暁に濡れる月 (下)

akatsuki no nureru tsuki

暁に濡れる月 (下)
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神6
  • 萌×28
  • 萌3
  • 中立0
  • しゅみじゃない1

--

レビュー数
6
得点
71
評価数
18
平均
4 / 5
神率
33.3%
著者
和泉桂 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
円陣闇丸 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
リンクスロマンス
シリーズ
この罪深き夜に
発売日
価格
¥855(税抜)  
ISBN
9784344826786

あらすじ

双子の兄・弘貴の無垢な性格を疎んじ、家庭教師である藤城を使って弘貴の純潔を奪おうと画策する泰貴は…。シリーズ第二部。

(出版社より)

表題作暁に濡れる月 (下)

曾我巍一
清澗寺弘貴

同時収録作品暁に濡れる月(下)

藤城梓
清澗寺泰貴

その他の収録作品

  • 夜明け前
  • 巡りくる朝
  • 光射す森

レビュー投稿数6

清澗寺家の明日

清澗寺家シリーズ、第二部戦後編その弐です。
(すいません、長いです;)

末娘の鞠子が生んだ双子、
一人は赤子の時分に清澗寺に預けられ、御曹司として育つ。
一人は貧しさの中で育ち、戦火の中母と妹とも生き別れ、
孤児たちと寝食を共にして、男娼まがいのこともしながら生きている。
その二人が戦後再会し、清澗寺家という特別な家も時代に翻弄される中、
それぞれの恋をしていく。
全く違った境遇で育った双子が描かれる事で、
限りなく孤独で、淫蕩で、無垢であっても穢れてるという、
清澗寺家の抱える矛盾に満ちた宿命と、それ故の葛藤が際立っている。


和貴のように、脆さと仄暗さを抱えながらも、バイタリティ溢れる泰貴。
何者にも犯されないピュアさを持ち、欲望に忠実なのは冬貴と同じだが、
どこまでも明るく前向きな弘貴。
個人的な好みとしては、前の世代の人々なのだが、このニュータイプは面白い。

泰貴の相手の藤城が、案外可愛い性格だったのは残念というか、
最後に「深沢さんの手の上で転がされてたくせに?」と泰貴にからかわれていたが、
深沢の域に達するにはまだまだ。若さ故か、これまたニュータイプなのか。

弘貴の相手は、過去に傷を持ち侠気のある隻眼の曾我。
この二人の恋は、非常に真っ当というか、お姫様と無頼の騎士のような物語。

どちらも双子の恋は、前の世代に比べると穏やかで軽やかだ。
これは、時代もあるだろうし、何より和貴が必死に雛達を守ろうとしているからだろう。


「それぞれの恋」と書いたが、彼らにとっては「恋」という言葉では語れない。
「清澗寺に性別は関係ない」「君は清澗寺だ」というのは、お決まりのセリフなのだが、
彼らにとって肉の欲望を含めて、強く強く番える者を見つけられるかどうかは、
生きることそのものなのだ。

華族制度の廃止と、魔性の清澗寺の終焉を絡めているのには、些か無理も感じるが
外側から降ってくる事実としてではなく、和貴自身がそこに関わって幕を引くことは
彼らの未来の為には必要なプロセスだろう。
清澗寺を厭い憎み、時分の手でこの家を滅ぼそうと思っていた和貴。
しかし彼は、ここで生きて、そして新しい清澗寺を作り出そうとした。
弱くて、脆くて、逃げる事しかできなかった和貴のこんな決意と戦いを支えるのは、
いつまでも変わらず和貴のことだけしか考えていない、
あまりに強い愛で身も心も縛り続ける深沢なのだろう。


書き下ろしの短編が三つ掲載されているが、最後の『光射す森』は鞠ちゃんの話。
大磯で、二人の父の側で、生きていた、そして変わらず前向き出明るい鞠子。
私の愛する二人の父の、齢を経ても、いや経たからこその幸せそうな姿に
思わずジーンとしてしまう。

確とは語られないけれど、鞠子は伏見の娘だろう。
その鞠子が配偶者として選んだ、冬貴の血を引く敷島貴好。
第一部の最後で、鞠子は自分にしかできないことをすると言った。
伏見の血と、冬貴の血と、それを合わせて新しい世代を生み、愛する兄を救った鞠子。
曾我の初恋の人だったという敷島と鞠子の話も(BLじゃあないけれど)読んでみたい。


次は、非常に思わせぶりだった長男・貴郁の話だとのこと。
終始クールでミステリアスだった彼の物語は、とても楽しみだ。


挿絵は、円陣闇丸先生。
相変わらずの美麗さだが、これも第一部に比べると軽やかな印象を受ける。
そして後書きも読み終わってめくる最後のページに、一枚に挿絵がある。
邸の居間だろうか?
穏やかに瞳を閉じて三人の息子と共に佇む和貴。これを見て、涙が溢れた…

7

それぞれが選ぶ道。

双子編下巻ですね。
それぞれに想い人もできて2人でいることよりも想い人の元へと通うことが多くなっている今日この頃。

とはいっても、泰貴の方はかなりの前途多難というか。
心動かされて信じたいと思っていたのに裏切られたような状態で。
藤城が求めていたのは「愛」ではなく「服従」
藤城の前に膝を折ることで一種の安らぎを得ることも可能だったのに、それに屈することなく立ち向かおうとする泰貴の姿は印象的でした。
ここで屈しないから泰貴のことすごく好きなんですよねー。
気持ちは確かにあるのにそれを押し隠してなんとか対等であろうとする。
けれど、不意に気持ちが溢れてしまうようなところとか。
そんな泰貴と対する藤城も最初は本当に目的のための駒のようにしか見ていなかったはずなのに、徐々に変わっていくのが見て取れる。
その変わっていく様に本人自身も戸惑っているのが見て取れる。
なので、最後の病院のシーンで藤城が自分の感情を認めて泰貴との新しい関係を築いていくことを選んでよかった。
泰貴を幸せにしてあげて欲しいなぁ。
何気に、藤城って深沢の次くらいに相手に対する執着がすごい攻になりそうな気がする。

それから弘貴。
こちらはもう押したもん勝ちというか。
健気さに絆されたというか。
まっすぐな想いと清澗寺ゆえなのか知らず発する色香とに、曾我がいつ屈するのかというのが課題というか。
なんていうか、最初っから曾我の方も弘貴を気にかけているのは見てとれるから、どこまで自制心が働くかの勝負でしたね。
年齢差とか身分差みたいなものもあるし、そういうのをどう考えていくかできっと曾我は踏み込めずにいる部分もあって。
けれど、弘貴はそういうのは何も考えずにただただ「好き」という感情だけで動いて。
それでいて、迷惑をかけちゃいけないとか、そういうのも考えていて。
和貴に認めてもらうために?出した曾我の結論も印象的かな。
その期間はこの恋にどこか臆病になっている曾我が弘貴を試すものであったかもしれないなとか思ってもみたり。

「夜明け前」藤城×泰貴編
非常に短い物語ではあるんですが、コレすごく好きです。
2人の、というか藤城のまだちょっと素直にはなれない感じがよく出ていて。
明確な言葉は与えない。
けれど、通じ合える。
藤城の言葉を的確に読み取って頬を赤らめる泰貴。
そんなふうに汲み取れる泰貴だから藤城も惹かれてしまうのだろうな。
早く家に帰らなくてはならないという泰貴の服をこっそり隠してしまう藤城がとてもかわいく思えました。

「巡りくる朝」曾我×弘貴編
冒頭でサクッと出会った時の曾我からの弘貴の印象が語られていたり。
本編でも少しありましたが敷島(双子の父親)に対しての曾我の感情が男惚れとかではなく初恋な感じだったことが書かれていて。
敷島にもちょっと興味が湧きました。
そして、弘貴は相変わらずといえば相変わらずなんですが…。
上巻を読んだ時の印象は結ばれる前のせいもあってか、道貴っぽいなという印象だったのですが。
こちらを読むと本編でも語られているんですが、冬貴に似てるような印象の方が強いかも。
なんだろう「昼は淑女、夜は娼婦」な感じとでもいいましょうか。
昼間は冬貴ほどのダダ漏れ感はないんですが。
どちらかというと道貴的印象。
でも、ベッドの中では冬貴っぽい。
素直に欲しがる貪欲さとか。
恥じらいがないわけじゃないけど、言葉とかとってみてもエロいというか。
清純派な感じがするから余計にギャップでエロく感じるのかもしれませんが。
これでは曾我もイチコロですね(笑)

「光射す森」鞠子、伏見、冬貴
鞠子が戻ってきてからのお話。
鞠子は強いですねー。
というか、さすが清澗寺の娘というか。
父親の姿にも動じずですものね。
そんな鞠子が選んだ敷島という人物についてここでもサラッと書かれているのですが、冬貴の血をひく人物なんですよね。
どうりで曾我が綺麗な人だと言ってたはずだと納得。
BLレーベルですし、この鞠子の物語は深く書かれることはないんだろうとは思いますが、敷島についてはホントなんか気になりますね。

あとは本編で泰貴を想っていた瑞沢。
この子もちょっと気になる。
すごくイイ子そうなんだよなー。
だからこそ、泰貴とは結ばれなかったのかもしれないけれど。
瑞沢の救済とかどっかでないかな?(笑)

7

読み応え抜群

上下巻の下巻は、大変満足のいく内容でした。
シリーズも長くなって、不思議な魅力ある清澗寺家の色々な時代を堪能していますが、
今回の作品は、双子の恋愛が同時進行で進んでいて、双子ならではの楽しみ方が
出来るように感じます、双子だけれど、事情の違う育ち方をしているせいで、
性格的にも大きな違いがあるのですが、やっぱり清澗寺家の血筋、根底に流れるものが
愛の為なら死ねるってくらい情に厚いお家柄なんですよね。
双子がそれぞれ一癖も二癖もある相手と恋におちるのですが、普通の恋愛とは違い
清澗寺家の千年に渡る呪いの呪縛を次世代の双子が振り払う事が出来るのか?
そんな奥の深い内容でもあります。

このシリーズは清澗寺家のエピソード0的な番外編から読み始めるとより理解しながら
楽しめるのかも知れないなんて思うけど、意外にこの2部からでも楽しめるのでは
ないかと思えるストーリーです。
1度ハマると抜け出せない面白さがある作品だと思います。

7

サーガならではの面白さ

いやー、面白かったです。
上巻の感想にも書きましたが、私はこの第2部の方が好きみたい。
弘貴と泰貴の双子兄弟が様々なすったもんだはありますが、それらを軽やかに(特に弘貴!)飛び越えていくのが小気味よかったです。

それと同時に、彼ら第3世代が飛び越えた清澗寺家の呪い(と言って良いのか?)を和貴の世代がどうして超えられなかったのかが、より良く解った様な気がするんです。
やっぱり戦前には『家』というものがとてつもなく重かったんでしょうね。

清澗寺とは孤独の代名詞だ、的なことを深沢が言うシーンがあるのですが、弘貴と泰貴、そして多分次作で書かれることになる貴郁にとって、孤独を解消するために必要なのは『居場所』という言葉に置き換えられるものみたいに感じたんです。
第3世代が求めている『愛』って『居場所』なんです。
自分が自分のままで認められ、愛される場所。

でも、和貴にとって、家は単なる『居場所』というものではない様に思えたんですね。
もっと大きく力のあるもので、それが消滅してしまった時に自分の存在も消えてしまう様な。
今まであまりよく解らなかった和貴と深沢の関係が、弘貴と蘇我・泰貴と藤城の関係と比較することによってくっきりしました。
彼らの孤独の深さが浮き彫りになったって言うか。

くどくてすみませんが、面白い!
サーガだからこその面白さです。
乗り切れない部分で放り出さなくて良かった。
『気まぐれ猫』の様に伏見にじゃれる冬貴を読めたのも満足です。

4

愛の素晴らしさを思い知らされる

双子編後編。

落ち着く場所に落ち着いたなって思います。

泰貴に本気で恋した瑞沢くんがいい子すぎて妙に応援したくなっていました。
「嫌だ」と告げる泰貴に「だけど僕は君がいいんだよ」と返した彼が好きです。
別の形で幸せになっていてくれると嬉しい。


まるでじゃれ合っているような微笑ましい曾我と弘貴がお気に入りだったのですが、まぁやるとこまでやりましたね。
藤城も恋に生きる男になりました。(というか藤城梓って名前むちゃくちゃ可愛いですよね…)

彼らの幸せを思えばめでたしめでたしなのですが、メインの登場人物のほとんどが唯一無二と思える存在を見つけているのは、憎らしいほどに(笑)うらやましいです。
清澗寺シリーズを読む度に愛は苦しくもとても深く尊いものだとしみじみします。
一生かけても味わえるか分からない…そんな熱情を身近に感じさせてくれる作品です。

鞠子ちゃんの安否が確認できて本当に良かったです。
そしてさすが肝が据わってらっしゃる!!

3

双子編、完結

清澗寺シリーズは和泉さん作品では一番好きです。
長いシリーズですが、昭和初期の時代背景と共に本当に読み応えあります。
言葉遣いや 描写の形容詞選びから字面まで含めて雰囲気が構成され、がっかりさせない二段組みノベルは長編好きには堪らないです。
最近、文庫化が始まってますけど、改稿・追加がされたか気になってます。

この本を含む『暁』3冊は、冬貴の孫世代が描かれてるという、BL家族常識でも飛びぬけた(笑)清澗寺家3世代目話です。
『狂おしき夜に生まれ』で描かれた、平安に遡る清澗寺誕生のエピソードも素晴らしかったですけど、若い子たちの話は可愛くもあります。

『暁に濡れる月』では、双子のママとなった鞠子のその後や色々な家族事情が見えてきました。離れて育った双子の性格や思惑展開が中々予測つかずに2冊通して楽しめました。
私の最大ポイントは、鞠子のお相手(故人)が、結構びっくりの人!
挿絵も詳しい描写もないのですが、その内…過去を番外で、と期待します。

円陣さんのイラストが本当に素敵♪
コミコミ購入だったので、コメント付き表紙イラストカード特典が嬉しかったです。

2

この作品が収納されている本棚

レビューランキング

小説



人気シリーズ

  • 買う