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シリーズ第3部の1冊目。通しで12冊目になります。
収録作
・シンデレラ・ウォーズ
・灼けたトタン屋根の上のバイオリン弾き
注!!以下ネタバレしまくっています!
「シンデレラ・ウォーズ」は、桐院家との直接バトルの話です。読み応え満点の内容はハラハラどきどきウルウルじーんとくるもので、読了後はグッタリでした。
家政婦のハツさんは桐院家のある事情から男色を憎んでいるのですが、今回の彼女の言動は常軌を逸していました。圭の部屋に1人でいる悠季を殺そうと出刃包丁で刺します。戻ってきた圭が気付いてパニクりますが、伊沢さんの迅速的確な対応により大事にはならずにすみます。医者である晃嗣叔父さんが傷の縫合のため近くの外科に連れて行こうとするのですが、悠季は傷が浅かったことから圭の反対を押し切って、阿部氏たちとのカルテットにも飯田さんを初めとするM響さんたちとのカルテットにも参加して見事に演奏を成功させます。
その後、病院で治療を終えた悠季は圭について桐院家に戻り、圭の御両親+小夜子さんと対決します。病院で晃嗣叔父さんに「小さな恋のメロディー」ごっこだと言われた2人ですが、悠季の言動は大人だと思いました。ハツさんを責めることは決してせず、ハツさんの件で深く傷ついたであろう圭のことばかり心配して、更には圭が両親の前でブラックな一面を見せる姿に哀しくなり涙しながら「育ててくれた御両親にそんなことを言ってはいけない。僕たちが言っていいのは『許して下さい』というお願いだけだ」と圭を諭します。この時の悠季は天使に見えました。心が清らかで美しくて純粋な悠季にヤラれました。これまでは悠季の良さというものが今ひとつ分からなかったのですが、このシーンで初めて圭が悠季を選んだ理由が分かりました。
そして圭の母上も悠季という人物を認めて本音で自分の結婚や圭への思いを話してくれます。圭は義母の本心を知ってヒッソリ涙し、悠季はそんな圭に優しい言葉を掛けながら御両親の前だということを承知で抱き締めます。御両親にも小夜子さんにも気に入られた悠季は、小夜子さん提案の「3人結婚」を勧められてしまいます。
「灼けたトタン屋根の上のバイオリン弾き」は、実家での騒動が原因でひとり苦悩する圭の話です。圭の内面に踏み込んだ読み応えある話でした。
圭の心は崖っぷちに立たされています。ハツが悠季を刺したこと、悠季が刺されて傷を負ったこと、義母の気持ちを誤解していたこと、その誤解による親子関係の歪み、両親と家への反抗心の基で築いてきた己のアイデンティティへの疑問。更に悠季が刺された傷が原因で発熱嘔吐したことが圭の心に大きな影響を及ぼします。
悠季は久々にソラくんの様子を見に行って生島さんに刺されたことを見抜かれ(喧嘩のプロですから)自宅まで送られて嘔吐するのですが、この一連の生島さんは頼もしかったです。また勝手に上がり込んでいた小夜子さんもお嬢様らしくないテキパキさが良かったです。
そして圭ですが、悩める彼は仕事をサボり、フジミで振りミスまでします。悠季は、プライド高き圭の心に一線を越えて踏み込むことは2人の関係の終わりとなるかも知れないと不安になりながらも、自分をゲイの道に引き入れたことを後悔している上に、音楽家の道を選択した自分の根底にあった思いにも疑問が生じているのではないかと圭に問います。しかし悠季による一方的な話し合いは途中のままになります。
そんな中、A大OBオケの練習中に圭が喘息発作で倒れます。伊沢さんと共に駆けつけた悠季は、圭が死んだと勘違いして取り乱し鎮静剤をうたれます。圭の方は死にそうになってようやく、どうあっても悠季を手放すことなどできないことを悟り、病室の隣あわせのベッド上で愛し合っていることを言葉で確認し合う2人でした。
なお、小夜子さんの果敢な猛アタックが始まっています。そして生島さんはソラくんをアメリカに連れて帰るつもりでいるようです。
守村悠季はコンクールで3位に入賞した駆け出しのバイオリニストです。
今回は、伴侶で指揮者の桐ノ院圭の、祖父の誕生日パーティーに花を添えるべく、四重奏に参加することになりました。
自分と圭との関係を理解してもらえるチャンスかもしれないと、前向きに取り組む悠季に降りかかるのはいじめの嵐!
四重奏では重鎮のジジイどもに囲まれてすっかり脇に追いやられ、出されたお茶にはガラス片が混じります。
キレた圭は、自らも四重奏団を編成して、こちらにも悠季を出そうと画策。誕生日のパーティーはすっかり戦場となってしまいます。
そしていよいよもうすぐステージだという時、悠季を土壇場に追い詰める事件が!!
このシーンは、ものすごく悠季がかわいそうで、痛かったです。
言葉の暴力に加えて刃物が!
「男芸者」とはあんまりな言葉です。傷つきます。
悠季はこの窮地にどうするのか?
真正面から戦う、バイオリニストの悠季が見ものです。
同時収録に「灼けたトタン屋根の上のバイオリン弾き」があります。
悠季を傷つけた自分の実家に苦しむ圭の、葛藤につぐ葛藤で、読者ものた打ち回る感覚に陥ってしまいます。最後の救済にほっとしますよ。
今回もヘピーなお話で、ガッツリ読みました。