾小路と黒田がやっと打ち解けて2人でなんとかやっていけそうじゃないと思ったら、そこで故人への想いが明かされ。でも傷付け合ってようやく得た今の空気は失ってほしくないから、これから何度でもお互いの胸を借り折り合いをつけて、強く生きていってほしいなと思いました。
◆彼は花園で夢を見る(表題作)
異国ものかつ時代ものの作品。大切な人がどんどん亡くなってしまう、自分の元から離れていってしまう運命にある人っていますよね。私はそれを前世の業だなんて思いませんし、不幸が偶然にも重なっただけのはず。でも、当の本人はとてもそんな風には思えないでしょう。男爵のいつも淋しそうな表情が切なかったです。でも、ほんのわずかな間でも本物の恋をした、愛を交わした経験は尊いものだし、別れあれば出会いもあります。独占欲が強くなってもおかしくないのに、最後まで誰も縛ることのなかった彼は、最終的には家族を手に入れました。優しい人柄は必ず報われると信じたくなりますね。