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baroque pearl
シリーズ6冊目です。
前回の事件の後始末の徹底として、艦内の点検を行っていた三四郎とカイ。
無重力状態での作業から重力のある世界へと戻す際、その作用を理解しきっているはずのカイが飛んだ。
重力が戻り、大きく地面に叩きつけられることになったカイ。
そして、目覚めたカイはカイではなく…。
倒れて目覚めたカイは13歳の「イシス」で。
イシスはカイとはまるで正反対のように世間的に言われている「月人」としての特性を自分の魅力としてよく理解し、それを楽しみ奔放に生きている少年。
それはカイが最も嫌う自分の過去でもあって。
どうにかイシスをカイに戻そうとするクルーたち。
カイとイシスの違いを感じるクルーたちと、根は同じようにしか思えない三四郎。
三四郎がイシスと接して、イシスの奔放さに好感を持ちながらも、常にカイのことを想っているようなところがとても印象的でした。
イシスがカイにならないために。
それはカイが苦しまないために、とも思えて。
カイが抱える深い闇がカイ自身を内側から破壊しようとするのを危惧しているようにも見えて。
誰よりも、カイとイシスを想っているようにも見えて。
目の前にあるものを受け止め、在りのままを赦すような。
三四郎が抱えた大きな「イシス」という名の秘密。
それはクルーたちも共犯の罪となるのですが。
この事実がカイの前に露呈した時のことを思うとまたどんなふうに物語が動くのかと気になるところ。
今はまだ何も知らないままでいいと足りなかった部分を無理にでも埋めていくようなやりかたで抱く三四郎。
その普段とは違うやりように戸惑いながらも自分もまた飢えていたことを知り、求め。
この先、2人がどうなっていくのか続きが気になりますね。
青の軌跡4作目。(6冊目。)
船内の事故で意識を失ったカイは、目覚めると13歳の頃に記憶が退行していた。
鉄の鎧を纏ったカイの頑さの背景にある過去については、
どこかでストーリーに大きく関わってくるだろうと思っていたが、
こういう形でクルーと読者の前に過去そのものがお目見えするとは!
奔放に性を楽しみ、感情を自由に迸らせる月人そのものイシス、=かつてのカイ。
それは堅苦しく制服を着込み、必要以上にストイックでクールな今のカイの対極の姿だった。
イシスというのは、翼を持った永遠の処女、古代エジプトの豊穣の女神の名だが、
彼の母は、何を思ってこの名を息子に与えたのだろうか。
そして、どのような経過でイシスはカイにならざるを得なかったのだろうか。
治療してカイを元に戻そうとする凱と、自己憎悪に苦しむカイを知る故に
イシスとして生きる方がカイにとっていいと言う三四郎。
自身がなくなることを恐れ、「カイ」に還ることを断固拒否するイシス。
そして、最後にイシスの選択した道は…
イシスの中にカイはいないが、カイの中にイシスはいる。そしてイシスはカイになる。
なるほど。
イシスというキャラクターに振り回される今回のジューヌ=ベルヌ号。
今回は事件らしい事件はなく、カイの心の問題に焦点が当たっている。
とりあえずイシスは再び隠れ、カイが目覚めて船には日常が戻る。
しかし、この記憶退行事件をクルー一丸になって隠すことに決めたことは
次の波紋を引き起こすきっかけになるのは間違いない。
そして、ラスト。
「俺はあんたに飢えていたんだ」と、互いが溶けてしまうような激しい抱擁と、
カイが何故あの時に飛んだのか?の理由、
覚エテイテ、と消えたイシス、
切ないという感情を生まれて初めて自分のものとして感じる三四郎が、切ない。
カデンツァシリーズの新刊出ましたね〜!道のりは長い・・。
今巻のテーマである頭を打ったりして少年期に退行するという設定は、BLものでは良く見かけますが、ルナンのカイだとこうくるとは・・・(笑)。設定が映えますね!やはり読者としては毒花のイシスより、クールでストイックないつものカイの魅力を再認識し(こちらの方が萌えるw)、いつものカイの不在が切なかったです。カイの問題の解決方法について、三四郎とガイが反対のアプローチをするのも面白かったです。三四郎の選択は意外でした。シンプルな彼らしいといえばそうですが・・。最後のクルー達のカイへの気遣いが良かったです。そのうちシリーズ内で奔放で純粋なイシスが、知恵の実を知り尽くした苦悩を潜めるカイという人物像に変貌するきっかけとなった大きな出来事が描かれるんでしょうか。非常に楽しみです。
このシリーズはSF小説のジャンルに区分されていますが、どちらかというと人間の深層心理へのアプローチがシリーズの根底のテーマになっていて、非常に内容が深く読み応えがあります。BL萌えを最大限に活かすシチュエーションの持ってき方も、いつもながら上手いなーと思います。相変わらずカイ&三四郎のバディーに萌える日々を楽しみ満足しました。