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kuchibeni utsukushiki gunni no isshou
初読みの作家さまですが、表紙の彼に、引き寄せられるようにして購入しました。
あらすじを拝見して『神軍のカデット』を読んでいたほうが良いのかな?と思いましたが、未読でも問題なく読めました。
ストーリーとしては2段階に分かれています。
軍医・緒方朔。表紙の彼です。
前半は朔の現在のお話。
後半は朔の過去のエピソードへと移行します。
ネタバレ含んでいます。ご注意ください。
時は大正。
将校を育成する学校である「陸軍幼年学校」に入学するために善介という少年がやってくる。入学のための身体検査で、善介は出会う。美しい軍医・緒方朔に。その美しいビジュアルとは裏腹に尊大な態度の緒方に対してはじめはいい印象がなかった善介だったが、とあることをきっかけに緒方への見方が変わっていくー。
後半は、朔の過去のお話。
軍医をしている父を持つ朔は、子どもの時から綺麗なものが好き。その日も姉のために誂えられた振袖を見た朔は一目で心奪われ、姉にせがんで振袖を着せてもらった。口紅も塗ってもらって。
そのことをきっかけに、彼は自身の「性」に少しずつ違和感を感じることになる。
そして時を同じくして、朔は一人の青年と出会う。
大人びていて、正義感が強く、そして美しい見た目をしている吉良。彼は「陸軍幼年学校」の生徒で、そして父からの覚えもめでたい優秀な青年だった。
吉良との出会いは、朔の日々に新たな風を呼ぶことになってー。
んー。
これがBLかと問われると非常に微妙な気がしました。どちらかというとジェンダー、あるいは性的マイノリティ。そういった非常にセンシティブなものを取り上げた内容かと思われます。
当時の日本という国を鑑みたときに、朔のように、性的な違和感を感じていた人には非常に生きづらい時代だったのではないかなあ、と。そして、その朔と出会った善介、そして吉良という男たちの人生も、変えていく。
タイトルにも書かれていますが、今作品は朔という青年の一生を描いた作品です。前半は、なんとも切ない結末を迎えます。朔が選んだ、その「結末」。彼がなぜ、「そう」したのかが、後半からの朔の過去編に移行することで描かれていくのですが。
朔のすべてを決定づけた吉良という青年。
彼もまた薄幸な青年です。時代に翻弄された、時代の稚児と言って良いでしょう。
二人は出会うべくして出会った、そんな気がしました。
お互いに欠けていたものが、出会ったことでピースが嵌まり、パズルが完成した。けれど、それが彼らにとって幸せだったのか否か。
彼らが出会ったのがその時代でなければ、あるいは幸せを手に入れられたであろうに、と胸が痛くなりました。
絵柄も、そしてストーリーも、そこはかとない耽美な空気感に満ちた作品です。
そして、秀逸なのがタイトルにつけられた「口紅」。
この単語一つで、朔が抱えたもの、欲しかったもの、彼を愛した男たちが与えたかったもの。そういったものを見事に描き切っています。
時代や、朔が選んだ最後を考えると非常にシリアスな展開で、萌えとか、そういった感想を抱くことに罪悪感を覚えなくもないのですが、軍服とか、禁断の恋とか、自身の性を否定しなければならなかった時代、だとか、もうさ、萌えちゃうよね…。
先述しましたが、BLかと問われると非常に微妙な作品です。
いわゆる萌えを追求した作品ではありません。濡れ場もほんのちょびっとあるだけです。
が、この作品にしか描けない独特な世界観が、この作品には詰まっています。
タイトルに(1)とついているように、続きものです。
続きを正座して、お待ちしています。