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hoshi ni ochiru efude
上下巻同時発売されたうちの下巻。上巻を読んだだけではよくわからなかったのでいそいそと下巻を読んでみました。
ネタバレ含んでいます。ご注意を。
友達に島を案内してもらい、綺麗な風景に絵描きとしての心をくすぐられた翔悟。徐々に「絵を描くこと」の楽しさを思い出し始めた彼ですが、相変わらず凌星とは気持ちが通わせずにいます。
そんな中、翔悟の兄の瑛悟の個展に、翔悟と凌星二人の絵も出すことが決まり、またもや絵を描くことがプレッシャーになってしまった翔悟。
そんな翔悟を見かねた凌星は、翔悟のために「とあること」をして…。
それをきっかけに、翔悟は凌星との子ども時代の邂逅を思い出します。
母親を亡くし、孤独な子ども時代を過ごしていた凌星。
自分と兄との才能の違いに気づき始め、劣等感を感じはじめていた翔悟。
そんな彼らにとって、「絵を描くこと」は自分を表現することで。
凌星にとって「絵を描くこと」と「翔悟との思い出」は、自分を守りそして保つための大切なものだったのに、それをすっかり忘れてしまっていた翔悟。
二人が再会したとき、凌星が翔悟に対して冷たかったのは、そういった経緯があったからなんですね。
それでも、翔悟は凌星にとって、代わりのいない、大切な存在だったんだとわかったとき、思わず涙腺が崩壊しました。
一方の翔悟にとっても、凌星は大切な人になっていて。
「兄へのコンプレックス」や「周囲からの評価」よりも、「絵を描くこと」の楽しさや翔悟の存在こそが自分にとって大切なものだったのだと気づくようになった彼にエールを送りたい。
ストーリー全体を通してシリアスな雰囲気がずっと漂っていますが、それでも翔悟と凌星の高校の同級生たちとの若者らしい交流や、猫を可愛がる凌星のほっこりシーンなど、可愛らしいシーンも。
翔悟のお兄ちゃんも、すごくいい人っぽい。弟を心配し心を砕くナイスガイで、彼メインのスピンオフも読んでみたいな。
表紙も素敵でした。
上巻では向き合う事のない彼らですが、下巻では隣り合って立ち、笑顔で。画材をお互いに持って。
この作品は、上下巻まとめて読まないと意味が分かりづらいかも。
まとめて購入されることをお勧めします。
やっと色々な謎がとけました。
凌星と翔悟にそんな過去が…とか、お兄さんの想いとか…。
兄と比べられてプレッシャーを感じたり、兄にたいしてコンプレックスを感じていたり、お母さんを亡くして一人ぼっちだったりと重い背景があるのですが二人を取り巻く人々がとても温かくて、島の環境が穏やかなのでそれほど暗いものに感じません。
唯一、たまに見せる凌星の表情が怖すぎで、これは思い出してくれない翔悟にたいする恨みなのか寂しさなのか。あそこまで周りの人達を優しく描いたのだから主人公である凌星も素直でいて欲しかったかもしれません。優しくしたいと言う気持ちがありながらも思い出してくれないと言うもどかしさから乱暴に抱いたりするのが翔悟じゃないけど何を考えてるのかわからないなと思いました。
上下巻まとめてのレビューです。
絵を描き続けている島の高校生と、絵を描くのが辛くなっている都会の高校生の出会いと再生の物語。
芸術一家に生まれた翔悟は、天才画家を兄に持ち、周りからのプレッシャーで自分の絵が描けなくなってしまった。さらに転校した島の美術部で、凌星の絵を見て、自分には無い才能に嫉妬する。
そして翔悟は凌星の才能を自分の物にしたくて「俺のものになって」と凌星を誘惑する。
カラダの関係を続けるうちに、翔悟は凌星への気持ちが芽生えてくるけれど、それを打ち明けると凌星は怒り出して…
翔悟が凌星を誘惑するのは、才能を自分の物にできるような錯覚と、才能を持っている者への復讐からだと思うのだけど、凌星はどうして簡単に翔悟を受入れたのかが謎でした。
生徒数も少ない島の学校で誰とも慣れ合わず、親とも距離を置いている凌星が、なぜ翔悟にだけは執着を見せるのか?
その謎は下巻で凌星の過去が語られることで全てが繋がります。
翔悟は忘れていたけれど、二人は子供の頃に出会っていたんです。
凌星は母親が亡くなり、父は冷たく、ほかの子供のように甘えられる存在が無い孤独な子供で、島に遊びに来ていた翔悟と仲良くなった。
翔悟が帰った後も、翔悟と会話するために凌星は絵を描き続けてきた。
そして凌星は翔悟も自分と同じように孤独になって、自分だけを求めれば良いと願いながら、翔悟を明るい場所に戻して、また孤独になる選択をする…
この凌星の選択がやさしすぎて悲しい。でも、自分よりも相手を思うことこそが孤独から抜け出す道なんだな。
上巻は謎ばかりで、なぜそういう行動になるのかキャラの心理が理解できなかったけど、下巻で全てが繋がると、自分のことより相手を思いやる、やさしくて切ない心の動きを丁寧に追った物語なのがわかります。
心にズシンとくる良いお話でした。でも”恋愛物語”より”友情物語”のほうがシックリくる気がして…
BLじゃないほうが良かったんじゃないかなってチラッと思ってしまいました。
上下通して読んでの感想です。
天才画家の兄を持つ翔悟は兄と比べられて育つうちに大好きだった絵が描けなくなってしまっていた。
兄の勧めもあり、環境を変えるために小さな島に引っ越すのですがそこで出会った凌星の描く絵に衝撃を受けます。
凌星も兄と同じ「神に愛された手」を持つ人間だと思った翔悟は、凌星に対して「オレのものになって…」と伝えていきなり抱かれてしまう、というのがどーしても腑に落ちなくて。
唐突過ぎると思いました。才能を持つ人間を羨ましい、その才能が欲しいというのは充分に判りますが、なぜ、この神に愛された手を自分のものにしたい=「抱いて」と受けになってしまうのか。
しかもノンケ同士。いや、ゲイ同士だって男女だってこういう告白の仕方、体の関係の始まりってないと思うんです…。
天才画家として広く知られる兄へのコンプレックスや、周囲からの目、そして自分の絵を描けなくなるまでの過程については非常に丁寧に描かれていました。
というか上下二巻通して一番丁寧に、くどいほどに描かれているのがこの兄に関する事だったように感じます。攻め受けの二人の感情よりも…。
上巻はとにかく二人の気持ちが全く見えてこず、取り残された感がいっぱい。
下巻は、翔悟の凌星に対する心情(上巻の唐突な台詞や行動の解明含め)が語られるかと思いましたが、それもなく、相変わらずお兄ちゃんコンプレックスのお話と、攻め側の凌星の実は…という種明かし部分。
あとあまり細かいことは言いたくないんですが、凌星は父親が画廊を経営、母親はヴァイオリニスト、兄は天才画家という芸術家一家という設定になっています。
それなのにどうして凌星の個性を無視して兄の猿真似をするように仕向ける周囲から防波堤となって守れなかったのか、それどころか兄と比較する母親も描かれています。
本当に芸術に理解があるなら、そんなことは一番愚かな事だと判っているはずだと思うのですが。
なんだか色んな点で腑に落ちない作品でした…。