未完成

mikansei

未完成
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神12
  • 萌×20
  • 萌0
  • 中立0
  • しゅみじゃない0

278

レビュー数
2
得点
60
評価数
12
平均
5 / 5
神率
100%
著者
凪良ゆう 

作家さんの新作発表
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イラスト
北野仁 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
価格
ISBN
9784199011535

あらすじ

自分を制御する術を知らない高校生と分別ある大人でありたい高校教師のほろ苦く切ない恋、凪良ゆうの初期BL代表作待望の復刊!

表題作未完成

17歳→27歳、高校生→美容師
27歳→36歳、英語教師

その他の収録作品

  • Young Swallow
  • さなぎ
  • Blooming
  • Ordinary Life

レビュー投稿数2

”暴走機関車”から、思いやりある大人の男へ。切なさと喜びに胸が震える

はー……最高に切なくて、痛くて、そして最後の最後に込み上げてくるこの幸福感。。


あらすじなしで、感想のみを。
ぐーーっと胸にいろんな感情が渦巻いているのですが、
うまく言語化できそうにないのがもどかしいです。。


自分は新装版になる前のものは未読、初めてこの物語を拝読しました。
読後の今、あらためて表紙を見返し、「未完成」というタイトルの秀逸さにも
ほうっ…とため息をこぼしています。

こちらの新装版には、新たに番外編2編(「Blooming」「Ordinary Life」) が収録されています。

特に、出会って9年、再会して同棲を始めた瀬名(攻め)視点の
「Ordinary Life」が最高に最高に幸せで。。

タイトルそのままに、”ある日常の風景”なんですが、仕事で後輩と揉め、
やさぐれた気分で帰った家で恋人が優しく生徒と電話する姿を見てはっとし、
お風呂でじっくり甘く抱き合ってーー

瀬名が高校生だった頃の、激動の日々の話を読んだ後だからか、
そんなささやかな日常の一幕が胸に迫ってきて、なんだか泣きそうになってしまいました;涙腺、緩んでるなあ。。

ただただ、先走る気持ちのままに阿南(受け)に激情をぶつけ、
体を抱く17歳の瀬名。

1行1行、1ページ1ページ読み進めるごとに
瀬名が阿南にどうしようもなく惹かれ、恋に落ちていき、好かれたい、
求められたいと必死に手を伸ばす様子が胸に迫ってきて、
たまらない気持ちに。

思わず一度本を伏せ、ふう、と気持ちを落ち着かせたほどでした。

まさに”暴走機関車”そのものの、若くて眩しい恋する青年の姿。

もー、デートに浮かれ、劇場に誘った時の瀬名の失態とか、
可愛くてたまらないです。阿南視点で瀬名を見ちゃう。
恋人の前でちょっとでもカッコつけたくて。カッコいいと思って欲しくて、
見直して欲しくて…

(元)ヤリチン攻め、どちらかというと苦手な方なんですが
物語序盤、阿南に恋をしてからの瀬名のことは、
もう思いっきり前傾姿勢で心から応援してました。

どうしても超えられない10歳差という年齢の壁、
生徒と教師という壁、そして重く重い家庭内不和の壁にぶち当たり、
もがく様子には心掻き乱された...( ; ; )

高校は中退して働くから一緒に住もう、先生さえいれば何もいらないから
大丈夫…
そう言い募る瀬名だけど、本人だって心のどこかでは「そんなの無理だ」という
思いがあって…でも縋らずにはいられない。


で、番外編以外は全て攻め視点で進むこのお話だけれど、
瀬名から見て10歳も離れた”大人”である受け・阿南の気持ちや苦しみも、
痛いほど伝わってくるんですよね。。

その表情や、気持ちとは裏腹な言動など、(瀬名と比べると)少ない描写でも、
彼の葛藤が感じられ切なさに胸が詰まってしまう。うあー…

二人の別れのシーン、別れてから涙を流す瀬名の姿が痛々しかった、、

どんなに気持ちが強くても、愛があっても、愛だけじゃどうにもならないことが、
厳然とそこにある。


でもでも、だからこそ!

後半、5年越しの再会がもうめちゃくちゃに輝く、というか。
もう住んではいないマンションに、足を運んだ阿南の気持ち。
そして、去っていく阿南を追いかけて、言葉で気持ちを確認して、
ついに離さずしっかりつかまえることのできた瀬名の気持ち。
…想像するだけでもう、胸いっぱいになります。

そして、再会し両思いになり、年下の恋人に”甘える”ことを覚えた
阿南の可愛さといったら!

こんな可愛い恋人、離せるわけないよね。
大型犬のようにじゃれつく瀬名の気持ちがわかります。


そして、スパダリ溺愛(時々俺様)彼氏へと変貌した瀬名も
カッコ良すぎて眩しすぎて✨
阿南を少しでも不安にさせたくないと、周囲にきっぱりカミングアウトもして。。

なんっって素敵な大人になったのか!

番外編の甘い甘いお風呂エッチが、最高に幸せです(言うの2回目だけど..)。

胸刺すような切なさと、それを超える幸福感と。
そんな気持ちを味わわせてくださった凪良先生に、
ただただ感謝の気持ちでいっぱいです。

3

十数年余りの時を経てもなお色褪せぬ名作

2014年版の方を既読済みで、およそ3年ぶりに再読ですが、やはり素晴らしい作品だなと改めて思いました。
2025年版は北野先生がイラストを担当しており、挿絵の雰囲気が前回の草間先生のときとはまた違う雰囲気を醸し出していますね。コミックス版の 『美しい彼』でお馴染みの美しい絵が、今度は『未完成』の世界を彩るとか、もう最高としか言えません……。゚(゚´Д`゚)゚。

レビュー自体2回目になるので、前レビューとのカブりも少々あると思いますが、今巻に加わった書き下ろしエピソードも含めて語らせてもらいますね。


家庭環境に難アリのやさぐれ高校生とゲイの英語教師の歳の差BLとでも言いましょうか。それか、禁断の恋か。出会いは最悪で、2人共に印象最悪なところから始まっていくところに注目のストーリーです。
両親の離婚問題と荒れた家庭環境のせいでクズ寄りに育ってしまった瀬名が、ホンモノの恋にぶち当たるお話で、冒頭から教師の阿南に返り討ちに遭うなど、攻めザマァ的なスタートが小気味よくて楽しい^ ^ こういった惹きつけ方はやはり凪良先生のセンスが生きていて、スタート地点から心を鷲掴みにしちゃう物語構成がグッドでした。

要は、ゲイをバカにした頭の空っぽな高校生が、自分がバカにしたゲイの教師に惚れていくストーリーということ。高校生らしい未熟さや目先のことしか考えない視野の狭さが眩しくも痛々しく映りました。
特に一線超えてからの独占欲はエグく、本当にノンケだったのか?と思うほど。いつまでも自分の欲しい2文字の言葉をくれない愛する人への苛立ちを、身体にわからせようとする歪な愛し方をする瀬名の心が苦しくて堪りませんでした。

彼の唯一の救いは阿南という存在です。家庭環境があれではどこかに温もりを求めたくなる気持ちが理解できるだけに、彼の阿南への強い執着心はある意味仕方のないことかも知れません。
身体だけじゃなく、心も欲しいと焦る気持ちは自己中心的でワガママだけど、でもそんな方法でしか気持ちをぶつけられないほど彼は若い。阿南のことより、自分の気持ちを優先させてしまう愚かな愛が切なかったです。

教師として生徒と身体の関係を持つことはタブーだけど、阿南が瀬名に身体を許しているのはなぜか。恋人でもない瀬名の欲望を一心に受け入れる理由はなんなのか。
阿南は大人ですので、瀬名のように分かりやすい態度を見せてくれません。
阿南の隠された本心は後々に分かることになりますが、自分の気持ちより瀬名の将来を大事に思う教師としての姿と、愛する人には幸せになって欲しいと願う瀬名を想う1人の男としての姿が垣間見え、阿南の想いもまた瀬名とは違うベクトルで愛が深いのだなと胸に熱くこみあげるものを感じました。

ただ一心不乱に相手に想いをぶつけることで愛していく男。
想いを潜めながら愛する男の幸せを見守る男。
静と動の対極にある愛し方のコントラストに魅入られてしまうシーン展開はさすがの凪良先生ですね。


時間を経て、精神的に大人になった瀬名の成長ぶりはすごかった。
こうなることが分かっていたから、阿南はあのとき瀬名の手を離したんだと。あのときの選択の正解が目の前に広がる景色にウルッとくるものを感じました。
2人の再会劇は、超最高すぎる……何度読んでも心が滾ります。
最高オブ最高……泣けるし泣けるし泣ける……
再会の演出がドラマチックで運命的で、素晴らしいの言葉しか出てきません!

書き下ろしのエピソードは、既刊のものに2つ短編が追加されています。
あまあまのアフターストーリーがこれまた最高でした。
十数年余りの時を経てもなお色褪せぬ名作の余韻に未だ浸っています。

2

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