ayaayac
kimi ga omotteiru ijouni boku wa kimi gasukidayo
民族BLの同人をまとめた再録集。
漆黒の狼と白鹿が始祖である民族は、狼の言葉を解し、狼と共に生きる。
ほとんどは「狼」と呼ばれる漆黒の髪を持って生まれてくるが、ごく稀に白い髪の「白鹿」が生まれ、白鹿は身分性別を問わず、王族と番(つがい)になる。
●「見えない檻」
末王子のフフは白鹿で、狼語を話せず、狼と共にある一族なのに狼から嫌われているミソッカス。そして兄王子のハルから、意気込んでいた外交活動からも外され、劣等感を募らせるけれど…
なぜフフがそんな状況にあるのか?それは凝り固まった執着心が理由で、最後の一言に背筋がゾクッとしました!
●「狼の花嫁」
王子ランホエと、白鹿のイユスは番。でもイユスの髪は色が混じり完全な白鹿ではない。そして王族に真っ白な白鹿のフフが生まれ、イユスはもう自分は必要無いと思いこんで…
”白鹿は王族と番になる”、その掟にがんじがらめになって、気持ちを見失ってるイユスの卑屈さ、そしてランホエの歪みさえ感じるほどの強い想い。
この話にもゾクッとさせられました!
●「美しい人」
王子のサルヒと文官のアルナはカラダの関係がある。
サルヒは番になるべき白鹿を差し置いて、アルナに夢中。
でもアルナの身体には秘密があって、アルナは誰とも番にならないと決め、人が嫉妬し嫌がる顔を見ては楽しむ歪な性格…
この歪さは身体が理由で普通の幸せを諦めたところからきてるのか、アルナ本来の性質なのかはわからないけど、サルヒのことなんか少しも愛してない、アルナの傲慢さが際立ちます。
でも、そんなアルナに逆襲するかのようなサルヒの執着!
アルナの絶望的な表情とは対照的に、二人の未来を幸せなものとして笑顔で語るサルヒが怖い…
●「愛よりも重たいもの」
オルガは、白鹿の王子・ハイルイのお世話係(子守役)に選ばれた。
小さな王子はかわいくて、「一緒にいて」、「隠しごとはしないで」、そんな小さな約束を守ってあげたいとオルガは思う。
でも時が経つにつれて、小さな約束はどんどん降り積もっていって、オルガはハイルイから逃げるのだけど…
王族を継ぐ者なのに、小さい時のまま、自分だけの存在を求めるハイルイ。
「約束はやぶっちゃいけないものなんだよ」オルガはかつての自分の言葉で逃げ道がなくなってしまう。
これもハイルイのほかを全く見てない執着が怖い。その民族の未来の暗さまで想像してしまう…
どの話も”過ぎた執着”がテーマになっていて、背筋をゾクッとさせられました!
私はダリアから発行されてる民族BLシリーズの方を先に読んでいて、ひたむきなキャラ達に心を洗われ、このピュアさが、りゆま先生の作風なんだなって思いこんでました。
でもこの再録集で印象がガラリと変わりました!
あのピュアさもいいけど、このピリッとしたものが残る苦みのあるストーリーもすごくイイ!
ダリアがデビューの際に、このビターさを消してしまったのだとしたら、すごく残念。
次回作はビターさがプラスされた話が読みたい。