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dark tourism
2019年発表の電子限定短編集。
タイトルの「ダークツーリズム」そのものの仄暗い巡礼の旅…のような作品たちに出会えます。
「ふかい海 碧いさかな」
カミングアウトしてから周囲に気を遣われている伊勢を心配する国広。優しい2人の両片想いストーリーに深海魚の孤独を投影した詩的な作品。
「路地裏奇譚」
真夏の日中、白猫の呼び声に誘われて見知らぬ路地に迷い込んだ真覚(まさめ)。
和服の若い男に呼び止められて涼ませてもらうのだが、男の妙な色気に、気付いたら彼を抱いていた…ずっと居てと言われてぼんやりしていると猫が威嚇して目が覚めて。
はて、あの路地はどこだったか?世にも奇妙な路地裏のお話。
「新訳牡丹灯篭」
幼馴染の燕をモデルに描く美人画が評判の絵師・清人(きよんど)。
出版社の社長令嬢に見初められて結婚した途端スランプに陥ってしまう。なぜなら密かに愛していた燕が消えてしまったから。
だがある晩突然燕が訪ねてきて…
「牡丹燈籠」の男x男版。燕は清人への恋破れて自死し、幽霊になって清人に会いに来ていた、という怪談もの。
「撥条のない機械人形」(ゼンマイ ノ ナイ オートマタ)
死体を縫い合わせて人造人間を作り続けるマッドサイエンティスト・ヴォルフガング。
感情がないジャスパーは失敗作として奴隷のように、一方感情があるアガットは可愛がられる。
だが、アガットはいつも寂しそうなジャスパーが心配で…
ラストが意味深なのですが、これはどっちエンドなんだろう?私は…ジャスパーが◯んでしまうバッドエンドと思って読みました。
「ジョニーは帰らない」
恋人のマルクスを捨てて戦争に行ったジョニー。
大怪我を負ってはじめて、マルクスにまた会いたいと思う。しかし。
映画「ジョニーは戦場へ行った」や江戸川乱歩の「芋虫」のモチーフを感じるけれど、もっと優しいハッピーエンディング。
「路地裏奇譚」「新訳牡丹灯篭」のホラー風味が好きでした。