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against inu girai ha kuroshiba shachou to koi ni otiru ka
作家買い。
『ギフテッド~狼先生は恋をあきらめない~』と同じ世界観のお話で、獣人シリーズの2作目に当たります。同シリーズではありますが、続きものではないので前作未読でも問題なし。これ単体でも読めます。が、世界観というかバックボーンは前作と同じなので読まれていた方が分かりやすいという点はありますし、前作『ギフテッド~』の攻め・祭くんの小学校の時の同級生という人物が登場したり少しだけですが前作の主人公のお名前も出ていますので、前作を読まれているとより面白くは読めるかな?
まず今シリーズの世界観として。
「先天性獣化症」という症状を抱える人がいる、という世界が舞台。
生まれつき動物のような見た目をもっている。差別を禁止する法律はあれど、そこはかとない差別や偏見が根深く蔓延っている。
前作『ギフテッド~』は、先天性獣化症を抱えた祭視点で紡がれていくストーリーでしたが、今作『アゲインスト~』は先天性獣化症ではない、「普通の見た目」の人間である赤城視点で進むストーリーです。
製菓会社の営業マンとして働く赤城は、社内の人事により過疎化が進む温泉街を担当することになる。山奥のその地で何とか業績を上げようと奮起する赤城だったが、赴任初日、彼はその地に赴くことになったことを恨む事態に直面してしまう。
彼の取引先の温泉旅館の新社長は、柴犬型の先天性獣化症患者の猛という人物だった。先天性獣化症患者が苦手なのではない。赤城は過去のトラウマで犬が大嫌いなのだ。猛の見た目は大型の犬のそれ。犬嫌いの赤城はいきなりピンチに陥ってしまってー?
犬嫌いの受けさんと、犬型の攻めさんの恋の行方は如何に?
というお話なのですが。
前作は割としっとりしたお話でしたが、今作品はどちらかというとコミカル寄り。作中の雰囲気もですが、前作は笠井さんが挿絵を担当されていたのに対し今作品はyoshi彦さんがレーターさん。レーターさんの違いで、作品に対するイメージも大きく変わるなあ、としみじみ思ったりしました。
犬が大の苦手、なので取引先なのに猛を見るとつい腰が引けてしまう。
これはヤバい、何とか克服しないと。そう奮起する赤城に対して、当の猛は全く意に介した様子がない。むしろ自分のことが苦手と知ってからかう様子さえ見せる。
猛という人物が頑張り屋さんで人からの偏見や差別に真っ向に向き合い、逃げることを良しとしない青年。さらに自分を怖いと感じている赤城に対しても懐の広いところを見せる。
だからでしょうか、ほのぼのな展開が多いのです。
多いのですが。
んー、人に見せない苦しみや葛藤が、猛にないわけではない。
そこに加えて父である社長がなくなり、若くして老舗温泉旅館の新社長となった猛にはいろいろ反発する向きもあって。「犬が苦手」なだけであって先天性獣化症に対する偏見があるわけではない赤城とのやり取りが、猛にとってどれほどの安らぎであり、エールになったのか。
そして一方の赤城も。
彼は犬が苦手なわけですが、猛と出会い、そして苦手だから避けてきた自分を見つめ返すことになります。自分と違うというだけで差別する人たちと自分の何が違うのか。知ろうとすることをせず逃げてきた自分を鑑みて成長していく。
そこに二人の恋心だったり、赤城の元カレの存在が加わることで、いろいろなものがミックスされ、恋愛だけではなく、人と人との関わりだったり、友情だったり、そういったものが過不足なくバランスよく紡がれていくストーリーでした。
今巻も素晴らしい1冊でした。新たなCPの登場の予想も匂わせる展開もあって、ぜひとも続編もしくはスピンオフを描いていただきたいなあと切望しています。
「もうこの世界観だけで書き続けたらいいんじゃないか」とも思ったりしたんですけれども。でもなかなかそうもいかないんでしょうねぇ……少なくとも「この世界観のお話は書き続けて欲しいなぁ」と思います。だって、とにかく獣人の描写の部分が書いていて楽しそうなんですもの。
狼、柴犬と続いたので次は猫系ですか?
前作で先天性獣化症の例に挙げられていた獣は、割と大きくて獰猛な感じが多かった様に記憶していますが『荒々しい心を持った兎の青年』とか、読んでみたいんですけれどダメですかね?
ふざけてないんです。ギフテッドやアゲインストが『怖い見た目なんだけど実は繊細、あるいは陽気な頑張り屋さん』について書いていますので、その逆が読みたいんです。
だってどちらも『見た目と中身の大きな乖離に対する悩み』ですから。
少数派かもしれませんが、私は『ギフテッド』よりも今作が好きです。
まず、お話がコメディベースだから。
哀しさを表現する手法はコメディの方が優れていると思うんです。
あとキャラクターがいい。
洞ケ瀬の先天性獣化症に対する対応が、様々な悩みを一旦抑えた『大人の対応』だからだと思います。
素敵ですよ、彼。
逆境を一山超えた人っていう感じで。
惚れました。
もうひとつ「なかなか書きづらい部分を書くんだな」と思ったのは『マイノリティを特別視しないこと』について触れていることなんです。
寿近くんは子どもの頃、犬にかまれて大怪我をしたため、洞ケ瀬の見た目が怖くてたまらないんですが、それと同時に「差別はイカン」という意識も持っていて『獣人』という言葉を使った職場の先輩を諫めたりする。
これ、見た目を怖がるのとスラングとして使われている『差別用語』を使うので、どちらがより差別的なのかという、結構複雑な、でも実は根源的なお話だと思うんです。
極端な例を書きますが、知的障がいを持っている知人に「人の言うことがぱっとわかる訳じゃないんだから、あなた、気をつけなさいよ」って言うのってどうなのか?って話に近いんじゃないかと。
これね、お話の中でちゃんと結論を出しています。
これがね、すごいと思った。
考えてみれば寺崎さんは「獣人が好き」と言いつつ、獣人がマジョリティの世界を書く訳じゃない。圧倒的な多さの人間の中で暮らす数少ない獣人を書くんですよね。
だからテーマは『孤独』や『差別』。
この世界観を書き続けて欲しいと思うもう一つの理由は、寺崎さんが様々な孤独や差別に対して「どのように歩み寄って行こうとするのか、それが見たいから」。
『優しいモラリスト』がどう考えているのか、もっと知ってみたいです。
「ギフテッド~狼先生は恋をあきらめない~」が凄く良かったので、迷わず購入しました。
今回は前作と違って大人な二人で、それなりに恋愛経験があるので「相反する」二人がどう惹かれあって恋人同士になるのかとても楽しみでした。
その辺りがとても丁寧にじっくりと書かれていたのですが、私の的にはやはり前作の若さとか初々しさの方が好みだったので萌2にしました。
でも洞ケ瀬社長の寛大さであったりは、年を重ねて構築された物なのでやはり人間的には完成された良さもありました。そして、赤城はとても真っ直ぐな人物で「犬嫌い」を克服する為に元彼を利用する強かさや、復縁を望む本彼をバッサリ切る思い切りの良さがあって好みでした。
途中からは明らかに両片思いなのに、中々言い出さない二人にハラハラしたりもしました。
でも、素直に全部話すと言う姿勢に好感も持てました。
お互いに周りに嫉妬してるんだと告白し合う様子も好きでした。
古くて閉鎖的な山奥の温泉街「三易村」復興の為に、二人が奔走するお仕事面はやはり社会人ならではの面白さがありました。
このシリーズやはり続けて欲しいです。
今回は先天性獣化症の若社長と
製菓会社の営業マンのお話です。
犬嫌いの受様が苦手意識を克服して攻様の恋人をなるまで。
この世界には「先天性獣化症」により
獣のような容姿をもつ人がいます。
医学の発展で先天的な遺伝子疾患とされますが、
今も差別や偏見は根強く残っています。
製菓会社で働く受様は人事異動で担当エリアが変ります。
新しい担当地区は山間にある温泉街で
湯治目的の病人や年寄りが行く儲けの少ない過疎地
という印象の場所です。
会社でも数年前に営業部のホープをテコ入れするも
売り上げを伸ばす事ができず
今現在担当している先輩社員も営業を頑張ったものの
村の人間の協力が得られず需要は伸びず
次の担当となった受様は
「頑張り過ぎないように」と忠告されます。
ところが引継ぎで回った日、
受様は担当の老舗旅館で大問題に直面するのです。
実は受様は幼稚園児の時に
大型犬に襲われて全治3ケ月の大怪我を負ったトラウマで
犬ていう動物が大の苦手になっていたのですが
老舗旅館の社長が先月亡くなり、
東京で働いていた息子と代替わりしたのですが
その新社長が柴犬の先天性獣化症だったのです。
そして彼が今回の攻様になります♪
攻様は温厚で優しく穏やかな人ですが
黒の柴犬の凛々しさを際立たせたような
大型の犬型の獣化症患者で
受様の人生初の獣化症患者はびっくりするほど犬で
頭ではわかっていても心臓と脳みそは言う事をきかず
恐怖感にいっぱいで動けなくなってしまうのです。
しかも今までは物販は古参社員が担当していたのに
これからは攻様が担当すると言われた受様は
パニックで受け答えさえ満足にできないのです。
しかし攻様はそんな受様にも寛容で
犬嫌いの受様の態度を面白がりすらするのです。
果たして受様のお仕事はうまくいくのでしょうか!?
既刊「ギフテッド~狼先生は恋をあきらめない~」の続編で
女神に召喚された受様と英雄になる予定の攻様の
異世界トリップファンタジーになります♪
攻様が先天性獣化症なので既刊の攻様を知っている、
受様の先輩が既刊の攻様という設定ですが
既刊未読でも問題なく読めます。
既刊は獣化症患者の攻様視点でしたが
今回は獣化症患者に差別意識はないものの
子供の頃のトラウマで犬が大の苦手な受様視点にて
獣化症患者として生きることの難しさが
描かれていました。
自分と異質なものを認める事、受け入れる事は
とても難しい事ですが
受様は取引相手である攻様と付き合っていくために
"犬嫌い"を克服しようとします。
犬が苦手じゃなくなれば犬の獣化症患者である攻様に
普通に接することができるのではないか
と考えるのです。
確かにソレは有効な手段ではあり
苦手意識を克服しようとまでする受様に
攻様も徐々に興味を持ち、
恋へと進展していくのですが
攻様がとても大人で受様の言動に寛容ですが
受様の態度は"こうあるべき"という概念であり
相手を思っての言動ではない態度が散見します。
単純に受様が苦手意識を克服したら
攻様と恋仲になりましたというのではなく、
受様が無自覚だった意識を変えていく展開が
すごく深いなと思いました。
また新たな恋物語が読める日を楽しみにしています。
ギフテッドに続き、2作目の獣化症の話。
面白いです。
テーマは"差別"です。全作同様。
ルッキズム+セクシャリティ。
簡単には語れないです。こちらはBLで、ケモ耳で、という枠組でストーリーが組まれてますが。
獣化症はそもそも、獣人とも少し違うんですよね。あくまで、見た目が獣な人間。能力は高いけど、子孫は残せない。
これって、現代社会でもありますよね。
神経繊維種症だったり、血管腫だったり、見た目問題。
意識すること、しないこと。どちらも受け取り方で差別になり得る。
最終的には信頼関係と、受け取り手によるような気もしますが。
今作の方が、大人同士、距離を測りかねている両片思いな感じが、私は良かった。
お互いの想いを伝え合うシーン、すごく良かった。
ものっすごいフィクションなのに、現実感が有る。
もだもだ遠回りな言葉ばかり出てくるんだけど、実際、決め台詞をビシッと言える人なんて、そうそういないですよ。
獣人ものなのに、等身大のリーマンもの読んだ読後感なのが不思議。
黒柴が意外に手練なのは笑った。
デビュー作である「ギフテッド~狼先生は恋をあきらめない~」がとても好みだった為、スピンオフであるこちらの発売も楽しみにしていました。
で、今回も、すごく優しいし心に響く素敵なお話なんですよ。
幼い頃の経験から大の犬嫌いの主人公・寿近。
新しく異動となった営業所での取引先社長・洞ケ瀬ですが、なんと苦手な黒柴の獣化症患者だったんですね。
ところが、あからさまな恐怖心を見せと失礼な態度をとってしまった寿近に対して、何故か洞ケ瀬は興味津々と言った様子で親しげに近付いてきてー・・・って感じになるんですけど。
えーと、前回同様、攻めは獣化症患者になるワケですが、おおらかで思いやりがありと言った感じですごくデキた人物なんですよね。
そんな彼と関わりあう事で、苦手なハズの犬(の獣化症患者)なのに、それすら乗り越えて相手を好きになる寿近。
出会って、互いに理解を深め、ただの好意がやがて恋愛としての好きに変わって行くー。
こう、すごく等身大の恋愛が丁寧に語られる傍ら、自分の中の無意識の差別心だったりエゴだったりと言った、難しいテーマにもしっかり斬り込んで行くのが凄いと言いますか。
なんと言うか、読んでて色々考えさせられる作品なんですよね。
深いテーマで読ませてくれるよなぁって感じで。
とても素敵なお話だと思います。
ただこちら、これは本当に個人の好みの問題になるんですけど、主人公が好きになれない。
何だろうな・・・。
前述の通り、彼は大の犬嫌いになるんですよね。
でも、差別は良しとしない人物で、先輩社員なんかが「あの獣人社長」とでも言おうものなら「先天性獣化症です! その言い方は差別です!」みたいな。
言ってる事ってとても素晴らしいんですよ。
あと、自分の犬嫌いを克服する為にちゃんと行動を起こしと、好人物に見える。
見えるのに、何故かチグハグな印象を受けると言うか、見てると妙にイラつくと言うか・・・。
いや、う~ん・・・。
何でこんなに彼の言動が引っ掛かるのか考えてみたんですけど、どうも偽善の匂いを感じちゃうからなんですよね。
えーと、差別はダメなんじゃなく、自分は差別しない人間だと周囲に思って欲しい。
だから「差別はダメですよ!」みたいな。
だって、「獣人の友達が居て・・・」って感じで親しみを込めて話してる先輩に対して、「その言い方はダメです!」って、逆にこう、めちゃくちゃ獣化症患者を意識してない?
実のところ、誰より差別してる事にならない? 自分達とは違う存在だと。
何だろうな・・・。
彼はとにかくずっとこんな調子でして、その意識の持ち方と言うのに嫌な気分になるんですよね。
また、結構な自己中と言うんですかね。
自分基準でしか想像出来ない。
や、実はそこのところを先輩社員や攻めから指摘されて初めて気付くんですよね。
そして、成長を見せると言うのが見どころではあるんですけど、成長出来て良かったね!とはなかなか行かないと言いますか。
こう、私の中で嫌悪感の方がずっと大きくなっちゃってる為に、巻き返しがきかないと言いますか。
こちら、テーマが前回同様「差別」になるんですよね。
ただ読み終えての感想ですが、こういうテーマは取り扱いが難しいんだなぁと。
そのテーマを書ききる為ではあるものの、読者が主人公に嫌悪感を持ってしまうようなら失敗じゃないのかなぁ。
いや、これは私が受けた印象でしか無いし、そもそも私の心が極端に狭いのが問題なんだと思うけど。
評価を迷ったんですけど、主人公に対する好き嫌いを考慮しても素敵なストーリーだったので「萌」です。
素敵な作品なのに申し訳ない。