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初めて付き合った男はクズだった
tokio no haru
ちるちるでは点数全然伸びてませんし、神評価のレビューも今までありませんが、自分には文句なし神評価の作品でした!まつ先生の既刊は2冊で、今作家活動をされているかどうかも分からないのが非常に残念です。
◾️表題
トキオ、トモヤ、アキラ…トキオを中心に、屈折した思いを抱える3人が描かれています。絵柄とストーリーがマッチして浮世離れした雰囲気すらあるのですが、描かれているのは現実と向き合う彼ら。トモヤは一見逃避しているようにも見えますが、彼が1番自分を正確に捉えて割り切って、ある種諦めている気がする。
旅行に一緒に行くのは、たぶん谷原かな。これで谷原と恋愛関係になる流れでないところも好感。
春が終わって、全てがうまくいっているわけでもないかもしれないけれど、なんとなく前向きな終わり方が好きです。
◾️明日もまた日は昇る
そんな感性に訴えかけるような表題作の一方で、こちらは…こちらも絵は繊細で美しさを感じる作品なのですが…お付き合いする若い男性2人にしっかり萌も得られる短編。こういう作品も描けるところはBL作家としてかなり強いと思うのに、どこへ行ってしまったのまつ先生〜!
他の2つの短編も、細かく語れるほど好きな所ばかりです。独特の絵柄ながら描けるものが偏っているわけではなく、この1冊の中で登場人物の描き分けがしっかりしているところも凄い。
余韻の深い読後感でした。まつ先生の絵柄も相まって、なんだか切ない独特の空気感があります。
トキオの春で一冊だと思っていたら、短篇集でした。表題作が一番長いです。
題名通りトキオがある春に経験したお話。絵で苦手だと思う方もいらっしゃると思いますが、ぜひ読んでいただきたいです。
ーーーーーーー感想とネタバレーーーーーーー
【トキオの春】
読んでいると、トキオが不憫で仕方ないのですが、その一時ごとに小さな幸せを感じていてその点は良かったと思える部分でした。
過去に付き合っていたアキラによりトラウマを持っていたトキオが、拾ったトモヤと一緒に生活をするようになり徐々に綻び心を許していきます。
でもトモヤは根っからのヒモ体質。1つのところには留まることができず、人と深く関わることができません。最後にトモヤはトキオの身体を触り彼の心を完全に解きほぐして去って行きます。
ここの描写が堪らなく切なかったです。”自分を否定されるのが怖い”というトキオの姿もとても小さく見えました。
ハッピーエンドはハッピーエンドなんだと思います。生活をしていくなかで出会う恋未満なエピソードを覗くような気持ちになりました。
トキオはトモヤによって自分を変えることができたのではないかと思っています。
【絡まって落ちる】
教師×生徒の背徳感があるお話でした。ハッピーエンド。
【明日もまた日は昇る】
家族のような大学生2人のお話。
【エスケープ】
ショートショートで、少しわかりにくかったです。
まつさんはお話を作るのがうまいんだろうなあと思います。
短編集ですが、どれも映画のようで心に染みるお話でした。
短編なのでもう少し続きがあればなあというものもあります。
表題作は、すてきな雰囲気のモデル、トキオのお話。仕事のときは魅力あふれるモデルなのに、自分では自分の顔が嫌い。高校時代につきあった彼から、顔を隠してと言われたことがトラウマになってるのです。
そこへふらりと現れたヒモ、トモヤ。ヒモらしく、トキオが求めるもの、自分の容姿をかわいいと肯定してくれる存在を演じる。しかしトモヤは人と深く関わることができないという性を持っていた。トキオが心を許し始めたとき、トモヤは去って行く。。
体の関係はあっても、お互いにつかの間の癒やしを求めただけで、かけがえのない人という存在ではなかったのかもしれない。
そんな人間関係を描いた作品。
他に、奔放な生徒とまじめな先生のお話、カフェ店員と大学生のラブラブほっこりカップル、田舎に久しぶりに帰省した千葉さんと、そこで出会ったものかきの鶴見さんのまだ始まる前の感じなど、割とハッピーな作品が入っていました。
ぜひ、今後も書き続けてほしい作家さんです。
アンソロ「真冬男子」掲載の
「明日もまた日は昇る」(3つめに収録されてる)
年越し話は、ほこほこあったか!
ストレートな好き!照れ隠しの好き!
日常的な可愛いがたくさん詰まってて
とても心あたたか満たされたので他も読んでみたい!と本作を手に取りました。
1作目を試し読みして仄暗さに躊躇したけど、
とてもとても読み込ませるお話でした。
好きを上手く表現できない残酷さが苦く、傷心や上手くいかなかったことを解きほぐしてく優しさもあったり。
癖はあるけど癖になる!
趣深くて文学的な美しさのある
グサグサ余韻後引く短編集でした!!
読み返さないと難しいとこもあったり、深読みしないと何通りにも受け取れてるようなとこもあり、
圧倒的光の腐女子さんや起承転結がパキッとしたお話が好みの方にはモヤッとするかもしれませんが
こういうなんかじくじくじんわり、
人の弱さと温かさを感じるお話も素敵だなって思います。
短編集。
絵柄で人を選ぶかも。内容もどちらかというと雰囲気系。BLと文芸の間みたいな感覚。
「トキオの春」
トキオは東京ではなく、時生。主人公の名前。
時生は背が高く、スタイルが良くて顔が個性的。今はモデルとして評価も得ている。
しかし、「個性的な顔」で子供の頃からいじめられ、初めて付き合った先輩からは顔を見ると萎えると言われ続け、自己肯定度の低さとセックス忌避に陥っている…
偶然拾って部屋に住まわせてるトモヤが時生の心をほぐしていくんだけど、時生が心を開きかけると、そして時生がトモヤ側に入ってくると、トモヤの方がつながりを切り離す気持ちになる…
トモヤは1つの所にいられない。人と深くなれない。
一方、時生にトラウマを植え付けた先輩・アキラが唐突に時生に謝ってくるんだけど。
アキラやトモヤの行動に振り回される時生。
でもトモヤの言葉は含蓄がある。
人はみんな自分勝手だ
だから
その勝手にとらわれることはないんだーーーー
時生は被害者じゃない。苦しまなくていい。自分も好きに生きていいんだ。そんな風が吹いた感覚。
「絡まって落ちる」
担任教師に絡み、落とそうとする?生徒。
生徒の園江は成績優秀の模範生徒だったが、耳にピアス穴を複数開け、髪を金髪に染め、わざと呼び出されて。
園江が誘惑してるのか本当に教師が好きで構ってちゃんやってるのか、何とも微妙な線です。
「明日もまた日は昇る」
大学生とフリーターカップルの、大晦日の風景。
一緒に年越しそば(またはラーメン?)、一緒にコタツで「ガキ使」、一緒に初詣、一緒におみくじ。
帰ってきて一緒に布団にくるまり、一緒におはよう。
エロ無し。仲の良い2人の恋人の日常です。
「エスケープ」
伯父さんの突然の死で、休みを長く取った千葉。
葬式のあとも、思い出の場所で過ごす。
子供の時、伯父さんの仕掛けてきた戯れ。伯父さんの勝手で急に終わった関係。
だけど、好きだった。自分は好きだった。…
淡々としてるけど、喪失感と「トキオの春」にも通じる誰にでもある自分勝手さ、を感じます。
千葉には被害者感情もトラウマもなさそうで、そこは「トキオ〜」よりも軽やか、かな。
◆トキオの春(表題作)
表紙も飾っているトキオの表情がとにかく魅力的でした。万人受けする顔ではないかもしれない、けれど、雑多の中に埋もれない他人の目を引く雰囲気があって、スタイルもいいからモデルには向いている。もっと自信を持ってもいいのに、昔言われた言葉のせいでネガティブなトキオ。どんな自分でも受け止めてくれる、居候のトモヤに惹かれていくけれど、果たしてそれは恋なのか。自分の孤独を埋めてくれるから手放したくないというのは、あまり健全な愛ではないかもしれませんね。自己愛、自己防衛なのかも。切ない終わり方でしたが、トモヤと過ごした日々がトキオを少しでも変えていたらいいなぁと思いました。
◆絡まって落ちる
もう少し読んでいたかった作品。教師が生徒に搦め捕られてしまう展開は大好物なので、園江が小鳥遊を翻弄して最終的にはどうしたかったのか、はっきりするまで読みたかったです。