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hi ni nagarete hashi ni iku
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
表紙にある様に、本作は五百雀が表紙!という些か地味な仕様。ええ、地味で堅実。
それが雀の良いところ。私も彼、結構好きです。実はそろそろ持ち越され、持ち越されして来た鷹頭の出自や日越の当主との因縁の物語を待ちかねていたのですが、チラリと触れただけで、またもや持ち越され。何不自由無く育ったかの様な不遜な態度の鷹頭も、幼ない頃に父に先立たれ、生家より鷹頭家に養子に出された子供だったのでした。
そこで鷹頭をして「本物の紳士」と称される養父から、その審美眼を受け継いだと見え。鷹頭は、本物を見極める目やセンスを培ったのですね。
美人で聡明な千鶴さんは、前巻で、働く独身の女が生意気だとか、素行が悪い等とあらぬ噂を立てられ、下宿を追い出されそうになっていたところ。結局、実家住まいの卯ノ原の元に身を寄せる事になる。ここ、三つ星の手代たちがこぞって下宿屋の主人に文句を言いつつもサッサと引っ越しを手伝って引き払うところ、スカッとします。まぁ、庶民の意識はまだまだ変わらずの世の中ですが、千鶴さんや卯ノ原のことを「おい、女!」と呼びつけていた店員達も彼女達を働く仲間だと認めている事が清々しくて嬉しい。ただ引き続き但馬と千鶴さんにフラグが立っているのが、わたし的には不満。だってねぇ、但馬は私の中ではモブですので。千鶴さんには鷹頭あたりのイケメンと何とかなって欲しいものです。
ま、BL的には鷹頭 × 虎三郎 の線も捨てきれ無いんですけどね。そこは妄想で補うとして。
さて。本題、雀のお話に入ります。商家の末っ子として育った雀は、8歳で大店の「三つ星」の奉公人になる。この時、当主だったのは長兄の存寅。雀は存寅に同じ歳の虎三郎の「友達になって欲しい。」と言われたが、その言葉は今も雀に重くのしかかっている。
大店の息子である虎三郎と一奉公人の自分。常に人に囲まれる人気者の虎三郎とその中に馴染めない自分。自分と虎三郎との間の隔たり。優秀な番頭だと称されていても。とても友達と言える間柄では無いし、なれない。その事はずっと雀に焦燥感と懊悩をもたらしていたのだと思う。そんな折、三つ星が存寅の失踪後、いち早く辞めていった元番頭、藤村が雀に接触する。藤村は雀を唆して企みがあったのだが。
雀は鷹頭に自身の懊悩を看破され、虎三郎の「才能を妬むのはもうやめろ。」と言い渡される。雀は自分でもおそらくは気付いていなかった気持ちに気付くのだ。
それこそが、虎三郎と「対等の友達」になれなかった理由なのだと。
この、ラスト周辺の、目がパッと覚めて行く様なやり取り、鷹頭と雀、雀と藤村、雀と卯ノ原、シーンと言葉を変えて連なって行くページには痺れます。
そしてそれはそのまま。虎三郎の稀有な才能と人望を浮き彫りにするのです。
前作で鷹頭も認めた卯ノ原の新し過ぎるセンスに、雀が意見するシーンも好きです。
「何となく」美しい、カッコいいと思うイメージを想像してスタイリングする卯ノ原に店に来てくれる「お客様」をイメージして話す雀。お客様を大切にしている雀の気持ちにハッと気付かされる卯ノ原もまた素直でいい。古いモノと新しいモノをミックスする感覚や、ジェンダーレスとか、モノだけでは無くて、古い考え方と新しい考え方をも。対立するのでは無く、融和して行く。ファッションに限らず、これは現代そのもの。
物語全体を通して現代に通ずるところがビシビシ伝わって来るところもワクワクします。
何巻まで続くのか。三つ星の胸のすくような絶対的大成功を信じて。楽しみに待ちたいと思います。
また、存寅兄さんの失踪の謎、鷹頭の過去編もいつになることやら。全ての回収も楽しみですね。