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night garden
前作ではとても存在感がありながら、
どこまでいっても…というか
最後まで理解できなかった和章がメインのお話。
誰よりも優しく柔らかく整を包んでいるように見えて、果たして彼の温もりはそこにあるのか?と疑問に思ってしまうくらい、良くも悪くも『一定』だった印象の和章。
整を通して彼を見ていたからというのもあると思いますが…
整と離れた後の彼の暮らしを想像することはできず、ましてや他の誰かに心が動くことなんて考えられないくらいには彼のイメージは強く植え付けられてしまっていたので、逆にどう変わっていくのかが楽しみでもありました。
序盤は、整が近くにいようがいまいが和章は和章のままなんだなーと思うところばかりで。
むしろ過去の出来事が戒めになって、もっと頑なで面白みのない人にも映ったりもしたけれど。
柊との間でいくつもの冷静ではないやり取りが繰り広げられるのを見ているうち、
『あぁ、和章も人間なんだ』と実感できる部分があって。
初めて彼自身の熱を感じたことにすごくほっとして、一部分だけではない和章のことを知ることができたのがとても嬉しかったです。
前作と切り離して「和章と柊のお話」として読めるところもありながら、現在の彼を形成しているのは整との日々があったからだと突き付けられる痛みもあり。
淡々と進むストーリーの中でチクりと刺さる"とげ"がとても良いスパイスとなっていました。
和章は自分をずるい人間だと言うけれど、
柊が本心から『そんなことなかった』と言ってくれる人で良かった。
一生懸命気を張って、線からはみ出ないように水がこぼれ落ちないように。
整と一緒に居るための努力を見つけてくれる人で本当に良かった。
そんな柊とだからこそ、恐れながらも前に進むことができたんだなと、ストンと納得できました。
和章は人に関心がないようで、誰よりもその温もりを求めていたのかもしれませんね。
創作意欲が誰かを愛することで湧くことに、とても微笑ましいような愛おしいような気持ちになったのでした。
前作も紛れもなく彼が選んだ道だったわけですが。
その先の、生身の和章に触れることができてよかったなと心から思います。
柊との素敵な出会いに立ち会えて本当に幸せでした。
和章のお話。柊という名前すごく良いですよね。
物語の主軸ととても絡んでいて、面白くてものすごく丁寧に読みました。
能面の様な和章が後半、ほぼ物語の終盤で彼の顔が綻び色々な表情を出すところがとにかく嬉しくて、ああ、幸せになれそうで良かった。
印象に残っているのは、先生が倒れてセリフを言うシーン。いつも凪の様に黙っていたけれどとても耐えていた、先生の気持ちを想像すると苦しくてやりきれない、そして信じていた柊が正しかったなと。
焼香のシーンもやはり印象に残っていて、とにかく読んでいて物語のイメージが脳内で映像の様に再生されました。
個人的にはキャラメルをざーっといれるとこ、自分の身内のお葬式とダブって泣き笑いで共感。
そう、まだ先は長い二人だから、少しずつ一緒に人生を生きていく、希望があるところも好きです。
『ふったらどしゃぶり』に登場していた整の同居人・和章のスピンオフ。
正直、この男はずっと整を想いながらフリーでいそうな雰囲気があったので、このスピンオフは意外でした。
やっぱり、この男はちょっと変わってて、独特の感性の持ち主。これは誰かと共に生きていくキャラじゃないな…と思っていたところからの、ロマンスの香りが……。
恩師の孫・柊とのBL展開はやはり一筋縄ではいかない様相でしたが、この男の熱を帯びた感情、冷静さを欠いた情欲は彼の人間くささが垣間見えた瞬間でした。
和章ってこんな風に人を愛する事ができるんだなぁ。
柊が和章の心のトゲを抜いてくれたおかげで、誰かを愛する、そして愛されることを素直に受け止める和章の姿にホロッときてしまいました。
ふったらどしゃぶりの世界での和章はモラハラ気質があって、底の知れない怖さみたいな雰囲気がありましたが、彼は素直に整のことを愛したかったんだなと。それができずに苦しんでいたんだな、と。。。柊との出会いが和章にまた誰かを愛する勇気を抱かせてくれたことに感動しきりでした。
和章がやっと心の呪縛から解放され、好きな人に好きだよと言える、好きな人からの想いを素直に受け止める、そんな当たり前のことができるようになったことが嬉しかったです。
このスピンオフを読んで思ったのは、やはり和章は整と結ばれる運命にはなかったのだということ。両想いであったのにも関わらず、整とうまくいかなかったのは、2人が対等な関係性じゃなかったからで、両親への負い目が整への想いを歪んだ方向へ向かわせてしまったのだと思いました。
整に"俺も好きだよ"と応えるハードルを乗り越えられなかった彼は、あのままだったらずっと恋人未満の親友関係から抜け出せなかったでしょう。出口の見えない悪循環に陥って、いつかショートしていたかも知れません。
整との別れは苦しいけど必然だった。柊との出会いのための別れだった。
柊といるときの和章は、整といるときの雰囲気とまるで違います。
整といるときはピリピリしてる感じで隙がなかったけど、柊といるときは穏やかさが増し増しです。セックスのときも甘くて……和章ってこんな一面あったのね、とニヤけてしまいました^ ^
和章はずっとフリーでいそうとか言っちゃってゴメンなさい( ̄▽ ̄;)
彼にこんな素敵な人生を与えてくれた一穂ミチ先生に感謝の思いでいっぱいです。
『ふったらどしゃぶり』で登場した和章のお話。
前作にも増して文学色の強い作品でした。
前作を読んだ段階では和章に対して正直あまり良い印象はなかったのに、もうすっかり好きになってしまいました。
帯にある、
「愛しあおう、"とげ"を抱えたままの心で。」
という文が本当にその通りだなと思いました。
何をどうしたって とげ は抜けることはなくて。
それでも、出逢うことがその痛みを軽減させるのでしょうか。
一つの作品としても、スピンオフ作品という観点からも、非常に素晴らしかったです。
ふったらどしゃぶりを読んだ時の予感。
is in youの時と同じそれ。
あ〜絶対スピンオフ好きになる…
そんな気持ちを裏切らないし、そこを優に超えてくるのが一穂先生。
off you goの時もそうだったんですけれど、そもそも表紙からして吸引力が凄まじい。
静の空気と、見切れてボヤけた葉っぱや彩度の低い色合いの、人間味の薄い感じ、鮮やかな白い花。筆記体の組み方。
もー雰囲気で呑まれてるよ…と思いながら読み始めました。
概要は皆さん書かれているので割愛しますが、あらすじを読まなくても是非手に取って欲しい。そのくらい私は好きになりました。(そもそも一穂先生のお話はハズレの心配をしていないので、あんまりあらすじ読まずに読み始めるのですが)
さて、作中目立つのが、石蕗先生の存在。
この人無くしてこの話は絶対に成り立たなかったと思います。
戦うの対義語に逃げるを使う話。
逃げるという戦い方だってあると語った石蕗先生こそ、ずっと戦い続けていたと思うんです。
無くなる直前の慟哭のような訴え。
その内容が、自分を信じて欲しいというよりも、妻を裏切っていない、とまず言葉になって飛び出てきたことから、先生の人柄を垣間見たというか。
もうその一言で涙がだばーと出てしまいました。
どれだけ奥さんを愛していたか。
亡くなってもまだ、どれだけ先生の中で大きな存在だったか。
大事なものだけを大事にしている、みたいにもとれる姿勢や無言を貫き通す態度は一見愚かしいけれど、だからこそ、石蕗先生にとっての、どうしても守りたかったものは奥さんとの絆だったんじゃないか、と思えて、悲しくて寂しくて愛おしくて仕方ありませんでした。
分かってほしい、信じてほしい。
それって人間の本質だと思うんです。
それを覆されかけて、けれど、柊も石蕗先生も戦っていた。
その日々が戦いじゃなかったなんて、誰に言える。
その一言が重くのしかかって、冷たくて、けれど和章が気づけて、本当に良かった。
そして、和章についてです。
彼は、ふったら〜の方では本当にやってることとか態度が意味不明で、読者的には、「この人今、どういう心境?」という気持ちでずっと読んでいたのですが、終盤一気にそれを崩されたことも印象的で、この作品を通してより彼を深く知ることが出来たのでそこもとても引き込まれる要因になりました。
偏屈で生真面目で不器用で情熱的で愛情深いところ。
柊を、祖父のなきがらといきなり直面させずにすんだ。と思うシーンで、そのことに対して
「そんなことだけか?
俺が君にできるのは、たったそれだけなのか。悔しい。」
そうやって本気で誰かのことを想えること。
和章は本当に、愛情深い人だと思います。
自分が人を愛することは罪でただのエゴだと思い込んでいる潔癖さが不器用で愛おしいし、反面、両思いになってからの執着の仕方や甘い雰囲気がとても微笑ましかったです。
そして柊。この子の傷も、痛いほどわかる。
周りからしたら、大したことないかもしれない。
たった一つの傷で、ずっと逃げてきた柊です。
だけど、逃げる=戦っていたんだと思います。
両親からの何気ない言葉にどれだけ傷ついたか。
「お母さんたちはそんなにもひどい仕打ちをしたの?」と言われた柊ですが、お母さんは、それを言っちゃ駄目でしょ…と思ってしまいました。
けれど、そこには石蕗先生が居て、ちゃんと柊の気持ちを言葉にして代弁してくれるんですね。
言葉にするって難しいです。自分の中のぐちゃぐちゃした気持ちなら、余計に人に伝えるって難しい。
だからこそ、石蕗先生が選んだ「ただ、とても傷ついて、今はここに立ち止まっていたいんでしょう。それに対して「大げさな」と思うのだけはいけないよ」という言葉。
もお〜〜〜なんで石蕗先生にはわかるんだろう。
きっと、石蕗先生も同じ痛みを抱えていたからなんですよね。
柊に石蕗先生が居て本当に本当に良かった。
石蕗先生がそれこそ幼木を守るようにして育て見守ってきた柊だからこそ、人の痛みや人生の傷や、冷たさ、温かさをちゃんと理解して寄り添える子に育ったんでしょう。
ちょっとした罪悪感や、戸惑いを、都度、拾い上げて先生らしい言葉で導いてきたのが伝わってきます。
優しくしたいと思う相手にしか優しくできないのは当たり前だ。
そう言ってもらった柊は、少しは楽になったんでしょうかね。
わからないけれど、作中和章が、柊の中に先生がちゃんと居るって言ったのはわかる気がするんですよね。
本当に良い子なんだもの。
はぁ、2人の違う顔も見たいなぁ。東京に出てからの2人の生活をちょっとでも覗きたいなぁ。
そんな不満さえ残る素敵な作品でした。
和章は、前作ではもしかして嫌いだった人も結構いるのかも…と今更ながら思いました。私は、本編の方で始めのうちこそ、和章何なの意味わかんないってずっと思ってたものの、最終的に、お前そんなもの抱えてたんか!!(泣)切なすぎて悲しすぎて、、絶対ちゃんと幸せになってほしいと思ってたクチなので、スピンオフとかもう超嬉々として買いましたが!!
柊の優しさや真っ直ぐな性格に和章が少しずつ溶かされていく様が丁寧に綴られていて、とてもあったかい気持ちになりました。
また、自分を責めて閉じこもってる和章の、不器用で分かりにくい優しさや思いやりが感じられるシーンが至るところにあり、たまらなく愛しくなります。
そして、甘々な和章可愛すぎる、柊ほんとうにありがとう…!!
心から幸せそうに笑う和章が見れたので、このシリーズはもう思い残すことはありません!!
「自分を幸せにすること」=「他の人を愛して幸せになって」
整と別れた後、整との約束を実直に守ろうとする和章の不器用な生き方が気の毒で辛い冒頭。
「一は数えに入らない Einmal ist keinmal」を心の中で反復する和章。
一度の失敗が数のうちに入らないなら、整を無理やり抱いたことは数に入らない?、と、悶々。
・・生き甲斐とやりたい事を探して、彷徨う。
ただ一人愛した人、整の喪失した跡を埋めるものが、他に見つけられない。
和章にとって整は初恋の人、生きる意味のすべてだった。
大学の恩師の著書整理の仕事を引き受けて、教授の孫と知り合う。
教授の孫、柊と親密になっていく和章。
和章が、整とやり直す展開にしない著者。
整と柊に共通するのは、透明な脆さかもしれない。
和章と柊の二人が親密になるにつれ、(もうこれで整が戻る場所は、完全に無くなってしまうんだ)、と悲しくなってしまった。
人の行き違い・すれ違いって、こんもんなんですね。甘くないファンタジー。
深い傷であっても、時間が経てばなんとか癒すことができるってことを著者や言いたいのかも。
これから和章がデザインするものは、整ではなく、柊のイメージで創作されるんだと思う。
生きるということは、変化変容を重ねることだから仕方ない。
拗らせて拗らせて失敗した人って好き。
植物の添え木や交配の話は興味深かく、整も可哀想だったけど、和章の不器用さを知れば知るほど複雑な気持ちになるんだけど、棘が刺さったままでも和章が一緒に進める道を見つけれて良かった。
柊のために作ったグラスは美しいんだろうな。整とのことはめちゃくちゃめちゃくちゃにモヤモヤしてたけど、今の幸せのための悲恋、それで成長したと!!思えました。
柊がふわふわ?掴みどころがない?態度があまり好みではなく萌えどころが少なかったのと、一つ一つの表現は美しく、とっても素敵なんですけど、リズムが合わないのか、いつも気持ちがいきなり飛んだように感じてしまうので中立にしました。
一穂さんの作品の中ではシンプルに綺麗な作品だと思いました、いつも描かれてるような精神的に痛い場面は少なめです。
前作では狂言回しだった和章が人間として描かれています。それに対し柊は妖精の様であまり人間らしくない、おとぎの国の住人みたいです。
堅物の和章の様な人間の心を融かすにはこれくらいのキャラじゃなきゃ駄目だったのかもしれないし、前作の整との対比の意味もあると思います。
その代わり一穂作品なので甘いだけではないです、柊はストーリーの途中で一番大事な人に先立たれ宙ぶらりんな状況になってその後の岐路も経験不足の柊だけでは決められません。
『ナイトガーデン』というタイトル通り作品全体をどこか静寂が支配していました、これだけ心地良くでもストーリーのしっかりした作者さんの話を読むのは初めてでした。
他の作品もまだ読んでみたいと思わせてくれた作品です。
「メロウレイン」も読んだけど「ふったらどしゃぶり」がそもそも好みじゃなくて、和章のその後とかほんと興味ないし、読もうかどうしようか悩んでいたスピンオフ。
和章と柊が出会ったあたりでは「やっぱり和章好きじゃない」と思ったはずが、読み進めるうちにいつの間にか愛おしくなっていました。
それは、柊を通して和章という人間を知っていくから。
その逆も然り。
柊は『何かしてやりたい』気持ちにさせるような、『目が離せない』『ほっとけない』タイプとして描かれています。
わたしも読み始めて割とすぐ、柊は守ってあげたくなる人物だなと感じました。
でも和章から見る柊には、『強い』一面があって。
和章視点で柊を見ると、ますます柊を好きになるのです。
本編を読み終わった時は「あぁ、高い買い物しちまった...」とちょぴっと後悔したものの、ナイトガーデンを読むまでの準備だったと考えれば全然惜しくない!(笑)
それくらい素敵で、愛くるしいふたりでした。
お気に入りの場面は、
『四六時中でも?』
『冗談だよね?』
のくだり。
和章、あんたベタ惚れじゃん...(照)
心にぐっとくる名シーンも散りばめられている上に、こんな胸きゅん台詞もあるのだから堪らない〜!