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私は短編集よりも一冊まるごと同じ話の本が好きなのですが、この短編集は最高でした。
BL度は低めですが、短編でHまでいっちゃう話って「え、もう?」と思ってしまうこともあるので、短編としてはこのくらいのBL度でもいいかなという感じです。いえ、Hまでいっちゃう短編も好きですが。
【わたしの隠れ家へどうぞ】
表題作。短編のお話の中でさらに細かく話が分かれていて、とあるバーを舞台にした連作になっています。
この連作が、映画のような味わいで、とてもいい雰囲気です。特にライバル小説家同士の第一話が好みです。「おまえの悪口言っていいのは俺だけだ」って…こういう、仲が悪いように見えて実はお互いを認め合っているライバル関係って大好きです。恋愛描写はないけど、BLカテゴリだからニアBLとして見てもいいかな? この絶妙なさじ加減が堪りません。このお話ではっきりBLなのはバーオーナー×バーテンだけで、あとは全部ニアです。
【ワールド・マーケット】
このお話は個人的には「BL…?」という感じだったのですが、痛快なストーリー展開がよかったです。私はこのお話にBLっぽさは感じなかったのですが、見ている人に「痴話ゲンカ」と言われる口論のところは萌えました。
【其は怜々の雪に舞い -鬼と朧月夜-】
「怜々蒐集譚」にも収録されているお話です。不思議な雰囲気のしんみり大正浪漫。
このシリーズは最初のお話はBL度がけっこう高かったけど、だんだんBLから離れていくところが残念なようなニア好きとして萌えるような複雑な心境です。美人で男前な女形・葛葉さんが好きです。
【あうん】
この短編集のなかで一番好きなお話。【わたしの隠れ家へどうぞ】の小説家同士のライバルもよかったですが、この友禅職人同士のライバルもいい!
これもはっきりとしたラブ要素は用意されていないのですが、このニア加減にとても萌えます。男同士の、ベタベタしないけどしっかりある絆っていいなと思いました。友禅の作業をしているときにライバルが血を吐いてしまって、血が友禅に落ちないように主人公が後ろから抱きしめて口を押さえてやるシーンがすごく色っぽかったです。
【あふれそうなプール 番外編】
あふれそうなプールの後日談。私は良太が大好きなので、名前しか出てこなかったところは残念ですが、色気を増した入谷と木津がとてもよかったです。
あふP番外編以外はBL度が低い短編集ですが、ニアBLが好きな人には垂涎の一冊だと思います。
今まで読んだ石原さんの作品では上位に来るほど気に入りました。
表題作は、あるバーに集まる客達、バーのオーナー、バーテンと店のスタッフの日常ドラマなんですが、とてもスタイリッシュでいてほろ苦い。
「ワールド・マーケット」では下町の人達の人情味と男意気が小気味よく描かれ、「其は怜々の雪に舞い-鬼と朧月夜」ではちょっと昔(大正時代?)の不思議な妖の世界があの時代独特の風情で描かれています。
「あうん」はライバルでありながら、おそらく一番よく理解しあえている二人の友禅職人の友情を、ちょっとジンとくるテイストで。
「あふれそうなプール」番外編では、おそらく入谷が大学生で、木津が日本と海外を飛び回るビジネスマンになってます。
二人とも本編より更に大人っぽく、且つかっこよくなってて、キャーって感じでした(笑)。
表題作はオーナーとバーテンはもちろんどの2人組の客にもトキメいた。一番惹かれたのは第一話のライバル作家同士で、ツボ過ぎて彼らのその後が読みたい。
他、官能小説で食い繋ぐ物書きとヤクザとの関係がちらつく板前の「ワールド・マーケット」、挿絵画家の出泉とその担当編集者・南と出泉の友人で役者・葛葉の「其は怜々の雪に舞い-鬼と朧月夜」(『其は怜々の雪に舞い』の前身作、『怜々蒐集譚』内に再収録)、タイプは違うが性根の似ている友禅職人2人の「あうん」、『あふれそうなプール』の2人の数年後の「あふれそうなプール番外編」収録。石原さんの作品は短編でも面白いし、続きが読みたいと思わせるような魅力的なキャラクターたちばかりだ。