BLの黎明を告げる作品にして、最高傑作!

トーマの心臓

トーマの心臓
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神33
  • 萌×22
  • 萌0
  • 中立0
  • しゅみじゃない0

--

レビュー数
7
得点
173
評価数
35
平均
4.9 / 5
神率
94.3%
著者
萩尾望都 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

作画
萩尾望都 

作家さんの新作発表
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媒体
漫画(コミック)
出版社
小学館
レーベル
小学館文庫
シリーズ
トーマの心臓
発売日
価格
¥676(税抜)  
ISBN
9784091910134

あらすじ

冬の終わりのその朝、1人の少年が死んだ。トーマ・ヴェルナー。そして、ユーリに残された1通の手紙。「これがぼくの愛、これがぼくの心臓の音」。信仰の暗い淵でもがくユーリ、父とユーリへの想いを秘めるオスカー、トーマに生き写しの転入生エーリク……。透明な季節を過ごすギムナジウムの少年たちに投げかけられた愛と試練と恩籠。今もなお光彩を放ち続ける萩尾望都初期の大傑作。
(小学館より)

レビュー投稿数7

傑作

傑作です。
10代の多感な時期に読み、心どころか魂まるごと震えた作品です。
同作者の『ポーの一族』よりも好きでした。
読むたびに印象が変わる作品でした。くだらないと思うこともあったし、ただただ悲しくも美しい物語だと思うこともあったし。

『これがぼくの愛。これがぼくの心臓の音。きみにはわかっているはず』
トーマという少年の死からはじまる物語です。なぜ死ななければならなかったのか、そこにある10代前半の子供の持った真摯な理由は、正直大人になった今は納得できるものではないんだけれど、昔はスッと心に落ちてきました。

愛とか友情とか親子関係とか許しとか癒しとか、いろんなテーマが、結論を出さないまま作品のあちこちに散りばめられてます。
魅力ある少年たちのそれぞれの思いのすべて、不器用さのすべてに共感しました。
ユーリの複雑さについては、キリスト教についての造詣が低かったころにはよく分からなかったけど、今は分かる気がします。
エーリクのわがままさにも真っ直ぐさにも憧れました。
オスカーは昔は大人だと思ったけど、今読むと一番可哀想な気がします。

素晴らしい作品です。
ぜひぜひ一度は読んでもらいたいです。できたらなるべく若いときに。

8

名作はやはり名作なのだ

24年組が流行った世代と私自身が違う世代なので所々感覚のズレがありますがトーマの身を投げ打ってまで伝えたかったユーリへの無償の愛には感動します。悲しいとか切ないとかじゃないただその純真な想いは神々しく、トーマという人間の他社に与えることのできる強さを持つ存在に心が震えるのです。

今どきのBLならユーリとエーリクとでハッピーエンドになりそうですが、でもあれでよかったと思います。ユーリにはトーマへの愛を胸に抱いて生きていってほしいです。

4

原点

傑作で、この作品がなければ半分以上の現代BLは存在しないはずです。萩尾望都先生の心理描写はもはや天下無敵です。人の心臓(読み:こころ)を読むそのものです。

BL入門授業ではぜひ読んでほしい作品です。歴史的にも、美学的にも。

Chill-chillに入っていないのですが、Fantagraphicsさんの公式英語版も持っています。大判サイズで、少し高級感があって、非常に快適です。やはりこういう系は英語で読んだ方が、雰囲気に合う気がします。

2

金字塔

この界隈で伝説とされる作品だから読んでおいて損は無いだろう、くらいの軽い気持ちで読み始めたら見事にハマりました。

ドイツのギムナジウム(寄宿学校)が舞台、トーマという少年が自殺するシーンから始まります。
キリスト教(多分カトリック)の話なので 友愛、家族愛、性愛など、様々な“愛”が出てきますが、中でも1番印象に残ったのはやはりトーマの無償の愛。
愛する人を救うために自分の身を捧げる、濡れ場の需要が高まる最近のBLでは滅多にない魂レベルの愛。ひたすらに美しいです。

終わり方としては、最初読んだ時には「えっここで終わっちゃうの!?」と少し物足りなく感じましたが、読み返すうちに いやこれでいいんだ、ここで終わるのが1番美しいと思うようになります。


この作品は確かに少年愛について扱ってはいるけれど、だからといって現代のBLと一緒にしてしまっていいのか?とは思う。同じテーマでもこの作品だけは全くの別次元にあるような感覚。
「パタリロ!」の魔夜峰央先生が自身の娘さんにこの作品を読むよう教育していた理由がよく分かります。

2

愛のリドル

古典を読むこころづもりで読まないと最後まで読みきれないかもしれません。

それでもチャレンジして欲しいからレビュー。

冒頭いきなりトーマの自死のシーン。

誰からも愛される彼が何故そんな事をしたのか?

ユーリはトーマとどんな関係だったのか?

トーマに瓜二つなエーリクが登場し、物語は進みます。

流石、掴みはばっちりです。
ミステリーやリドルが好きならこれだけで充分読めるでしょう。

その後はキリスト教での愛が描かれます。性愛よりは家族愛、隣人愛、無償の愛。

このあたりの描写は冗長で古典的なので初読の時は挫けポイントでしたw

ユーリの翼について、最後の方にわかります。

この先はネタバレかもしれませんが、こんな古典に今さらネタバレもなかろうという事で書いちゃいます。

悪魔の誘惑に負けたのではなく、自ら選んだ負い目から、あの複雑な行動になったんだと納得。

サイフリートの論文の概要をバッカスが語り、彼の傾向はわかります。

そしてエーリクとの対話でトーマの愛を理解したユーリはお茶会に参加。
ここは何度読んでも名シーン。

ユーリはヤコブ館の二階のはしで何があったのかエーリクに話します。

彼はいつかサイフリートさえ許すんだろうな。

もう一人の主人公オスカーも救われています(彼の過去は「訪問者」で読めます)

あ、読後は必ず冒頭に戻ってトーマの手紙を読んでください。
手紙のバックの絵はあのシーンだと判ります。

構成も流石ですが、やっぱり時代を感じる部分はあります。

それでも紛うことなき金字塔。

1

読めば読むほどに

味の出る作品なのかもしれない。
けれど
結局のところ、誰が救われたのか。。はたして誰も救われて居ないのか。
先日、風と木の詩でもそうでしたが、この位の時代の作品だからなのでしょうか
どーなのか・・と思うのですが
読後に胸がスッキリしない。
もちろん、悪い意味ではないのだけれど
巻末でハッピーエンド!とスッキリ読めてしまう作品に慣れすぎたのかもしれない。
スパっと終わらないからこそ胸に残るのであり、語り継がれるのかもしれないと思う反面で、最終的にはハッピーエンドを望んでしまう自分がいる。
難しいところ。

話は、自分を想って死んでしまった少年。
事故か自殺か。それは何故に。。。それを基盤として
若い少年たちの~なお話なわけで。。。
夢中で読んでしまったのだけれど、よくよく考えればこういう解釈もと
思うところもあるように書きながら思ってしまう。
このあと、あのキャラクターはどうしただろう。
このたと、このキャラクターはどうしたのだろう。
思いを巡らせてしまう。
傑作と言われる理由はきっとあるはず
もう一度読み返すべきか否か

3

手を借りて、1段ずつ昇って

 数年前に読んでいましたが、未レビューだったので再読。最初に読んだ時よりも、いろんな作品に触れたおかげか、理解できる部分が増えたように感じます。愛を死によって贈る。冒頭から読者にもユーリにも凄まじい衝撃を与えたトーマ。身勝手で一方的な押し付けのように思えるそれがそうではないと気付くのは、私もトーマも物語の終盤になってからでした。キリスト教信仰がどういうものなのか、多少知識が増えたことも、この作品の理解が深まった理由の1つだと思います。

 天使の羽を引き千切られたと思い詰めていたユーリ。自分にも選択の余地があったのに、己の悪い心がサイフリートの手を取ってしまったことが、彼を果てしない罪悪の海に沈めてしまったのですね。どんな人間でも心の中には天使と悪魔を飼っているけれど、家庭環境から品行方正でありたい気持ちが誰よりも強かった彼にとっては、1つの間違いがあまりにも重かった。そんな彼に、トーマ、オスカー、エーリクは三者三様の愛を与えました。トーマがきっかけと揺るぎない赦しを与え、人間の複雑な情愛を知るオスカーがそっと見守る優しさで包み、エーリクはもう一度飛べる翼を分け与えてくれた。どれか1つでも欠けていたら、ユーリは立ち直れなかったかもしれません。

 物語は別れで終わってしまうけれど、愛を取り戻したユーリ、愛を伝えることを惜しまないようになったオスカー、母親への愛を友への愛に昇華させたエーリク、皆良い変化を経ていて明るい未来への希望が感じられました。萩尾先生の愛の描き方には、いつも驚かされます。

1

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