優しくほどいて

yasashiku hodoite

優しくほどいて
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神57
  • 萌×228
  • 萌18
  • 中立8
  • しゅみじゃない5

--

レビュー数
14
得点
459
評価数
116
平均
4.1 / 5
神率
49.1%
著者
海野幸 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
橋本あおい 
媒体
小説
出版社
二見書房
レーベル
シャレード文庫
発売日
価格
¥619(税抜)  
ISBN
9784576180229

あらすじ

片想いの相手への過剰な愛でストーカー一歩手前の水沢春樹。だがそんな重量級の愛を一身に受け止めようという奇特な男が現れて…!?

表題作優しくほどいて

再会したばかりの同僚で同級生,29
極度に惚れっぽいサラリーマン,29

その他の収録作品

  • あとがき

レビュー投稿数14

あり余る愛を受け止め、同じだけ返してもらえるという幸せ

本当に神作、名作・:*+.

何度も読み返し、好き過ぎて逆に?レビューが書けない…という状態でしたが、昨日また読み返してやっぱり大好きだ!と再確認したため、意を決して書いてみます。


もうこの作品の攻め、湯ヶ原が自分に刺さり過ぎて刺さり過ぎて…!!

「包容力」と書いて湯ヶ原と読む。

今まで読んできた全ての作品の中で一番好きな攻め様です…

春樹(受)の溢れんばかりの(というか溢れちゃってる)愛を受け止めサンドバッグになり、なおかつ同じだけの愛を返せる人はこの方しかいません(断言)。

内容です。


極度に惚れっぽく(そして冷めるのも早い)、一方的に恋をしては頼まれてもいないプレゼントを作り、恋人面でブログに上げて溢れる想いを紛らわせていた水沢春樹(受)。

しかしある朝、片想いの同僚の机でブログ用の写真を撮っていた春樹は、高校時代の同級生・湯ヶ原にその現場を見られてしまいます。
ヘッドハンティングで春樹の会社に転職し、その日が初出勤だという湯ヶ原。

実は高校時代も春樹は片想いの相手の机に手編みのセーターを突っ込むところを見られており、それ以来湯ヶ原を徹底的に避け、会話もないまま卒業していたのでした。

二度と会いたくなかった相手な上、最悪な状況に焦る春樹でしたが、湯ヶ原は「俺をサンドバッグにして想いをぶつければいい」と、意外な提案を持ちかけてきて…

と続くお話。


BがLするストーリーと共に、ポイントとなるのが

・春樹が極度に惚れっぽく、好きな相手が次々変わってしまうのはなぜなのか?
・誰に恋をしたのをきっかけに、手作りのものを贈りつける奇行が始まったのか?

という点。

これがもう、切なくて切なくて。。( ; ; )

家庭環境と、春樹が自分でも忘れていた高校時代の淡い交流の思い出が明らかにされるにつれ、切なさで胸が痛く泣きそうになりました。

高校時代、好きになった相手(全て男)に勝手にプレゼントを贈っても、気味悪がられてきてもらうどころかその日のうちにゴミ箱に捨てられたりしていたけれど。

湯ヶ原は「自分がサンドバッグになるから、明日からお弁当よろしく」と目尻に優しい皺の寄る笑顔で言い、嫌がらせのつもりで作ったハート❤︎だらけのお弁当を綺麗にたいらげ、ブサイクなうさぎとハートの入った手編みのセーターを喜んで着て、手作りブックカバーを毎日付けて持ち歩くのです。

そして、春樹から手作りのものを受け取る時に必ず言ってくれる「ありがとう、嬉しい」。

今まで一人自分の中で想いを昇華させるしかなかった春樹にとって、この言葉がどんなに嬉しかったことか…読みながらもう、ウルウルでした。

春樹が自分の気持ちを認め、素直になり、溢れる想いをシンプルな言葉に乗せて湯ヶ原に伝えるシーンは、結果は分かっているはずなのに自分も一緒にドキドキしてしまいました。

読み終わってからタイトル「優しくほどいて」を読むと、ああ、なるほどな、この作品にはこのタイトルしかない…

と心から思えますし、電子限定、攻めの湯ヶ原視点の「きつく縛って」もタイトル・内容が素晴らしいんです。


自分の中のあり余る愛を、相手に受け止めてもらえるという幸せ。
相手から、自分の中にある愛と同じだけの愛が返ってくるという幸せ。


そんな”幸せ”を感じ、じんわりと何かが胸に広がる、そんな作品です。

ぜひ、色々な方に読んでいただきたいなあ。

2

今の季節にぴったりなハートウォーミング作品

暴走する受けと、それを大らかに受け入れる攻めという組み合わせは、BL界隈ではよく見かけますよね。
この受けの暴走の暴走具合というものが、なかなか曲者でして。
過ぎると、攻めには「カワイイなー」と受け入れられても、読者からは「ナイわー」となる事態もあり得るわけです。

こちらの作品、受けである春樹、かなりの暴走っぷりです。
惚れやすく冷めやすい上に、愛情のぶつけ方がストーカーまがい、とハチャメチャなんですよね。
前半はそのあたりムムムとなって読んでいましたが、春樹の過去や背景が明らかになっていくと、後半は切なくて切なくて。
変なヤツから、可愛いヤツになり、ついつい一緒になって胸を痛めてしまいました。


最終的には湯ケ原の懐の深さに、こんな変(態)な春樹を受け止められるのは、オマエだけだ!という強い信頼を寄せてしまいました。
受けとめ…押し付け、かな。
歪な愛の形ですが、応援したくなる2人でした。
ただ、春樹目線のお話なので仕方ないとはいえ、飄々としている湯ケ原の心情がもう少しわかりやすいと良かったのになーとは思いました。

2

着てはもらえぬセーターを

寒さこらえて編んでるわけじゃあないけどさ。
この主人公・水沢って…
ヤヴァい変人です。

異常に惚れっぽくてすぐ誰か(同性限定)を好きになり。
勝手にセーター編んで机に押し込んだり。
勝手に愛妻弁当作ってデスクに置いた写真を、勝手にブログにあげたり。
全て勝手に。

そんなストーカー気質の水沢に「俺がサンドバッグになってやる」と名乗りをあげたのが、高校の同級生でもある湯ヶ原。
水沢と湯ヶ原には因縁があって、はじめから水沢は湯ヶ原に対して何か見栄を張ったりとか、そういうのが一切無い。
そんなむき出しの関係性だから、ほぼ嫌がらせに近いハートだらけのキャラ弁や、ピンクのうさちゃんセーターを押し付ける水沢に、なぜかニコニコ受け取る湯ヶ原というコミカル空気もあるわけだけど。

コミカルならコミカルで貫いて欲しかったわけですが、後半なぜ水沢がこういうヒトになったかとか、こうなった最初の初恋などが説明臭く出てきてちょっとテンポが悪かった。
さて、湯ヶ原も十分変人で、アブない水沢をしっかり受け止めます。
Hシーンは湯ヶ原が酔ってる設定。でもここはシラフでも良かったかな…
ともかくも、これで水沢の不安定な精神がガッチリ安定すると思われるので、良かったね、ということで。

3

優しくほどいて編み直し(⌒‐⌒)

ラストの夢の中でのやり取りがとても優しくてうわ〜〜〜〜〜〜って胸があったかくなりました。
確かに現実でも言ってくれるであろう攻め様ですよ(*´ω`*)


受け様は、惚れっぽく冷めやすい恋愛遍歴のサラリーマン春樹。
惚れた相手の為に手の込んだお弁当や小物類大物類を作り上げては、SNSに上げて仮想恋人気分を味わって満足する日々を送っていた。

そんな中、高校時代苦手だった相手と同僚として再会する。
これが攻め様である湯ヶ原。

高校時代、片想いの相手に次々手編みのセーターを送り付けていた春樹は、その時好きだった相手の机の中にセーターを入れている所を湯ヶ原に見られたことがある。

そんな相手と再会し、全力で関わり合いたくないのに、湯ヶ原は春樹に、そのあふれる愛を俺にぶつけてくれ、と言い出してくる。
ウサギとハートが舞う嫌がらせ満載のデコ弁当やセーターを、湯ヶ原は嬉しそうに鷹揚に笑って受け取ってくれる。
手を出して「弁当下さい」と囁くとか、かわいくてきゅんきゅんσ(≧ω≦*)

サンドバッグになるぞ、と言ってくれ、春樹のどうしようもなくぶつけたくなる愛の衝動を笑って受けとめる湯ヶ原は、おおらかで包容力のあるいい男でした(≧▽≦)
人の懐にするりと入り込んで、また同じように自分の懐に入れちゃえる人たらしな人。

そのくせ、ベッドでは俺の方に引きずり込みたい、とか言っちゃうなんて、案外肉食なセリフにドキドキですよ(///∇///)

また、自分だけ気持ちよくなって終わりじゃ嫌だ、と必要なものを買いにダッシュする春樹の必死さ、なりふり構わず求める気持ちがかわいくて男前。

2人のえちシーンは、めっちゃ萌えの宝庫でしたσ(≧ω≦*)
その後春樹の見た夢がまたよかった。
しみじみよかったねぇ、とジーンとしちゃいました。


イラストは、橋本あおい先生。
湯ヶ原の採寸をするイラストがとっても好きです。
厚みのある身体つきの湯ヶ原がいいなぁ。
春樹を抱き締めてるイラストも、大きな背中の湯ヶ原がイメージぴったりで好き(⌒‐⌒)



2

「殴りたい」

春樹が愛したくて溢れそうになったときの自覚が、湯ヶ原くんと想いが繋がってからも「殴りたい」から来るのが切なかった…!らぶシーンでも「殴りたい」。拗らせた背景を思うと切ない、でも微笑ましくもありました。湯ヶ原くんのおかげで。
サンドバッグは自分で歩いて逃げない、て受け止めてくれる湯ヶ原くんが許容力の広い攻様で。しかも時々見せる春樹以上の執着がまたゾクゾクします。好きだぁ。
愛したがり屋の正体は重度の愛されたがり屋、湯ヶ原くんの名言でした。
湯ヶ原くん、いつも大きく受け止めてくれてるのに、えっちのときはわりと理性と皮一枚で、どうせ後で嫌ってほど泣かされる、とか、今ならやめてやれたのになあ、とか、ジワジワと追い込む台詞が多くて。春樹は余裕無さすぎてわかってないんだけど、読者が追い込まれます。バクバクなりながら読みました。

春樹は自分の行動に誰より自分で引いていて、でも止められなくて、その痛さ辛さがひしひし伝わってきました。湯ヶ原くんには、がっちり捕まえて束縛しておいてほしい。
海野先生の作品を選ぶのに、レビューでも迷って迷って、新しさと橋本あおい先生のイラストで選んでしまったのですが正解で良かったです。ウサギのダサセーターも、橋本先生の絵で見たかったなあ。

2

箱根の温泉のような懐が深くて包容力攻めに参った!

読んでる時から春樹の痛々しさ?に泣けてきました。涙を拭いながら読み進めました。

愛したい気持ちが溢れてこぼれて。ぶつけることのない愛情がお弁当やセーターや小間物になって。

箱根温泉のような湯ヶ原。懐が深すぎて笑った時の目尻のシワとかいいですね!

俺をサンドバッグにしろって言ってきて。湯ヶ原が苦手な春樹は嫌がらせて止めると言わせようと、滅茶苦茶可愛いお弁当やウサギやハートの柄の入ったセーターを渡したのに、湯ヶ原は本当に嬉しそうでセーターも着ちゃって。

しかし海野さんは本当にお話が巧みですねえ。
何ひねりもあってバックボーンもあって。

湯ヶ原の粘りと春樹のひたむきさに大満足です。こんな愛し方もあるんだよって春樹に教えてくれて。

きっと春樹が何をしても言っても湯ヶ原は笑って受け止めてくれそう。湯に浸かって出たくなくなるあのたまらない気持ち!良かったね、二人とも!

もう二人ともとっても良かったし、過去や背景も凝っていてでも自然に今に繋がって。ストーリーテラーですね。

最後のエッチもなかなか進めてもらえず不安と引け目で湯ヶ原に粘る春樹。違うんだよ、大事にしたいんだよ、と言ってあげたい。
でも上手くいって良かったです。

寝起きの夢や、料理したいと言う春樹にわかった、入れって布団に招くのすっごくいい!!!

あー、こんな包容力があって懐が深くて相手の懐も開かせて最高です!
春樹の痛々しさも昇華されました。
間違いなく神で。

5

破れ鍋に綴じ蓋カプ

こんな受けみたいなキャラを良く思いつくなぁと感心しました。
異様に惚れっぽい癖に、くしゃみ一つやペンの持ち方など些細な事で醒めてしまう受け。
そして溢れるばかりの思いがヤバイ方向に暴走しないために、エア彼氏のための編み物や、エア彼氏のための手作り弁当などをせっせと作る事によってエレルギーを発散し、エア彼氏ブログにアップする。

かなり拗れていてしかも根が深いものを感じさせる行動の数々に「こんな人は世の中そうそういないだろうなぁ」と読みながら思ったほどで、NGギリギリなんだけど、次第にまぁアリだな……に変化し、最後にはいじらしい……と思えてしまうのは海野先生の筆力のなせる技でしょう。

ただ率直に言えば、表紙のイメージや、あらすじからもっとコミカルなラブコメかと思ったら、思っていたよりも理屈っぽいというか説明が多いなと。
特に後半の謎解きみたいな、受け本人ですら忘れていた、というよりも無意識に封印したために忘れてしまった受けの過去を明かす攻めによる昔語り部分が、説明っぽくて微妙に疲れました……。

それだけ変わり者のキャラを理解してきちんと受け入れてもらうには、あれこれ説明を要するんだなぁと。
これが不十分だと「受けが変人すぎて理解できなかった……」という感想になっちゃうんだと思うけど、幸い説得力は充分だったので、受けへの拒否反応はまったく無かったです。

さて、変わり者の受けを受け止める攻め。
単に「包容力がある」だけではなく、こいつもどっかやっぱり変わり者……だと思うんですよね。
どっちもどっちというか、まさに破れ鍋に綴じ蓋という言葉しか思い浮かびません。
でも、嫌がらせのつもりで編んだベージュピンク地に胡乱な目つきのウサちゃん&真っ赤なハートという手編みセーターを喜んで着てしまう攻め、強い……けど、いい奴。
だけどあんなセーターを着れちゃうメンタルは、やっぱり変わってると思うのはダメかなぁ。

あと私は、受けのお母さんの存在が微妙に気になってしまいました……。
愛人だけど縋り付くような事はしまいみたいな矜持が鼻につくというか、あんたはそれで良かったかもしれないけど、息子に陰ながら与えてしまった影響が大きすぎるだろ……とモヤァっと。

でも、彼らにはきっと幸せな将来が待っているだろうなと思える読後感は良かったです。




余談だけど、「優しくほどいて」というタイトル、そして目次で電子特典として収録されている「きつく縛って」が目に入ったとき、SMの話だっけ?と勘違いしてしまいました……

4

こういうの読みたかったんだ。

実は心温まるとても深い恋の話。

春樹自身自分の性癖を認められなくて湯ヶ原への恋心を封印する為に湯ヶ原パーツを見つけてはその相手に恋をする?って拗らせすぎだろう。
結局はずっと湯ヶ原を求めていたという春樹がかわいいです。
結局初恋を持て余して暴走しまうほどに愛情深い人です。

湯ヶ原がとても好感のもてるキャラで魅力的。
おっとりしているけど、ただのお人好しではなく人間ができてる感があって賢さとか懐の深さとかそういう感じがエピソードからすごく伝わってきて春樹じゃなくても惚れるだろ。です。

春樹の拗らせてる時の憎まれ口も態度も可愛かったけど、素直な春樹も可愛いかった。
湯ヶ原がそんな春樹をちゃんと理解して長年拗らせたいろいろな感情を優しくほどいて巻き取って受け入れて引きずりこんでいく。
「愛したがり屋の正体は、重度の愛されたがり屋」
どうぞ存分に満たしてやって欲しいですな。

贅沢をいえばもっとこの先の二人の話が読みたかったな。

3

黒髪タレ目最高〜

湯ヶ原のキャラデザがドストライクだったのに後姿とか顔が隠れている挿絵が多くて泣いた(T ^ T)

春樹はもう少し大人の男らしい部分が見れたら完璧だった
湯ヶ原にやってることが子どもみたいで読んでてオイオイ^^;ってなる場面多々

最後の夢の件は好きです!

0

愛情過多でストーカー寸前


水沢春樹(受け)は持っていき場のない溢れんばかりの愛情を好きになった男性の弁当を彼女の振りをしてブログにアップすることで制御し、ストーカー一歩手前でとどまっています。そんな春樹の前に高校時代唯一この奇行を見た湯ヶ原(攻め)が中途採用で入社してきました。
それも、再び奇行を見られるというおまけつきで。
いまだにやっていることを知った湯ヶ原に、その溢れる愛情をぶつけるサンドバッグになってやると提案されるのです。


春樹は昔から好きになるのは男ばかりで、愛情をぶつけるられる相手がおらず自分の気持ちを持て余していました。自分でも病気だと豪語するくらい、熱しやすく冷めやすい恋ばかりで、醒めてしまった相手のことは顔も名前も忘れてしまう軽さです。自分の行動がおかしいことは自覚しており、相手のSNSなどを覗いてうっかり犯罪行為に走ってしまわないよう自省する代償が弁当や数々のプレゼントなのでした。
高校生のころしていたセーターを作っては勝手に机の中に入れるという行為を唯一見られた湯ヶ原のことを苦手にしており、サンドバッグになるから弁当を作れと言われても愛情のぶつけ先としては不十分なので、早く辞めたいと言われるよう、恥ずかしい弁当を作るのです。不細工なうさぎやハートまみれの弁当を作って渡しても喜んで食べ全くダメージを受けず、極めつけに不細工うさぎにハートをちりばめたピンクのセーターを作ったのにそれも喜んで着る始末。
居心地が悪くて早く辞めたいと思っているのになぜかうまく丸め込まれて続ける羽目になります。
湯ヶ原の傍にいると息がつまるのはなぜなのか、この奇行が始まったきっかけはなんだったのか、熱しやすく醒めやすいことはただの性分なのかと春樹自身も忘れていたりわかっていないことが多く、それを持前の好奇心で湯ヶ原は解明しようとするのです。

春樹が好きになるきっかけは本当に些細なことで、うなじの骨の形や笑ったときの目といったように、その人そのものというよりはパーツを見て好きになるというかなり変わった恋の落ち方で、かつ醒めるのもほんの些細なことでくしゃみの仕方、持ち物などで一瞬で恋の火は消えてしまうのです。
湯ヶ原がサンドバッグとして愛情を受け止めながらカウンセリングしている中で春樹の生い立ちや母親の父親への愛し方が影響していることがわかります。

湯ヶ原は好奇心旺盛で自分が疑問に思ったことは解明しないと気が済まないという性格でした。人当たりがよく相手の懐に入りこむのがうまく、鷹揚でいつも温泉に浸かっているようなおおらかな雰囲気が、春樹は自分の心が丸見えになっているような危機感を感じます。
高校時代の奇行の始まりが初恋だと気が付いた湯ヶ原はの春樹の初恋の人を探すために手っ取り早く同窓会を開くのです。

その同窓会で最初にセーターを贈った相手に再会したことで昔封印していた初恋のこと、湯ヶ原が苦手な理由、しょっちゅう目移りする理由などを思い出します。

絡みは一回。
両想いになってから、あふれる愛情をぶつけそしてぶつけられたいと願う春樹の暴走によりはじまったので、勝負のようになってしまってあんまり甘い雰囲気にならなかったように思います。
愛情をぶつける相手が同じく返してくれるという経験のない春樹には仕方ないことなのかとも思いましたがちょっと色気がなかったと感じ残念でした。
それに、愛情の確認をしたい春樹が先を強請っても酔っているといいながら冷静になかなか進もうとしない湯ヶ原にはもっとガツガツ春樹を欲しがって欲しかったです。

春樹という愛情過多な人物が出来上がったのは、春樹は母親が愛人で父親がおらず、父親も春樹と接することを避けていたための愛情不足の裏返しなんじゃないかと思います。
湯ヶ原に「気持ち悪いだろう」と開き直って、奇行を繰り返す春樹の行動はコメディ色が強いかもしれませんが、ぶつける愛情と同じものを返してほしいと願ってのことだとしたら痛ましいと思いました。
やっと両想いになった春樹には、湯ヶ原から思う存分愛情を注がれてほしいと思います。
両想いになった直後に終わってしまったので、おぼれるくらいの愛情を注がれて満足している春樹のその後も読みたかったと思いました。

でも、最後に夢の中で、凝り固まって解けなくなってしまった沢山の恋心をほどくシーンはタイトルとも相まって、なんとも言えずほろっとした気持ちになりました。

変わった性癖は大好きなのですが、それにしてもこの作者様はよく思いつくなぁと感心しきりでした。

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