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この想いは慈愛か劣情か
akatsubaki
人里離れて一人で暮らす佐吉と、佐吉が拾って育てた鬼の子アカの物語です。
赤ちゃん時代そして小さな頃のアカがとても可愛いくて、特にふっくらした顔の頭についている角が、アシンメトリーなのがとっても可愛いです。最初、佐吉が何故人里離れて一人で暮らしているのか分かりませんでしたが…目と髪色が違った佐吉、そしてその母親はかなり悲しい過去がありました。その場面を読んでいた時はとても苦しい気持ちになりました。その後、アカが泣き崩れている佐吉を慰めようとして佐吉に触れようとしたのに、自分か触れると鋭い爪で佐吉を傷つけてしまうと思って、どうしたら良いか分からずに佐吉と一緒に泣き出してしまう場面はとても悲しくて、こちらも一緒に泣いてしまいました。
佐吉はアカを10年育てたのに、肉食を好む様になったアカとは一緒に暮らせなくなって、別れのシーンもかなり切なかったですが、その後何年経っても別れた時のままのアカの面影を忘れられずに生きている佐吉の姿が見ているだけで泣けました。言葉を解さない発しないアカだけど、育てた子供は可愛いですよね。この辺りは二人の深い親愛を感じました。
その後更に時は流れて、成長したアカと山で再会するのです。角の向きでアカだと分かりましたが、小さい時とは見違えるほど美しさを持っていました。
私は育てた親の立場の人がその子が大きくなったら手を出すという展開は普通は好きではないです。しかし、この人間と鬼という設定では、鬼のアカは野生の本能も備えていて、アカから佐吉に求めていく展開はすんなり受け入れられました。佐吉は美しいアカでも、アカから迫らなければ、そういう関係にはならなかったんじゃないかな、、と、想像しています。一方、アカ視点では描かれていないので、アカがどんな気持ちで佐吉に求めたのかは分かりませんが、幼い頃は佐吉に優しくしようとしても爪で傷つけてしまうと諦めていた事が、成長して爪を上手く扱える様になって、佐吉の古い傷跡を見て癒しあげたい気持ちや、大切にしたい気持ちで佐吉に触れにいったように感じていました。(唾液で傷跡を治すのは動物的な感覚もあるかな)
ラストで二人が危機に陥った時はどうなるのか?となりましたが、ラストまで読むと最後まで読んで良かったと思える締めくくりになっていますし、三田先生のあとがきを読んだ後に、再読すると、初回に読んだ時よりも更に泣けてしまって、また読み返すループになってしまいます。
ほとんどが佐吉目線の語りで描かれた漫画だけと、二人の心がこんなにもひしひしと伝わってくる三田先生の表現がとても素晴らしいと思いました。
日本昔話の様な世界で描かれる奇跡的な二人の物語。大切に読み返したいと思います。
初読み作家様。新刊「コッコとのこと」に興味を持って調べたら、旧作のこちらも試し読みが面白かったので読んでみました。
舞台は江戸時代頃のある村。
赤い髪、薄茶の瞳の佐吉は、村から離れ孤独に暮らしている。ある時、山で角の生えた赤髪の鬼の赤子を拾い、アカと名付けて育てるが…と言うお話。
こちらの作品、最後にちょっと意外な展開になるので、前知識少なめで読んだ方が楽しめると思います。
前編、中編、後編の3部構成。
前編では孤独な佐吉が赤子の鬼を拾って子供になるまで育てる様子がほっこり、少し切なく描かれます。アカは「ギャ」としか言わなくて、人と意思の疎通はできません。
中編は、一度山へ捨てたアカと数年後に再会、頻繁に会うように。アカは美しい少年鬼になっていて、佐吉はアカに徐々に惹かれていく。
アカは相変わらず人語は話せないけれど、その表情や動きから、やはり佐吉を憎からず想っていることが感じ取られる。二人が惹かれ合う様子がエロ描写は控えめながら、官能的に描かれるのがエロチックです。
(義父×子ですが、アカは人外なので、背徳感はあまり感じませんが、少しドキドキしました。)
後編についてはネタバレは控えますが、ドラマチックな展開でドキドキハラハラしながら読みました。
横たわるアカと「また会おう」と約束するシーンは、アカの笑顔や、佐吉の後悔が切なくて、泣けてしまいました…。
そしてラストがとても素晴らしかったです。書き下ろしとあわせて、グッとくる展開で素敵でした。
ラストについてはぜひネタバレなしで読んでほしいです。
(描き下ろしで、佐吉が前髪を崩すシーンが好きです。)
最後、先生の後書きを読んだら再読したくなりました。
素敵な作品に出会えて感謝です。
最新作「コッコの〜」も必ず読もうと思います。
シーモア 修正不要な描き方
他の方のレビューのように、内容はものすごくいいです。最後のシーンは思わず泣きました。
しかし、個人的に寝るというシーンは要らなかったのでは…と思ってしいました。
赤ちゃんの頃から世話を見ている我が子のような存在の「アカ」にそのような行為をしてしまうのはどことなく犯罪臭がして、抵抗感を感じました。
私がこの漫画にどちらかというと家族愛を求めてしまっているせいかもしれません。
それ以外は何度も読みたくなるほどいいお話でした。
こういうの好きです!切なくて泣ける人外もの。鬼が言葉もしゃべらず表情も乏しいだけに内面は察するしかなく、解釈の余地が広いです。生態も価値観も異なる鬼がどうとでも取れるので、自分の中でどこまでも膨らませることができる作品だと思います。
佐吉は村人たちが言うように魅入られてアカしか見えなくなっていて、その様子が叙情的というか美しいと感じました。自ら破滅に向かっていく人を見ているよう。
ラストは個人的には天国オチの方が深い余韻に浸れた気がしますが、本編に辛い描写がとても多かったので、生きて幸せになるこの展開が救いになって良かったのかもしれません。
気になるのは佐吉の鬼語?のような告白シーン。「俺はお前のことを…」の続きだけアカに通じたってことなのかな。人語で何と言ったのか分からないのもまた素敵でした。
素晴らしい世界観でした。
いやぁ〜泣けました(涙)
三田六十先生、こんな素敵な作品をありがとう。
1度読みましたが、直ぐに再読しました。
山の風景、木々や花の絵柄が素晴らしく。
そこに佇む言葉を話せないアカの心を、景色と一緒に語っている描写を〜抜けてないか、見落としてないか、と懸命に読みました。
佐吉が、アカと共に生活する事への葛藤は苦くて辛かったけど。
アカが、人の一生を待っていた所は〜2人の絆の深さを感じました。
書き下ろし、2人の笑顔と指切り。
ほっこりしました。
切ない、泣けるBLを探していてこの作品にたどり着きました。
他の方が書かれている通り、段々言葉を覚えていくのかなと思っていましたが言葉は通じなくて またそれが泣いてしまう、、、
でもまた会う約束の仕草だけは覚えてて、、泣きました
最後は想いが通じあって良かったです 本当に
続編があれば言葉が通じあえる2人のお話を
いっぱい会話してる2人を見てみたいなと思いました!
描き下ろしに幸せそうな2人が見れたのはとても良かったです。
人外モノは積極的には読まないのですが、高評価やあらすじに惹かれて読んだ作品です。
今まで読んだ人外、鬼とか吸血鬼とか狼男などは普通に人間の言葉を話し理解していたので、言葉が通じないという設定に今更ながら目から鱗でした。
村から疎外され1人孤立して暮らす佐吉が鬼の赤子を拾い、アカと名づけ育てていくのですが、いつまでも人間の言葉を理解することなく、やがて鬼の本能を見せ始めたアカを山に放す。
言葉は分からないけど、いつもの通りに佐吉を待つアカが不憫で泣けた。親に捨てられ、また育ての親である佐吉にも捨てられた訳ですから。
佐吉の気持ちも分かるだけに切なかったです。
ただ単にアカとは暮らせないと判断しての行動じゃなく、自分と「人らしく」暮らすことがアカの幸せじゃないと、アカのための行動なんですものね…。
アカと離れ何年も経ってもアカへの思いは強まるばかりで、住む場所も離れられず、どれほどアカと暮らした日々が尊いものだったかが感じられてまた涙。
孤独な生活の中に咲いた一輪の椿のような存在だったのかも知れませんね。
成長したアカはアンニュイな表情をしていて、それが美しく妖艶な雰囲気なのですが、佐吉を助けた後のホッとしたような笑顔が印象的でした。
年老いた佐吉がアカとの思い出に浸りながら亡くなる…そんなラストでも美しかったかなと思いますが、ずっと辛さの連続のお話だったので、ハピエン派な私にとっては嬉しいエンディングでした。
人外BLは数あれど、人間の言葉がわからず
意志疎通できないというお話は珍しいなと思いました。
そんな中で育まれる愛情や絆は
佐吉からの一方通行ではなかったと
最後の最後でわかったときの感動…!
アカを想い続けたからこそ
実現したことなのかもしれませんね。
全体を通してわりと悲しいお話で
佐吉の境遇や過去もやるせない。
アカのことも愛しく守るべき存在なのに
「普通」にしてあげたいこともできないもどかしさに苦しくなりました。
アカが生きやすいように、自由な暮らしができるようにと山へ還すことに決めたときの佐吉の葛藤は親心だとしても痛々しく辛かったです。
でもそれは、言葉をもたないアカを理解する術がなかったから
勝手に思い込んでいただけなのかもしれないな、と感じました。
あとがきに書かれていたように
アカはいつもやさしい気持ちで佐吉を見ていて
それはきっと愛情だったのでしょうね。
言葉は通じなくても佐吉の気持ちはアカを動かしていたんだな…
最後はまさかの展開でしたが
ふたりがまた一緒にいられて本当によかったです。
そして、先生の描く絵がとてもキレイで上手で
人間もそうですが風景や花など
どれをとっても美しく、魅了されました。
三田先生のデビュー作もとても面白かったですし
次回作も楽しみに待ちたいと思います。
叙情的な作品でした。
いわれのないそしりを受けて、一人山奥で暮らす主人公。
ある日椿林の中で鬼の赤子を見つけます。言葉が通じない中、悩みながらもその子をかわいく思い、育てますが、やはり成長してくるにつれ鬼として人間生活とは相容れない部分が大きくなり、ついにその子を自由にしてやります。
この養育編は、鬼の子が逃げないように縄をつけたりと、動物的な扱いをしていてちょっと心が痛みます。
また、言葉は育てられた環境によるものが大きいような気がするので、全く通じないというのもちょっと不自然?
ともあれ、物語のメインはここからです。
主人公は鬼の子が忘れられず、やがて美しく成長した”アカ”と再開して恋に落ちます。
その頃、疎遠になっていた村人達とも、誤解が解けて打ち解けるようになりますが、だんだん鬼に溺れて。。
村人達が、鬼に魅入られたのではないかと心配しますが、案外実際にはそうなのかもしれません。
主人公目線で読むと、恋しい鬼とやがて1つになれるストーリーになります。
人外や、近代もののテイストがお好きな方におすすめです。
評価がすごく高くて、発売日当日に購入したにも関わらず、本日まで読まなかった…読めなかったのを後悔した。
人間と鬼。通じ合うことのない魂が救われる…悲恋を想定していたので、この結末にはしてやれた…という感じだった。嬉しい誤算というか。
容姿の違いで里から追いやられ、ひとり孤独に暮らしていた男佐吉が、山で産み落とされたばかりの鬼の赤ん坊を拾ってトコロから物語は始まる。
名前を紅(アカ)と名付け、隠れるようにして育てていたが、言葉も覚える事もなく、やがて烏を取って喰う姿と獲物を取られまいとして傷つけられた事で、自由にしようと山に返す事を決意する。
中編では山での再会。
後編では再度訪れた別れと奇跡のような再会と。
涙なくしては読めない。
時の流れは残酷で寿命尽きる時の佐吉を救ったのは…
幸せな二人の行く末はその目で読んで欲しい。