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if no sekai de koi ga haimaru
上手く行かない毎日に、落ち込んでばかりの主人公。
そんな彼がある日突然、理想通りのパラレルワールドに来てしまったら?
と言うお話になります。
これ、読み終えた後に、何だかあたたかくて幸せな気持ちになれる、とても素敵なお話でしたよ。
いや、そうじゃなくても、主人公が愛しすぎる・・・!
不器用で頑なで、意地っ張り。
でも、その裏に隠れた素顔は、努力家で真面目でとても真っ直ぐ。
周囲に誤解されてるのが、読んでてめちゃくちゃ辛いんだけど!
もう、こっち(パラレルワールド)で幸せになっちゃえよ!てなもんですよ。
いや、そうはならない所に、グッと来ちゃうんですけどね。
そう、理想とはほど遠い毎日ですが、それでももがき苦しみ、一生懸命頑張った結果が今日なのです。
人生の教訓的なものまで来たよ。
ザックリした内容です。
技術部から営業に異動となり、部内で浮いている彰人。
密かに憧れている同僚・大狼とも、いつも口論になってしまい、落ち込む毎日なんですね。
そんなある日、偶然訪れた神社で足を滑らせて転落。
目を覚ますと、そこは気さくな同僚やとても優しい大狼と、自分にとっての理想的な世界でー・・・と言うものです。
こちら、主人公である彰人ですが、技術部から「営業技術」として突然営業部に異動させられ、しかもとても負けん気が強く意地っ張りな部分がある為、完全に部内で浮いてるんですね。
こう、営業なんて分からないじゃ無く、食らいついてでも自分の仕事をしようみたいな。
が、そんな部分が空回りして、周囲から冷たい態度。
こう、責任感も非常に強い為、余計周囲と軋轢を生んじゃうと言いますか。
なんとも読んでいて、もどかしい受けなのです。
で、そんな彼が来てしまったパラレルワールド。
そこでは同僚は皆、気さくに話し掛けてくれ、大狼は過保護に仕事のフォローをしつつ、優しい態度。
いや、これ、まさに理想の世界なんですよね。
周囲があたたかく接する為、彰人自身も素直に人当たりよく出来と、これまでの辛い毎日が嘘みたいなんですよ。
とても厳しかった大狼が、甘く優しい笑顔を見せてと、すごく幸せなんですよ。
と、そんな毎日に、このままでいいと思い始める彰人。
しかし、少しずつ違和感を覚えはじめて・・・と言う展開。
えーと、こちらの世界で皆が親しげなのは、この世界の「彰人」が素直に周囲を頼ったからなんですよね。
そう、「彰人」が頑張った結果で、周囲が受け入れてるのは自分では無い。
また、大狼は常に過保護にフォローしと、仕事での失敗も無くなる。
しかし、彰人を営業の一人では無く、あくまで自分の補助として扱う彼に、鬱屈を覚えるんですね。
そして、元の世界で大狼があれほど厳しかったのは、自分を一人前の営業として扱ってくれていたからだと気付く。
そこで、元の世界に帰ろうと決意するー。
実はここまでで半分くらい。
こういうお話だと、元の世界に戻ってメデタシメデタシと言うのが定番だと思うんですけど。
が、今作が面白いのは、戻ってからがガッツリ書かれてる所なのです。
そう、ここからが萌えまくりの展開。
戻った彰人ですが、向こうでの経験も生かし、積極的に部内に溶け込もうと努力するんですね。
また、大狼に対しても、頼る所は素直に頼り、またツンケンした態度を改める。
いやね、周囲から誤解されて浮いていた主人公が、どんどん受け入れられて行くと言う展開が、なんだかすごく嬉しいんですよ。
オマケに、素直にお礼を言って笑顔を見せる彰人に、大狼がグイグイ惹かれて行くのが良く分かる仕様になってまして。
いや、何でしょうね?
この逆転劇が楽しくて楽しくて仕方ないと言いますか。
と、ここから、ちょっとした誤解なんかを乗り越え、晴れて二人は結ばれると言った感じになります。
まぁ大抵、気持ちが通じあう瞬間と言うのはクライマックスもクライマックス。
とても滾るワケですが、今回はゴロゴロ転がっちゃうくらい楽しくてですねぇ!
こう、大狼の口から彰人に対する本音が語られるのですが、これが甘い甘い。
とにかく負けん気が強く、ハラハラした事。
クールで全然動揺しないと思っていたら、手が冷たくなっている事に気付き、とても緊張していたんだと初めて知った事。
実はとても努力家で、必死で頑張った結果があの頑なな態度だった事ー。
いやもう、こんな調子で延々と語ってくれちゃうのです。
そう、よくぞ分かってくれました!
甘い!
甘すぎるなー!!と。
あとですね、彰人はこちらの世界に帰ってきてから、ふとした拍子に向こうの大狼の事を語るんですね。
「過保護なくらい自分を見守ってくれるヤツが居た」的に。
それに大狼が、ヤキモチを焼くのにもニヤニヤしました。
ついでに、彰人は妙に素直な所があるのも可愛くて。
エッチでですね、かなり強引にラブホに連れ込んだ大狼の「急に大人しくなったな」に対して、「よく考えたら、抵抗する理由が無かった」みたいな会話も吹きましたよ。
と、読み終えた後はとても幸せな気持ちになれる、素敵な作品でした。
受けが平行世界の自分と入れ替わる、という王道だけではない面白さがありました。
平行世界の自分と入れ替わったことで、自分を客観して見つめ直し、成長していく受けに感動しました。
その成長がきっかけで攻めとの恋が進んでいく物語の構成にも脱帽です。
恋愛ストーリーとしても、ひとつの小説としてもおすすめです!!
システムエンジニアとして技術職で働いてした受け様である彰人は、人事異動で今は営業職として自分のやり方で頑張っているけど、なかなかうまくいかず、ため息をつく毎日。
そんな中、立ち寄った神社で石段から転がり落ちてしまい、気付いたら今までいた世界とはあきらかに違う世界にいて。
戸惑いつつも、自分を受け入れてくれている、居心地のいい世界に、前の世界に帰りたい気持ちが持てなくなる彰人。
何より、前の世界ではギスギスした関係とか築けていなかった攻め様である同僚の大狼が、こちらではどうも自分に恋情を抱いているように感じるし、もうこのままこちらの世界で゛加納彰人゛として生きていきたくなる。
うんうん、その気持ちよくわかるなぁ。
でも、この世界はこの世界の自分が変わろうと努力した結果の世界であり、今度はこの世界で学んだことを生かしたい、いや、やるんだ、と覚悟を持って前の世界に帰る彰人に拍手でした。
今までの自分の生き方に責任を持とうと、なりたい自分に変わる努力をしよう、と一歩を踏み出した彰人はかっこよかった。
不器用だけど、努力することは厭わないので、頑張ってる彰人の姿はとても気持ちよかったです。
そして、誰かの影響をちらつかせながらいい感じに変わっていく彰人の姿に、嫉妬を見せてくる大狼がいいわー。
誰の影響だ、ともんもんとしてるであろう大狼の心中を妄想するとにやにやが止まりませんでした。
自分が生きてきた今までがあるからこその今の自分があるんだよね、としみじみしちゃいました。
とても好きだなぁ、と思える1冊です。
お仕事もの。
すごく良かったです。
電子書籍でセールになっているのを、何気なく試し読みしていたら、面白くてそのまま購入して一気読みしてしまいました。
攻めは、できる営業大狼。
受けは頑張り屋の元技術部の彰人。
技術から営業に異動になって溶け込めなく苦労していた彰人が、ifの世界では営業部のみんなに可愛がられてた!
でもなんだか違うとモヤモヤしてしまう彰人。
思い切って元の世界へ。
後半は元の世界で今までとは違う方向性で頑張って、本当に営業部で認められていくように。
簡単に攻めに好かれるようになるのではなく、長い間の頑張りで認められるのが味噌かな。
頑張ってるキチンとした受けが大好きなので、超好みのお話でした。
個人的には攻めの心情がわかるパートがあると嬉しいので、最後に攻めの心情がわかってウフフと楽しみました。
これを機に海野先生の本を色々読んでみよう思案中。
影では認めあってるのに拗れに拗れてぶつかってしまう。
こんな2人でどうやってラブに発展してくの!?ってくらい関わり無く、関わったら関わったで険悪!?
加納の頼りにされたいのに上手くいかないジレンマが苦しい!!
そんな時に周りとも大狼とも上手くやってる並行世界へ飛ばされる。
そこで何が足りなかったのかどうしたいのか仕事も恋も真面目にもがくの胸にきました。
加納の気持ちを汲んで 素っ気なかった大狼が真に加納の意図や変化を知って ガツガツし出すのも良かった~
並行世界の過保護な大狼姿も、それに対抗してでろ甘になってくのもどっちの大狼も良い!!さっぱりした性格なのかと思ったら…な攻め方も良い。ダメの判断が的確なの素晴らし!!
加納の必死に仕事に取り組む姿とどっちの大狼にも戸惑う可愛さと両方堪能できたのも良かった。
しっかりお仕事しつつ、高め合い認めあえる関係から恋に発展してくの大好きです!!
これはも~!面白かったですッッ!
お仕事BLとしても楽しめると思います。
専門知識満載ではなく仕事に対する姿勢が色濃く描かれていて、
それがBLしてる部分に上手いこと絡んでるのですよ…!
営業部と技術部の隔り、
仕事の進め方の違い、
相反する性格の攻めと受け。
ちょっとした考え方の違いが小さなズレとなり、
それがドンドン大きく膨らんでしまって歯車が噛み合わないのですね。
しかし不思議な経験をして、違う視点から物事を見るキッカケとなり。
ズレた歯車を修正していく中でBがLするのが堪らなく萌える作品です(∩´///`∩)
内容はあらすじにあるようにパラレルワールドを経験する主人公のお話です。
『平行世界に飛ばされたら俺が愛されキャラになっていた!?』
と、帯に書かれていて、手に取った時はかなりライトな印象を受けました。
いや~~~でもですね。
これが想像より考えさせられるお話なのです。
仕事の何が正しくて、何が間違っているか。
どこまで手助けするのか、黙って見守るべきか。
どこまで周囲を頼るべきなのか。
必死になっている最中は冷静に考える余裕がなくて。
自分でなにもかも背負ってこなそうとする受けをみていると息苦しくなるのですね。
攻めに嫌われてると思い込んでたのも余裕のなさだよなぁと感じました。
(あらすじから想像してたほど冷たい扱いされてなかった気がする…)
で、とある不思議な場所でパラレルワールドへと飛んでしまいーーー。
現状とは真逆の世界は居心地良くて、
仕事もしやすくて楽しい。
攻めへの恋心を自覚しどうやら両思いっぽい。
最高の環境のはずなのに徐々に
違和感を覚え始めるのがとても良きなのです…!
仕事への矜恃や攻めの本質を見定める点がグッときます(∩´///`∩)
で、先のレビュアー様も書かれていますが、ココでまだ半分。
クライマックス感があるのに本の残りはたっぷりある。
(失礼ながら)グダグダじゃないといいなーと読み進めたら、この先があらあらまぁまぁですよ。
なんていうか勤勉で出来る男は違いますね。
パラレルワールドで経験したことを仕事に活かしていくのです。
で、攻めとの関係も前へ前へと進み出す。
何もかも合わなかった歯車が少しずつ噛み合うのがめちゃくちゃ萌えるのですよ!!
すれ違い萌えは誤解が解けたときが最高潮ですよね…////
このときどう思っていたか。感じていたか。
互いに勘違いで思い込んでた部分を修正してくのですが、
ゆっくり丁寧に描かれてるので読んでる間ずっと指先がビリビリ痛い////
はぁぁぁ…良き…良き…(∩´///`∩)
あと攻めの遠回しな優しさはドストライク…!
不器用でわかりにくい攻めが大好きなのでそれも萌えに刺さりました。
平行世界と現行世界の攻めは正反対のタイプに見えて
甘い物エピソードで性格が繋がるところは特に印象に残りました。
優しさで嘘をつけるか、優しさで嘘がつけないかぐらいの違いなんですよね(;///;)
どっちに転んでも不器用な優しさでキュンキュンする。
不思議な体験が自分を見直すきっかけとなり、読んでいて前向きになれるお話でした♪
「自分ってどういう人なんだろう」って考えると、実はちょっと混乱します。
Aというグループと接している時は『A´の私』になっている様な気がするし、同じ様にBなら『B´の私』cなら『c´の私』になっているんじゃないかと。
なんか役回りを演じているようにも思うんですね。
それぞれのグループの人たちは、それぞれ『ちょっと違った私』を見ていることになるんですけれども、でも私の中では、私が分裂している訳でもなく『私は私』という一貫性があるんですよ。
まぁ、流されやすい性格なのかもしれませんが、良く言えば『環境に順応している』と言うか。
こういうことってありませんかね?私だけ?
このお話を読んで、そんなことをぐるぐる考えました。
読んでいて、彰人の性格の造形が身につまされました。
人に迷惑をかけたくないと思うばかりに、何でも自分で抱え込んで結果的に全体に迷惑をかけちゃう。
で、その誤りを指摘する大狼に対しても「言っていることは正しい」と思いつつ、反発しちゃう所とか。
そのくせ、そういう指摘を冷静に行う大狼から目が離せなくなっちゃうとか。
極めつけは『緊張すると手足が冷たくなり(貧血を起こした感じ)酷い時には昏睡してしまう』体質を、職場の人に言えないとかね。
「迷惑をかけたくない」とか「必要以上に心配されたくない」と思うのは悪いことじゃない。
でも、行き過ぎると放置されてしまうんですよ。
「あいつは1人でも大丈夫」って。
もうひとつ。
なんもかも上手く行かなかった時に『ここではないどこか』それも『上手にやれている世界』に行きたくなっちゃう願望が生まれる、あの感じ。
これも身につまされたんですよねー。
いや、願うよ。私なんか3日に1度は願っちゃうよ。
職場のみんなと信頼関係がちゃんとあって、だから後輩には頼られ、同期は理解してくれ、先輩方には可愛がられる。おまけに恋まで叶っちゃいそうな世界。そりゃ行きたいですよね。
でも彰人は思っちゃうんです。
それってズルなんじゃないか?って。
幸せなのにねぇ。
でも私もそう思う様な気もするんだよねぇ。
あ、またしても、BLなのに全くLOVEについて書かないで終わりそうになっちゃう所でした。
『もう一つの世界』の大狼(優しくて、おまけにどうも彰人に恋心を持っているっぽい)の魅力を重々解りつつも「これは自分が好きになった大狼ではない」と彰人は思います。
このシーンで、私は冒頭に書いたようなことを考え始めちゃったんですね。「いや、同じじゃないかな?」って思ったんですよ。アウトプットが違うだけで。
ただ、自分で獲得したものじゃなければ「違う」って思っちゃうかもしれない、とも思ったんです。
まず、自分があって、そして世界がある。
そんなことを考えました。
いや、深いよ。このお話。
いろんな意味で楽しめました。
あ、誤解されるといけないので書いておきますが、全然小難しいお話ではないですよ。
後半にかけて一気に甘ーくなるし。強面の攻めさんが受けさんにデロデロになっちゃうお話がお好きな姐さまには垂涎の一冊ではないかと思います。
でも、結構小難しい考察に引っ張られることも出来るお話なんです。
個人的には『萌え』より『考える楽しさ』寄りでしたが、とても面白かった。
海野さんすげぇ。読んでよかった。
今回は営業部の成績優秀な社員と
技術部から移動してきた技術畑の社員のお話です。
異世界トリップした受様が本来の世界での自分を振り返り
攻様と新しい関係を築くまで。
受様はシステム開発会社の5年目社員です。受様は入社以来技術部に所属
していましたが、去年の夏、「営業技術」として営業部異動を言い渡され
ます。
受様の業務は営業のフォローとして打合せへの同行、提案書や概算見積り
の作成、導入支援や客先の技術的な質問に返答など。技術の経験を活かし
受様なりに最善を尽くしているのですが、受様のやり方は営業部にはなじ
めないものでした。
特に入社時から生粋の営業部で成績も優秀な男性社員とは犬猿の仲といって
もいいほどに関係が悪化していました。この社員こそが今回の攻様です♪
攻様は営業部にやって来た受様に最初に声を掛けてくれた人でした。見上げ
るほどの長身で強面の攻様が挨拶とともに浮かべた微かな笑みは内心狼狽え
ていた受様を宥めてくれたのですが、1年たった今ではそんな笑顔はもう
受様には長く向けられなません。
1月の最終日、新年1発目のクレームが入り、受様は1日の大半をクレーム
処理で潰され、滞った事務仕事をこなしていると時刻は夜の10時を回り
ます。
この案件は攻様と受様の担当で、技術的な内容については受様がで対応して
いたのです。あいにく攻様は大阪出張中で、戻りを待っていられなかった
受様は1人で客先に向かったのですが、受様の不用意な一言がさらに相手を
怒らせてしまうのです。
昼間の事を思い返してさらに疲れを覚えた受様でしたが、直帰のはずの攻様
が戻ってきます。クレーム処理の失敗を謝ろうとしますが、攻様に「営業と
しては新人なのだからどうにかできると思うな」と言われてしまい、謝罪
のタイミングさえ掴めません。
受様は営業部に移った当初、仕事を丸抱えして納期遅延のトラブルを起こし
攻様に客先に頭を下げさせる事態を招いた事がありました。受様は攻様の
手間を省く為の行動でしたが、今回も上手く対処できなかったのです。
会社を出た受様は緊張しすぎると手足が冷たくなる持病に襲われ、目につ
いた神社で休息しようと鳥居をくぐります。神社の古びた看板によると神社
のご神体はなりたい姿が映るという鏡で、受様はぼんやりと営業部で孤立し
ていない、攻様との仲もこじれていない自分を想像します。
自分にカツを入れつつ拝殿を後にした受様でしたが、石段の縁で足を滑らせ
て急な階段を転がり落ちてしまうのです!!
そんな受様を見つけてくれたのはなんと攻様でした。いつもは不遜なくらい
に構えている攻様が、今にも救急車を呼びそうな雰囲気です。こんなに献身
的な男だったのかと訝しみながらも礼を言えば、攻様はふっと優しい笑みを
浮かべ、受様は攻様の方こそ大丈夫かと思ってしまいます。
翌朝、出社した受様はいつもは声を掛けても小声で返す程度の後輩が、元気
よく挨拶をしてきた上に心配げな顔を見せ、攻様も笑顔で近寄ってきます。
その上、クレーム対応で怒らせたはずの客先に送ったメールは受様の記憶と
は全く違っていて受様は困惑してしまいます。受様は自分の記憶と現実の
乖離を訝しみ、階段から落ちて記憶が飛んだのかとも疑いますが、記憶に抜
けがあるようには思えません。
果たして受様にはいったい何が起こっているのか!?
受様が真夜中に足を運んだ神社の階段から落ちた事で、本来の世界とは違う
世界に飛ばされてしまうという不思議な体験をするお話です♪
新刊の帯に『平行世界に飛ばされたら俺が愛されキャラになっていた!?』と
バッチリ書かれていたのでラブコメ色が強いお話なのかなと思って手にとっ
たのですが、職場での関りが2人の関係性に大きくかかわっているので、
核になる部分はシリアス目です。
冒頭から2人が仲たがいしている様子と理由が語られます。売り手と作り手、
それぞれの言い分はなかなか相容れるモノではなく、受様も他者に頼る事を
良しとしなかったために、営業部に馴染めません。攻様も今までの経験から
受様に助言をするのですが、頑な受様には攻様の真意が伝わらないのです。
そんな時に受様は階段から落ちて異世界トリップしてしまうのですよ(笑)
階段から落ちた受様を待ち受けているのが、今までいた世界とは"違う"事
はファンタジーでは王道な鉄板な設定ですから、ワクワク&ドキドキ♪
受様は当初自分がトリップした世界は「周りの人が優しい」世界だと思い
ますが、実際はこの世界の受様の努力が「周りの人を優しくした」世界で、
自分が変わった事がいかに周りを変えたのかを知るのです。
受様が本来の世界に帰り、自分のやり方を変え、営業部の面々との関りを
変えて行く事で攻様も受様の真意を知り、さらに2人の関係が変化していく
様を楽しく読ませて頂きました。
誰にとっても「あそこでこうしていれば」「あの時別の選択をしていれば」
と思う過去はあると思います。その時々の選択が、今の自分の世界を作り、
選ばなかった道を振り返っても過去は変えられません。
しかし受様はパラレルな平行世界で自分ができなかった選択をした世界を
体験する中で、自分の過去を反省し、自分の世界へ帰る事を選びます。
物語的にはセオリーでも好かれてもいない(と思われる)攻様を選んだ受様
ってすごいなと思いました。
受様に対して遠回しな優しさしか示せない俺様な攻様もかなり萌えツボで
したので、凸凹ぶりはけっこういい勝負なのかな (^-^)
今回はトリップする事で関係を変えるお話で安西リカさん『運命の向こう
側』をおススメとします。こちらはオメガバースになります。
がっつり仕事してて、ついでに恋をした感じ。
彰人の仕事の仕方や営業という仕事についての考えに引き込まれ、読んでて一緒に悩んだ。
私は営業職ではないけど、仕事をリアルに書いてある作品は、現実的に考えてしまいちょっと辛い・・・。
あまあまの大狼を捨て、元の世界に戻り、会社での立場を立て直そうとする前向きな彰人の選択にはとても好感がもてた。
こっちの世界でもあっちの世界でも、恋をしてる雰囲気は彰人より大狼の方が強く感じるけど、見た目はヤクザらしいのでギャップが素敵。
濡れ場での電気についての攻防は可愛かった。
思っていても実行できなかったことをもしやっていたら状況は違っていたかもしれない。神のいたずらかそれを実体験することができたおかげで変わることができたある営業マンの話。
システム開発会社の技術部から営業部に異動になり、初めての営業技術という肩書をもつことになった元技術部の加納彰人(受け)。
仕事の仕方が全く違う営業部において、入社5年目というキャリアが邪魔して素直に営業部のやり方の教えを請うことができなかったため部では浮いた存在になっています。
特にやりあうのは営業成績トップの同期・大狼(攻め)。
彰人の憧れであり尊敬もしている大狼の隣に立ちたいと思う気持ちが先走るため素直に礼を言うことができません。
ある日顧客を怒らせてしまい窮地に陥り体調が悪くなった、彰人はふらふらと近くにあった神社で一休みしているとうっかり足を踏み外し階段から落ちてしまいます。
次に気が付いたとき側にいたのは今しがた別れたはずの大狼。
でも、何かが違う。
同じ顔をした別人なのではと思うほど態度が違うのです。
次の日会社に行き、部の人間皆の自分に対する態度が好意的なことに驚きます。
皆の態度や会話、過去のメールなどから自分がいるのは、素直になった自分のいた世界だということに気が付きます。
周りから好意的な態度をとられとても居心地がよいこの世界にずっといたいと思ってしまう彰人。
仕事に仕方が違うため、他の人の負担になりたくないと思うあまり頑なになってしまった彰人が「もしこうしていたら」という世界に行くことによって、自分のやっていたことの間違いに気が付くことができるようになり、ここで予行演習することによって実際に実行できるようになったという話でした。
元の世界に帰りたくないと思った彰人がどうするのか、元の世界の方に送られたこちらの世界の彰人はどうなったのかと心配しましたが、結局こちらの世界の大狼にたくさんのことを教えてもらって、「自分がやりたいこと」は「自分が好きな人」はと考えることができたのは良かったです。
でも、こちらの世界の大狼にたくさんの話をしてもらったことにより、元の世界の大狼の不器用な優しさに気が付くことができるという、カップル的には同じ世界の彰人と大狼ながら、話の主役は元の世界の彰人とこちらの世界の大狼の話という不思議なキャスティングでした。
元の世界の大狼にとってのライバルは平行世界の自分という、嫉妬する相手が自分だなんてちょっと不幸ですね。それを知らないから彰人を変えた誰かに嫉妬する大狼がちょっと楽しい。
そして、何度も出てくる「仕様変更」。
昔、同じ業界にいた身としては、身につまされる話でした。
納期の延びない「仕様変更」ほど怖いものはない。
技術側だった私にとって、彰人の考えとか不満を懐かしく思いながら読みました。
ただ、1点気になったのが、自殺未遂も疑われる状況であり、一日二日ならともかく1週間も意識不明だった彰人が出社してきた時の営業部の反応にはちょっと違和感を感じました。いくら浮いていたとしてもあの無関心さはどうなんだろう。
そして、1週間いなくても部が何もダメージを受けていなかったというのもちょっと残念に思いました。
営業に彰人という営業技術がいることでよくなったと大狼は何度か言っていますが、周りの反応的にそう思える言動が全然ないのです。できれは、彰人がいなかったことで困ったことなど、彰人がいることのありがたみが分かるような他の人の言動などがあるとよかったです。
大狼だけの言なので本当にそうだったのだろうかと思ってしまいました。
営業部の他の面々にはちょっと違和感を感じましたが、お話的には面白かったです。
二人がどう恋愛になっていくのか、自分に好意的なこの世界にきちんとさよならできるのか、戻るならどのくらい時間が経っていて仕事や人間関係がどうなっているのかわくわくしました。