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ore no jinsei ha tada nemuritakatta toiu ishi nomi de owaru
2018年からTwitterで連載していた作品をまとめたものとのことなので、読んだことがある方はいらっしゃるかも知れません。
私は初読で、内容も全然知らず、ただ表紙の雰囲気のみで購入をした完全なるジャケ買いでした。
主人公は樫村というアルバイトの青年。毎朝起きることも働くことも、食事することも風呂に入ることも、何もかもが煩わしくて、生きていることに価値を見出せなくて、この倦怠から逃れるためには死ぬのが一番いいのでは、と不意に思いつく。
バイト先であるコンビニで、そのときの呟きをたまたま聞いていた須藤という見知らぬ男に樫村は声をかけられ、車に乗せられて拉致される、というお話。
BLだと拉致監禁→Hな展開となりそうですが、このお話はそういう風にはならず(若干そんな箇所もないではない。でも直接描写はない)、逃避行が続きます。
読みながら思ったのですが、元の場所に帰りたいと望まない人(この場合は生きること自体が面倒くさい)が拉致されて監禁されても、衣食住が保証されていやな思いさえしなければ、そこがその人の居場所になるんだなと。(この感覚は危険かもしれないですね)
一番最初、須藤は樫村を「飼う」と言っていて、「猫の飼い方」の本を参考に同居していたんですが、二人の関係は飼い主とペットになぞらえるとそのとおりとも言え、興味深かったです。
樫村は初めこそ警戒していましたが、どうでもいいという考えだったのがいつしか須藤に依存するようになっていって、須藤がいないなんて考えられないと言うようになる。
また、よくわからない須藤の思考回路は、時々差し挟まれる回想シーンによって裏打ちされます。
彼は、もう一度生き直しているのだとわかります。
樫村の厭世的な感じに母親を見出し、前述のつぶやきがトリガーで、今度こそ間違えないように相手を大切にしたいと思ったのだろうと。
「好き」って言っていたけど、二人の関係性は恋愛ではないように思えるし、もっと家族とか同士っぽい感じを受けました。
社会から隔絶したこの二人の世界に割って入った第三者の存在が脆さを際立たせ、この後どうなってしまうのか、緊迫感とともに一気読みでした。
結末そのものは、私の好みではなかったので、神評価ではないですが、そこに至るまでの道程にはとても満足しました。