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kimi ha boku wo miteinai itsuwari josou danshi no koi
あらすじを読んで「これは読みたい!」と、鼻息荒く読んでみました。
予想外の展開でした。
これほど読むのがつらい作品だったとは。
女装して相手を騙すという場合、BL 的展開は一択だと思うのです。
「女装した主人公に友人の弟が惚れてしまうけれど、それは本当の自分じゃない」というパターン。
この作品ではそうではありませんでした。
長くなりそうなので登場人物をまとめると
主人公→友人の弟をからかう目的でSNSでネカマをすることを頼まれるが、弟を好きになってしまう
友人→最初は弟をからかう普通のDKだったのに、途中から弟思いの優しい兄にジョブチェンジ
友人の弟→両親の離婚で一時期、単身祖父母の家へ。転校続きで友人が少ないらしい
主人公の姉(重要!)→友人の弟がSNSを始めて、最初に出来たフレンド
という4人が主要メンバーになります。
あらすじの何がいけないって、姉の存在が一切明かされていないことなのです。
この姉こそがもう大事すぎるほど大事な役割を担っていると言うのに。
相当ネタバレしますが、友人の弟はネット上で初めて優しく返信してくれた主人公の姉に恋をしています。
全39話ですが、ほぼほぼ姉と友人の弟の少女漫画です。
本当に少女漫画だったらよくある設定だと思います。
自分の姉とSNSでつながっている友人の弟に「男」と偽ってSNSを通して友達になる主人公(女)。メッセージのやりとりをしてみると、好みが似ていて気も合う友人の弟から「会いたい」との言葉に意を決して男装して会いに行く。実際に会っても話は合うし楽しい。…好き。でも友人の弟は姉のことが好きで…。
よくあるでしょう。
これをBLでやってはいけなかった。
まず主人公が気持ち悪いのです。
会いに行くために女装するのですが、女装にどっぷりハマってしまいます。
友人から「女装をやめてもいい」と何度も言われてもやめません。研究しまくりです。
さらに弟を好きになってからがまた…。
友人の弟は姉が好きで、姉もその気持ちに応えるのですが、ここからの主人公がー。わー。
「姉から奪ってしまいたい。でもそうしたら姉が不幸になる…」←奪える気満々
「チャンスがあると思ったら止められなかった」←チャンスはふつうに考えて、ない
「今は2人を見守って、そのうちに…」←…。
という感じでやたらとポジティブと言うか、自分を恋愛対象にしてもらえて当たり前と思っているのです。
待て、と。
友人の弟の恋愛対象は女性です。
事実、作中で一切意識されていません。
どんなに「可愛い」と周囲から思われようと、君の性別は男です。
その辺りの逡巡が一切ありません。
BLの醍醐味のひとつに「同性を好きになってしまった…。でもアイツは女が好きだ…。オレの想いは口に出すことすらできないんだ…」という戸惑いまじりの切ない気持ちがあると思うのですが、この主人公にはありませんでした。
まずここが本当に違和感。
さらに友人。
冒頭で「SNSで女とつながってるなんて生意気!からかってやろうぜー」的なノリだったはずなのに、突然「…あいつにはオレの代わりにつらい思いをさせてしまった…。そのせいで友達がいないんだ。友達になってやってほしい」という優しい兄に変身します。
しかも弟のことを好きになってしまった友人をあっさり受け入れ、応援しようとします。
待て、と。
オニイチャン、ノーマル。オトウトも、ノーマル。
友人(男)とくっつけようとしますか?
のちに友人と弟をくっつけたい友人思いのオレと、友人の姉との恋を応援したい弟思いのオレの板挟みになりますが、弟の恋が叶ったら見守って、友人には諦めてもらうのがふつうじゃないのかなあ。
とにかく36話くらいまではそんな感じです。
ただBL的だなと思うのは、姉を悪者にするところでしょうか。
大学に、バイトに、将来に向けての計画に忙しくなる姉が、恋愛との両立に苦しむ展開にして、姉の存在を体良く追い払います。
37話目にしてやっとチャンスが来た主人公と友人弟の怒涛のBLが読めるのは3話のみで、駆け足すぎて最後は「…何だったんだ」という疲労感だけが残りました。
ちなみに姉は大学2年、主人公と友人は高2、弟は高1です。
この時期の4才違いって大きいと思うけど、まあ、それは置いておいて。
離婚に伴って、なぜ兄弟の片方だけが祖父母(母方)のところへ行かなければならなかったのか。
ラスト直前に祖母(母方)が末期ガンだからそっちに引っ越したいと弟が言い出すのですが、中盤くらいに祖父母も一緒に住んでいるというエピソードがあったはず。
離婚していて、母親についているのに祖母が2人。
誰の祖父母なんだろうという謎。
ツッコミどころも満載ですが、主人公の片思いはBL的萌えを感じさせてくれず、ひたすら姉と友人弟の恋物語を横目に「奪いたい…」と狙う主人公を延々と見させられる作品でした。