せつなさは夜の媚薬

setsunasa wa yoru no biyakku

せつなさは夜の媚薬
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神7
  • 萌×27
  • 萌11
  • 中立1
  • しゅみじゃない2

--

レビュー数
7
得点
97
評価数
28
平均
3.6 / 5
神率
25%
著者
和泉桂 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
円陣闇丸 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
リンクスロマンス
シリーズ
清㵎寺家シリーズ
発売日
価格
¥855(税抜)  
ISBN
9784344804791

あらすじ

名門・清潤寺家の三男の道貴は、教会で金髪碧眼の美貌の青年と出会う。
旅先で彼―クラウディオと偶然再会した道貴は、気高く紳士的な彼に強く惹かれていくのだった。
やがて、残酷な宿命によって引き裂かれた二人は、二年後に劇的な邂逅を果たす。
熱情に抗えず彼に抱かれる道貴だったが、意外な真実が明らかになり…。
激しく互いを求め合う二人の、運命の恋の行方は―?閉ざされた愛と欲望に縛られる次男・和貴を描いた短編も収録。

表題作せつなさは夜の媚薬

清澗寺家と因縁のあるイタリア人元貴族
清澗寺伯爵家三男で品よく素直なお坊ちゃん

同時収録作品禁じられた夜の蜜

清澗寺鞠子の婚約者
清澗寺家次男

レビュー投稿数7

和貴にお株を取られた…巻

 没落華族の清澖寺家のシリーズ第三弾。利用価値のある華族であり、社交界で醜聞の多い色めきだった艶やかな家系のために、色々な欲望が渦巻く中で、ただ1人誰の毒牙にかかっていないピュアな三男の道貴が主役でした。

 道貴と元貴族でイタリアの商社の経営者一族のクラウディオとの華やかで因縁深い愛がテーマでした。王道感が漂います。ピュアで真っ直ぐに見える道貴にも、その実は清澖寺家の家系や因習に縛られて、もがいている素顔が意外でもあり、読んでいて切なかったです。
周囲から目立つ華やか家系であったり、色々醜聞の多い身内を持つのって大変なんだな。。かえって反面教師で必要以上に人格者になるのかも。
 クラウディオがプレイボーイなイタリア人男性のテンプレートのような人で可笑しかった。条件が揃えば揃うほど、胡散臭さが漂うのは世の常。それでも一途に彼の事を信じられる道貴がスゴイなーと思った。最後の軽いどんでん返しが良かったです。人のいい道貴らしいエピソードで微笑ましかった。

 神評価にしたのは、この巻の表題作である道貴主役の「切なさは夜の媚薬」でも存在感を示していた次男の和貴&深沢の行末が読み進めるにつれ、気になって仕方がなかった所に、同時収録作として和貴&深沢のその後を描いた「禁じられた夜の蜜」が読めたからです。
 前巻の和貴&深沢がメインの「夜ごと蜜は滴りて」では余りに2人の歪な愛を見せられて、2人に全く共感できないまま読み終えました。和貴から色々なものを奪い、虐げる姿勢を貫く深沢とそれを受け入れる和貴。2人の想いが交差される事がなく、いつも一方通行なところが理解を超えていて、歪んでいるとしか言いようが無く、モヤモヤしていましたが、今巻でようやく2人の愛の世界が理解できたのが良かったです。
この二人は、これからも独自路線で行き着くところまで行って欲しいです。

「切なさは夜の媚薬」でも「夜ごと蜜は滴りて」も大正時代の激動の時代が描かれ、その頃世界的に広まった社会主義思想や資本家と労働者の対立といった図式が各地に広まる労働運動などの社会現象に財閥が巻き込まれていく時代背景も描かれていて、耽美小説で終わらないところが良かった。その時代だからこそ、美しく血筋が良いものの、儚げで精神の脆い冬貴、国貴、和貴、道貴がこぞって利用し合う関係にしろ、自分達より強い漢を必要とした事も分からないでは無いかも。庶民に限らず、華族にとっても生き長えるのに必死な時代だったんでしょう。清澖寺家シリーズの世界観の理解が深まって良かった。

 次巻ではそもそもの発端のお父上の冬貴がいよいよ主役。期待感が高まります。

0

三男は素直

長男、次男が強烈に捻じれていたのですが、あら、三男は可愛い。
あのご家庭でここまで通貴がワンコだというのは、国貴と和貴が必死で守っていたんでしょうねぇ……偉業だと思います。
あ、ここまで書いてちょっと気づいちゃった。
清澗寺家って『父性がない家』なんだ!
国貴と和貴の『守り方』って、お母さんぽい。
まあ確かに、父がいない家ではあるのですが、でも母がいるわけでもないからなぁ。『化け物』と『その愛人』がいる家ということは、父も母もいないはずなのに、どうして二人とも母になっちゃったんだろう?
この辺は読み進めていくうちに何らかの答えを見出したいところ。

通貴の恋は可愛いです。
色々な障害(こういう言い方で大変申し訳ないのですが、この障害、あまりにも斜め方向にぶっ飛んでいます。父である冬貴の話を読みたくて堪らない!)もありますが、通貴の行動は結構単純。
学生さんですものね。素直で好感が持てました。

むしろ、周りの大人たちが……
会社の幹部が、恋の因縁を根拠にして仕事するのはどうかと思うんですよね。
でも、そういう処で引っかかっていてはいけないのだろうと。
このシリーズの読み方は「どこまで恋に馬鹿になれるか」という一点に絞って読むのが正しい方法なのだろうと、3巻まで読んで解ってきました。

私はやはり深沢が苦手です。
和貴をコントロールしようとする手法が『腹黒』っていうより『子ども』を感じてしまいます。
これが『悪意たっぷり』だったら好きだったかもしれないのですが、彼の場合は「良かれと思って」だからなぁ……

1

国際結婚もアリです。

和泉桂さんの「清澗寺」シリーズの3冊目。
三男の純真な道貴の話。
国際結婚とは...サスガ清澗寺...と感心してしまった。
ドラマチックで運命的でありつつ、道貴が健気で一途で良かった。

どの話も繋がっていて読みきりで、エロくて、似ていない。エロ楽しい作品でした。
挿絵の円陣闇丸さんもピッタリ耽美で良かった。

0

交響曲で言えばメヌエット、フレンチならばグラニテ・・・的な。

清澗寺家シリーズ第三弾は、三男の道貴(19歳から21歳まで)編です。
父親も兄2人も性の快楽に溺れる体質という爛れた家族環境の中で、よくぞここまで真っ直ぐに育った!(でもホモですがw)ときっと誰もが感嘆するような、鷹揚な好青年の道貴。
今作では、道隆が、一目惚れで初恋の男・クラウディオ(三十代のイタリア人実業家)と、さながらロミジュリな両家の敵対関係を乗り越え、ロマンティックで甘い恋に落ちます。
どっぷり清澗寺~な前2作は最高に面白かったけれど、倒錯お耽美が過ぎて、読後しばらくはお腹いっぱいな感じ。ここで少しノーマルな恋愛が読みたい・・・そんな読者の心の声を先取りしたかのような、鮮やかな転調。
ただ、これはこれで別の意味で暑苦しくはあるんですが・・・
なにしろクラウディオはイタリア産のプレイボーイだけに、国産ラブロマンスではほとんどお目にかかれないような激甘の殺し文句が炸裂! 
「君の瞳は宝石よりも神秘的で、星空よりも遥かに美しい」などなど・・・
やー、このセリフは日本人設定じゃあムリですよね。

好青年の道貴編ということで、清澗寺色は薄めではありますが、道貴が名うての女誑し・クラウディオの手で「未熟な薔薇の蕾」を咲き綻ばせ、性戯に目覚めていくあたりは、さすが清澗寺家シリーズ!
少年のように無垢なのに、ベッドでは天声の媚態を示す美貌の青年・道貴に、心身ともに惑溺していくクラウディオ・・・彼の中で交錯する、家族を破滅させた清澗寺家の人間への憎悪と、愛と表裏一体の、男の征服欲・嗜虐心が、微妙に重なり合っていくあたりの描写に惹き込まれます。
和泉さんの攻め視点の描写、好きなんですよね。

清澗寺家名物のドロドロシーン担当は、道貴と同居している深沢×和貴カプ。
今回もこの2人が、背徳の濃厚エロスを披露してくれます。
前作『夜ごと蜜は滴りて』後半以来、
① 深沢の調教によって凄艶な色香を増していく和貴→②和貴の美貌に惑わされた男たちの猛アプローチ→③和貴は被害者なのに嫉妬した深沢にお仕置きされる→①・・・
という、理不尽お仕置きコースを絶賛ループ中の2人。
今回はなんと、そのお仕置きを初心な道貴に見せつけるという暴挙に出る深沢。
冷徹な野心家だった深沢さえもただの変態に変えてしまう清澗寺家の男たち!
恐るべしです。

同時収録の「禁じられた夜の蜜」は、その深沢×和貴編。
上記御仕置きループがここでも一巡します。
相思相愛の仲なのに、いつまでも崩壊の不安が拭えない2人の関係。
もっとも、安定してしまえば調教の理由もなくなってしまうわけで、だから、和貴を調教という麻薬で繋ぎとめようとしている深沢にとっては、また深沢に責められている時だけは自分を解放できるらしい和貴にとっても、永遠に不安定かつ閉じた関係の中でループし続けることこそ均衡なのかもしれません。
『夜ごと蜜は滴りて』ではグレーな部分が残されていた深沢の本心も、今回はしっかり描写されていて・・・
ああ、深沢はそこまで和貴に溺れていたんですね。。。

しかしまあ、こうなるとこの2人、もうキャラとしては詰んでる気がするんですよね。
SMカップルに安定は禁物、だからSMものは長編としては成立しない、というのが現在検証中の仮説なんですが、果たしてこの2人はこの仮説を覆してくれるんでしょうか?
この先も2人の出番があるようなので、楽しみです。

清澗寺家の、父と3人の息子たちが織りなす純愛群像劇。
道貴編で王道ラブロマンスを堪能して、濃厚ドロドロな国貴編・和貴編で脂ぎった舌先が少しさっぱりしたところで、次は極めつけに清澗寺!の冬貴編へ。

9

これはよいバカップル

アホの子受けと、そんなアホの子にベタ惚れのアホな攻めを楽しみました。

1

どこまでも閉ざされた世界。

『せつなさは夜の媚薬』
清澗寺家と因縁のある家系のイタリア人・クラウディオ×清澗寺家三男・道貴

このシリーズの中ではわりと平和な恋愛をしていたような気がします。
といっても、あくまで他と比べて、ですが。

道貴は自分の気持ちに素直だし健気だし。
相手のためを思って引くこともするけれど真っ直ぐな青年で。
クラウディオも自分の血族のことを思いながらも、道貴を愛さずにはいられない感じで。
好き同士なのに、それ故に擦れ違ってしまうけれど、それでもこの2人はちゃんと幸せになれてよかったなぁと思う。

手酷い扱いを受けて、それでも自分の信念を曲げず。
それでも最後の最後で「嘘をつくことを許して下さい」と涙を流しながら告げる言葉が印象的でした。


『禁じられた夜の蜜』
清澗寺鞠子の婚約者・深沢直巳×清澗寺家次男・和貴

和貴の深沢へのひたむきな想いに胸が切なくなりました。
深沢に捨てられるのを常に恐れ。
欲しい気持ちはあるのにプライドが邪魔したり、そうして与えてしまえばいつか自分は空っぽになってしまい深沢にとって価値がなくなってしまうのではないかと恐れ。
役に立つと認められれば捨てられずに済むかと仕事に精を出すが、それだって本当は和貴に会社を立て直す力があるのなら深沢が社長職に留まる必要もなくて。
矛盾したその行いにも気付けないほどに、ただ深沢、深沢、深沢。
深沢の手でなら殺されてもいいと思い、それなら今この幸せな瞬間にと願う和貴は健気にさえも思えてきます。
和貴の世界はどこまでも深沢だけが全てなのだなぁと思いました。

ただ、本質の部分では深沢の気持ちまでは頭が回っていないのかなぁとも思いました。
深沢は今までなら毎日与えていたようなものも焦らして何日もお預けさせたりしていて。
それを和貴はそのまま「もう自分は必要なくなったのだ」と受け取ってしまう。
和貴にお預けをさせるということが、深沢にとってもお預けなのだということにさえ気付けない。
「愛している」と告げられているはずなのに自分に自信が持てず、その気持ちを信じきれていない部分があるようで。
「あなたがいなくなれば、私もまた生きる意味を失う」という深沢の言葉が印象的でした。

個人的にはこの作品が全シリーズの中でも和貴の作品の中でも一番好きです。
『禁じられた夜の蜜』単独なら「神」評価付けたいくらいです。

2

メロドラマの王道。ロメジュリ風

清潤寺家シリーズ、三男道貴編です。メロドラマのど真ん中を行くお話でした。

清潤寺伯爵家の三男、道貴は、ある日教会で金髪碧眼のイタリア人美男子、グラウディオと出会い、彼に心惹かれ、クラウディオもまた、道貴の真っ直ぐさ、清廉さに魅了されます。その場はそのまま別れるのですが、その後、再会、すれ違い、別離を経て、また再会を果たすことになります。が!この再会は実は仕組まれたものでした。他ならぬクラウディオによって。

実は、クラウディオの生家、アルフィエーリ公爵家と清潤寺家とは因縁浅からぬ間柄でした。クラウディオの父は、道貴の父(冬貴パパ)に懸想し、思いつめた挙句、寝付いた末に死去、そして一家は破産。クラウディオは清潤寺家への憎しみを心に秘めていました(逆恨みとも言えるような…)。復讐か?愛か?道貴への愛と清潤寺家への憎しみの狭間でクラウディオは苦悩します。

そんなドロドロした事情を抱えたクラウディオに対して、道貴は純粋そのものです。清潤寺家にあって兄のように屈折することなく、真っ直ぐに純粋に育った素直な子。クラウディオのこともひたすら信じようとする。そんな道貴ですが、彼もまた没落しかかった家を背負うという宿命を負わされており、そのことに思い悩みます。クラウディオも道貴も共に、「一族」や「血統」から自由になれないという葛藤を抱えているのですね。そのあたりの二人の心理が丁寧に描かれていて満足でした。 

山場は、道貴が家のために自分の気持ちを偽って別れを告げに行くところでしょうか。も~道貴が滅茶苦茶健気なんです!偽り切れなくて泣くところとか、可愛すぎます!そりゃ、クラウディオの復讐心も揺らぐでしょう。その後、色々なことを経てハッピーエンドに落ち着くんですが、ただ、最後がちょっとあっけなかったかな?それまでの葛藤の深さや二人が置かれた状況の難しさからするとえらくあっさり解決してしまったというか。

さて、このお話、舞台設定がとってもゴージャスです。大正ロマンが花開いた神戸の洋館での再会のダンスや軽井沢の別荘での逢瀬やバラを散らした初夜のベッドとか。ですが、一番ゴージャスだったのは、クラウディオのセリフでした。イタリア男らしく口説き文句に事欠きません。「君の瞳は星よりも美しい」やら「百万の星を集めても君という人間の輝きにはかなわない」とかもう出るわ出るわ。

エロは濃厚でしたね~。無垢で何も知らなかった道貴がクラウディオによってあっという間に快楽の虜に。さすが清潤寺家の一員というべきか。純粋なのにエロイ道貴に萌えました。

後、これは清潤寺シリーズに共通することですが、時代背景がしっかり描かれているのがいいですね。しかもそれが物語の流れを壊さないところが上手いなぁと思いました。大正の世界観が好きな人にはオススメです。



5

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