is in you

is in you

is in you
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神87
  • 萌×251
  • 萌31
  • 中立14
  • しゅみじゃない14

--

レビュー数
35
得点
746
評価数
197
平均
3.9 / 5
神率
44.2%
著者
一穂ミチ 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
青石ももこ 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
シリーズ
is in you
発売日
価格
¥590(税抜)  
ISBN
9784344822047

あらすじ

高校時代、大好きで仕方なかった先輩からの想いを拒んでしまった一束。
十三年後、仕事仲間として香港で再会したふたりは…?
(出版社より)

表題作is in you

高校3年生→31才・サラリーマン
高校1年生→29才

その他の収録作品

  • is in me
  • あとがき

レビュー投稿数35

Is in you

高校時代に先輩後輩の関係な2人の再会愛。
一束には、身体的に問題がありそのことがコンプレックスを持っていて、健やかな圭介に憧れや羨望があったのかな?
のびのびしている圭介を眩しい思いで見て少しずつ恋に。
高校時代には上手くいかなくて、途切れた2人の関係が13年後香港での再会。
高校時代の圭介の言葉通りだったのが嬉しかった。
忘れたわけではなくて、2人とも心の箱の中で大事にしていたのだろうと。
他の作中人物もいいキャラでした。
個性的で何かが欠けていて人間らしい。
完璧ではないのが愛せます。
新聞社シリーズ、第一弾、楽しみました

1

至高の”青春”&”働く大人”小説

なんでもっと早くこの本を読まなかったんだろう、と思うほどに心震える一作でした。。読み終わったばかりですが、読後の余韻に浸ってぼうっとしています。

タイトルの「is in you」の意味、そして旧校舎のダイヤル鍵の番号「1997」を圭輔がなぜ当てることができたのか、その数字に隠された意味。
明かされていく秘密(?)にたまらなくワクワク、どきどきしました。

高校時代に出会い、そこから13年という長い年月を経ての、香港での運命的な再会。
一束(いつか)が圭輔の部屋で高校時代の自分の走り書きの紙を見つけるシーン、本当にああ…と胸がいっぱいになって喉から変な声が出そうでした。。
13年の間、どれだけ圭輔が一束のことを忘れられずにいたか。黄色い紙切れの描写からひしひしと伝わってきて、きゅーっとなりました。

最後の圭輔視点のストーリーも、タイトルの”is in me”からして最高だし、内容も言わずもがな、で貪るように読んでしまいました。

大切に読み返したい小説コレクションが増え、嬉しい限りです。

1

高校生の弓削がいい

高校生だった一束がダボダボの服を着ている理由とと水泳と美しい半裸を晒す先輩を見てしまうこと、そうではないかなって思った通りの理由だった
手術するってことは相当深かったってこと
見られたくないの解る
急だったもんね弓削ったら高1の子にそんな、ダメよ

高校生の弓削が本当いい人で、いい子で、好きになっちゃうのも解るし、弓削が一束を好きなのもなんか解って、このなんか解るがこの作者さんのお話を読むときの面白さだなって思った

実家で犬に会わせるって、果たせてよかったな
泳いでるとこ見られてないって、そんな挫折をして欲しくなかったって、泣けるよね

15歳から28歳は体格とか顔つきとか凄く変わるけれど、再会しても好きで良かった

佐伯の嫉妬の発露には驚いた
健康な体とこれからの勢いと、それらを持っていながら素直な性格
何もかもが佐伯を刺激していたのかな
外国語で目の前でやりとりするって、かなりあからさまで幼稚で酷い
年上の人があれやったら尊敬し続けるの難しいだろうな
それだけ一束を好きとかそんな風に思ったとしても無理でしょ

それぞれの思い入れの数字で錠前が開いたのが運命だった
素直に仲良くやってってくれ

0

再会して惹かれ合うのがいい!

高校時代に出会って、互いに気になりながら離れてしまって、大人になって仕事相手として再会。
このシチュエーションだけでも萌えますww

しかも再会相手には恋人がいて、それが男らしくて、男でもいいのかよと、攻めが悶々としたり、受けが高校時代の憧れだった先輩に会えて、また気持ちが再燃したりするところが、とてもドキドキしました。

仕事上での付き合いで、互いに大人になっているところが、またいいですね。
高校時代の気持ちを引きずりつつ、現在の相手を好きになっていく過程が萌えました。

0

簡単に13年を飛び越える想い

一穂先生、当たり外れが激しい、…だけど当たるともう、心が砕け散るくらいグサグサ刺さる物を読ませてくれる、そんな印象の作家さんでした。
けれども、それも最近は良い意味で当てにならなくなってきており、続けざまに当たりばかりを読んでいる感じで嬉しい悲鳴です。

どのお話にも共通しているのが、一穂先生独特の世界観が織り成す文章。
それが飾りすぎていたり、う〜んハマらん、ってなってしまうと、延々と文章に入っていけないんですね。けれど反面、登場人物に少しでも自分と共通する部分があったり、一穂先生が紡ぐ例え話(先生の文章の例えって独特なんですけれど、うん、なんとなく分かる。経験したことある。感じたことある、みたいなことが沢山ありませんか?)が一個でも同じように感じたことがあったりすると、あっという間に世界に引きずり込まれてしまうんですよね。

今作は受けの一束視点で紡がれるお話でしたが、相変わらず作中に漂う水彩みたいなキラキラした雰囲気とそこに交じるガラスの尖ったみたいな痛々しさ、切なさがもう、たまりませんでした。

多分、ここ別に泣かせにきてる訳じゃないんだろうなぁってとこで泣いちゃうんですよね。
一穂先生のお話ってどれもそうなんです。
あれーってとこでもう苦しくて苦しくて仕方なくなる。
不意に琴線に触られまくって感情がぐちゃぐちゃ、みたいな。
けれどそれも不快ではないんですよねぇ。お見事。

作中、一束が
「圭輔は、折れることも曲がることも味わわない人生だと、勝手に思い込んでいた。そうあって欲しかった。
」って思うシーンがあるんですけれど。
全然、多分、泣かせに来てる訳じゃないのにグッときてしまいまして。
こんな風に、嫌味でも妬みでもなく、純粋に、眩しくて大切で切なくて、そんなふうに誰かを思えることってそうそうないんじゃないかなぁ、って思ったら、もうその気持ちだけで胸がいっぱいになってしまって。

「あなたが好きだった。本当に、この世の誰より好きだった。」
そんなこと、思える相手に出会えたこと、そんなふうに、ずっと思い続けて大事に心の奥の奥にしまい続けて、自分を形成するなにかに多大な影響を与える人物に出会えたこと。
そんなの、簡単に13年なんか飛び越えちゃいますよね。

あと、佐伯さん。
正直、off you goでの挿絵が最初どうしても入ってこなくてですね。40代にしては幼いというか。
ひねくれてて素直じゃなくて突っ張ってるだけの人って嫌いですし、口が汚いのも苦手。
なのでこの作品も読む手が進まず、off you goに至っては購入も迷ってたんですね。
けれど再会物で、10代の頃のやり取りとかそういう物が大好きなので今作を読み始めたんですが、その中での佐伯さんがもう。もうもうもう。
なんなのこの人ーーーーー!
大好きなんですけどーーーー
ってなってしまって。
いや〜圧倒的光属性の圭輔を見事に霞ませましたねぇ。
off you goを敬遠してたことを本当に申し訳なく思いました。すぐ買いました。
佐伯さん、天邪鬼で面倒くさくて、一束に良く似てますね。
一束よりもずっとずっと面倒くさくて厄介ですけれど。
一束が言う、「ホンコンフラワーだった。互いが、互いの。」
という言葉が印象的で、心にグサッと刺さるものがありました。
だって3年も一緒に居たんですよ。
でも、お互いがお互いの代替品で偽物で、大事にしてきたのに、本物にはなり得なかった。
そういう関係性とか、一物抱えた感じが、もう、なんとも言えず。

SSでは光属性の圭輔視点でして。これはもう、はっきり言って可愛くて笑っちゃいました。
圭輔はずっと圭輔でいて欲しいなぁ。
相変わらず佐伯さんは意地悪いし。
もう、お見事です。本当に面白かった。
off you goも期待して読みます。

1

一束のコンプレックス

ペーパー・バック(1)を先に読んでしまって、さっぱり意味不明。
それで過去篇の本編を読んだら、面白かった。
発刊順に読まないと、意味がつながらないし、面白さが分からないシリーズだった。
なので、初読み読者の為に合本版を出して欲しい。

構成が独特なのは、推理小説を意識しているからなのかな?
著者は最近、推理小説にも挑んでいるらしいです。https://bit.ly/3F2XTod

ペーパー・バック(1)にある、一束の『恋人を「自分のものにする」ことへの不安』がどこから沸くのかを知ることができた。

・・日本 圭輔x一束
香港に長く住む一束が日本に帰国する
一束は、身体の異形へのコンプレックスがあり、圭輔から寄せられた好意を拒否。
十三年経ても、自分に自信を持てないまま変わらない一束。
そういう陰の魅力に圭輔は惹きこまれたのだと思った。

・・香港 佐伯x一束x圭輔の三人模様。
左遷される上司の憂さ晴らしの標的にされる一束を庇う佐伯。
佐伯は優しい人。
妻にも一束にも、どこまでも庇護者の保護愛から抜け出られない。
妻への満たされない代償が、各地での浮気や遊び。
佐伯は痛みを知る、優しくて、寂しい人だと思った。

---
is in you=「あなたに似合っている」「あなたにピッタリ」
is in me=「私に・・」

---
漏斗胸:胸の前面が陥凹している胸郭の変形 先天性の遺伝的疾患

0

きれいな思い出がしこりになっていたらそれはもう仕方が無い

高校生のときに知り合った二人がすれ違ったまま別れ、13年経って再会するお話。
相変わらず、心理描写が丁寧で、とても読みやすかった。
表題作は一束視点で展開されるため、一束の気持ちに寄り添いながら読むのですが、弓削も同じように屈託を抱えたままであることが、細かな描写から見て取れてドキドキしました。
こんなにきれいな思い出を抱えて宝物のように大切にしていたら、それは何物も太刀打ちできず、気持ちはあっという間に昔に返るだろうと容易に想像できます。
それだけに、一束が佐伯と二人で居る時の複雑な心理も理解できましたし、佐伯が意外にも嫉妬に駆られた行動をとるのにも目が離せなかったです。
個人的には、佐伯のキャラが気に入りました。続巻が楽しみです。

巻末のお話では、弓削の飼い犬(みかん)に一束が話しかけるところがとても可愛らしかったです。
特に、東京弁と大阪弁を聞き分けてますよね、といって広東語で話しかけてみるところ。
見えない物が見えているような不思議ちゃん風でありつつ、なんとも素朴で可愛らしい風情がとてもよかった。
同じ作者の「ふったらどしゃぶり」の半井さんにも少し通じるところがあるなあとか(特に「メロウレイン」の方の半井さんに)。

それにしても、怒濤の広東語と香港の地名。
圧巻でした。尖沙咀をチムサーチョイと読めるようになったのはこの本のおかげです。

0

is in you

なんと素敵なタイトルでしょうか。
読む前も思いましたが、読後振り返ってみるとしみじみとタイトルの意味に心が震えるようなお話でした。

出会って恋に落ちて、しかし学生ならではの未熟さ、言葉の足りなさ、自意識から成就しなかった恋愛が運命に導かれたように再燃、というドラマチックなストーリーで最初から引き込まれました。

アンニュイな受けと、太陽属性の攻め。好きなCPでした。
どちらかに付き合ってる人がいたりと、タイミングの悪さにもどかしさが募る感じもとても良かった。
香港の多湿な空気、夜景なども実際に肌に感じられるようで舞台として高ポイントでした。

攻め目線のお話「is in me」がすごく好きです。
太陽みたいに明るくて前向きな攻めの実は嫉妬深い部分を存分に堪能させていただきました。
実家Hも実にけしからん具合でした!

ただ一つ。
場面が移る時にも行間が空いてないので、続きだと思って読んでたら場面変わってたみたいなパターンが数回あったのが少々残念でした。
電子で読んでるので、紙は違うのかもしれませんが。
とは言え、久しぶりにキュンとキタ作品でしたので神評価です♪

0

ドロドロしててもきれいに見える

個人的に当たり外れがあるけれど、心象風景や比喩表現において作家様の卓越した表現力をリスペクトしています。繊細な作風もすごく好きだし、読むたびに知らない世界を教えてくれるんですよね。うーん、でもキャラやエロでハマる時とそうじゃない時の落差が激しすぎて、正直購入時はどっちの結果となるのかいつもドキドキします。

新聞社シリーズの第1作目。かなり前に『ステノグラフィカ』を読み、シリーズと知りました。お仕事ものが好きなのでシリーズ買いしてみたけれど、本作は受けが苦手でした。それとクセの強い佐伯が…。

香港からの帰国子女、一束と水泳部に所属する先輩、圭輔の再会もの。

二人は高校1年と3年の学年差で出会い、圭輔が卒業してから13年後に香港の明光新聞社支局で再会します。高校時代の二人が少しずつ打ち解けていく様子にめちゃくちゃ萌えたのに、キスシーンから気分的に急降下。以降低空飛行が続いてしまいました。

香港編では現地の人々とのやりとりが広東語でも表記されたり、さりげなくオススメ観光スポットが紹介されたりと臨場感があって楽しめました。その一方、ラブストーリーとしては、マスコミ向けのコーディネーターとして支局部員と共に働く一束が、支局長の佐伯と関係していたことにまず萎え、佐伯の後任として配属された圭輔が二人に煽られて…という展開に完全に打ちのめされてしまいました。出番は少ないのに強烈だった佐伯のせいかな?

一束の、根が優等生のくせに悪ぶりたがるところも、周囲に馴染めないのは自分がその他大勢とは違うからと優越感に浸っているところも、高校生ならしょうがないです。だけど大人になっても自分をぞんざいに扱って強がっているように見えるのは、失恋の痛みから抜けだせていなかったからとわかると、急にヘタレ感が増します。しかも先輩と再会するまでの間、いけないことをしている罪悪感が中途半端で、いつでも逃げる気でいるくせに、つれない相手を責めたい気持ちも半分。悪者に徹しきれないまま、恋愛のおいしいところだけを食べようとしてるんです。

切れ者だけれど自己本位な佐伯は仕事面では魅力的ですが、それ以外だと時に幼稚に成り下がる危うさがあって、深入りするとヤバそうな男でした。ですが、一束も佐伯も、束の間の現実逃避をするのにぴったりなお似合いの二人だったとしかいいようがありません。あれ?メインカプよりも語ってますね笑

圭輔は社会人になっても高校時代の前向きな日なたキャラは変わらずで、ほの昏い二人とは対照的。だからこそ、一束は救われていくのですが、読後感は鬱でした。

なにより一束、圭輔、佐伯がノンケじゃなかったことがショッキングで。一束と佐伯がそれまで男と寝たことがなかったのに一束が現地妻って…、なんのそぶりもみられなかったので、エエエーッ!!!ってなりました。

巻末SS「is in me」は里帰り編。圭輔が大阪人だったっていう意外な事実が。彼の明るく男前なキャラは西仕込みだったんだなーと。

飼い犬のみかんになごみました。高校時代にちょっとだけ登場している圭輔の愛犬です。他にも本編の方で描かれる、教科書の切端のエピソードなどもグッとくるものがあって、そういったラブ以外のシーンはツボを外さないのですが…。

SSでもやっぱり一束が苦手でした。圭輔が一束をかわいいと感じるポイント自体はわかるんですけど、どうも日蔭の女感が抜けなくて。

1

スコールに降られる

私ごとですが、最近本の感想を残しておきたいと思うようになりました。一穂先生の文章と、作品の中に居る時間が大好きです。
先生の本に感想を書くのは初めてですが、ほぼ自分の為の備忘録として書いていきますので、ネタバレ・長文にご注意下さい。


今作のメイン設定は香港。物語において、舞台や言語、登場人物、食べ物等"香港的な要素"が大きな役割を担っています。広東語や香港の文化に馴染みが無かったのでとても新鮮でした。
主人公の1人、一束(いつか)も親の都合で長く香港で暮らしており、一束のアイデンティティも香港での生活をもとに構成されてきた部分が大きい。帰国した際の戸惑い、周囲との差が悪い方面に出てしまいます。(また一穂先生の、受けの名前は一捻り、毎度楽しみにしております)

物語は大きく分けて、高校時代と香港(社会人)時代の2部構成。相変わらずお仕事の描写が秀逸で、読むとちょっと賢くなったような気分になれます。

今作を一巡して、個人的に強く受け取ったサブテーマは『再会』『コンプレックス』『スコール』。
圭輔の本文中の台詞『俺が一束に会いたくて、一束も俺に会いたけりゃ何とかなるもんだよ』の通りに2人は呆気なくも劇的な再会を果たします。
その後も再会というワードが随所に感じられ、サブリミナルメッセージとして今作を包んでいました。
そして、登場人物がそれぞれ抱えるコンプレックス。"再会"に至るまでには当然別れがあるわけで…
物語の分岐点(離別)に大きく食い込んでくるのが、一束のコンプレックス。
再会した2人を阻む、一束の現恋人であった佐伯のコンプレックス。
さらに一束と結ばれた後も、共通の上司であり、どこか超然としている佐伯に対する圭輔のコンプレックス。それぞれの想いが絡み合い、人間ドラマとしても立体的で面白かったです。
is in youにはスピンオフがいくつもあり、そういった面で手に取るのが遅れてしまいまいましたが、佐伯という人間をもう少し、一穂先生の目線で追いかけることができるのが率直に有難いと感じました。

また文中でも非常に印象的だった一束のモノローグ。
「蒸し暑い午後のスコールの方がよっぽど好きだと思う」
「うるさくて話もできやしない」
「またたく間に色濃く濡らしてしまうと気が済んだとでもいうようにあっさりいなくなる」
そんな、香港のスコールのような展開が、特に高校時代の最後や、佐伯の突然の挑発からの展開に見られ、読んでいて、これは降られた…と感じました。
どしゃどしゃと、一穂先生の表現の力には本当に恐れ入ります。
一行一句、無駄なものがまるで無い。伝えたいことを伝えるための小さな言葉が集まって、それを壊すかのような勢いも、同じく小さな言葉で構成されている。ただの紙とインクが躍動する。改めて一穂先生は魔法使いなのかもしれないと感じました。

BLとして評価すると、今作はやや物足りなさを感じてしまったのですが(性癖と自萌えを鑑みて)、一穂先生の文は至上の娯楽品だと思います。

1

運命とタイミング

飛び飛びで読んだこのシリーズを全部読んでペーパー・バックを読もうと読み返し中です。

なんだか読み手に緊張感を持たせるお話でした。
運命とタイミングがテーマに思いました。

高校でも香港でも描写が詳しくて自分もそこにいるような気になってきました。

高校時代の二人は一束の初恋が実感されるまでが良かったです。日本語と日本に馴染めずグレーな色彩の中で先輩と出会って色づいていく。感情が揺さぶられて嫉妬を覚えて。
先輩の性格もとってもいいですね!
一束と先輩のすれ違いが辛かったです。好きなのに体を見せたくないから必死で、拒絶してしまってそれっきり。もっと早く手術していれば。

そして13年後、香港で働く一束と恋人の妻子持ちの佐伯の元に、佐伯の後任として先輩が現れます。すごい運命の再会!
なのに一束は佐伯と…。
先輩は相変わらず先輩のままで良かった、今度は一束も大人の余裕で対応してます。

佐伯と先輩が一束のことでお互いに嫉妬するのが気の毒でした。佐伯の生い立ちから育った環境や年齢から若くてこれからの先輩だけは許さないと言うのも、本当は自分のものになるはずだったのに三年先を越されて佐伯に取られて、なぜ佐伯なんだ!と悔しがる先輩も。

一束が13年越しに死ぬほど好きだったと伝えられて良かった。

佐伯の退場は男前でしたね。
一束と先輩の甘々があまりなくでもここまででも大変読みごたえがありました。

is in me
先輩が旧正月の帰省に勇気を出して一束を誘います。東京で佐伯と偶然でも会わせたくない気持ちもあって。
こちらの先輩はヘタレさんになっちゃってますね。
仕事が入ってしまいなかなか二人でゆっくり過ごせませんが、一束が態度で気持ちを示そうと頑張ります。こちらのお話ではエッチもじっくりイチャイチャも少しあり平和な気持ちで二人本当にお付き合い出来てるんだなあと感慨深いです。

先輩の何でもどこでも楽しんでやろうという所がいいですね。高校時代から変わらずおおらかで気負いがなくて。
一束も香港に渡ってのびのびやってるようで今度は日本にホームシックにかかったり、帰国子女の人間の複雑さがうかがえます。

さあ、次を読むぞ!

1

すれ違いが切ない

学生時代から両想いだったのに大人になって再開してもまだ素直になれず、すれ違う二人が切なかったです。
病気のせいで臆病になってつい拒絶してしまった一束の気持ちを考えたら切なくて泣けます。
大人になってせっかく体も手術して治ったのだから、再開した圭輔に対してもうちょっと素直に接してあげられたら!と悶々します。

圭輔は一束に対してひたすら一途に想い続けていて好印象なんですが、いまいち推しが足りない感じ。
でも佐伯さんに嫉妬全開なシーンは萌えました。

後半、舞台が香港なので見知らぬ地名や言葉がたくさんで若干戸惑いました。
漢字やカタカナが多くてちょっと入り込み辛かったですが、新鮮で勉強になる部分も有り。

佐伯さんが脇では勿体ないくらい存在感があったので、スピンオフも読んでみたいです。

1

読めば読むほど、とにかく嫉妬して、嫉妬して、嫉妬しかでてこない!

新聞社シリーズ4冊と番外編のペーパー・バック2冊を読みました。レビューというよりは考察に近く、かなりネタバレしていますのでご注意ください。

あらすじは他の方も書かれていますし、長文になりそうなので書いていません。

個人的に、圭輔のような素直ですくすくまっすぐに育ちました的な攻めは好きなので、どうしても圭輔に感情移入してます。

一束視点のis in youを読み終わった後は「とりあえずよかったね」だったんですが、圭輔視点のis in meを読むと、嫉妬でぐるぐるしてるくせにそれを表に出さず、ずっと自分の中だけでぐるぐるしてる圭輔の心情が見えて、そこから色々想像してしまい、気づいたら嫉妬のループから抜け出せなくなりました。

佐伯がいた部屋に圭輔が移った時、無くなっていた家具はベッドだけです。ベッドが置かれていた床に寝ころんで、圭輔は佐伯と一束が何回ここでしたのかなと想像します。
ここが私が嫉妬に苦しむ最初のきっかけでした。

圭輔と一束が再会したのは10月中旬。再会した日と翌日、一束は佐伯と寝ています。1週間後も佐伯の部屋に来ているので、その日も同じでしょう。佐伯と一束の関係が圭輔にバレるのが10/28。圭輔と一束が初めて寝た日は10/29の早朝です。すんなり挿入できたということは、書かれていない日も佐伯と一束は寝たのかなと思ってます。

作中で一束はひんぱんに佐伯のマンションに泊まると書かれていますし、圭輔が想像した倍以上は佐伯と寝たのでしょう。
例えベッドは新しくなっても、座り慣れたソファ、シャワールームや電気のスイッチの場所を一束が既に知っていることを想像すると心がちりちりします。
でも、小さな嫉妬をたぶん圭輔は表に出さない気がしました。

それから、一束の一人称の使い分けに気づいてからもモヤモヤしました。プライベートで佐伯といる時だけ「俺」で、圭輔に対しては高校時代途中から「俺」、再会後はずっと「僕」でした。わざと壁を作っていたのかなと思いますが、圭輔が何度も叩いて叩いて壁を壊した時にやっと「俺」になります。
佐伯に対して結局「僕」に戻ったのかどうかが、いまいちわかりにくいんですよね。

佐伯と一束のセックスの描写がなく、読者も圭輔と同じように想像することしかできません。
一束は圭輔とするときはいつもゴムをしていないし、きっと佐伯ともしてないなとか。
佐伯が一束の傷跡に指と唇でいつも触れていたから、そこも性感帯のひとつになったのかなとか。
そうでないと、傷跡にキスされて下半身ひと擦りで射精しないよねとか。
やっぱりもちろんいろいろと「やってます」よねとか。
ぐるぐる考えるとあの「3年遅かったな」という台詞は、ほんとにむかむかする台詞なんだなぁとか。
個人的には、一束の圭輔と佐伯に対する気持ちの違いをもっと具体的に知りたいと思ったので、佐伯と一束のセックスの描写がもう少し欲しかったです。たぶん一束は佐伯としていた時は、圭輔とするよりもあっさりとしてそうだと思います。同じような感じだったりもっとすごかったら見たくないですけれど。

圭輔がセルドナに行ってあの出来事があったから、一束は自分の気持ちを自覚してやっと認めて、はじめて自分から動きました。
でも、できればもうちょっと早く認めて欲しかった。佐伯に対して「心苦しかった」と思う前に。

圭輔が2度目に一束を抱くことができたのが翌年の2月上旬、3ヶ月以上かかっています。しかも、香港のあのマンションではなく大阪の実家で。
嫉妬でぐるぐるした圭輔が少しだけ吹っ切れて「俺だけのだ」と思ったとしても、そうそう簡単には嫉妬ってなくならないものです。

一束と佐伯がただのセフレだったら良かったんですが、繰り返し読めば読むほど、一束の佐伯への愛情が透けて見えてきます。圭輔のことはもちろん一番好きなんでしょうけど、読後も佐伯の影が全くぬぐえず、すっきりできなかったので、続編の「off you go」ではなく、ペーパー・バックを読みに走りました!

で、やっぱりペーパー・バックでもやっぱり嫉妬することになります。

4

香港の描写がおはなしとして良いです。

新聞社シリーズ読み返し。第1作ですね。主人公たちの高校時代のエピソードと香港が舞台になっているので、比較的「新聞社感」は薄いです。

高校時代の甘酸っぱく苦い経験を経て、少し歪んだ大人になってしまっている一束が痛い。めんどくさいヤツだよなー…などとも思うのですが、そのめんどくささも分からないでもない感じ。20代後半くらいの年齢で、殻を破る出会い(再会)があってホントに良かったよね。

これは、「off you go」とどちらを先に読んでも理解できないことはないのですが、重要な役回りである佐伯の印象が全く違ってくるので、こちら→「off〜」と読む方がベターなのでは?と思います。

0

ちょっと辛口

大学柄仕事柄帰国子女や駐在帰りの知人が非常に多いのですが
ほとんどの人は本当の国際人でどの国もいいところわるいところもあり
それでも日本はやっぱり素晴らしい国だと言いますが
たまに外国かぶれをして日本の悪いところをあげつらう人もいますね。
そういう人は本当に苦手だったので読み始める早々一束も苦手にw
病気に関しても某俳優さんが同じ病気ですがテレビで堂々と裸になってらっしゃいますし。
ただ思春期特有のゆらぎや潔癖さ青臭さは愛しくは思いました。

好きな相手がいるのにも関わらず他の男に抱かれるシチュそのものは好物です。
そこに後ろめたさや背徳や退廃的な香りがするからです。
二度と会えないと思っていた時ならいざ知らず、相手に再会してからも一束は
どちらかと言えばノリノリだし、なんなら自分から誘うし、結婚指輪に気を取られて圭輔よりも佐伯の妻を気にしているので、この萌えポイントを微妙に外されてしまいました。

それと一束の苦手なところは、自分が傷つきたくないがために他人を傷つけること、
向き合わずにすぐ逃げ出すところですね。
修羅場の後も嫌いなはずの日本へ逃げようとしますし。
圭輔が自分が再度傷つくことも厭わずにぶつかってくれなければまた高校時代の繰り返しでしたね。
結局一束は全く自分から行動することはなかったなぁと思うのも一束に感情移入できない理由。流されて不倫して、流されて事実上二股に。そりゃあ東京や大阪でまた流されて焼けぼっくいに火がと疑われても仕方ないですよ。
辛うじてセ王国へ行こうとしたところはそれまでの厭世的な一束と違いますが、未遂でしたしね。いや実行されていたら日本人として日本政府に迷惑かけんなよと思ってしまいますがw

佐伯とのセックスシーンの描写がなかったのですが、初心者の圭輔とのセックスでもかなり乱れていたのでそれなりに快楽を得ていたんでしょうし、普通にフェラもしてたようですしね、この辺りで差別化してほしかったかも。
佐伯の部屋をそのまま使えばやっぱり忘れられないでしょうね。圭輔が妄想したよりも多く通っていたでしょうし、セックス後に目が覚めて見える景色が同じならやっぱり思い出しますよ。
それにしても一束は合鍵を渡されていたようですが、会社の借り上げならいちいち鍵の付け替えもしないでしょうから、そのまま持ち続けるんでしょうか。それとも佐伯に返して、佐伯から圭輔に渡って、圭輔から改めて渡されるんでしょうか。そんなどうでもいいことも気になってしまいました。

いずれ圭輔も数年で日本へ戻るでしょうけど、その時一束はどうするんでしょうね。どこへ行ってもココ(香港)で待つと言ってましたが遠恋でしょうか、圭輔のために嫌いな日本に拠点を移すんでしょうか。いずれにしてもこの二人が長続きさせるには多大な努力とコミュが必要だろうなぁと思います。
続編も含めた番外編が同人誌で多数発表されているようですが、どれも入手困難なようなので、完全版を希望します。→出ましたね。読んでます。
決して好きな作品ではないのですが、色々と考察したくなるほどには気になる作品でした。
凪良先生の「きみが好きだった」と同じ感じですね。

9

BL<人生

一穂さんの小説は、雪よ林檎、meet againの二つを読みました。
この二つの作品が心に残っていたので本屋さんでis in youを手にとったのですが……。

私が萌えたのは旧校舎。
こういう古びたものとか、誰も近寄らないところで愛を育むものに弱い。
学生時代の描写、広東語でまくし立てるところと、迫られて突き放してしまうところでは泣きながら読んでました。
大人より学生が好きなので、大人のときのことは他の方のレビューを読んでいただいて。
学生、その部分だけでも充分☆5評価です。

これを期に一穂ミチ作品に積極的に手を出していこうと思います。

2

別れて再会してまた好きになる

明光新聞社シリーズ4冊をまとめて読みました。
話題だったし高評価なのでずっと読みたいと思っていました。
4冊の中でこの作品というかカップルが一番好きです。

高1で香港からの帰国子女の一束(いつか)は、日本にも学校にも馴染めず孤立していました。
3年の先輩圭輔は、使われなくなった旧校舎で授業をさぼっていた時に知りあいたびたびやってきては、何てことない会話をして帰っていくだけの存在でした。
けれど、いつしか大人の事情で翻弄される我が身や好きになれない日本の環境や閉塞感で、彩を失ったように見えていた世界にまた色彩がよみがえったかのように感じられる存在になって行った。
やがて、圭輔が彼女と共に後輩の女子を紹介するために連れてきたとき、それまでよくわからなかった「むかつく」という言葉を身をもって理解し、圭輔に対する感情が仲のいい先輩に対する以上のものであったと知ることになったのです。
圭輔は一束から向けられる気持ちが分からなかったけれど、好きな人から彼女を紹介されたくないという怒りと悲しみを向けられたとき自分が一束のことを好きだったということを自覚することになりました。
けれど一束は告白され体を触られたとき持病からくる体のコンプレックスから突き放してしまうのです。
嫌われたと思った圭輔と秘密を知られることを恐れた一束は、その後お互いすれ違ったまま圭輔の卒業とともに会うこともないまま別れることになりました。

一穂ミチさんの描くこの年頃の青少年の悩みや迷いをとても細かく写実的に表現している文章が好きです。
大人になったら大したことなかったり、どうでもいい事を真剣に思い煩う様子や負けて尻尾を巻いて逃げるとか、読んでいて気恥ずかしくなったりそんなこともあったなと遠い目になるようなそんな書き方です。

13年後、香港で活動したい日本企業相手のコーディネーターをしている一束の前に、新聞社の香港社支局長として赴任してきた圭輔が現れます。
そしてお互い、あの日の幼い恋心を引きずったまま忘れられずにいて、仕事で付き合いが再開したとともに止まっていた二人の想いも再始動することになります。
一方、一束には3年前に赴任した現支局長で妻帯者の佐伯とセフレ関係にあり帰国と共に別れることになるとはわかっていても執着も悲哀も感じていませんでした。
嫌いで別れた相手ではなかった圭輔のことをずっと思いつづけていたからきっと彼以外誰でも同じだったのでしょう、ただひと時寂しさを埋め合わせる相手だったのでいつ別れてもいいし、妻がいても関係なかったんだと思います。
でもなぜかこのつかみどころのない佐伯は、最後の最後になってこれから登っていく若い男にとられるのが我慢できないと心情を吐くことになります。
お互いきれいに別れて二度と会うことはないと思っていたのに。
この、病身の妻を愛していながら赴任先で不倫を繰り返すというしょうもない男の事情が次作の『off you go』となります。

大人になった今なら大したことにない理由だったにもかかわらず、13年前に幼かった二人が守ろうとしたものや乗り越えられなかった事が、これからは二人でやり直すことができると思えてよかったと思います。

後日談『is in me』は里帰り編。
一束を連れて大阪の実家に帰る圭輔。
大家族に歓迎されながらも二人の関係を隠していることに罪悪感を覚える一束。
大阪本社の新社屋に顔を出したところ、事件取材に駆り出されたり、一束を離れさせるような異動を命じるかもと嫌がらせで憂さを晴らす元上司の佐伯と再会したりと忙しい正月を過ごすことになるけれど、なんだかんだで一層きずなが深まる二人でした。

表題作の『is in you』は数学の記号 a∈A(aは集合体Aに属す)からなのですが、意味を考えると僕は君の一部とでもいうのでしょうか。
『is in me』は圭輔視点なので、一束は僕の一部で、これからもずっと一緒に居るんだと実感しているように思いました。

2

ココナッツ

麗音さま

麗音さま初めまして、ココナッツと申します。

わたしも新聞社シリーズの中では、こちらのふたりが飛び抜けて好きです。
一穂さんは麗音さまのおっしゃるように、本当この年頃の若者をキラキラ眩しく書いてくださいますね。
過ぎ去った時代だからこそ、懐かしく眩く感じます。
嬉しくてコメントしてしまいました(*^^*)

うーん。。。

高校時代の話はとっても萌えました。
しかし、13年後の話が何とも言えません。
佐伯との関係をいきなり放り投げて圭輔のところへ行ってしまう一束。
私的には納得をするのが難しかったです。
もう少しゆっくり話を進めればいいのになと思ってしまいました。涙
それと、文章がくどいなぁと思ってしまうところがありました。
話はおもしろかったです。
でも、その二つのことが私的には気になってしまいました。
場所が台湾という設定はいいなと思いました。
景色などの説明はとても難しいことだと思いましたがすごくわかりやすい説明ですごいなと思いました。
ただ、景色の説明よりも話のほうにもうちょっと力を入れてほしかったです。

3

必要な時間

『ステノグラフィカ』『off you go 』と世界観が同じ作品。
時系列にいっても、最初の作品です。
攻め、受けの両方の視点が楽しめます。

受けの一束は香港からの帰国子女。
高校時代はクラスに馴染めず、旧校舎の空き教室が唯一息抜き出来る場所でした。
現在は29歳。
堪能な中国語を使い、香港で仕事をしている。

攻めの圭輔は高校時代は水泳部。
世話好きで気さくな性格。
旧校舎で偶然出会った一束を気遣い、学年の垣根を越えて親交を深めた。
現在は31歳。
一束が働いている香港の支局に転勤でやってきた。

13年間ぶりに香港で、後任の支局長として赴任してきた圭輔と再会した一束。
高校時代、唯一自分を理解しようとしてくれ、大好きだった先輩の突然の出現。
ふたりの世界を特別視しているのは自分だけと感じ、さらに身体のコンプレックスによりその世界を自ら壊した一束でしたが、未だ圭輔への想いを捨て切れてはいませんでした。
一束は高校時代、本当の意味では圭輔へ殻を破って飛び出すことは出来なかったわけですが、圭輔はあの頃でも一束のコンプレックスを受けとめることが出来たのではないかと思います。
ふたりが心から想いを通わせるには、一束が大人になるための時間が必要だったのかな。
一束が圭輔へ気持ちを吐露するセリフがとてもキュンです。

そして、『off you go 』で主人公のひとりとして登場する佐伯が、あまりに濃く生々しく描かれているのも印象的。
賢く、先読みにも長けているにもかかわらず、圭輔へ嫉妬しなければならない現実。
佐伯については『off you go 』でくわしく描かれていますので、そちらを読まれると一層この時の彼の心情がわかると思います。
一穂さんの作品ではおなじみになりました、素敵系女性キャラも健在です。

青石さんイラストもとても素敵ですね。

7

高校時代の描写は間違いなく神

さすが一穂さん、青々しい高校生の描写が秀逸でした。
何がどうしてか、とにかくこの方の文章は脳にスッと入ってくる。
そういう意味で私にとっては相性の良い作家さんです。

一穂さんは高校生の自意識過剰加減とか、ちょっとしたことで世界の終わりや運命を感じてしまうような、繊細な、そんな心の機微を文章にあらわすのがお上手な方だと思うのです。

この作品も一束や圭輔の細かな人となりの描写が良かったです。
一束は思春期の女子のような繊細な男の子という印象でした。
世間ずれしている感じも、内向的な子にありがちな雰囲気。
ぶっちゃけるとそんな男は趣味じゃないけど(笑)
でもその描写がとてもお上手で、彼の心理状態はとてもよく分かりました。

反対に圭輔は全然そういう繊細さを持っていないけれど、素直で正直な態度の青年なので、一束の少しヒネくれた心にすんなりと入り込んで行きます。
この二人のやり取りもなるほど、こういう性格同士だから惹かれたのかなと思いました。

けれど大人になってからの一束は、妻帯者との割り切った関係ができることが大人だと、勘違いした大人になっていたのが痛かったです。
相手も割り切っていて、自分も割り切っているから大丈夫、と言いながら揉めてもつれて、人に指摘されると逆ギレ。
大人になってからの一束というキャラに対しての魅力は正直感じませんでした。どうにも29歳の成人男性が取る行動に思えないような行動の数々に引きました。
所詮大人といっても精神年齢は16歳のままの人も結構いるけど、仕事でそういうの出ちゃうのはちょっとなぁ・・・。
佐伯が一束との関係を美蘭にオープンにするのも常識で考えて社会人として上司として有り得ないですよね。相手が黙っていようと黙ってなかろうと、佐伯の軽はずみな行動は世の中的にアウトですね。会社でそんなことがまかり通っていたら会社が傾きそう。

あと、佐伯さんがいい感じに実は発破かける役割になっていたのは良かったです。
この人ダメっぽい人だったけど、二人がくっつくのに実は貢献しているんですよね(笑)
圭輔の写真記事見せたり、わざとか何だか知らないけど、イラついて割り切った関係を壊そうとしたり。佐伯さんは案外計算してたりして。さすがワケあり妻帯者です。

一束はツンツンし過ぎて感じ悪いキャラでしたけど、圭輔が死ぬかもしれないと言う時に、焦って我を忘れていたのは良かったです。これぞギャップ萌。
あとは圭輔のお宅訪問したときの何気に可愛い一束にキュン。

ラブラブもいいけど、私的には一束が慌てちゃうシーンが一番お気に入りでした。
彼の本音がよく表れているシーンでもあったので。

高校生時代の描写はとても気に入っているので神です。圭輔ががっつき過ぎて展開はやっ!とも思いましたが、そこまでの描写は好きです。
大人になってからの描写は大人として有り得ない面が非現実的で引いた展開もあったりしたので中立~萌ぐらいです。
全体的には読みやすくて良い作品だったと思います。

7

やっと読んだ

うっかり off you goから読んでしまったため
なかなか読むに読めなくて積本してしまっていました。
そしたら、off you goの方を軽く忘れた状態で読めたので
私個人的には良かった。
実際順番逆でも読めちゃえますが、香港時代の佐伯を知った上で
off you goを読んだら違ったレビューになったでしょう。

さて、分かりやすいからでしょうか?
is in youの方が私は好きでした。
高校時代の一束、圭輔ともに青くてきゅんとなるし、
臆病な高校時代に結ばれてなくて良かったな・・・と思ってしまいました。
読後存在感のあった佐伯のことはどうしても気になってしまうので
こちらを読んだらoff you goを読むことをオススメします。


3

再読して…

冬コミの新刊で、is in you + off you go の番外編を読んだのを機に、再読してみた。
最初に読んだ時より、どんどん好きになる!
それは、一穂先生の処女作「雪よ林檎の香のごとく」も同じ。

何よりすごいと思うのは、スピンオフや番外編で本編に描かれなかった隙間が埋まってきて尚、
人物像やエピソードにブレがみられないこと。
ただイチャイチャしているような番外同人誌もなくはないが(どのCPかとは言うまいw)、
本編の厚みを更に増すような、書店で手に入らないのが本当に惜しいような作品が多い。

                :

父の転勤で七年間暮らした返還直前の香港から戻って来た高1の一束(いつか)は、
日本の学校生活に馴染めず、人気のない旧校舎で一人時間を潰している。
彼は自分の環境の変化を受け入れられず、苛立ちそして現実に倦んでいる。
そんな彼の懐に、あっさりと真っすぐに飛び込んできた、水泳部の3年生圭輔先輩。

数学記号の読み方の違いを言い合ったり、漠然とした将来を語ったり
高校生らしいエピソードを重ねながら、彼らの距離は近づく。
しかし、あるきっかけがあって、一束は怒りを爆発させる。
もどかしい日本語では伝えきれない叫びが、思わず広東語で溢れ出す一束。
広東語なんか一言も分からないのに、その意味を受け取った圭輔は、一束に好きだと告げる。
しかし一束は、圭輔の告白を振り切ってしまう。

それから十三年、香港で働く一束は転勤してきた圭輔と再会する。……


前半の高校生編は、些細なことが絶望的に思えたり、上手く感情を表現できなかったりする
10代らしい感性を、ものすごく細やかに描き出していて、正直唸る。
対する後半のストーリーは、最後の展開にちょっとポカンとするようなところがあって
不思議な余韻が残る。

様々なものが同居する喧騒の香港の描写もいい。
人付き合いの嫌いな一束が、尖沙咀のアパートに住んでいるとか、
佐伯が街市に足を踏み入れないとか、細かい描写が人物を浮き彫りにする。

当て馬(になるのかな?)の、前任の支局長の佐伯の造形が素晴らしい。
何カ国語も自由に操り、凄く頭が切れて仕事ができて皮肉屋な佐伯が、
圭輔に対して持つ、健康さ若さへの嫉妬。
それは、愛だの恋だのを越えたところでの胸を抉られるような思いだろう。

「いつでも薄曇り」のような一束、
佐伯の子どもの頃の読書遍歴から、少年時代の彼の鬱屈を察する一束。
あの二人が惹かれ合うのは、そういう共犯に近い感覚があるからだろう。

佐伯が露悪的に挑発することろもすごくいい。
それが、事態を、何より圭輔をつき動かして行き…

自分が悪かったと思えば、潔く謝れるまっすぐで健康な圭輔。
十三年ずっと好きだったとは言わないけれど、確かな想いがあったこと。
決して佐伯と分かり合えたようには分かり合えないだろうけれど、
だからこそだろうか、どうしようもなく、ただ、一束は圭輔が好きなのだろう。

「is in me」はその後の二人。
旧正月の休暇に、圭輔が一束を実家に連れて行く話。
こちらは、本編に比べるとぬるいというか可愛らしい話です。

17

余韻がいい

『is in you』は高校時代と社会人になってからの二部構成になっています。

この本の良さはいろいろありますが、まずはキャラクターが薄っぺらくないところです。一束は芯のところで純粋な人だと思うのですが、自分のこれまでの環境やコンプレックスなどからなかなか心を開く事ができません。社会人になって人見知りだったりするところは緩和された感がありますが、芯のところは変わらず、彼の繊細な心やちょっと難しいところ、一束の人間性に深みを感じました。

そして弓削はとてもいいヤツです。暖かい家族がいてとても愛されて育った感じがしました。彼の人の良さは高校生の頃から変わる事がなく、社会人になっても一束を大事に思い、彼の幸せを願えるし、一束が好きな香港を自分も好きになりたいという思いも伝わりました。二人が結ばれてやはり一束には弓削が必要だったんだなーという実感がありました。

香港という舞台も良かったです。香港には個人的に行ったことはないですが、行ったような気になるように描かれていて一穂さんの文章のうまさが光ってました。

それから心理描写がやはり一穂さんは天下一品ですね。とても上手でなんども胸がキューっとなりました。読んだ後は心地いい余韻が残ります。ステキな作品です。お勧めです。

8

幸せな再会

香港からの帰国子女の一束は、
日本語をしゃべる事が心細く不安で、他人と殆ど交流を持っていなかった。
しかし、隠れ家にしていた旧校舎で2年先輩の圭輔と出会い、
「俺としゃべろう、これからたくさん。」と、2人の時間を持つようになります。

この高校時代が、ものすごく繊細で静かで、ほんとに良いです。
2人にとって、何よりもやさしい時間だったんだろうと思います。
そして2人が自然と惹かれあっていったのは、当然の成り行きでしょう。

でも、この幸せな時間は長くは続かず、
お互いが相手を特別な存在と気付いた時に、終わりを迎えてしまいます。
「好きだ」と自分の気持を一束にぶつける圭輔、
そして肌に触れられそうになった瞬間、一束は激しく圭輔を拒絶してしまいます。

一束には、自分の体に病気が原因の大きなコンプレックスがあって、
圭輔にどうしてもそれを知られたくなかった。大好きだからこそ・・・
若さゆえの、不器用さがもう本当に痛々しい。
お互いに本当に好き合ってるのに、上手く伝えあうことが出来ず、
仲たがいしたままになってしまう2人。
本当に読んでいてこちらが切なくなってしまいます・・・
ほんのちょっとの勇気が、言葉が、足らない為に、通じない想い。
でもまだ高校生だった2人には、伝える術がなかったんでしょうか。

13年後、大人になった2人は偶然に香港で再会します。
最初は普通に仕事仲間として接していましたが、
お互いに惹かれあう事を止める事は出来ず、感情をぶつけあってしまう2人。
一束の「死ぬほどあなたが好きだった」に、私まで心臓をぎゅっと掴まれました・・・
そして高校時代の誤解も無事に解け、2人はお互いの気持ちを確かめあいます。

ところで、一束には香港で恋人が居たんですが、
この佐伯がまた強烈なキャラでした。人が悪いのに憎みきれない。
妻帯者なので一束とは不倫の関係になるんですが・・・
「不倫」は私的にはかなりのNGポイントなのに、
佐伯は嫌いになれませんでした、というか、結構好きかも(笑)
美蘭もいいですね~!好きです、こういう女性。

香港の描写も魅力的でした。
こんな風に、風景描写等が綺麗で、想像しながら読める本は好きです。
まだ行った事が無いので、一度旅行してみたくなりました。

10

高評価の作品なのに…スイマセン。

かなり辛口になりますので苦手な方はスルーして下さい。

実はこの作品、スピンオフ→本編の順に読んだのですが、読後に思わず発行日確かめてしまいました。1年でこれだけ別物になるのですね、ある意味衝撃でした。

前半に色々な事を書き過ぎて、後半息切れしたんですか?と突っ込んでしまった鬼の私。
(高校時代) 香港の解説は流し読みしましたが、主人公達の会話や動作にまで説明文つけられて、行間を読む楽しみがありませんでした。
(再会後)逆に呆気な過ぎて物足りない。
一束、見切るの早過ぎ。
圭輔、襲うの早過ぎ。
一穂ファンの皆様、本当に申し訳御座いません。私も一穂作品、全部読んで来ただけに残念なんです。
あくまでも一個人の感想ですので御許しを。

9

ネザドワ

こんにちは、ものすごく遅いコメントで申し訳ありません(涙)。
すぐにレビューされてたんですね、ごめんなさいのんびり待ちすぎてました・・・。

辛口コメントもけっこう好きなので楽しく読ませていただきました!
見切るの早過ぎ。襲うの早過ぎ。には「たしかにそうだ~!!」と爆笑させていただきました。
色々な感じ方があるからレビュー読むのは楽しいですね。

教えて~のコーナーでご意見楽しく読ませていただいてます。
私も意見をちゃんとまとめれる様になって回答できたらいいなぁなんて思ってます。

レビュー楽しかったです、ありがとうございました!



高校時代がいい

初めての一穂さん作品です。

「is in youは」受け視点、後半「is in me」は功視点です。
is in youは高校時代の一束の不安定さやこの時代特有のキラキラした感情にきゅんときました。帰国子女としての不安や体のこと、圭輔に対する気持ちなど一束の気持ちがすごく胸にしみこんできました。
だからこそなのか、13年後の話にきゅんとは出来なかったような。
一束の気持ちが分かりにくかったです。圭輔に日本語なのに言ってることがよくわからないと言われるシーンがあるのですが、ホントそうだよと圭輔に共感しました。
気持ちと行動のズレがあるので、圭輔に過去の心情を吐露する場面が急に思えました。今の気持ちもはっきりしなかったし・・・。のちにはっきりするのでいいんだけど。
あと、佐伯がどうも好きになれなかったです。なにをいおうと美蘭の言う「ずるい人」の一言につきる。
香港の事を書いた部分は興味のあるとこだけ読んだので、気にはならなかったです。詳しく書かれていたので自分の目で香港を見て感じたくなりました。これがガイドブックと言われるとこなのかなぁと納得もしました。飛ばし読み出来ない人には苦痛かも。

meの圭輔視点の話は分かりやすかったです。圭輔の気持ちも一束の気持ちもわかって、この話があったから評価が1つ上がりました。
圭輔っぽくほのぼのした感じで進みます、途中ぐるぐるしたりももちろんするんですがいい雰囲気で読み終わりました。
全体の印象が一束視点と圭輔視点できっちり違うのは作者の書き分けの凄さなのだと改めて思いました。
読めてよかったです。他の一穂さんの作品も読んでみたくなりました。





11

はじめはじめ

ご丁寧なレス、どうも有難う御座いました。
こんな評価をしてしまい申し訳ございません(汗)
どんな風に書けば良いのか物凄く迷いました。
結果、正直に思った事を書いたのですが、我ながら容赦ないですね。あっさり短めに纏めたつもりですが、読み返すとキツイ…。
辛口レビューを書くのって疲れるんですね、勉強になりました。

一穂作品で一番お気に入りなのが「Off~」、次が「シュガーギルド」…。
どうやら私、一穂さんの書くオヤジが好きみたいです。

ネザドワ

はじめはじめさんコメントありがとうございます。

ハードル上げてなくてよかったです。(汗)
もう購入されてるんですね。10冊まとめ買い、ちょっとうらやましいです・・・。古本以外はちょびちょびしか買えないので。
佐伯が好きな方の感想はまた違うのかな、とレビュー楽しみにしてます。
「off~」読むと佐伯の印象もまた違うのかもしれないですね、読む機会があったら読んでみようかな(すみません消極的ですね)・・・。

「気配り」はぜんぜん出来ないのですが、そう言っていただいて嬉しいです。
コメントいただけて嬉しかったです、ありがとうございました。

はじめはじめ

ネザドワ様、初めまして。
Q&Aコーナーを拝見しまして、慌ててコチラに来ました。

こちらこそスミマセン、変なプレッシャーかけてしまいましたか?(汗っ)
ネザドワさんが書かれた「佐伯、好きになれない」のくだりは、「Off~」読後、直ぐだったので、妙にツボに入ってしまったんです。いやぁ笑わせて頂きました。
御心配されている「ハードル上げてしまった~」ですが、大丈夫ですっっ!人に個性があるように 持ってる感性も人それぞれ。個々の感想は別物だと、理解した上で 読んでいますから。
個人的に 自分が持った感想を 率直に書かれたレビューが好きなので、ネザドワさんの意見は 読んでいてとてもスッキリしました。実は本編、既に買っちゃいましたし~。私はいつも 10冊単位でまとめ買いするので、まだ読んでおりませんが、読後に持った感想は 後でレビューします。(作品レビュ、苦手なのでいつになるか分かりませんが)

ネザドワ様、もう貴方は私の中で「気配りの人」として認識されました。
お気遣いどうも有り難う御座いました。

ひどく繊細な

初めて読んだ一穂さんの作品でした。
まず驚いたのが、言葉の透明な美しさ。どこか不安定に揺らめいて、読者の感傷を揺さぶるような。
その言葉に乗せて綴られる高校生の二人は、本当に繊細です。傍からみれば些細なことで戸惑い、揺れて、どうしようもなく自分の感情に翻弄される。心地よい痛みに胸が締め付けられました。
そして十三年後。経てきた歳月に比例して、二人とも確かに変わっています。特に一束の、しなやかでいて何処となく脆い強さに引きこまれました。
本当に素敵です。もうそれしかありません。

4

あれ…?

一穂さんは、雪よ→オールト→今回の作品と読んでいるのですが、他の方々のレビューに反して私はむしろ今までより更に文章が綺麗な印象を受けました。語尾を延ばす記号として「~」を使うのがちょっと苦手なので、今回はそれがなかったことも大きいように思いますが。
でも、もしかしたら読んだときの気分とか、ストーリーの影響かも知れません…^^;

広東語表記については、会話は私もほとんど訳文しか読んではいませんでしたが(苦笑)、翻訳の際に生じる齟齬やその言語でしか伝えきれない微妙なニュアンスが問題になっている作品だと思うので、必要だったと思っています。
観光案内という印象も私は特に受けませんでした。

単に好みの問題かも知れませんが、そういう意見もあるんだってことで、参考程度に捉えて頂ければと思います!
とりあえず一束くんが可愛かったです(笑)

3

一穂さんの高校生は

特に、まだ子どもの殻から抜け切れていない高校一年生は、
やはり絶品です。
高校一年生から見たらとっても大人な三年生も、やっぱり、それなりに充分子どもで、お互いに初めての恋に戸惑っている。
まず、自分の中にある感情が「恋」という物であると気付くところから始めなきゃいけない。
気付いても、それをどうしたらいいのか持て余す。
大人から見ればとるに足らなかったり、思いっきり見当違いな理由で逃げる。

そんな、うまくいきそうで、結局成就しなかった子ども時代の恋。
それが、10年以上の月日をおいて、場所も日本から香港に移して、偶然の再会から動き出します。
子ども時代のあの恋が、なんでうまくいかなかったのか、
お互いに大人になったからこそ、見える物、認められる物。

この作品、高校時代編だけでも充分一穂さんの作品らしくて、切なくて萌えますが、大人になってからの再会編があるからこそ神。
特に、弓削が変に意地を張ったりせずに、真っ直ぐ向かっていくところがいいです。

9

香港が舞台

今年の2月に友人を頼り、2週間ほど香港で暮らすように旅をしてきました。一束に案内された圭輔のように八達通(オクトパスカード)を使いバスに乗り銅鑼湾(コーズウェイベイ)から浅水湾(レパルス・ベイ)方面へ海を見に行ったり、2階建てトラム(路面電車)で湾仔(ワンツァイ)の街市に行き野菜やパンを買い料理し、半島飯店(ペニンシュラホテル)のアフタヌーンティー、茶餐廳(チャーツァンティン)の麺等々。本に描かれているほとんど所へ行ったのでのでストーリーとはまた別に楽しむことができました。
でも、このあたりが観光案内になってしまったりして退屈な部分になってしまうのでしょうね。そんな感想をあちこちのブログでみかけました。
2週間くらいの滞在で偉そうな事は書けないかもしれませんが、やはり香港が舞台と云うことには意味があるのかなぁと思います。
以下ストーリーと関係あるようでないような感想です。読んでいく際の参考になればうれしいのですが。

中国に返還はされましたが色濃くイギリスの色を残し、在住であっても税関を通行しなければならない中国であって特別区の香港は日本人なのに日本に違和感を持つ一束のようです。
それから繰り返し表現される香港になぞらえた3人の考え方や立ち位置。食事をする店や場所、住むエリア、買い物をするマーケット、飲むミネラルウォーターの種類まで一束と佐伯は違います。香港では欧米人や日本人、そして香港の人と見事なくらいにエリアを住み分けています。知人も茶餐廳に欧米人は来ないし逆に欧米風のカフェを香港人は利用しないと言っていました。これは一束と佐伯の関係に色濃く投影されているように感じます。(駐在の奥様方の微妙な関係ものぞき見ました。(^_^;))
香港は本当に人口密度が高くて2~3日いるだけで人疲れする位。一束が尖沙咀の下町に住んでいるということは人との距離がうまく掴めなくて不器用だけど、自分の居場所を求め人との関わりを心の底では望んでいるのよう。でも佐伯はそこには足を踏み入れない。おそらくどの国に行っても言葉はすぐ覚えても、その国の人を見ることはなく向かい合う人の肩の向こうばかり見ていたのではないでしょうか。ここではないどこかしか見ていない。自分の望みしかみていない。こういう二人が恋愛できるとは思えません。
そこを飛び越えて来たのが13年前も現在も圭輔で。表現の仕方は違うけど心が同じ方向を向いているのでしょう。広東語の会話の表記がわかりにくいという感想もありましたが、英語だと何となく理解出来ますが広東語はさっぱりわからん。なのに圭輔はカンで理解してしまうというのを表現するのに必要なんだと思いました。
ちなみに地名の漢字にカタカナふりがな(実際は英語表示ですが)も香港に行った気になります。だから余計に観光案内みたいになってしまうのかな。(^_^;)
3人とも夜中に相手に会いに飛び出して行くような恋愛はしてこなかったのだろうとも思います。想像ですが一束は相手から告白されて、圭輔は仲間のノリから、佐伯は同じ境遇からの共感からで。感情をぶつけ合うような恋愛や嫉妬は初めてなのかもしれません。

肝心の感想ですが私も高校時代は「神」に近いと思いますが13年後の3人にはあまり魅力を感じませんでした。ストーリーは面白かったのですが、不倫はなんだか。せめてバツイチくらいで。あとやはり特に一束の心の変化や感情が見えにくかったのが残念でした。
でも何度か読み返してしまうだろう位には好みのお話でした。

8

心地良い痛みを感じました。

一穂作品は一年に一作品何故か強烈にツボります。まさにそれがこの作品。一束(受)もあまり好感持てるキャラではないし、(攻)圭輔も子供っぽいところがあり内面的に格好良いとは言い難いのですが綺麗事でななく、腑に落ちる感じが痛いけど気持ち良い感じでした。再会愛とかは割とよくある設定だけども、ずっと心中では慕い恋い焦がれて思い続けてきましたとかって場合に因ってはファンタジーがかかり過ぎて白けてしまう事もあります。この作品はBLにしては夢がないけども一束の佐伯との微妙な関係も、圭輔がかつて結婚を意識したくらいの女の子が居た過去のサラッとしたエピソードも、佐伯が奥さんを愛しながらも寂しさや弱さを脱却出来ず成長しきれない子供っぽさから不倫に走る愚かさや、圭輔と佐伯が互いに抱いてる男同士だからこそ生じる一束との一見だけでなく、仕事や経験値や年齢とか根元的な男の醜い嫉妬の件もこの作品の見所というか真摯な一面だと思います。皆、誰しもが弱い面を持っていて勘違いして遠回りしてだけどもちょっと馬鹿で愚かなんだけどもそこが愛おしいってこの作品を読んでる間中ずっと再確認してた様に思います。再会してやっぱり好きなんだ他の誰とも違うんだというのはやっぱりツボで大好きだ。甘い作品が好きな方にはビターだと思うかも知れないし、帰国子女や香港とかひねくれ者かうぜーと感じるなら合わないかも知れないけども、読んで良かったと心から思える作品です。

5

is in ...

もうタイトルからして、素敵ですわ!

香港から日本に移り住んで来てただ淡々と灰色の毎日を過ごすだけの受けに、ひとつの色が飛び込んで来た。
それは見る間に回りを色付けて、気づけば回りは綺麗な色で輝いていた。
自分にこんな綺麗な色を教えてくれる年上の攻めのことを好きになるのには、そう時間はかからなくって、告白されてキスされてでもそのまま抱かれそうになり、自分のコンプレックスである身体を見られるのが嫌で拒絶してしまい、
そのまま攻めとは別れてしまう。
そして大人になり攻めとばったり再開してしまい、昔の恋が動き出す。
そんなお話。

舞台が香港だからか、広東語での会話がでてきますが、読みにくい!というか、読んでいない…。すぐ後に日本語訳があるのでそればっかり読んでしまいます。
受けの取り合い?で上司と口論になるところがあるのですが、仕事に行かなくちゃなのに気になって気になってページをめくる手が止められなかった…。
途中、攻めが取材から帰って来ない!自分も動かなくちゃ!というシーンでは、結構あっさり攻めが帰って来たりして拍子抜けしました。

最近、一穂さんのエッチシーンが妙に濃くなったな、と感じます。前はさらっと終わる感じだったのに最近は一穂さんにしては書き詰めてますよね。
文章も挿絵もとても素敵なのでぜひ!

5

天下一品の「一穂ワールド」&「一穂ワード」!!

気遣いがさりげなく出来る素敵な人物を
こんなにもサラッと書けてしまう一穂さん。

これだもの、一束も弓削を死ぬほど好きにもなるよって
納得しすぎるくらい納得できる、細かい描写。

弓削が高校の時付き合っていた彼女と別れた理由とか、
一束が佐伯と付き合うようになったきっかけ(?)の
「ハイヒールのシャンパン」も、ホンコンフラワーも
とにかく上手い!!悶絶する!!

「ハイヒールのシャンパン」の話を聞いた弓削が
一束にまくしたてた所も大好き!

本当に、胸がきゅうきゅうします!!何度読んでも!

写真たての裏に紙片を入れておくって…どんだけ、弓削。
王道っぽい気もするけど、ここも良かった。

佐伯が嫉妬するシーンも、ぐっときました。
余裕がありそうでも、嫉妬するぐらいには一束を好きだって。
しかもちょっと意地悪する上司、いい味出してました。

挙げたらキリが無いくらい、素敵なシーン満載でした!

その世界にふさわしい、青石ももこさんのイラスト!!
今後も、要チェックです、青石さん。
先日ブログを拝見しましたが、絵が綺麗すぎだ…。

もちろん好みは人それぞれですけど、
私はもう文句なしの「神」評価です!!












7

これまた評価難しいのきたな…;

BL小説として読むと、本当にとてもとても面白かったです。
だけども、一穂作品と思うと、若干イマイチな気も…。
けど、「面白くなかった」でもないし、「物足りない」でもない。
なんだろう、この漠然とした不完全燃焼感……。表現しづらいなぁ…。

高校時代に関して言えば、間違いなく「神」作品!
キュンキュンするし、あったかくも切なくもなるし、なによりすべてが綺麗。
不安定に揺れる高校生の気持ちや、欲しいものと欲しくないものの境が曖昧で、手を伸ばしたり引っ込めたりを繰り返すもどかしい感じが、一穂さんの文章にすっごく合っていて、美しく表現してありました。
夏の匂いみたいなのも漂ってきて、だからこそ、それを失ったときの喪失感みたいなのも痛いほど伝わってきました。

で、お話はいきなり13年後。

13年あれば、確かに人はビックリするくらい変わります。
私も13年前の自分なんて思い出した日には、後悔することばっかりでもんどり打ちます;
そんで、それを気にしてないように見える程度には振舞えるズルさも、13年もあれば立派に培われてます。

だから、2人の他人行儀で近付き方の分からない、けども社会人としての繋がりはきちんと維持できる、って感じのモワモワ感も、「あ~、13年ならこんな感じかも」と思えました。

が、とにかく今回は、舞台が香港だったので、読むのに疲れちゃった;
景色とか交通経路とか、建物の名前や歴史が、それこそ沢山語られていて、それが「香港」という舞台設定に厚みと真実味を与えていたことは確かなんですが。
私は途中から、観光ガイドブックを隣で音読されているような気分になってしまいました。
疲れた…。

あと、お話に魅力的な女性キャラが登場するのも、一穂作品のカラーです。
今作品ももちろん、素敵な女性が登場します。
確かに重要な役どころだし、彼女が居るからストーリーが引き締まるし、止まりそうな展開が転がったりもするんですが…。
一度、女性がまったく登場しない一穂作品を読んでみたいと、初めて思いました。

誤解無きように言わせていただくと、今回の女性も大好きです。全然作品のマイナス要素にはなっていませんし、どちらかというとプラスに働いています。
が、「主役2人が、2人だけの力と思考で歩み寄る様を見たい」と、今回はちょっと思いました。

あ!忘れちゃいけない!
絵がとっても素敵でしたっ!
この絵師さん、これまでもいくつか挿絵を拝見していて、別段記憶に残っている方ではなかったんですが、今作品で「何故ノーチェックだった、私!」と思いました。

5

一穂さんが好きになる

読んだらきっと、一穂さんファンになります。
すごく綿密で丁寧な文章で書かれているので、なんだかあまりBL臭がしません。
萌えという観点から見ると微妙ですが、読書を楽しむという観点から見れば余裕の「神」でした。

高校時代、好きだった先輩をうっかり突き放してしまった一束(受)。13年後、仕事の上司として先輩(攻)と再会して…。というお話。

昔あんなに痛い思い出があったのに、再会後、一束の態度が普通すぎて、
しかもその部分の心情描写が少なかったので、ちょっと不自然に思いました。
でも、設定が綺麗で整っているので、スルー。
とにかく、丁寧に書かれているなーと、すごく感じました。
いたる所に痺れポイントが…。
特に「ホンコンフラワーだった。互いが、互いの。本物じゃないから枯らさずにすむ塑膠花。」というのは悶えた。
随所にこういう一穂さんらしい魅力的な文章が。
きっと物語を書くのが好きなんだろうなーと思いました。

挿絵も綺麗でしたし、文章も緻密で丁寧で、申し分なく「神」作品です!

5

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