かえっちょ
こちらの同人誌は肩の力が抜けていて、木下けい子さんの良さがよく出ている一冊ではないかと思います。
「由利先生は今日も上機嫌」のスピンオフとはいえ、描かれる人物は違います。
元の作品、人気作でありますけども、
白状すると私はそこそこかな?とまでしか思ってなかったんです…。
(再読すればまた印象が変わるかもしれませんが。)
しかしこの本は文句なし!大好きです。
コミカルさと切なさ、その両方がこの短い頁のなかにあります。
画家の橘高の家へ訪れる、編集者・辰巳。
この二人のやり取りが楽しすぎる!
辰巳を愛玩用として、さりげなくセクハラする橘高氏w
辰巳もやられっぱなしではなく、容赦なくつっこむので面白さ倍増です。
しかし時代は、昭和の戦後まもなく。
彼らの他愛ないやりとりも、小さな約束も、あの傷みとはまるきり無関係ではいられず、
そして夏になると思い出さずにはいられないのだろうけど、
人は進んでいかなくてはいけない。
彼らは今日も笑い合えていますように、と
ささやかな幸せを願わずにはいられません。
「由利先生は今日も上機嫌」のスピンオフというか、世界観だけ同じ物語。
会話の中に、まだ新人作家だった由利先生の名前がちょこっと出て来るが
実際には全く登場しない。
ということで、由利先生の本編より少し時間が遡った1947年の夏。
終戦から2年の歳月が流れた。
暑さの中、田舎(といっても現在の東京郊外だろう)の一軒家を訪れる編集者辰巳。
この家に住まうのは、和服姿の画家・橘高寅之助だ。
毎日絵だけを書いて暮したいという寅之助に、嫁か弟子でもという辰巳……
本気か冗談かというやりとり、
モデルをやらされて出来上がった絵を見れば、◯◯◯◯(ピー)、
「全部ナニ?!モデルいらねーだろうが!!」と怒る辰巳に
「君の立派なイチモツ想像したよ」とうそぶく寅之助(笑)
そうやってコミカルな展開なのだが、最後数ページに胸が締め付けられる。
散っていった男達。
その悼みを抱えながら、生きていく男たち……
たった24ページに描かれた、せつなくも美しい世界です。
>snowblackさま
こんばんは~m(_ _)m
私もこのコミカルとシリアスの微妙な混ざり具合にため息をついたひとりです。
どんな形であれ、かえってきたんですよね。
「おかえり」とむせび泣く姿を見て夏ならではの寂寥感にキュッと胸が締めつけられました。
前半のナニ「ピー」攻撃が嘘のよう…。
うっすい本なんですよね~、なのにメリハリがきいてました。