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mabuta no ura no natsu
試し読みでのうみくんの美しさにやられて購入。
本編も、期待を裏切らない美しさでした…良かった。
表題作は、二人の関係性に説得力があって、分かりやすかったです。
10才くらいに互いに初めての友だちになって、次いつ会えるかもわからないまま別れる二人。
離れている間にお互いまったく違い環境に身を置きながら、それでもお互いを忘れられなくて…気がついたら友情以上の感情を持ってしまって。
島での閉鎖的な環境でただ貴文を待つことしか出来ないうみくんが、どんな気持ちで初めて客と寝たのかを考えたらかなり切ない。
貴文のお母さんが明後日迎えにきてしまうと知ったうみくんの行動・言動が可愛すぎて正直この部分が個人的クライマックスでした(^^)
めでたく東京に来てからは、お互いギクシャクしてたけどすごい早さでハッピーエンドになったため、このままずっと二人で暮らしていってほしいなぁ。
後で気づいたけれど、うみくんがバイト先の人に連れて行かれたバーに静一が居た…同時期の再会モノでここまで違う未来なのか…
同時収録作は、ラストが個人的にドライすぎため、初見で最後まで読んだ時、理解が追いつかなかった…
同窓会で、攻めが静一の名前を聞かなければ、忘れ去って会おうともきっと思わなかったのでは。
語られなかったそれぞれの膿のような闇のようなものが、表情の端々から窺えるようで余計にツライ、
最後、静一の書き残したメモを真顔で捨てる姿に、???ってなったのですが、きっと静一もこんな顔でホテルを出て行ったのかなと…
お互いに次がないことを知りながら、関係を結ぶことは一体どれほど、辛くて美しい思い出になるのか。
辛さの方がずっと強そう。
考えさせられました。
うみくん。
海に囲まれた島の幼なじみ。自分は東京に出たが、きっとまた会おうと約束したうみくんに、やっと会いに来た貴文、というところから始まる。
うみくんはそっけないし、その場限りの男性との関係を持つような青年になっていた。
けれど、貴文はうみくんにとって、ずっと王子様だった。
貴文が恋を自覚したところで、ハッピーエンドがみえました。
うみくんを連れ出し、東京で一緒に住み始める展開も良かった。
他に、真っ赤な口紅を塗った同級生に囚われてしまったリーマンのお話が入っていました。
再会し、あの時の気持ちが恋だと自覚して一夜を共にする二人だが、目覚めたらもう彼はいない。
余韻を残す短編でした。
二作品収録されていますが、同時収録作の【夜が明ける魔法】が印象に残ったのでこちらを先にレビューします。
ものすごく平べったく言うと、既婚者の攻めと2丁目で働く受けが再会して一夜を共にしちゃうお話です。
真っ赤なルージュに染まった唇の清一(受け)がとても印象的です。
高校時代、赤く唇を染めた清一を見て、からかうこともなく「似合う」と言ってくれた弘樹。
再会し本人を目の前にして、自分はあの唇を見たときから魅せられてしまっていた…ということにようやく気づく弘樹と、終わった後「美しい思い出のままに仕舞っておきたかった」と微笑む受けの心情が切ない。
この先どうなるのかなぁ……。
(1)思い出なんかで終わらせたくない!と攻めは離婚して、受けを手に入れるいわゆるハッピーエンド
(2)青春時代の、そして一夜の甘くてほろ苦い思い出として終わる。
基本ハッピーエンド厨なので(1)もいいなぁって思いますが、でもきっと(2)なんだろうな…そしてそっちのほうが切なくていいなと思います。
相手の体の熱さを知ってしまった今、このまま何もなかったかのようにこの先、生きていくのって辛くて切ない……。
一夜を共にしてお互いにルージュの魔法が解けるどころか、かえって解けない魔法にかかってしまったかのような二人…。
うん、こっちのほうが萌える。
金魚鉢でめさんってこういう成就しない話がお好きなのか、今までも成就しない切ない短編を2つ描かれているのですが、これで3作品目なので成就しないオチに萌えツボをお持ちなんだろうって今回のコレを読んで確信しました。
さらりと、でもほろ苦くて余韻がいつまでも残る……金魚鉢でめさんの描くハッピーエンドではないお話ってやっぱり好きだなぁって思いました。
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表題作【まぶたの裏の夏】も再会ものです。
10年前にひと夏滞在した島へ戻った都会っこの攻めと、島に住む受けとのお話。
久しぶりに再会したらそっけないわ、ビッチになってるわ……とこんなはずではなかった、あの頃の受け君はどこへ?と戸惑う攻め。
「絶対また会いに来るから。大人になったら一緒にいようね。」
とかつての幼い攻めの言葉をずっと信じて待っていた受け。
それなのに何故、ビッチ化してしまった?と思ったのだけど、待っていた時間の長さが都会に住む攻めと島で住む受けとの間では感じ方が違うのかなぁ…ってふと思いました。
色んな人と出会えて色んな場所に行ける都会と、決まったご近所と観光客しかこない島で流れる時間の速度は違うような気がするんです。
そしてそんな場所で、幼い頃の不確かな約束を信じてただただ「待つ」というのは、思っている以上の苦行のような気がする。
萌と萌萌で迷いましたが同時収録作が好きなので萌萌です。
表題作と短編の2カップルの話が収録、どちらも再会もの。
表題作は幼い頃の約束を果たすノスタルジックで幸せなストーリー、いっぽう短編は大人の悲哀を浮き彫りにするような悲しさが残るストーリーでした。
●「まぶたの裏の夏」
大学生の貴文は、小さい頃にひと夏だけ過ごした島に再びやってきた。
うみとした「大人になったらずっと一緒にいようね」って約束を守るために。
うみの肌は日焼けしたままで、あの頃と変わってないように見える。
そして貴文が告白すると、うみが誘ってきて、二人はカラダを繋げる。
でも翌朝になると、うみは全く気にしてない風で、それどころか貴文を行きずりの観光客扱いで、うみには他にも行きずりの相手がいるようで…
うみは幼い頃の約束を忘れてしまったのか???
その本心はうみ自身から漏れ出したもので、貴文に伝わって欲しかったけど、お節介な外野経由なんですよね…
あと、この島で暮らすと言う貴文に、うみは「周りにゲイだってすぐバレる」って心配していたのに、人前でキスをしてしまうのはどうなんだろ?
安心して読める王道再会ストーリー、うみの変化が簡単で、その後の家族問題までアッサリとクリアで私にはちょっと退屈でした。
●「夜が明ける魔法」
新婚の弘樹は同窓会で、静一を新宿二丁目で見かけたって噂を聞き、会えるわけないと思いつつ二丁目に向かうと、偶然、赤いルージュを引いた静一に再会する。
学生の時、静一が赤いルージュを引いているのを弘樹は見てしまった。
でも弘樹は騒がずに「似合う」と言ってくれた、きっとこの時から静一のなかで弘樹は特別だったんだと思う。
そして二人はホテルへ。
弘樹は昔一度だけキスした衝動の理由と自分の気持ちを自覚して、静一は「きれいな思い出を汚しちゃった」と泣きそうな顔で微笑む…
お互いに好きでも二人の未来はつながらない。
きっと会うのもこれが最後なんじゃないかなって気がします。
昨今のハピエン話で溢れるBLの中では珍しい悲しい恋の話。
静一の笑顔はただ悲しくて、一夜だけでも心の奥底にいる好きな人と過ごせたことは幸せなのか?
完全に諦めていた欲しい物を一時的に手に入れて永久に失くしてしまうのは悲しみが深くなっていくんじゃないか?
大人の悲しさが心に刺さるお話でした。
王道と、結ばれない話、同じ ”再会” をモチーフにしながら、こんな真逆テイストの話を一冊に収めているコントラストは ”粋” だなと思う本でした。