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umiwashi ni tsugeyo
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
1945シリーズの番外編集第3弾。20本のSS・短編と、1本の牧先生のマンガが収録されています。メインは浅群塁と三上徹雄の「蒼穹のローレライ」の二人です。たまにちょこっと月光ペアが絡んで来ます。
2015年から2021年に書かれた、同人誌や旧版の特典小冊子等からの再録と、2024年の小説Chara vol.50に掲載されたSSと牧先生のマンガの再録、あわせて約390ページの文庫本です。「郵便飛行機」と同じくらいの厚さです。
このうち、「面影」「城戸とヘルブック」「明日、恋を知る」「ふたりあそび」「ここからいちばん遠い星。」「『 』」 「軍手のひみつ」の7本は、同人誌「青空のローレライ」に掲載されているものです。
読み終わるのが勿体なくて、少しずつ何日もかけて読んでいました。もうあと少しで終わっちゃうなあというのが淋しくて。「蒼穹のローレライ」が大好きで、結末を知っているからこそラバウルでの毎日がとても大切で貴重な時間と思い、二人の会話や諍いに癒やされていました。番外編集ありがたいです。
「青空のローレライ」の中で一番好きで一番泣いたお話(表題作)が本書には収録されていなかったので、敢えて入れなかったのだろうと思いました。続く番外編集に載るのか、それとも外したのか、気になる所です。
毎度のことですが、すべてのお話にコメントすると大変なことになってしまうので、特に気に入ったお話のみレビューします。
○十二夕
福山という分隊員の目からみた塁のお話。他視点のお話は時に客観的に人物や状況を見ることができるので好みです。ただ、本作はそれだけではなくて、七夕の短冊に願い事を書くところを、物資が無いためにやむを得ず丸い石に鉛筆で願い事を書いたお話。
空がよく見える場所に置かれた丸い石には、「三上と内地で猫が飼いたい」とか「遠足に行って池を見てみたい」「豆腐屋の豆腐を買いたい」「祭りに行って見たい」と書かれており、私はそのページのその文言を眺めて、胸が苦しくなりました。これが叶ったらどんなに良かっただろうと。
猫については、前述の「青空のローレライ」でそれらしき描写がありますが(らしいだけで飼ったわけではない)、牧先生が巻末イラストで、三上と塁が祭りを楽しむ様子を描いてくださっていて、もうこの絵を見ているだけで泣けてきまして。二人にこんな日が来て欲しかったなあ。口絵の夏の日の二人もね。
塁は遠足にも行ったことがなかった人だし、色々なことを楽しんで欲しかったですね。
○元厄災の日
三上が塁の誕生日をお祝いするお話。塁は自分の誕生日のことを、「両親が絶望した日」と認識しています。
生まれた自分の目の色が蒼かったから、母は不貞を疑われ、父はおもてに出せないと塁を人の目に付かないように家に閉じ込めます。長男、一人息子なのに。
三上は塁が生まれた事を心から祝って、物資の少ないあの島で口伝えで情報を集め、わらしべ長者みたいに物々交換を重ねて塁にプレゼントをするのですが、私の涙腺は崩壊しましたー。
しかも、このお話のタイトル「元厄災の日」。「元」がついてます。塁の中で自分の誕生日に対しての意識が変化したのです。こんな素敵なSSが読めてとても幸せでした。
○ゆうれいこわい
泣いた泣いたとばかり書いていますが、この「ゆうれいこわい」は傾向が大分異なり、整備員の間で怪談話が流行ったときの、三上が体験した不思議話です。まあ、種を明かせば不思議でもなんでもないのですが、「とりのはなし」でも似たようなことを経験している三上だし、そもそもこの人は堅実に理屈をかためて物事を考える人なので、現象を怖がったりしない。
ただ、その上を行く事態になるので、三上の心臓は違う意味でドキドキしっぱなしですね。ドライバーを拾うところすごく好きです。
○海鷲に告げよ
いいお話でした。梅原という整備員と榊という搭乗員のお話で、三上や恒や秋山もちょこっと登場します。
梅原は艦で盗難事件の犯人に仕立て上げられて最前線のラバウルに所属替えになったことから、人を信じることに抵抗を感じるようになります。その梅原の前に突如として現れた榊は、係累が居ないことをいいことに居田少尉という人との交換で島に置いていかれた人物。家族が居ないから仕方ないと笑う榊と、そこに自分を重ねてやるせない気持ちを抱える梅原とのお話で、堪能しました。
こういう番外編もいいですね。
それから、「軍手の秘密」と「ふたりあそび」は何回読んでも可愛らしいです。レビューは「青空のローレライ」にしていて繰り返しになってしまうので、ここには書きませんが、もう本当に大好きです。
マンガが7ページ分あるためか、挿絵が1枚のみです。塁の壊れた時計を修理する三上と、それを寝そべって見つめる塁のイラスト。とても素敵で何度も戻って眺めました。
番外編3冊目!こうして読める幸せ。
尾上先生や出版社様方のご尽力に感謝いたします。
蒼穹のローレライの二人。
塁の不器用さ、いといけな様、読んでいて切なく胸が苦しくなります。
三上の話し方を読むと懐かしく
ああそうだった、シリーズで一番優しい口調だったな‥思い出しました。
恒と六郎も塁の振り回され役で登場。
恒が同じ搭乗員として塁を理解しようと、救いたいと思っていることに涙します。
シリーズ中唯一戻らなかった塁。
どのお話にも切ない気もちにさせられてしまいますが
三上と一緒に過ごしたことで塁が癒されていたことに安堵します。
苦しかった塁の居場所が確かにあった。
読めてよかったです..。m(_ _)m
ありがとうございました。
尾上先生が
「あと搭乗員二人分残してるんだ~書きたい~」と
かいてらしたので
是非に⋯!と期待してしまいます
番外編の続編も楽しみです。
ただただ一言、素晴らしい番外編集でした...
全21編の短編が収録された、1945シリーズ番外編集第3弾です。
同人誌や旧版のコミコミさん特典など、
今では読めないもの・入手の難しいものがこうして一つの形で読める喜び…!
噛み締めました。
1945シリーズ、どの御本も大体一度は読み返しているのですが
実は『蒼穹のローレライ』だけはどうしても読み返せなくて( ; ; )
この番外編3作目は、「蒼穹の〜」の二人が主軸のお話だと知り
どきどきしていました。
(「碧のかたみ」の六郎×亘ペアもちらっと出てきます☺︎)
でも、読み終えてみれば、ただただ不器用でうぶな塁のいじらしさに
胸打たれるばかり...
戦後18年経ち、40代となった三上が初めて塁からの”手紙”を
読む「ローレライからの手紙」。読みながら涙を堪えきれませんでした。
ただただ、どうにか三上を生き延びさせ、日本に帰らせたいと願い
必死の思いをしたためた塁。
この「ローレライからの手紙」には伏線?があって。
その前のお話の中で、幼い頃、屋敷に閉じ込められていた塁が
母方の祖母から人生初めての手紙をもらうー
というエピソードがあるのですね。
一生懸命にお返事を書いて女中に託し、
まだかまだか…と期待しながらおばあちゃんからの返事を待つ塁。
そんな塁宛てに、「自分以外にも手紙を送る相手がいますか」と
愛情深い返事をくれたおばあちゃん。
手紙を書く相手などいないー
という独白があってからの、最後のこのお話にやられました。
18年越しに三上のもとへと届いた手紙が、
寡黙な塁の心を何よりも饒舌に語っているのが愛おしく、
切ない..胸に込み上げてくるものがありました。
全てのお話の感想は書ききれませんが、そのほか
印象深かったものについてもレビューを残しておきます。
◆「軍手の秘密」
三上×塁、二人の二度目の情事について。
軍人として、男としての誇りを持ち、今度は自分から潔く(?)
誘おう!とする塁のズレた頑張りが微笑ましい!可愛い!
(…なんて言ったらものすごく怒られそうですが)
でも、「俺とま◯わってくれないか」は直接的すぎる...!w
三上に聞き返され、3回も言うことになる様子に笑ってしまいましたꉂ(๑˃▽˂๑)
そして、三上の匂いのする軍手をくんくんする塁。(わんこ...!)
匂いをもっとつけるためには、
アレをしている時に三上に軍手をつけさせて…なんて妄想し、
自分でカーッと赤くなってるところもたまらなく可愛いし愛おしい(*´˘`*)
その後三上に見つかった後の二人の様子は
残念ながら描写はありませんが、
想像するだけでふふふ、と心温かくなるお話でした。
◆蒼穹のローレライ<まんが>
◆蛍石線戦異常なし〜嵐になるまで
こちら2編(漫画+小説)は雑誌『小説Chara』で拝読したもの。
三上と塁、二人の関係が変わり始めるきっかけとなった
”時計”のお話です。
塁の壊れた時計を丁寧に丁寧に扱い、修理を試みる三上。
そんな彼を見て、頑なだった塁の心が緩やかに解けていく様に
ホロリ...
そして終盤、私刑から三上を守ろうと塁が画策した末の結末は
なんとも爽快!!
城戸大尉にとっては、とんでもないとばっちりでしたね笑
◆整備員の育て方
もーーーーこちらも、塁のいじらしさ、健気さに
きゅんが止まらぬお話でした。
三上を喜ばせよう(&好きなものを探ろう)と、
搭乗員への配給の中から好きなものを選ばせてプレゼントしようとする塁。
うまく喜ばせられなかったように感じ、落ち込む塁だけれど、
そんな塁からの”ある一言”に、三上は飛ぶように喜んでー
というお話です。
塁のカッコいい飛行服を見せるより、ミカン缶をあげるより、
三上にとって何よりの”ご褒美”となるのは、
そこなのね…!と、ラスト数行ににっこりしてしまうお話でした。
◆ふたりあそび
囲碁やカードゲームも嗜まず、喉が焼けているため
食べ物や酒もダメ。
何の楽しみもなく過ごしているように見える塁に、
なんとか娯楽を与えたいー
そんなことを考えた三上。
一体どんな娯楽を…と思いながらワクワク読み進めたところ、
まさかの塁の可愛らしさ(これ、何回言ってるんだろう...)に
心を撃ち抜かれました。
三上が見つけたとある石を、じゃんけんして勝った方が
持つ。
ーそんな娯楽とも言えなそうな遊びを、嬉しそうに繰り返す塁ー...!
三上以外には決してその石を渡そうとしない
いじらしさにも、心がきゅーっとします。
凄腕の搭乗員の中に見え隠れする、少年の心、
一途健気な思い。たまらないなあ...
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唯一無二の二人の「絆」が、日常のあちこちの場面から
感じられる珠玉の短編集。
ふと思い出した時、お気に入りの話を何度でも読み返したいな、
と思える最高の一冊でした。
10月下旬には、第4弾の番外編が出るとのこと。
今から首を長くして、待っています…!