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hai no tsuki
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
上下巻まとめての感想です。
今日、日曜の午後に読み始めて一気に読み終わってしまいました。
一言でいうと「衝撃」でした。
思わず息を呑んでしまう場面が何回もあり、読み終えた今も胸に苦しさが残っています。
これ、ほんとに「月に笑う」の惣一さんなんですか…。
上巻でも可哀想な人だと思ったけど、下巻でえげつない追い討ちをかけてきましたね。
嘉藤は忠実な部下ではありますが、ヤクザとしての惣一を慕っているのであって、彼の性癖や私情については敢えてなところもあれど、辛い当たり方をすることが多くて複雑な気持ちで読みました。
「月に笑う」時点ではどん底に落としてやりたく思えた惣一さんでしたが、「灰の月」では惣一さんにはもっと幸せになってほしかったなぁと思う気持ちも残りました。最後に愛だけが残ったのは救いなのかな…。
惣一の大きな無理の綻びでもあり、努力の報酬でもあるラストだと思いました。
2人が思い描いていた未来ではなかったけれど、収まれるところに収まった。
読了後は、とにかく読み切った充実感がありました!
これでもか‼︎というくらい、事件が起こるので、ハラハラしどうしでした。
私は、メンタル弱い時にサンドバッグになるつもりで読みました。
まともに読んだら、しんどくはなると思います。
良い意味で木原先生らしい作品で、満足です。
読後じわじわ効ますねー。
読んでる時の脊髄反射の感情と、読み終わって振り返ってみると違う景色が見えてきたり。
ちょっと置いてまた再読したいです。
タイトル「灰の月」
個人の勝手な考察なんですが
燃え尽きた紙の月(ペーパームーン)
→燃え尽きた紙(灰)の月なのかなと。
ペーパームーンは張りぼての月が由来で、まやかしや偽物という意味がある反面、紛い物でも信じ続ければ本物になる。という意味もあるとか。
カトウが大切にしてたペーパームーンは、惣一を頂点にした組を自分が支える。という、青写真や未来予想図だったのかな
でも最終的に燃え尽きて灰になってしまった紙の月。
全く別物になってしまった月を、それでも抱えて生きていくってのがカトウの出した答えだったのかな?
先に「月に笑う」を読むのが個人的におすすめです。
惣一と嘉藤のことを知ってから、「灰の月」を読むと、より感情移入しやいと思います。
以下は、「灰の月 下」について個人的な感想です。
「月に笑う」の賢く腹黒い惣一は、まさか愛のために狂人となった。
愕然とした展開、衝撃な結末、すごい、すごすぎます!
嘉藤視点だが、
狂った行動を起こし、もがく惣一の苦しさ、空虚感、しっかりと痛々しく伝えてくれました。
愛されなくても、せめて愛する男が好きな肉体になれればと、
胸を作って、自分の体を異形にした惣一。
「もし死んだら、次に生まれ変わるのは女がいい」
「黙って立てるだけでお前がぶち込みたくなるような、女になりたい」
あんな狂おしい想いを淡々と穏やかな口調で告白した惣一。
心の虚しさを噛み込んで、持ち耐えない気持ちを裏に隠していたでしょう。
豊胸も女装も、女になりたいわけではない。
プライドまで捨てて、ただ愛する男を喜ばせる体を手に入れたかった。
必死なアピール、一生懸命な惣一を尊敬します。
嘉藤が撃たされた時、身を挺して彼を守った惣一。
このような全力で愛する男にした無意識の行動が心に痛切に感じられました。
旅館でのすべての出来事、
病みつきになるほど好き、どうしても欲しくてたまらない、でも、決して受け取ってもらわない嘉藤への気持ちに追い詰められた姿が痛すぎます!
ほろりとした結末。涙ボロボロでした。
漁師となった嘉藤と、クスリの後遺症で頭がおかしくなった惣一。
すべて忘れてしまっても、愛する嘉藤のことだけ忘れたりはしなかった。
きっとこの愛を魂まで刻んでいたでしょう。
共に生きている2人の間には、断ち切れない愛情が存在しています。
この愛情は、恋、傾慕、同情、欲望、劣情、信頼、いろいろな感情を混ぜてきた相手に注ぐ愛の気持ちだと思います。
恋:嘉藤への激しい恋心を抱いている惣一。
傾慕:強いボスに惚れ込んだ嘉藤。
同情:感情をコントロールできない、狂ったボスへの同情。凄惨な強姦、監禁、凌辱、クスリ漬け、さらに性器切断された男への同情。
欲望:性欲の強い惣一、嘉藤が欲しいという欲望。
劣情:惣一の「胸」に本能的な性欲を生じた嘉藤。
信頼:長年にわたって作り上げた絆。
組を捨てた2人は、きっとどんなことがあっても離れたりはしない、
2人だけの愛情をもっとより深く積み上げるでしょう。
今まで一番
本当に感極まる余韻が止まらない作品でした。
いや、これは。なんと言いますか。
私は上巻のレビューにおいて、どう落とすのか、描きたい何かがあるはずだ、と書きまして、ずっとそのことを探りながら下巻を読み進めておりました。
正直、最後の最後まで、「どうすんのこれ」と。312ページの「END」マークにものすごく絶望しました。
上巻と同様、下巻も同人誌として発行されたものを収録しており、数えると7冊(+ペーパー)にのぼります。最終章のみ書き下ろしです。
上巻は5冊分だったので、惣一を描いた同人誌は全部で10冊以上になるわけです。
描きたい何かがあるはず、という私の疑問は、本書の後書きにより、あっけなく答えが提示されました。
いわく、「惣一さんを幸せにすべく続きを書いていた」。「最終的に惣一さんの一途な思いが伝わった」との言葉に、愕然とした次第です。
私は、物書きの業をまざまざと見せつけられたような、そんな気持ちでいっぱいです。
作者が、この二人の長い物語をハッピーエンドだというのなら、そうなのでしょう。紆余曲折があり過ぎましたし、結果として最終章で嘉藤が出した答えがこれならばそうなるのでしょう。
長かった道のり。書きたかったのは惣一の幸せであって、嘉藤のではない。
なるほど、と納得しました。
終始嘉藤の視点で描かれていましたが、あの嘉藤がこれまでの生い立ちやらヤクザ同士の抗争やら、厳しい上下関係やら義理人情やら、その他諸々色々なしがらみ含めて、全部捨てて惣一だけの物になるためには、これほどの大きな事情がない限り無理でした。それは分かりました。
が、待ってください。
本橋組の皆さんのことは、ハチや井上さんや西や山平や、その他大勢の組員のことはもういいんですか。彼らが彼らなりに収益を上げる手段を講じることが出来て、惣一の資産運用その他に頼らなくても資金繰りに困らなくて、嘉藤がいなくても幹部がなんとか運営するだろ、みたいな目算が立てば、二人は二人の世界に埋没して逃避して、それでいいんですか。
私は、やっぱりそこは、仮に薬物中毒者が作り出した夢の世界のお話だったというオチがついたとしても(そんなオチではないですが)、飲み込めません。大勢の人が絡む、社会の一員として、この終わり方は、理解はできても納得できず、すっきり終われません。
そもそも、嘉藤も壊れていたのでは、と思ったりもします。
惣一が女性の乳房を作ったことを知った時、元に戻すのは可能そうだ、と言いながらも手術させなかった。そのそぶりも見せず、なんだかんだ愛撫するし、なんだかんだ胸ばっかり見るし、確かに嘉藤は女性が好きなんでしょうけど、胸があればいいのかと。相手が男でも、男の身体に不自然に胸だけ生えている状態でも、表向きさえ自身の理想とする組長然と振る舞ってさえくれれば、やりまくるのか。
破綻していると思います。ああ、だからこその逃避行エンドか……。
下巻で良かったところは、胸を作ったことを知った嘉藤が、冷たい言葉を吐きながら惣一を抱くシーンです。「月に笑う」を読んだときに、私は惣一が酷い目に遭ったと聞いて、ざまあみろと思いました。そこからここまでで初めて、惣一を可哀相だと思いました。
男の声は興ざめするから喘ぐなと言われて、これまであんなにうるさいくらい嬌声を上げていた惣一が、服を噛んで声を出さないように涙を流して堪えていた場面です。
本書に巻かれていた帯に大きく書かれた「純愛」の文字。上巻を読んだ時には違和感しか覚えませんでしたが、この場面を読んで、ああ、と腑に落ちました。
これまで惣一の負った苦しみの負債。
そして北海道に移り住んでからの2人の生活の静けさ。
負債に対し、なんて小さすぎる日常の穏やかさ。
もう、わたしの心臓は
持ち堪えることができなかった。
正負の法則というものがあるのなら
惣一の負債はどういうエンディングで
回収出来るのだろう。
物語のその先に、これ以上の幸せがあるのか…?
しかし惣一はもう、この負債を忘れている。
代わりに、嘉藤がその負債と記憶を負う。
嘉藤は負債を追うことで
はじめて愛を知ることになったのだ。
「……私の名前を知っていますか?」
「私を好きですか?」
「あなたが私を忘れても、傍にいますよ」
一度は風前の灯となった惣一の命に与えられた
残りの人生を、想う。
あんまりじゃないか!
勘定が合わないではないか!
もう、どれだけ愛しても、愛しても、
不憫で、悲しくて、苦しい。
下巻では、愛だけが残る、というのがキーワードなのかと。上巻もかなりハードでしたが、下巻の最後はもう、どひゃーな展開からのはぁ~~~…と、まさにジェットコースターでした。
以下ネタバレありますのでご注意ください。
ある事件をきっかけに嘉藤は東京へ戻り、再び惣一のもとへ。下巻はヤクザならではの抗争や裏切り、粛清、とにかくバイオレンス満載です。私は小説は創作なので、バイオレンスでもバッドエンドでも作品である以上まったく気にならないのですが、苦手な方はいるかもしれません。
そんななか、惣一は嘉藤への愛だけは貫いているんですよね…離れていても、決定的な決別の言葉を投げかけられても、ただひたすらに嘉藤のことを好きでい続けている。
身内の裏切りを粛清して一段落つき、神戸の隠れ家的宿に惣一を迎えに行く嘉藤。その夜、惣一は嘉藤のひどい言葉の凌辱に耐えながら、嘉藤にお願いしてまで抱いてもらうんです。
この痛々しさったら…もう筆舌に尽くしがたい。こんなにも心をくれない相手に、泣きながら心を傷つけられながら抱かれる描写が痛すぎる。
でも、嘉藤も嘉藤で、もう惣一を自由にしてやれよ…とか思うんだけど、絶対に惣一には組長になってもらうと惣一を手放さないんです。違う意味なんだけど、二人の執着のベクトルは同じ…。
しかし、惣一を抱いた嘉藤にも少しずつ心境の変化が訪れ惣一が組長に就任してからの二人の関係は以前とは違うものに。嘉藤は惣一を愛してはいないんだけど、欲情はする。嘉藤自身もこの不思議な気持ちを消化できずにいるんだけど、暗雲立ち込めていた過去の関係に一筋の光が差される。
順調に進んでいたかにみえたが、最後の最後、バイオレンス、凌辱、クスリ、もうありとあらゆる痛々しさを含んだ大事件が起きて、どひゃー、うひゃーとページめくるのも怖くなるほどの徹底的な描写に、もはや心はお許しくだせ〜状態に。
誘拐・監禁されてクスリ漬けにされた惣一の性器切断という途方も無くキツイ描写は、これはもはやBL小説なのか?と思うほどに、徹底的で容赦がない、ここまでするんかい?と思うほどでした。
でも、この描写。あとから、これ必要なものだったんだと思いました。
嘉藤は異性愛者で、嘉藤は惣一に対し、愛に応えられない理由として、女を抱きたいから、ということを言っていました。そのため惣一は自分が女のようになれば、嘉藤は自分を抱いてくれると思い、豊胸手術をするんです。でも、ペニスは残ったまま。
その後、性器切断されるという痛ましい事件となり、クスリの影響で廃人同然となった惣一だったけど、事件のあと、惣一と嘉藤と二人だけで漁村で慎ましやかな暮らしをする中で、惣一が言うんです。「ペニスもなくていいと思ってたら短くなった」と。
つまり、ずっとなりたかった「女」になれた。やっと嘉藤に自分を愛してもらえる、抱いてもらえる。
そして最終章、ついに二人の愛は結実します。
クスリの影響ですべてを忘れても、すべてを失っても、嘉藤の名前と存在だけは覚えていた惣一。ただひたすらに嘉藤への愛だけを貫いた。なりたかった「女」にもなれた。そこまでに惣一の嘉藤への愛は揺らぎないものだったんだなと思いました。
そして、すべてを失っても自分への愛だけが残った惣一を前にして、男とか女とかそんなものは超越して、これからの自分のすべてを惣一に捧げようと、ついに惣一の愛を受け入れ、自らも惣一への愛を認識した嘉藤が描かれていました。
惣一は自分のすべてを引き換えに、1番欲しかった嘉藤の愛を手に入れる。他に何も要らない、という惣一の言葉には泣けてきました。そして凄惨であまりにも過酷な過去はすべて忘れて、今、目の前にいる嘉藤だけが現実であり、嘉藤の愛に包まれていることが、惣一のすべてとなったことに、惣一は唯一無二の幸福を手に入れたのだと思いました。
他の人からみたら大きすぎる代償だけれども、惣一はそれしか、嘉藤しかほしくなかったわけだし、嫌な過去はすべて記憶からなくなり、ただ嘉藤との穏やかな日々だけが続いていくのだから、惣一にとっては代償を払ってでも欲しかったものなのだと。
そして嘉藤はすべてを失ってもなお、自分を好きでいる惣一に、ついに愛を認識するんだけど、愛してるとか言葉で言うのではなく、惣一の中で自分が忘れ去られた存在になることへ恐怖を感じるんですよね。もちろん、こんな状態の惣一を見捨てられないという気持ちもあるんだと思いますが、惣一に自分を覚えていてほしいという、本当に純粋で無垢な気持ちを持つに至るんです。
もはや究極の愛。まったく汚れのない愛だけがそこに残る。
読了後、すごすぎて、なんも言えねー状態に。でもここまですごいからこそ、絶対見届けたいと思うのかもしれません。
これは人を愛する究極のカタチなのかもしれない…。
すごい作品に出会ってしまった…神以外の評価はできませんでした。
私にとっての商業BL小説デビューが木原先生でした。
そのあまりのえぐみのある展開に心打たれ、一気にファンになりました。
何冊か一般文芸を手に取って、そして辿り着いたのがこちらの本でした。
読む人を選ぶ、というのを小耳に挟んでいたので、まずKindleで冒頭を試し読みしてから紙本で購入しました。届いた本のカバーイラストが素敵すぎて、美しすぎて、しばらく二冊並べてじっくり眺めてしましました。紙本で購入してよかった、と心の底から思いました。
正直、冒頭の惣一の陵辱シーンも読む側として全く問題なく(しんどい展開好きなので)、すいすいと読み進められました。
嘉藤視点で語られる、惣一の淫乱な姿ですが、木原先生の手にかかるとものすごく痛々しく映ります。愛のないセックスを描くのが本当にお上手だな、と内心ものすごく感動してしまいました。(肉棒、や、雌犬といった言葉を主語として使うあたり)
私は不憫な美人受けが好きなので、そんな惣一にもかなり唆られるところがありましたが、下巻に入ってもなお、嘉藤が依然惣一に全く唆られないどころか嫌悪と性欲が入り混じった苛立ちと興奮に、これまた木原先生らしいな、と、普通のBLならこんなに美人な受けがいたら、ほだされてすぐ惚れるのに、頑なにそうならないところに木原先生のお約束をガン無視する残酷さが見えて、暗い話が好きな私としては興奮しました。
そして、中盤明かされる、嘉藤への想いを募らせるあまりに惣一の下した決断というのは、読者の私もさすがに驚きました。こうくるかー、と。やっぱり木原先生すげぇやー、と。
そして、終盤、ついに行方不明になっていた惣一を嘉藤が救出するシーンで、嘘やろ……と頭を抱え、本を閉じたくなりました。正直、ここまでの展開で心が痛むことはほとんどなかったのですが、これはやばかった。しんどい。しんどすぎます。これを書いているのは読了した翌日なのですが、後遺症がものすごくて、日常生活に支障きたしていくレベルです。誰か、救済を、救済を……と、空に手を伸ばす始末。
最後、惣一と嘉藤の二人だけの、穏やかで、しかしどこか狂った世界も、見たいけど、見るのがしんどい、でも読まなくちゃ……そんな気持ちで最後まで読みました。嘉藤は惣一を連れてどこに行ったのか。どこか不穏さを残しつつ、読者に想像を委ねるラストも、お見事です。
どこまでも一方通行な二人が、同じ箱の中に収まるにはこのような展開でしか手に入らないものだったのでしょうか?あまりに残酷すぎて、もうちょっとどうにかならなかったのか、と頭を抱えてしまいます。
雌として嘉藤をどこまでも貪欲に求める惣一と、そんな惣一をボスとして尊敬し、どこまでもついていくと決めた嘉藤。お互いが、お互いに対して確かに愛はあるはずなのに、その方向性が違う、中身が違う、種類が違う。それだけでこんなに残酷な物語になってしまうんだな、と読み終えた私は呆然としています。
闇に耐性あると思ってたし、そういう展開ウエルカム!なはず……だったのですが、まだまだ修行が足りなかったのかもしれません。己の甘さをこの本で痛感させられました。
BL初心者はもちろんですが、中級者にもなかなか勧めにくい。それだけ読む人を選ぶし、終盤のあの展開に辿り着く前に心が折れて本を閉じてしまう人も多くはないのかな、と。
ただ、それでも読み進めた最後にあるものは、桃源郷のような、儚くて切なくて、偏った愛に満ちた、どこか空虚な世界。これを何エンドと評せばいいのか分かりません。くっつくとかくっつかないとか、そういう次元を超えたところに、この物語の、そして惣一と嘉藤の関係性に答えがあるような気がします。
ぜひ、これから読むぞ、という人は、確実に心を傷つけられる覚悟で読んだ方がいいです。それぐらいパワーとえぐみのある物語です。
木原先生って、ほんとうにすごいな、と言葉にならない絶望と感動が私の身体の中でひしめき合っています。
気軽に読み返すことはできませんが、確実に私の心を捉え、そしてどこまでも抉っていったことを、私は忘れません。すごい読書体験でした。ありがとうございます。
上巻とガラッと変わってヤクザモノ!って感じのお話で、ずーっと続いていって誰が裏切り者なの?何が起こるの?ってところにドキドキしながら読む。忠実な部下は死んでほしくないなと思ってるのにじゃんじゃか死ぬわ、リンチするわ、殺すわ。
ハードボイルド!
惣一が嘉藤と離れてた2年間のうちにまさか豊胸手術してたなんて超絶ビックリ。(扉絵でのネタバレはやめて欲しかった)
ともすれば、笑いにもなりそうなビックリ展開。
組長の豊満なおっぱいを隠す為に翻弄する嘉藤のやれやれな日々、みたいな。
もちろんそんなドタバタギャグにはなりません。
最悪な事態に巻き込まれていくし、この身体のお陰で堕ちるとこまで堕ちてこの身体のお陰で嘉藤達に見つけてもらって救い出される。(ほぼ手遅れ)
上巻では、惣一ワガママすぎる!許せんな、懲らしめてやりたい!なんて思ってたけど、
下巻に入り同情してしまった。
惣一は、ただただ嘉藤に愛されたかったんだな。
大阪のホテルからの脱出大作戦で、女装しての逃避行はとても良かったです。田舎のラブホでのプレイにエロスを感じた。
ヤク漬けの上ハードな裏ビデオ出演、性器切断となかなかハードな描写で心抉られます。
でも、裏社会ではこんな悲惨な事もあるかもしれないなんて思いながら読んでしまった。
ラスト、どうなったのかハッキリとは描かれてない。だけど、あとがきに[二人は何もかも捨てて愛に生きるのかな]と書かれていたので死エンドでなくてよかったと思いました。
ヒリヒリするし読むのしんどいんだけど、先が気になるし中毒性があるのが木原作品だなーと思います。
BLなのか?とは思う。
「自分の頭の中まで他人の価値観に支配されるなんて、生き地獄そのものでしょう」と木原さんの『ラブセメタリー』にありました。その言葉の牙を久々に向けられ、自分の予想を超えるどころか滅茶苦茶にされ、嫌悪と衝撃に暫く頭痛で放心状態でした…ネタバレなしで読めてよかった。
惣一が嘉藤を求める余り行動に移す愚かさ馬鹿さを、誰も辿り着けない境地まで読ませる力が凄い。こんな想像力を世に出せるって恐ろしいし、刊行と読者に許される(烏滸がましい言い方だけれど)のもまた稀有な事だと思いました。
「余りにも愛がない」と一度ボツになり、元々同人誌で描き続けたものをまとめた上下巻とのこと。嘉藤も惣一に対する気持ちを考えるシーンもありましたが、これはBLなのか、愛と括るには暴力的すぎる気がします。
嘉藤が求める惣一は理想の組長、惣一が求める嘉藤は性愛のみで、それは揺るがないように見ていましたが、惣一のどんな事をしても嘉藤が欲しい気持ちは容貌を変え、慈愛と悲哀を纏ったようでした。
嘉藤が離れた時に惣一はいつも危険に冒されて(それはもうフラグが立つほど)きたので、共に居るこれからはずっと安泰なのでしょう。
心を削がれる凄い疲れた読書でした。ネタバレはコメント欄に書きます。
上巻の最後に、秋の訪れに蝉の死骸を思う一文がありました。音でしか感じない生命の始終。
惣一の中で勝手に生まれて死んだ生命に憤る嘉藤。彼は妄想に付き合いつつ、男の惣一が自分との子を愛おしく思う様を眺めてどう思っていたのか。嘉藤の為に作れ変えられた身体。良いように考える惣一。余韻が凄い。
出来れば惣一は記憶を思い出しているのにそれを言わない設定が良いのだけど、そんな分かりやすい着地は木原先生は用意しない。
ヤク漬けでも「カトウ」と呼ぶ惣一…(余韻が凄い)
記憶が殆どなくなりボーッとしている時でも、惣一は異形の自身を見て発狂せず、欲しい形だと言える惣一がどれだけ嘉藤を欲していたか分かる。大阪に行った嘉藤と会わない2年間、その前にバッサリ振られた惣一は乳房をどう思いながら身に付けたのか考えると切ない。そして一度触れられたから切除すると言葉にする彼に泣ける。女々しくてみっともなくて純粋過ぎて愛おしい。
嘉藤に対して、性別が違うだけでここまで絆されないものかと、他のBLを読んだ後には思ってしまうけど現実的にはそうだろうと。
※ネタバレ&考察があります。
最初にこの作品を読んだときは、嘉藤の行動がひどすぎてびっくりした。
惣一の気持ちを知っていながら、彼を絶望させるような言動をとる。
すべては自分の理想のために。なんで身勝手な人だろうと思った。
しかし、これも一つの愛の形かもしれない。
愛=性愛ではないし、愛にも色々な形がある。彼の愛は敬愛に近いもので、惣一の望む愛ではなかったという、ただそれだけのこと。
想いの強さは同じくらいだったと思う。
現に惣一がいなくなったとき、周りはほとんど諦めていた状況で彼だけが惣一を諦めなかった。これが自分のためと言えばそれまでだが、この「周りと違う行動をとる」というところで、彼の強い想いを感じた。(愛という響きよりは想いのほうが合う気がする)
言ってしまえば、惣一の愛もかなり一方通行的なもので、自分を愛してほしいという気持ちが前面に出ている。
お互いが利己的な愛を相手に向けていると言ってもいい。
それがとても人間くさくて、たまらなく愛おしい。
自分の寂しさを埋めて欲しいから。
理想の組長になって欲しいから。
こういった気持ちが非常に生々しく描かれている。
最後の展開には賛否両論あると思うし、実際未だにどう捉えたら良いか迷っている。
最初は、今までの惣一が事実上「死」を迎えたということに非常にショックを受けた。
しかし、その後のことは明らかになってないので色々な想像もできる。
こういう考えさせられる作品、大好き。
もし記憶が戻ったら・・・
惣一はそれを隠すだろうか。嘉藤に知られたら組に戻らなければいけない。
今のような、自分がずっと望んでいた生活が送れなくなる。
それなら最後まで何も知らないふりをすればいい。そういう結論に達するだろうか。
それとも嘉藤のために理想の組長になり、彼の理想を叶えてあげるだろうか。
彼なら、もしかしたら組に戻る選択をするかもしれないと思うと、すごく胸が熱くなる。
もし死ぬまで戻らなかったら・・・
嘉藤はどんな気持ちで彼の世話をするだろうか。
罪滅ぼしもあるとは思うが、それ以上に惣一を想う気持ちがあるから手放せないと思う。誠実な彼なら最後の最後まで惣一の傍にいるだろう。
そして、できればハチとは交流を続けてほしい。この作品の唯一の良心と言ってもいいので笑
惣一の気持ちを思えば、今までの辛かったことを全部忘れていられる今の状態がベストなのかなとも思う。
しかし、あんなに頭が切れていた惣一がすべてを失うという結末はあまりにも惨すぎる。報われなさすぎだと思った。
やっと嘉藤と一緒にいられるというのに、なんて皮肉・・・このもやもやだけはどうしても消せないでいる。
自分の中にまだ消化しきれてない部分はあるが、何回も読み返したい名作。
こんなに互いを強く想い合える関係があることにびっくりした。
この数日間で「月に笑う」から「灰に月」まで一気読みしました。
「月に笑う」で読むのが辛いと感じた方は正直、本作は読まない方が良いと思います。
でも、どんな展開でも読める!!という方は読んで全く損はないと思います。
木原先生の作品は何作か読ませて頂いてて
他のBL作品にはないズンとくる読後感に衝撃を受けつつ
あまりに過剰摂取すると精神が持たないとも思っていました。
なので、前々から読みたいと思っていた今作品を今更ながら読破しましたが…
本当、軽い気持ちで読む作品じゃないです。涙
他の方のレビュー通り
ここまで受を痛めつけるんですか、木原先生っっ!!!
というくらいの絶望を受に与え続けてからの
2人で過ごせることに完全は幸せを感じさせない残酷なラスト。
もう頭痺れました。
もう2人で一緒に死ぬのが1番幸せなんじゃないか
と思うほどの残酷な終わり方だと私は感じました。
でもそれが堪らなく良いです。
多くあるBL作品に耐性がついて、飽き飽きしている方には衝撃的な作品になると思います。
木原先生、惣一さんをこんなに
痛めつけないで…
万全の精神状態で読んでも
痛すぎます。
刺さります。
辛すぎます。
哀しすぎます。
胸がギュッとします。
嘉藤、惣一さんを幸せにしてあげて。
こんな酷く辛い目にあっても
惣一さん薬〇にされても嘉藤のことは忘れない程の執着
その執着があったからあの男に
〇〇をザックリと切られてしまったのだよ…
ここまでするのね木原先生(>_<。)
せめて
誰にも知られない場所で
穏やかとはいかないかもしれないけれど
仄暗い世界に少しの希望の光を
見つけて生きていて下さい。
休日前の夜に
読むことをオススメします。
次の日が仕事だと
精神状態やられて役にたたないかも…
一人にして。探さないでください…と書き置き残してさ迷い歩きたくなりました。
ハピエンでもありメリバでもありバドエンでもあった…が率直な感想です。
後半は物凄い顔して読んでいました。
三回涙出てきたし思い出し抉られが…
心にダイレクトアタックされっぱなし。
惣一さん…それでも木原先生作品の受けキャラ二推し…です。
ちょっともう…結末を知った後の私はなんかもう…息吸うのも辛いんですけど。
久し振りにこんなに全身でお話にのめり込みました。
何も知らない初期の私の殴り書き感想とか酷いですよ?これ↓
バイブ相手に壊して壊してと自分で手を動かしながら懇願する惣一さんがやっぱり不憫可愛い…
ドア開いてることも気付かず夢中になっちゃうのも。
2年経っても性欲フルパワーでうれちい。
自分が女の姿に憧れていたわけでもなりたかったわけでもない
けれど体を変えて
いつ帰ってくるかも分からない、結ばれる保証なんてないに等しい
それなのに
嘉藤が好きな体の一部をもっていたかったのかな…
旅館のシーンは特に胸にきました。
命令が懇願になって拒否され錯乱して最後のお願いだと縋って…ほんと心臓を雑巾のように絞られていたかんじ。
優しくしてって言えば良かったのに、惨めなセックスさせられて…。
嘉藤の鬼畜加減たまらなかったです。
謝罪は認められず不満ばかり押し付けられて…ただただ傷付きつつも愛しい男の体を感じながら涙ポロポロ流している惣一さんが辛くて辛くて…
その泣き顔が明らかになるシーンはとても印象的で目の中にテレビがあって映像を観ている気分でした。
切なくて、苦しくて、辛くて、でもこういうの好きーーーーーってすぐさま読み返しましたとも。
異形…と称されるのは複雑な気持ちですが愛にひた向きな男のまっすぐな姿だったと思います…。
惣一さんって、人に弱みや無様な姿見せそうじゃないイメージあるのに、このさらけ出し具合だったり必死さが痛くて痛くて。
デリヘルの女としてでもいいから抱いて欲しいって…そうまでしても体を重ねたいという気持ち…ピュアな一途さにはやられ続けました。
嘉藤も組のトップとして求める…そうあってほしい惣一の姿が揺らぐことなく…だからこそ悲恋状態で…。
全てを知った今はもはや「もー」「あー」「うー」くらいしか言えないです。
すっごく個人的好みな話ですが、惣一さんの脳内ボイスは野島健児さんでした。
これはもうぴったりでしょ。
上巻読んだ時点でドラマCD化頼むよ!!諸々異論は認めん!!と一人楽しんでいましたが、下巻読んでまず無理だなこりゃ…と撤回しました。
自分の耳の中で楽しむことにします。
でもでも、この作品に出会えて良かったです。
心が元気を取り戻したらまた読み直したいし大事にしたいし何ならコールドシリーズと一緒にお墓まで持って行きたいです。
木原先生の作品は、大好きなのですが…こちらは好き嫌いがハッキリと分かれる作品ではないかと思います。
私は、途中から読むのをためらってしまいましたが、何とか上下巻読み終えました。ずっしりと重く、すぐには消えそうのない余韻が残る作品でした。
全体を通して重苦しく、甘さは感じられませんでした。攻めが、ノーマルな人間という事もあり、そのあたりの描写などはリアリティが感じられましたが、攻めの嘉藤を愛しすぎての受けの惣一の、突拍子のない行動・言動、どうにも私的にはダメでした。そこまでするのか?!ってほどの行動に出るのですが、私はそれが受け止めきれず。
ですが、そこまでするほど、攻めを好きで好きで、どうしようもなかった惣一を想うと、心が締め付けられます。
攻めの嘉藤は、バイでもゲイでもなく、女性を好む普通の男。惣一の気持ちを知り、苦悩する姿はリアルに伝わりました。実際、そうゆう事が現実に起きたら、ノーマルな男性はこんな感じなんだろうなぁ…と。
そう簡単にいかないところが、やはり木原先生の作品だと思いました。
攻め苦悩、受けの苦しみ、壮絶な紆余曲折ありながら、最後の最後に見いだした2人の答えには、納得はできました。それが、ハッピーエンドかは別ですが。
ただのBL小説でしょ?と気軽に読もうと考えている方には、あまりオススメできません。初心者向けではないです。
ハードで過酷な描写、多くきつかったです。
陵辱ものは慣れているつもりでしたが、肉体改造、記憶喪失、ヤク中、幻覚症状そして何より恋愛感情が明確に描かれていない攻め、という設定はレベルが高すぎた...
恋慕の情ではなくとも、敬愛するボスへの愛という形で、ある意味成就したようでしたが、うーん、それ以外のパンチの効いた展開が衝撃的すぎて...
とりあえず立場を越えた愛や、陵辱エロを求めて読むとびっくりするので、読む人を選ぶと思います。
まだまだ自分はレベルが低いなーと勉強になりました。
商業BL小説を初めて手に取りました。いきなり素晴らしい作品にめぐり合い、万感の思いでレビューを書かせて頂きます
特に強く心を乱された部分など・乱文ですがご容赦いただければ幸いです
BLなのに男の尊厳(心身ともに)を奪うなんてと展開に凹みつつ終盤から何かを祈る気持ちで読んでいきました
下巻では嘉藤の心の内が詳細に描かれていたと思います。そのため攻め側に強く感情移入していきました
救出される部分を読み終えたとき、もうこれ以上この二人は性行を止めて欲しい、穏やかな関係でいて欲しいとまで思ってしまいました
しかし安住の地で共に快楽に溺れる生活を送る描写が続くのですが、惣一は他には何も要らないと言いますが、その男は同じ感情を持ち得ないのにそれでもいいのか?それは幸せなのか?と言った気持ちに襲われ、けれど最後にようやく思いが通じて、もうこれでいい、となりました
嘉藤が1%でもいいから惣一に恋愛感情を抱くことを信じて読み進めましたが、最後までそうはならず・・そのため、惣一を抱きつつもこの物体は何だ?みたいなことを読者に何回も訴えてくるのが辛すぎる。忘れ去られるのが怖い、それをさせないようにずっと傍にいるって・・あまりに身勝手だし、抱きしめるくせに愛することを始めない、つまり嘉藤の原動力は同情心からと仮定するとそれは惣一と永遠に交わることが無いと分かり、盛大に落ち込んでしまいます。近いようで遠い感情で両想いになれたことがただただ哀しい
嘉藤はBLでは異質なキャラクターだと思います。私たちは恋愛感情が分かる(上巻でどんな手を使っても気を引こうとした惣一の気持ちが痛いほど分かる)のにどこまでも利己的で、最後も東京へ戻したいと考えていたことに、惣一からの好きを理屈で受け入れたことに、恋が分からないことに私は若干の怒りと大きな失望を感じて落ち着きません
終始救いようのない本作ですが、嘉藤が私のことが好きですか?って初めて口にしたところと、惣一が好きを忘れていなかったところで、微かな光のようなものを感じました
もちろん、読み終わった日は夢見が悪かったです。それでいいんです、木原先生なので!!
上巻の帯に「純愛」とありますけど、純愛ってなんだか不幸なものにつけられがちですよね、悲恋とか。木原先生の作品って、この二人はこれで幸せなのか…?っていうような終わり方でも力づくでハッピーエンドだす〜!って言い包められちゃって、さいですか〜って引き下がるしかないというか…笑
だから色んな妄想ができて木原中毒になるポイントなのかなとも思います。
下巻では最後に穏やかな日々が描かれてはいるので、そこが救いなのかもしれないです。二人で一緒に生きている、といった意味で。
さて、嘉藤に抱いてもらってからタガが外れてしまった惣一は、実父である組長からも見放されて、嘉藤と引き離されてしまいました。血を分けた息子ではなく嘉藤に跡目を継がせる組長の心づもりから、二年ばかり大阪の芦谷組の預かりになっていた嘉藤が本橋組に呼ばれ、組長から直々に今後についての相談を受けます。
その直後、手術入院中だった組長が殺害され、報復を巡り不穏な抗争劇が展開していきます。この組内部のゴタゴタが表向きのストーリーを引っ張ってはいますが、やはりお話の核は惣一と嘉藤の関係性だと思います。
組長の死後、惣一も弔い合戦の決着がつくまで組長代理として指揮をとることを公言し、惣一のサポートとして嘉藤が本橋組に戻ることとなり、二人は再会。
ところが嘉藤を銃撃から庇って負傷した惣一の体には、女みたいな胸の膨らみが。彼は既に壊れ始めていました。
一度だけでいいから女のように抱いて欲しいと惣一に懇願され、嘉藤が拒否すると惣一は発狂しかけます。結局、惣一を宥めるために嘉藤は抱いてやるのですが、この時の嘉藤の心中はいかなるものだったのかと想像します。既に惣一にほだされていたのか、組のために自己を犠牲にした諦めのようなものだったのか…。
惣一の秘密に気づいた当初、嘉藤は早急に胸を元に戻させようとしたけれど、なぜかそのままにさせておきました。それが更なる悲劇を呼ぶとは思いもせずに。
嘉藤と離れていた間に、トラウマのせいで一人でいることを恐れていた惣一が、身軽に外に出られるようになっていました。その表面的な惣一の変化を嘉藤はどう受けとったのかも気になります。それは自分が期待する惣一のあるべき姿だったのか、それとも彼を信頼していたがゆえの責任放棄となったのか。
本橋組と同系列の会長の葬儀と別の会長の一周忌が重なり、前者には惣一が、後者には嘉藤が出席した際、惣一が参列した葬儀会場で爆破事故が起こり、行方不明になります。それから約一年後、変わり果てた姿で惣一は発見されることになるのですが…。
最終章では、脳の機能が壊れて記憶も定かでない中、惣一は自分がこうなりたいと思った体になったと無邪気に喜ぶシーンがあって、嘉藤は何を思っていたのだろうと思います。泣けます。
嘉藤の惣一への思いがわたしには謎で、知りたくて仕方がありませんでした。様々なエピソードや描写から推察するしかないところも手強くて面白いし、最後の最後に嘉藤と惣一はどうなったのかも果てしなく妄想が膨らみます。謎だから益々惹きつけられるのかもしれません。
これは壮絶な恋の物語です、惣一にしてみれば。愛としかいえません、嘉藤が最終的に選んだ道は。だけどスジもんに愛はいらないのです。似たようなものがあるとすれば情しか許されない世界でしょうから。
この作品は、徹底的に愛のない世界を描くことで純度の高い愛を表現する、木原先生の真骨頂だと思いました。あとがきで、先生が惣一だけ「さん」付けしているのを目にした時、惣一に対する先生の愛着というか労わりのようなものを感じられて、なんだか嬉しかったです。
ずっと同人で追いかけてて、読み返すのが辛いので買ってからも次の日の休みこそ、、、とそれを繰り返し、放置していました。ついに覚悟を決めて読んでしまったら1日で目を話すことなく読み切ってしまいました。
1日たったけどまだ心をじくじくと蝕んでます、、置き場がない。
惣一がひたすらえげつない目に合うし、嘉藤さんは感情はあっても情がないし。でも、木原先生の作品で共通しているものって(あくまで主観ですが)理不尽なことをするものには相応に痛めつけてプラスマイナスゼロにするといつか、、それにしても惣一はマイナスよりですが笑
不均衡で歪。また木原先生は歴史に残るものを作ったなとしみじみ感じています。
任侠モノですが任侠萌えとは一切関わりがないので、今後読む方は覚悟をお持ちください笑
受けの惣一の健気さ、一途さに胸を打たれたので神評価です。
いやー、それにしたってここまでする!? 木原先生! ってくらい惣一がひどい目に合います。バイオレンス耐性がない方にはオススメできません。いや、ほんと。
あらすじは他の方が書かれているので割愛します。なのでレビューというか感想です。
そんなにしてしまうくらい嘉籐が好きなのね。嘉籐好みに体をかえちゃったり、どうしても抱いてくれないからお金で買おうとしたり、なりたくもない組長になったり。惣一のその気持ちだけなら純愛なんだけども。
これでもかってくらい酷い目にあった惣一ですが、救いは薬の影響で記憶が曖昧になっちゃったこと。本当、忘れて良かったです。
どうしても惣一を見捨てられない嘉籐。それはやっぱり愛なんじゃないのかなあ。想像妊娠までしてしまう惣一。そしてなかったことになったお腹の子供。がっかりしたのは嘉籐の方じゃなかったかと思えてほのぼのしました。
どうか末永くお幸せに。
私にはまだ早かった…月に笑う、までだなと。闇社会モノBLに耐性はあるつもりでしたが、正直読んでる途中で何度も本を閉じてしまうくらい、読み進めるのがキツイ描写が多かったです。上巻は、惣一の加藤への想いを拗らせ過ぎて色々やらかしてる痛い受けだなぁという印象止まりだったのですが、下巻の怒涛のバイオレンスな展開に、私は今何を読んでいるのか?と分からなくなるほどでした笑
この物語全体を通して、惣一をあそこまで痛めつけないと、その先の加藤との穏やかな生活は得られなかったのだろうか。。嫌な雌なんですよ、惣一、感情的だし、自分の思い通りにならないとヒステリックになるし、奇声を上げて全裸で外に飛び出すし笑笑、
決して惣一に好感は持てないんだけど、ちょっと同情しました。
木原音瀬作品史上最も嫌な受け、そして哀れな受けだと思いました。
『月に笑う』のスピンオフ
前作がそれほど痛かったり苦しかったりしなかったから(木原作品比)大丈夫、と大して覚悟もなく読んでしまったことを反省しています。
木原作品の中でもトップレベルの痛い展開だらけではありますが、切なくて続きを読まずにいられなくなる作品でした。
裏社会物は好きで、バイオレンスで血と暴力もありとは思っていましたが想定以上でもう許してほしいと懇願し続ける展開が多くて長くて大変でした。
個人的にはこうあってほしいという方向からどんどん離れて行ってしまい予想外の結末でした。
もちろん可能性としてはあり得るものでしたが、惣一の願いが叶うといいなとか、もう嘉藤から解放されたほうが幸せになれるんじゃないかとか勝手に考えていた者としては、救いのない世界のように思えて重い気持ちになりました。
評価としては萌えのレベルでいうとあまり高くはないのですが、いい作品で読むことを勧めたいかどうかの基準であれば高評価にしたいと思います。
ただし読み手を選ぶし覚悟も必要ですが…。
ボーイズがラブする楽しいお話や、苦労や痛みはあってもハッピーエンド、最後はすっきりとカタルシス、と読んで癒されたい楽しみたいというときには不向きなことは確かです。
本当に生半可な覚悟で読んだことを後悔するくらい壮絶な”純愛”で…、日曜の夜にこれを読み終わり、明日からの仕事大丈夫か??と思うくらい、理性も感性も徹底的に打ちのめされました!!!この深すぎる衝撃からどうやって立ち直ればいいんでせうか??
(誰か助けてーーー爆発するーーー!という気分です。)
エロい描写が多くても、その行為に耽る惣一という人が淫乱だという印象は全くなかったです。むしろ行為がエスカレートすればするほど、嘉藤への気持ちの高まりが感じられました。終始、惣一が嘉藤に望むことよりも、嘉藤が惣一に望むことのほうの大きくて重く、結局はそこにこたえようとしている惣一という人の健気さが切なすぎます。。やはりこれは狂おしいほどの”純愛”なのです。
それぞれが望むかたちではなくても、嘉藤と惣一は相思相愛だったという印象を受けるのですが、それがあまりに違う方向なのでもどかしいのです。そしてそれを、ああいうかたちで昇華させる、これが木原先生流だな、さすが…という気持ちと、もっとなんとかならんのかーい(;;)というどうしてもなんとかしてやりたい!気持ちと、いろいろごっちゃになっています。失踪後は、期待と不安(不安やや上)から頁をめくる手が震えるほどドキドキしまくり、”嘉藤、早くなんとかしてーーー”と(心の中で)叫びながら読みました。こんなに興奮しながら小説を読んだことはありません…。
おそらく木原先生を熟知されている方だったら”まさか!”はないのかもしれないのですが、主だった数作品くらいしか読んでいない初級者レベルの私は、最後の数ページで何回か悶死しました…。ですが、これ以外(以上)にしっくりくる二人の末路はないのでしょう。壊れてしまってもなお残る”すき”という言葉が、物語のすべてを表現しているような気がしました。美しさと哀しさと優しさと、同じくらいの絶望感があります。
他では得難い体験のできる作品でした。しばらく眠れなくなりそうです…。
最後まで読んで思ったのは、わたしだったら惣一さんをアメリカに行かせてあげたかったな。
もう周りの目とか気にしないで、嘉藤のことも捨てて好きに生きて欲しかったな。
でも、本当に惣一が求めていたのはラストのような嘉藤と自分だけの生活だったっていうのもなんとなくわかるんです。
そこにたどり着くまでに、自分で身体を変えたり、薬で頭の中も変えられたり…。そのまんまの惣一を愛してあげてよ!って思ってしまうのですが、
2人はこれからゆっくり穏やかに幸せになっていくのかな。
ラストの方でただ純粋に「好き」と言葉にしてる惣一は、可哀想なんですけどかわいいなと思いました。
下巻は特にですが読んでいて、「え?いや…まじか…」と思うところが度々。
こんなに、心が動かされるBLってないですよ。
キュンキュンだけじゃなくて、ズキンズキンする時もありますが…笑
一筋縄ではいかないし、読んでいて思い描くパッピーエンドには辿り着かないことの方が多いけど…
ほんの小さな幸せだったり、キュンとする気持ちが芽生える瞬間はたしかにありますよね…
木原先生の作品は、それがリアルだから面白いのかなー??
『灰の月』の下巻。
木原作品は容赦なく痛い展開のものは多いですが、そんな木原作品の中でも群を抜いて、痛く、そして切ない作品かと思います。
「ヤクザ」という世界がバックボーンになっているために、殺し、暴力、レイプが当たり前のように登場します。女性との絡みを彷彿とさせる描写も少なくありません。
この作品は、読み手を選びます。
が、個人的に心を鷲掴みにされました。
紛れもなく、「純愛」を描いた作品だと。
もともと同人誌として刊行されていた今作品ですが、商業誌で発売した版元に敬意を払いたい。それだけ、衝撃的な内容です。
上巻は嘉藤のことが好きで、でもどうやっても嘉藤に振り向いてもらうことのなかった惣一が空回りしている、というところまでが描かれていました。
下巻は、大阪に行っていた嘉藤が惣一の父親でもある本橋組の組長に呼び出されるシーンからスタート。
そこで嘉藤と惣一が再開し、二人の時間が動き出すが―。
本橋組組長が何者かに襲撃され殺害されるという事件が勃発。実行犯を見つけ出すべく惣一は本橋組の指揮を執るが、男漁りが過ぎたために組員たちから人望がなかった惣一。けれどもともと頭の回転が速く、物事を冷静に判断できる惣一は、徐々に組に受け入れられていく。
そこには、嘉藤が心酔した「惣一」という男の姿があって―。
視点はほぼ嘉藤で進みます。
が、彼の目を通して描かれているのは「惣一」。
頭が良く、お金稼ぎが上手で、組を背負って立つのに相応しい器を持つ男。
けれど、その表の顔の裏に隠したのは嘉藤に愛されたいと願うただの男。
惣一の、嘉藤に愛されたいと一途に想い続ける恋心が切なく、そして哀れでした。
男を抱くなら、どんなに不細工でも女が良い。
かつてそんな言葉で嘉藤に拒絶された惣一。
そのために惣一が取った行動は…?
惣一の行動の全ては、嘉藤のためだったんじゃないかな。
冷静で、親である組長の敵を討つこと。
組のために、お金を稼ぐこと。
そして、アメリカに行くこと。
全て、嘉藤にとっての理想の「惣一」であるために。
今回も惣一は敵対する人物に拉致られます。
この凌辱シーンはかなり凄惨です。
痛いものもどんとこい!の私ですが、正直飛ばし読みしました。
何故、ここまで惣一を追い込むんですか、木原先生…。
と思いつつ読み進めました。
最後の結末は、賛否両論かと思います。
が、あれこそ、惣一が求めていた嘉藤との関係だったんじゃないかなあ…。
組は関係なく。
お金なんかなくても良い。
嘉藤がいてくれれば良い。
嘉藤に、「組のトップ」としてではなく、「惣一」を見てほしい。
女のように、嘉藤に抱かれたい。
じつは、惣一は、意識が戻ってるってことは…、ないですかね。
ってちょっと思ったりしました。
でも、理想の「組長」ではなく、「ああ」なってしまった惣一を捨てられない嘉藤も、惣一を愛しているのでしょう。
完全に好みが分かれる作品だと思います。
優しく、温かなストーリーではありません。
が、「愛すること」とはどんなことなのかを問うた、壮大なストーリーだったと思います。
木原作品の真骨頂といえる、素晴らしい作品でした。
でもどうしても不憫でならない...。ここまで傷ついてぼろぼろにならなきゃならないのか?と思ってしまって。他の方も書かれているが、やっぱり覚悟が足りなかった...。唯一無二、BL界の極北。木原音瀬さんの作品で何度こんな思いをしているのか!!でも新刊がでたら懲りずにまた手を出してしまうのだろうな...。うぅ、好きです。ショックが抜けきらないので大変申し訳ないけど評価は中立で。
最後の畳み掛ける怒濤の展開にただただ戦々恐々としました。
公式のあらすじを読んで、本編の「月に笑う」や「美しいこと」みたいな物語と思っていましたが…いや、なんか違う。あらすじは何一つ間違ったこと書いてないのに、あれ?おかしいぞ?
なんの心の準備もせず読んだら、大火傷をしました。
久しぶりにしんどかったです。色んな意味で。
綺月さんの「背徳のマリア」を思い出しました。
物語の始めとか途中でなんとなく結末の雰囲気が分かると、読み進めるにつれて耐性がついて今回みたいなラストでもこんなに衝撃は受けないように思います。けど、木原さんの物語は耐性がつくどころか読み進めるにつれてチラチラと希望が見えて心が無防備になったところで一気にラストまで転げ落ちていくので、分かっていたはずなのに…やっぱりしんどかった。
しかし、きっと、そのしんどさがないと惣一と嘉藤の二人が色んな柵を捨てて、穏やかな関係を築くことはできなかったのかもしれません。
色んなものを失ったけど、惣一にとってただひとつの願いが叶ったのが、唯一の救い。
確実に好き嫌いが分かれる、というか、読める人と読めない人に分かれる話だと思います。
人によってはBL?と疑問に思う人もいる内容だと思いますが、私はBLの一つなんだと思います。
男子二人(以上)がイチャイチャしてるのもあれば、こういうしんどいのもある。
久しぶりにBLというジャンルの奥深さを感じました。
人によってはトラウマになりかねない話だと思いますし、木原さんの痛い話が好き!って方の中でも人を選ぶ作品だと思いますが、愛や人生について考えたい方は、ぜひ!
放心状態です。
途中まではまさかこんな結末が待っているなんて思いもせず、読了した今、暗い海の底にいるかのようなこの感情に戸惑っています。
私は上巻でこの作品について、
『心が弱っているときには絶対に読めない』と言いましたが、下巻はそんなのの比じゃない。
万全の精神状態で読みはじめても確実に心が破壊されると思います。
上巻で、嘉藤への執着と男狂いの醜態を晒し、父親である本橋組組長により嘉藤と引き離された惣一。
下巻はその2年後、嘉藤が久々に大阪から東京へ出てきたところから始まります。
敵対する組の不穏な動き。組長の殺害。
嘉藤と離れ男遊びをやめていた惣一は、父親の死をきっかけにそのカリスマ性を発揮し始めます。
そしてそんな惣一に対し、再びボスへの憧憬の念や敬愛の気持ちを抱く嘉藤でしたが…
上巻では惣一の性癖とそれに抗う嘉藤について多く語られていましたが、下巻はヤクザものの要素が色濃く、目まぐるしく展開していきます。
そして中盤からは、2人の関係にも変化が現れ始め…
全編エンターテイメント性が高く、非常に読み応えがありました。
まずは暴力。
組長を殺されたことによる組同士の抗争は凄惨を極め、リンチや殺人シーンもしっかりと描かれています。
信頼する身内の裏切り、近しい者の死など、人の汚い面や想像するも苦しい場面が描かれ、救いがない。
希望する方向にはまったく展開してくれません。
読む側に覚悟が必要です。
そして、これも衝撃でしたが…
嘉藤のいない2年の間に、惣一が自分の身体に施したもの。
上巻、大阪に行く前最後に嘉藤が惣一に放った拒絶の言葉、
『胸もなければヴァギナもない。あなたに求められるたびに、見た目も味も不味いものを差し出されて、無理に食えと言われているようでした』
BL的甘さもファンタジーさの欠片もない、嘉藤のこの容赦ない一言にはとても驚いたのだけど、これに対する惣一の答えがこの行動なのかと思うと、想像するだけで胸が張り裂けそうに…
これには賛否両論あるかと思いますが、私は上巻ではちっとも好きになれなかった惣一のことを、たまらなく愛おしく感じたんですよね。
以前のような非力さがなくなり風格が備わり出した惣一ですが、反面嘉藤の前では以前にも増して“女”になります。
身も心も“女”に近くなった惣一をますます嫌悪する嘉藤ですが、本来女しか好きになれない彼は、惣一の持つ女らしいか弱い部分やエロティックな部分に絆され、欲情したりもするのです。
そんな相反する感情に揺れながらのセックスは、身勝手で、激しく、かと思えば優しくて、とても切ない。
仕事面では冷静にカリスマ性を発揮し嘉藤を魅了するも、2人きりになるとか弱い女になり軽んじられる惣一。
惣一を組のトップに立たせて一生仕えて行きたいと願う程に敬愛しながらも、雌のように自分を求める惣一を嫌悪し冷淡に接する嘉藤。
お互いに求めるものがちぐはぐな2人。
狂うほどの愛を向ける惣一にも、そんな姿に辟易しながらも惣一の才能に執着する嘉藤にも、結局同調は出来ないままに、でもそんな2人の物語がとても好きでした。
私は、同調は出来ないけれど、下巻から惣一のことをとても好きになっていたので、終盤からは1ページ1ページが地獄のように感じられました。
あまりに辛すぎる展開。
予想だにしなかったラスト。
でも、惣一にとって、ただ妻のように嘉藤に寄り添い、嘉藤に抱かれる生活を送ることが唯一の幸せだったのだとしたら…彼の願いは成就したのではないでしょうか。
2人にしかわからない愛が、たしかにそこに存在しています。
その一点に救いを求めることしか出来ません。
下巻は本当に凄まじい。
ですが、この容赦ない描写力こそ私が「神」をつける理由であり、この作品に対して求めるものでした。
たまらなく惹きつけられる。
当然、まったく同じ理由で「しゅみじゃない」と感じる方が多くいらっしゃることでしょう。
これはそういう作品だと思います。
痛い…けど、夢中で最後まで読んじゃいました!
2人の気持ちの動きをずっと追ってるのに、アレコレと起こる事件もハラハラ楽しくてその度に2人に変化が起きる…全く飽きずに最後まで凄いスピードで読破しました!
下巻後半…ページを捲って2行の嘉藤の気持ちに、私の色々な思いが溢れてきて泣けました…
書き下ろしでは…納得なんだけども…もっと…もっと2人を読ませて欲しい…って思っちゃいました(泣)
主人公たちの周りで人がたくさん死にます。ヤクザものだから仕方ないとはいえ、えげつなくて読んでるとだんだん鬱になってきます。良くも悪くも商業向きでないというか読者を選ぶ作品です。
上巻から惣一のある変化にはあっと驚かされます。そうきたかーって感じ。嘉藤は相変わらず惣一をなかなか好きになってくれなくて…でも最後は惣一の願いは叶ったと言えるのかな。代償は大きかったけど。
バッドエンドではないけど最後まであんまり救われないというか、まー木原さんってこのタイプのお話も結構あるよね、という感じ。上巻は愛のあるカップルの番外編が入ってたからまだその分は救われたけど下巻はそれもないからズーンと沈んでしまう話です。次は甘い話読もうっと。バランス大事。
宣伝文句というかあらすじに「その後の幸せな書き下ろしショート」とあって期待していたのですが、予想の斜め上を行く本当に最終章っていう内容でした。幸せ…これも幸せの形のひとつでもありますが、木原先生の幸せってハードルが高い…。
個人的なパワーワードはあとがきの「あまりにも愛がない」。
まぁほんと嘉藤(攻)は惣一(受)に愛がないです。嘉藤の視点で進むのですが、とにかく惣一が不憫でたまりません。でも実際は好きじゃない人には何をされてもなかなか絆されないもんですよね。
ヤクザものに耐性のある、それまでは女好きのノンケだったのに受けにはあっさりほだされて…という展開に飽きた方にオススメです。
人を選ぶ作品だと思います。
全くもって個人的な見解ですが『FRAGILE』や『WELL』がダメだった方はきっとダメなんじゃないかと思います。
とにかく痛い。身近な人がバンバン死ぬし。
でも『痛さ(心理的な痛さの方が大きい)』に耐性があり『ありのままの自分を愛して欲しい』という登場人物がほぼ不可能と思える恋愛を成就させるお話が好きな方は、いけるんじゃないかと思いました。
上巻で『男だから』という理由で嘉藤に拒まれた惣一は、この巻で『男ではないもの』になろうとします。
ここを読んだ時に「髪は長い方が好き」と言われてロングヘアにするという話を連想しました。
いや、それとはかなりかけ離れているのですけれども。
惣一も馬鹿じゃないのでその特殊さを自覚しています。それによって嘉藤に軽蔑されるであろうことも。
でも、止められないのですよね。
嘉藤は惣一に男惚れをしています。
それなのに惣一は『男ではないもの』になろうと努力し続ける。
考えていることが180°違っている。
とんでもないすれ違いが続きます。
もう、下巻でも愛なんて生まれようがない。
とても不幸な出来事が惣一の身に降りかかり、嘉藤が男惚れしていた惣一の『組長として、人を従わせるカリスマ』の部分は全てなくなってしまいます。
そうなって初めて嘉藤はその惣一の全てをありのまま受け入れようという心境にやっとたどり着きます。
これ、上巻で出てきた『嘉藤の初めての女性』とのエピソードがあるから違和感がないのですね。
幼い頃に読んでいた少女マンガの多くは『君は○○(欠点)だけれど、でもそんな君が好き』というものでした。好きな人に自分を自分のままで受け入れて欲しいというドリームです。
でも、長じて知った現実は「世の中、そんなに甘くない」でした。
だから『あなた好みの女になりたい』という考えも解るんです。
でも「それって純愛じゃない」と思うし「そんな風にして始まったら、いつかは終わってしまうよね」と思うのです。
この話のラストには確かに純愛がある。
互いに、相手に自分の理想を押しつけ合っている間には生まれ得なかったものが、全てを失った後に生まれてしまうという、今まで読んだ中で最も腑に落ちるメリバでした。
相変わらない木原さんの豪腕魔術師ぶりに感服いたしました。
fandesuさん、こんにちは。
「あなた好みの女になりたい」、まさに惣一!と胸を打ちぬかれました。(奥村チヨの『恋の奴隷』の歌詞をググって、またズギュンとなり…。勝手にすみません。)
「全てを失った後に生まれてしまう」、生まれたとの解釈に唸りました。
私は「残った」と感じたので。
いろいろなことを考えさせてくれる木原作品。すごいですよね。
読み終えてのシンプルな感想ですが、完全に理解の範疇を越えてます。
言葉そのまま、思考がストップしちゃって理解出来ない状態なんですけど。
元々、私がこの作品を読もうと思ったキッカケですが、「痛そうだけど『木原音瀬の書く純愛』って気になるなぁ」くらいの軽い感覚だったんですよ。
下巻に至っては、「もう何でもいいから、救いが欲しい」だったんですよ。
もう、このスタンスから間違ってた。
そんな薄っぺらい覚悟で読んじゃダメな作品でした。
これは、自分もかなりのダメージを受ける覚悟で、その上で全力で向き合って読む作品なんですよ。
ラストがもう、凄いとしか言いようがないのです。
でも、薄っぺらい覚悟で読み始めると、完全についていけないんですよ。
そこまでがあまりに痛すぎて、もうズタボロなんですよ。
ここまで、主人公を完膚なきまでに痛めつける必要がある?
ここまで、容赦無く主人公を壊す必要がある?
と、覚悟無しに読み始めると、付いていけずに悶絶する羽目になると言いますかね。
要は何を言いたいかなんですけど、とにかく凄い作品なのです。
私は救いが欲しくて読みましたが、確かに救いはあったのです。
が、ここでもまた容赦無し。
救われたけど!
救われたけど!!
でも、これで「良かった~」となるかと言うと、個人的にはこれまた痛すぎる・・・。
惣一の人生って、一体なんなんだろうと思うと、もう胸がつぶれそう。
辛い。
読後感が、果てしなく辛い・・・。
と、軽い覚悟で読んじゃダメだと言う事を訴えたかったりします。
それ相応の覚悟を持って読まないと、呆気なく返り討ちにされる作品なんですよ。
「痛そうだけど、どうしようかな」と迷ってる時点で、もうやめといた方がいい作品なんですよ。
あと、私なんかが読んでしまってすみませんでしたって作品なんですよ。
でも、私のBL人生の中で、後にも先にもお目にかかれないであろう、とにかく凄い作品でした。
※結末に絡んだネタバレを含みます。
上では受けの惣一の魅力が一ミリも分からなかったのですが、今回は魅力的だなーと思えました。
嘉藤の心の動きや結末での選択には大変萌えたし感動もしました。
が!ちょっとBLとして素直に萌えるには特殊すぎる…エグすぎる…
まず受けの惣一が手術で胸を作ったこと…女性の胸ですよ…いじらしくていじらしくて、心情自体は萌えるんですが、どうも頭がついてかない。
そして極めつけは惣一の惣一が無くなってしまったこと。欠損表現は苦手なのでちょっときつかった。エグい。
最後には胸があって男性器が無くなってもはや男らしさの欠片もなく、心が壊れ経済やくざとしての技能も失った惣一…かつて嘉藤が心酔した惣一の要素は何一つない。
それでも嘉藤は惣一と生きることを、惣一のためだけに生きることを選んだ…ということを描きたかったのかなと思いますし、実際あれほど取りつく島もなかった嘉藤の心が動いたのには感動しました。
ただ、正直………身体の改造?と欠損と…あと個人的には正気を失ったままというのもなんだかな…ってかんじでした。
物語としてはよく纏まっていると思いますし、感動的です。
しかし、かなり玄人向けだな~っていう印象は否めません。元々木原先生が好きならば、ある程度耐性があると思いますが…初見の方は覚悟が必要です。
上巻最後の下巻予告に「静謐で幸せな未来」とあったので、嘉藤か惣一の片方が寝たきりになり片方が支えることになるか、死に別れる前に気持ちが通じ合うとか、そんな結末を予想していました。
下巻を読み終えて、しばし茫然とし、じわじわと湧いてきたのは「これも愛」という思い。愛という言葉しか思いつきませんでした。
組内部の裏切りで死んだ組長の仇討のさ中、嘉藤は、女の体になってまでも嘉藤に抱かれたい惣一の悲痛な想いを知ります。身を挺して嘉藤をかばって怪我をし、隠れ家で「お願いします…(胸を)舐めてください」と懇願する惣一がもう痛々しくて、たまりませんでした。
惣一がどんなに自分を好きでいるか分かってもなお、嘉藤が惣一に求めるのは“強いボス”。惣一を組長にとどまらせるために惣一の想いを利用し、言葉で嬲り、「雌犬」と貶めるように惣一を抱く嘉藤が本当に酷くて。
こんな二人が愛で結ばれる時が来るのだろうか、と胸がムカムカするような絡みの描写に耐えて読み進めるうち、嘉藤の中に惣一への微かな情のようなものが見えてきて、おやっと思いました。苛立ちと穏やかな欲望で揺れ動くようになるのです。
いよいよ嘉藤が変わり始めるのでは?と期待したところで、組の抗争が激化し、惣一が行方不明に。監禁凌辱にクスリ。一年の後にやっと見つけたときには廃人同然で。局部切断の描写ではめまいがしました。
惣一が女の胸のある淫乱でなければ、生き延びることはできなかったでしょう。木原さんの痛い描写が好きな私ですが、正直、これほどの描写が必要だろうかと胸が苦しくなりました。
でも惣一の想いが嘉藤に届くためには、この地獄のような出来事が必要だったのだろうとも思うのです。
記憶も知性もヤクザのカリスマも、そして男の印も。何もかも失った惣一に残されたのは、嘉藤への一途な想いだけでした。
北の漁村でひっそりと暮らしながら、なお惣一の回復を期待する嘉藤に惣一が幸せそうに笑みながら告げた言葉が胸を打ちます。「僕は海を見て、猫と遊んで、お前の帰りを待っている。それがいい。他には何もいらない。」
こんな姿になっても消えない想い。もう愛という言葉しか思い浮かびませんでした。
自分への想いしか残っていない惣一を前にして、やっと嘉藤は“強いボス”への執着を手放し、惣一の愛を受け入れることができたのでしょう。
灰色の空、灰色の海。きっと月までも灰色の世界で二人は生きていくのでしょう。灰色に光る月は二人の愛のことなのかもしれません。
「私の下の名前を知っていますか?」と嘉藤が問えば、惣一が「はるおみ」と答え(優しい名前!)、「あなたが私を忘れても、傍にいますよ」と返す嘉藤の言葉に愛が滲んでいて、交わり合う二人が幸せそうで、目の奥が熱くなりました。ここまでくる道のりのなんと長く険しかったことか。
ただひたすらに想うことも愛なのだと、深く強く私の心に突き刺さりました。