遙々アルク改め、ARUKUが贈る純潔と官能が交差する短編集。

黒猫亭雑記帳

kuronekotei zakkichou

黒猫亭雑記帳
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神19
  • 萌×220
  • 萌9
  • 中立1
  • しゅみじゃない2

--

レビュー数
14
得点
203
評価数
51
平均
4 / 5
神率
37.3%
著者
ARUKU  

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

媒体
漫画(コミック)
出版社
リブレ
レーベル
ビーボーイコミックス~BE×BOYCOMICS~
発売日
価格
¥590(税抜)  
ISBN
9784862638823

あらすじ

「先生、あの小説を書きましたか?」
ある日、偶然手に取った小説「黒猫の庭」。そこには、自分と思しき主人公と男やもめのいかがわしき情交が赤裸々に綴られていた。助教授・英にそのことを訊ねたのをきっかけに、激しい情事が徐々に現実のものとなっていく…!
話題の気鋭が放つ純潔と官能が交差する短編集。描き下ろしあり。
(出版社より)

表題作黒猫亭雑記帳

英,大学の助教授で官能小説家 
水町(クロ),一人暮らしの水道局員 

同時収録作品台風13号/土屋観測日記/ウェザー・ニュース

武藤,受様に嫌がらせをする一団のリーダー→社会人
土屋,教室でハブにされている高校生→社会人

同時収録作品昨日の今日で

カフェの客
ひなた,カフェ店員 

同時収録作品琥珀の月/ストーカーをストーキング

小山田健,受様をストーキングする商社マン,25才
砂原,宝飾店の販売員 

同時収録作品SNOW BLIND

遠山,祖父の葬式で帰省した会社員 
桃井,街の土木課に勤める公務員 

同時収録作品凍える海の底にあるもの

根津,社会人
綾瀬

同時収録作品僕はあなたの夜になりたい

杠,彩田の大学の後輩,
彩田,夜盲症を患う先輩,大学4年生

その他の収録作品

  • 黒猫の言い分

レビュー投稿数14

1番好きなのは「凍える海の底にあるもの」です。

【もくじ】
黒猫亭雑記帳
台風13号
土屋観測日記
昨日の今日で
琥珀の月
SNOW BLIND
ストーカーをストーキング
ウェザー・ニュース
凍える海の底にあるもの
僕はあなたの夜になりたい
黒猫の言い分

《続き物》
1. 黒猫亭雑記帳 → 黒猫の言い分
2. 台風13号 → 土屋観測日記 → ウェザー・ニュース
3. 琥珀の月 → ストーカーをストーキング

《読み切り》
4. 昨日の今日で
5. SNOW BLIND
6. 凍える海の底にあるもの
7. 僕はあなたの夜になりたい

1

みんな意外な展開ばかり、印象的でぐっとくる

とっても短い短編集です。でもそれぞれのお話がとても印象的で不思議な後味が残る濃いというか刺さる一冊です。

表題作はこれはBLになるのかな?と思っていたらなんと!という展開で。
孤独な受けが攻めの猫になりたいというのも叶うといいのにと思っていたら、ネコになりました。
受けの育ちや境遇、職場での扱いなど辛いのに明るく真っ直ぐ生きて、でも自分を恥じて、でもそういう言い方をするなと言ってくれて。
居場所ができて良かったです。

台風のお話も意外な展開で。井戸に落ちたらお前が体験もないまま死ぬのは可哀想だとエッチされそうになり。でもこの件のおかげで変われましたね。
他のお話で再会したのですがどうなるのでしょうか。

ストーカーのお話も意外な展開でした。
ストーカーが強すぎる!怯えきった受け。どうなるの?と思ったらなんだか可愛いカップルになっちゃって。

どのお話も意外な展開で、胸にぐっとくる印象的なお話でした。目次を見たときはみんな短すぎ!と思ったのにのめり込みました。

1

やっぱり好きだ…

久々にARUKUさんの作品を読みました。
改名されてからの作品を読むのはこの作品が初となりました。
独特の絵柄は以前から変わらず。この作家さんを初めて読んだ時にはこの絵柄が苦手だったのですが、今ではARUKUさんはこの絵柄でないとちょっと物足りない気さえします(笑)。

とても短い作品も収録されている本作ですが、ARUKUさんが描かれるちょっと不幸な境遇で控えめな受け様とか、目に見えてそうは感じさせないのですが受け様に結構執着している攻め様が好きだな~と改めて思った作品集でした。
画面には描かれていない背景とか、物語の後や間の2人をとっても妄想してしまうストーリーの作りも秀逸です。

表題作も好きでしたが、一番妄想を掻き立てられたのは、雑誌掲載作と描き下ろしが収録されている『台風13号』のシリーズ。
主人公達が高校生、そして社会人になってからのエピソードが描かれているのですが、各お話の間にどんなことが起こったんだろう?と色々想像してしまいました。
切ない雰囲気も漂っているのに、コミカルな所もあるのも好き。
ああ~、この後の2人がとっても気になります!(笑)

3

作風の振り幅を窺い知る短編集

『猿喰山疑獄事件』についてはおよそレビューともいえない、ただの「作家さんLOVE!」的なものを投稿し、激しく後悔しています。新作『恋に落ちる花』を読む前に押さえておきたくて、読みました。また、新作も読みました。その上で思ったことを。

表題作を読んでいて「…うちの母は瞽女だったんですよ」っていつの時代だよ!と思わずツッコミを入れてしまったのですが、例え現代の日本が舞台であってもなんとなくノスタルジアを感じさせる、時代不詳の色が出ています。SFファンタジーや昏睡している男の夢の中など、設定舞台もリアルと距離をとっている感じがフィクション好きとしては思いっきり楽しめる要素の一つです。

『ビター・スイート』などで笑いの要素は感じていましたが、『ハスネサイコロジー』以降の作品から軽妙さが明らかに増えている点を比べると、『黒猫亭雑記帳』は圧倒的に暗い作品が多い。「台風13号」の、危機的状況に陥った時に突然発情する、若い男の性欲が怖い。「琥珀の月」も「SNOW BLIND」も人物の極端さが怖い。『猿喰山』のエンディングを彷彿とさせる「僕はあなたの夜になりたい」も、主人公の若さゆえの純粋さが怖すぎる。何が一番怖いって、この笑いと恐怖の境界線を一つの作品の中で自由に行き来している作家さんの技量でしょうか。

もし今よりもっと人生経験に乏しくて、視野が狭くて、独りよがりだった頃にこの作品集を読んでいたら、これこそ唯一自分をわかってくれる人が描く世界観に違いない、と厨二病を発動して熱狂的に心酔していたかもしれない。それくらい心を鷲掴みにし、読了後に脱魂状態に陥れる魔力みたいなものが、この方の描く作品には潜んでいると思います。

『ほんとは好きだ』みたいなキュン系とは遥か遠ーくかけ離れていますので、ちょっとゾッとするようなお話、ビザールなお話が好きな方向きかと思います。

3

残念

「黒猫亭雑記帳」
イラストのバランス悪いですね。
犬の大きさもバラバラ。
受けのクロ君(あだ名)が英先生を思って、ああだろうか?こうだろうか?と思考を巡らすのは面白かったかなと思います。
半分ストーカーかもしれないですけどね。

「僕はあなたの夜になりたい」
全部で11作品の短編集ですが、これがいちばん萌えたかな。
夜光症の彩田を後輩の杠が世話を焼く話。
先天性の物だから進行はしないはずなのに、ストレスで目の隅が見えなくなり、自暴自棄になる。
家の中はぐちゃぐちゃで割れたガラスで手や足が血だらけ。
杠が病院に行こうと言うと彩田は恥ずかしいから嫌だという。
このワガママな彩田がちょっと可愛い。

この2人が一緒に住むとして彩田に振り回されてるだろうとは思うけどそこもちょっと読んでみたいかな。

この作家さんの妖怪漫画を先に読んだから、骨格がおかしかったりすると妖怪にしか見えなくて笑ってしまう。
シリアスな作品が多いのに、手足の位置が変でカエルが引っくり返ってたり、蜘蛛が突っ込まれてるように見えてしまったから……そのシリアス感も半減です。
そこが残念。

1

自分の好みをはっきりさせてくれた一冊

しゅみじゃない評価でレビューを書くのは少し気が引けたのですが、この一冊が私の好みの基準をよりはっきりとさせてくれたので、書きます。

なんといっても絵が苦手でした。もともと、キャラクターの表情や動きの豊かな絵が好みなので、たとえ話が今一でも、キャラクターの表情や動きが魅力的だったり、線のひきかたや構図の取り方に躍動感があれば(どういう表情や動きに豊かさを感じるかさ人によると思いますが)、それだけでも満足できます。その点で言うと、この作家さんの書くキャラクターには表情の変化が少ない。あの真顔がどうしても怖くて受け入れられませんでした…。あと動きも固くて、エッチなシーンなのにどうしてもエロスを感じられず。むしろちょっとシュールさを感じてしまいました。

私の萌えるか萌えないかの判断は、視覚的情報に大いに頼っていたんだ、ということがよく分かりました。その傾向があるのは分かっていたんですが、この一冊でさらに浮き彫りになって、自分の感性にちょっとがっかりしています。みなさんがレビューされているように、この作家さんの描き出す世界観や言葉の選び方などを何とか理解し堪能したいのですが、どう頑張ってみても絵が妨げに…。
この作品も最後まで読みきることができませんでした。
もう一冊くらいはチャレンジして、新たな萌え鉱脈を堀あてられるかどうか試してみたいと思います。

6

アルクさんなのに、普通のBLだ!(驚愕)

おや?これは!

アルクさんなのに、普通のBLだ!(驚愕)

表題作はまた受けが貧乏臭いので普通っぽくはないのですが、他の著作に比べると全体的に普通のBLっぽいですね。
それが読みやすくていい気もしますが、何か物足りないです。

この中では「SNOW BLIND」が好きなんですが、これだけ幸せになれない感じですね。
だからといって、この後どうなるんだろう!二人とも幸せになってね!といった事をあまり思わないのが不思議です。
普通の漫画でこれやられたらとてもやり切れない気持ちになるのですが、そうなる事前提で読んでいるからかもしれません。

1

耽美な世界観

短編集ですが物足りなさを覚えないところが不思議です。またキャラクターの目や指の動きに滲む麗しさといいますか、艶やかさがたまりません。
セクシーなのですよね、言葉の選び方ひとつから。特に表題作「黒猫亭雑記帳」ではその美しい言葉遊びも織り込まれていて、アルクワールド全開の一冊だと感じます。

[黒猫亭雑記帳・黒猫の言い分]
英先生のエロスもさることながら、クロ君の不思議な人間性もまたエロス。
パキパキした絵柄(だと思っている)にも関わらず、肉感を覚えるのです。だから、クロ君の自慰行為の描写も、英先生との交わりも、とても淫猥で拝見しているこちらが気恥ずかしくなるくらい。
最中を持って帰るエピソードも、他人とうまく関わることができないクロ君の性格も、そして酸漿の力に惹かれる危うい面も、すべて関係ないように見えてでも繋がっている。短いお話でも、薫るものがあります。
鯛を欲しがるのもかわいい。めでたいものだしね、食べたいのかな。

[台風13号・土屋観測日記・ウェザーニュース]
やんちゃといじめられっ子のあるあるカップルでも、ARUKU先生が描くとこうなるのか…と唸った作品たち。
土屋がやや卑屈なところも好きです。あとその後、武藤のおかげか見事羽化した彼もまた素晴らしい。かわいいおでこ、とはなんぞや!(笑)
土屋みたいな子は、おそらくいじめっ子の加虐心をくすぐるのでしょう。認められることではありませんし、いやいや武藤もそう思うなら腰ぎんちゃく黙らしておこうよとも考えますが、それは置いといて…。(結果的に土屋が田村を飼い慣らしてしまいましたしね)
大人になって出会ったふたり、昔とは違う土屋の凛とした姿。もしかして、ああして古井戸に落ちたからこそ気象予報会社に勤めることになったのかな。
となると、土屋の根底には武藤が居るわけです。あのときの武藤が! 因縁にも近い、憧憬のような想いがあるといいな。学生→社会人ときたらあとは成り行きで同棲までぜひ! ぜひ行ってほしいわ!

[昨日の今日で]
恋が こんなに恥ずかしいなんて知らなかった――。独特の一文です、好き。

[琥珀の月・ストーカーをストーキング]
ストーカーなんてとてつもなく怖いことですし、粘着系攻めだと尚怖いのですが、この作品に関しては恐怖<愛を感じてまた怖い!(笑)
砂原さんが恐れる様子を見ているうえ、彼が頼んだ興信所の職員をフルボッコにしたことをわかっているから、一層小山田のことが怖くなります。だってただ…ただちょっとした親切をしただけなのに…。
お話の中盤に至るまでは、こうして「怖い」という感情を抱くのに、砂原のことを身を呈して守ったときに 恐怖<愛 になるのです。紙一重ですが、この紙一重が非常に大きい!
しかも最終的に開き直っちゃいますしね。こう、とにかくアルク先生の描かれる受けって、やたらと内面が可愛くってたまらないです。

[SNOW BLIND]
すべてを壊してでも俺のものにしてしまいたい。
ふたりの先になにがあるのだろう、これからどうするのだろう。不安になるのですが、私個人としてはこういうほの暗くどうしようもないお話がものすごく好きです。
彼女のこと結婚のこと、介護のこと仕事のこと、葬式のこと灯油のこと、なにより刺された傷のこと。気になることは山ほどありますのに、もう二人しか見えなくなる。
彼らそれぞれが10年間ずぅっと抱え込んでいたものは、一目見ただけで崩れてしまうくらい大きなものだったのですよね。攫って逃げるなんて、桃井は赦さないだろうけれど……遠山はほんとうに成し遂げてしまいそう。

[凍える海の底にあるもの]
20キロは相当ですが、最後に勝つのは愛だと聞いています。

[僕はあなたの夜になりたい]
単行本のなかにもカラー表紙としてこちらの表紙を塗られたものがありますが、それぞれすこーし顔が違います。
モノクロの頃よりも、カラーで塗られたほうのが後のふたりかなと感じました。見守る杠、安心しきっている彩田、当方にはそう見えました。
愛のことをちっとも信用せず、有用性を感じられなかった杠が、彩田に心傾き愛とはなにかを分かる……真に心寄せる人が現れない限り恋愛の意味なんて分かりませんものね。
そのうちレモングラスティーを作って、魔法瓶に入れるのも杠の仕事になるのでしょう。
そんな日常を妄想します。だってお世話するんだもの!

ARUKU先生は、人が避けたがるところを、たとえば汚いものは汚いものとして、悲しいものは悲しいものとして描かれるからこそ美しい箇所が際立つのかな…と感じます。
らしさがギュッと詰まった一冊でした。

9

珠玉の短編集

お名前がいつの間にか改変されておられましたが、内容の良さは相変わらす良かったです。

表題作の「黒猫亭雑記帳」はノスタルジックな雰囲気でした。
大学の教授で小説家の英と水道局員の水町(クロ)がひょんなことから知り合う話です。
どうしてこう、文豪とか小説家とかいう設定のものは「昔」の設定のほうがすんなりと受け入れられるのか、なんだか不思議です。
現代作家さんの設定の話ももちろん好きなのですが、ノスタルジックなもののほうが、より好みのようです。

こちらは一冊・短編集なのですが、
一つ一つの作品に味わいがあり、非常に良かったです。
『台風13号』と『ウェザー・ニュース』はページは飛んでいますが、続きものです。
なかなか短編だと面白くなかったり中途半端に感じることは多いですが、
こちらの作品は「この作品もっと続きを読みたいな」とは思っても、中途半端とは感じませんでした。
それほどARUKUさんがお話をうまくまとめておられるからなのでしょうね。

どこか不思議で、ちょっと怖かったり、ほっこりしたり、ドキドキしたり、感動したり、
ARUKUさんらしい短編集でした。

4

もー、大好き

短編集です。
全体的に、ARUKU作品比では軽めなお話が多いかなと思います。あくまでもARUKU比でのことですが。
どのお話も珠玉でした。

『黒猫亭雑記帳』
『黒猫の言い分』
ARUKUさんは格差のあるところで萌えを描くのが本当に上手いです。
黒猫と遊ぶためにたびたび訪れている家の大学の先生が、自分たちをモデルにしたと思われる官能小説を描いているのを知る。
小説を読みながらオナニーしてる受けがエロかったな。
古い日本家屋の縁側っていいですね。

『台風13号』
『土屋観測日記』
『ウェザー・ニュース』
この連作が一番好きです。
いじめられてた主人公が、あることをきっかけに変化していく。
若いとき特有の不器用さも残酷さも愛おしい。
これ、最終的には武藤が受けになるんだよね?ね?そのほうが萌えるので、そっちで妄想しておきます。

『昨日の今日で』
なんてことはないお話なのに、なんでこんなに萌えるんだろ。
エッチの翌日の気恥ずかしさ、可愛いなァ。アホっぽくて可愛い。

『琥珀の月』
『ストーカーをストーキング』
病的なストーカーと、なぜかどんどん健全な恋へと発展していきそうな、キモいのに爽やかで、やっぱりキモいお話です。
いざとなるとへたれてしまうストーカーくんが可愛い。

『SNOW BLIND』
捨てたのはどっちだったのか、捨てられたのはどっちだったのか。
恋のはじまりは、10年前だったということ。

『凍える海の底にあるもの』
話の終わらせ方が憎らしいよ。
先を想像してニヤニヤできる小品でした。

『僕はあなたの夜になりたい』
ARUKUさんの得意技の一つが「血まみれ」ですね。
面倒を見たいと思う気持ちが恋のはじまり。

5

改名されたのですね

ペンネームが遙々アルクさんだったときからずっと好きな作家さんで、最近新刊でないな~と本屋に行くたびに落ち込んでいたのですが、作家あ行で偶然みつけてビックリしました!

今回は10編からなる短篇集ですね。
絵柄が独特で好みが分かれるかもしれませんが、この作家さんの感性は素晴らしいです。
時代背景、キャラ設定、セリフのチョイス…
ハイセンスで文学的。
たった数ページの短編でもその優れた感性はちゃんと存在して、改めて力のある方だなと感心しました。

■黒猫亭雑記帳
昭和。着流しの作家先生と田舎育ちの貧乏な青年。
昔っぽい言葉遣いが萌。エッチが春画のようです。

■台風13号 /土屋観測日記
一番好きな話。イジメっ子×いじめられっ子。いじめられっ子のうぶさがたまらん。ダマされるようにキスされ犯される(未遂だけど)。この二人で1冊出してほしい。

■昨日の今日で
おそらく前日美味しく頂かれたであろうカフェの店員(受)と常連客(攻)の話。まだ恋の過程らしい。二人の関係性や前後のエピソードがなく語られる短編は珍しいので、こーゆーのもありかも、と思った。

■琥珀の月/ストーカーをストーキング
ガチのストーカーとその被害者。個人的にストーカーものは苦手。怖いし、現実的じゃない。この作品のストーカーも、盗聴、脅迫、被害者の恋人への嫌がらせ等々…しっかりばっちり危険なストーカー行為をしてくれちゃってるので、そんな相手と結果的に結ばれるなんて・・・。と、個人的なストーカーへの嫌悪が優ってしまい、主人公に共感できなかった。ストーカーでさえなければふたりのやり取りは好きなんだが。

■SNOW BLIND
10年ぶりに再開した同級生の話。お互いの気持を知っていながら、見て見ぬ振りして過ごしてきたのに、結婚話をきいて逆上し、強引に関係を持つに至る。雪に閉ざされた田舎町を舞台にしているからか、この話のもつ閉塞感を一層際立たせていた。ARUKUさんの描く鬱々とした作品は好きです。

■ウェザー・ニュース
『台風13号』の続編。社会人になってから再開。短い話だけど淡々とした会話のテンポがいい。この二人で1冊出してほしい(2回目)。

■凍える海の底にあるもの
この作品のモノローグに痺れた。なんだこれは。何度も書くが、単語のチョイス。これに尽きます。漫画は長けりゃいいってもんではない。

■僕はあなたの夜になりたい
トリ目(夜盲症)の男と人を愛せない男の話。ともに大学生で、先輩後輩の関係です。非常に哲学的で高尚な印象を受けました。こういう話すごく好きです。淡々としていて切ない。ベタベタした馴れ合いはないのに、真っ直ぐで深い優しさが描かれていて気持ちがいい。

作品集よりは、1個のお話をじっくり描いてくれてる作品のほうが好きですが、こういう短編ならありだと思いました。短編だからこそいいのだろうという作品もありますよね。
やっぱり上手い。ARUKUさん、さすがです!(●o・∪・o●)+:

6

やっぱ好きだな~

帯『僕は、あなたの猫になりたい。』

遙々アルクさんがARUKUさんに改名されての初コミックス。
個人的には横文字に弱いので前のお名前の方が良かったな~とか思いつつ絵柄が特徴的なので平積で直ぐ分かりました。

カバー折り返しに「一度読んだらクセになる!」とあるんですが実に同感です。
独特の癖がある絵柄は決して万人受するタイプではないですが一度読んで好きになったらもっそいクセになる作家さんなんですよねー。

表題作はARUKUさん作品によく出てくるタイプの少し不器用に世間を生きている青年が猫を抱えて歩いている所から始まります。
水町のモノローグから溢れる不器用さと純粋な想いが読んでいて心地良い。
ラストの「にゃあ」の一言にや~ら~れ~た~~。ぱたり。

「台風13号」
学生同士モノで、軽い虐めを受けている土屋とクラス男子内で一目置かれている武藤との台風の日の話。
その後入っている後日談と成長した彼等のエピソードも何気にいい。

「琥珀の月」
女性と付き合っている砂原と、彼のストーカーの奇妙な恋愛ストーリー。
ガチなストーカーっぷりは途中ちょっと怖い位にストーカーしてます。
それも愛する故の執着って事になるんでしょうね。まあ結果オーライだったから良いけどー、と、そんな疑問は後日談の可愛さでなんか昇華しちゃいました。

読みがいのある密度の濃い短編集です。

5

語られない思いにこそ惹かれるのです

本作は商業誌や同人誌の掲載作をまとめた短編集です。

表題作は大きな一軒家に住む経済学を教える助教授と
ひっそりと一人暮らしの水道局の検査管理員のお話。

流しの三味線弾きの母とともに旅をして育った受様は、
勤務先の水道局でも頭も悪く使えないと思われています。

ある日、受様は
アパートの裏で生まれたばかりの黒猫を見つけ
飼ってくれそうな家を探します。

やがて広い庭を持つ大きな家に仔猫を放しますが
犬の声に慌ててその家に踏み込み
家主らしき人物にみつかってしまいます。

しかし家主はそんな受様を
家の中にと招いて菓子まで振舞うのです。
彼がそ今回の攻様になります♪

攻様は大学で経済学を教える助教授との事ですが、
学問とは縁のない受様には大学なんて雲の上の存在で
攻様も偉い先生様だと言う事位しか判りません。

恐縮する受様を攻様は謙虚だと思うのですが、
それすらも受様にはいたたまれず、
仔猫を連れて帰ろうとします。

しかし攻様は
膝でじゃれていた仔猫が寝ている事を引き合いに
仔猫を引受けてくれた上
気軽に会いにきなさいとまで言ってくれるのです。

最初は遠慮がちに攻様宅を訪れた受様ですが、
お産で実家に戻ったという奥方の代りなのか
攻様はじゃれつく仔猫を可愛がっている様です。

それから何度か攻様宅を訪れお茶を飲んだり、
とりとめのない話を楽しむようになりますが、
町中で偶然見かけた攻様は別人のようで
影からそっと見つめる事しかできませんでした。

そして
里帰りしたと言う奥方が帰ってこない事など、
攻様について色々な事が気になりだしてしまいます。

そんなある日、
受様は自分をモデルにしているとしか思えない
官能小説の存在を知るのです。

読んでみると
まるで自分と攻様の事をモデルにした様ですが
攻様に真相を訊く事が出来ません。

もし違っていたらもう会えない…
でも本の通りなら攻様は奥様を殺して
誰かと小説の様ないやらしい事をしたいの?

受様は徐々に現実と小説の区別がつかなくなり、
とうとう受様は攻様に問うてしまいます。

あの小説に出てくる女の人は誰ですか?

ソレに対する攻様の答えは…

遙々アルクさんが
ARUKUさんに改名されて初めてのBLコミックスは
短編11本をより集めた短編集です。

私、まるっとした可愛い絵が好みなので
角々したARUKUさんはあまり好みじゃないです。

でも絵柄を耐えて(笑)でも
多くを語らなずに流れていく展開に、
読み手の想像力をすごく掻き立てるのですよ♪

物悲しい雰囲気の中にある優しさとか悲しみとか
淋しさとかすぅーと入ってくる感じというか、

語彙が貧弱でうまく書けませんが
落ち込んだり悲しかったりした時に読むと
ほっ~とするというか、ジーンとくるのです。

表題作は攻様の事情が判った事で受様は
攻様の仔猫ちゃんにおさまりますが、
彼らの未来も過去さえも読者よって違うのでしょう。

攻様の奥方は攻様の学生と駆落ちしていて、
攻様は逃げた二人を愚かだと思っていましたが、
仔猫を通して知り合った受様は
今まで自分の周りにはいなかった純朴な青年で…。

自分が惹かれているのを知った時、
思いを昇華させる為にペンをとったのでは?

そして母の死後、
生きるだけで精一杯だった受様にとって、
誰とも知らない受様から仔猫を引受けてくれた攻様は
初めて自分を認めてくれた人で…。

攻様になでられる仔猫を羨んだ時には
既に彼に恋をしていたのでしょう。

その他の短編の内容は以下の通りです。

【黒猫の言い分】表題作続編

【台風13号】
人気者と井戸に落ちた苛められっ子の話
【土屋観測日記】関連作
【ウェザー・ニュース】続編

【昨日の今日で】
初Hの翌日に恋人同士の話

【琥珀の月】
男にストーキングされる販売員の話
【ストーカーをストーキング】続編

【SNOW BLIND】
東京に出て行った同級生と再会する公務員の話

【凍える海野そこにあるもの】
突然友人に深夜に海に誘われた男の話

【僕はあなたの夜になりたい】
夜盲症だと言う先輩に夜本を読んでやる後輩の話

上記は話毎に纏めていますが掲載の頁順は前後します。
私的には読み切りも続編もバラバラ並びなのが
ちょっと嫌なのですが、
並びにも作品余白みたいに意味はあるのでしょうね(泣)

今月の新刊はこれからGETしま~す。

今回は本作同様、
ARUKUさんの既刊短編集『ビタースイート』を
ご紹介作とさせて頂きます。

3

進化している

遙々アルクさん、ARUKUにペンネームを変更されていたんですね(雑誌を見てなかったので知りませんでした!)
また今回の短編集もちょっとした心のトゲや、切なさが満載でした。
絵も見なれてきたせいか、目線のあれ?は多少あるものの、動きは感じられるように、ただのポーズだけではなくなってきた気がします。

表題は、かつて瞽女(流しの三味線弾き)の母親と一緒に旅して生活していた為にまともに学問をすることができなかった青年・水町が猫を拾い、飼ってくれそうな家へ置いていこうとした先の家で、先生をしている英と出逢う事から始まります。
母を亡くし、勤め先でもつまはじきにされているような、淋しい人。
英のひざの上で気ままにかわいがられる猫を見て自分もそんな風になりたいと思う気持ちは、英の作品を読んでしまったことで欲情に変化してしまい・・・
何にも執着などしていなかった水町が、どうして英にこだわるようになるのか、この短い短編の中では、急激な性格の豹変にしか見えないのです。
英は一本筋が通ったものがあったので、水町の変化が微妙なラインですね。
ただ、自分が想像したのは、水町の母が瞽女だったということでひょっとして売春婦まがいのことをしていたかも?という想像ができるのです。
そう考えた時に水町に流れる”淫蕩な血”が、英の官能小説を読んだことで目覚めた。
・・・そんな風に考えるのは邪道でしょうか?

ARUKUさんの作品は、苛められっ子であったり、周囲に打ち解けられない人とか、トラウマ持ちの設定が変化していく印象が強いのだが、今回も小粒ながらピリリとした辛みを効かせている。
■『台風13号』は苛められっ子の話。
台風の日に古井戸に落ちてしまった、しかも嫌っているいじめっ子のリーダーと。
嫌いっていうのは、彼にとっては注目する人間だったってことなんですね。
そして、意外にもこの苛められっ子土屋君というのは人気者だったのかもしれない?
そんな幼い気持ちのやり場を苛めにしてしか表現できない思春期のやりとりだったのかな?とも思います。
これに10年後の再会話が付いていて、何となくその後を想像させてくれてワクワクするのですが、、
■『琥珀の月』はストーカーものです。
何もかも知っているストーカーは「あなたが僕を好きになってくれるなら何だってするよ、死んでもかまわない」と、それを実現するような事故に逢った時、ストーカーにおちてしまう。
ミイラ取りがミイラになるの逆バーションとでもいうのだろうか?
ストーカーの勝ち?
■『SNOW BLIND』は再会モノですが痛い!
高校を出てから音信不通になっていた二人が再会した時にぶつけ合う気持ち、憎しみと愛は表裏一体で。
もう諦めたつもりが、少し覚えた嫉妬の気持ちに、それは炎となる。
忘れていたつもりの気持ちはあまりに大きすぎるものだったのか、それとも同情か。

どちらかというと、過去の『ビタースイート』に似た雰囲気の作品が多かったですね。
涙をさそわれるという苦しいものはありませんでしたが、それなりに重さを、でもラストは何となく救われて、とりあえず笑顔で終われる。
救われる姿はなによりなのです。

6

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