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love yes
お勧めの順番にレビューして来たカタル作品。デビュー作から『世界の中心で愛なんか叫べねーよ』へ飛んだら次は遡ってこの『ラブ?YES』です。
『ラブ?YES』がどうして表題作になったのでしょうね。7話収録の短編集なのですが、私は最終話の『マイビューティフルライフ』が表題作にふさわしいと思っています。タイトルが良くある感じだからかな?『ラブ?YES』の方がインパクトあるもんね。
『LOVE&CATASTROPHES』収録の「何処へも帰らない」の続編も同時収録です!
・『マイビューティフルライフ』
たった38Pで出会いからの15年を描いた、マコちんとりんの怒涛の人生活劇。絵と台詞と大量の一人語りのモノローグの絡み合いが圧巻です。親友との遊びの延長のようなSEXが本当のSEXだったと気づくマコちんと、大切だからこそ臆病になるりん。りんがあまりにアングラな世界に行ってしまったので、ラストを心配したけれど、やっぱりカタルワールドはすごい。人生ってほんと悪くない。いや、素晴らしいって思えちゃうんです。
・『色は匂へど散りぬるを』
ラブカタ収録の『何処へも帰らない』で私の涙腺を崩壊させた美少年の裕倫。最高の終わり方をしたお話だったので、続編には嬉しい半面、心配もあったのですが杞憂でした!
とても文学的なこのシリーズ。いつも裕倫を通して語られるカツローの言葉が真理に満ちていて、ハッとさせられます。「人を許すことで自分も救われることがあるんだ」
前作ではその存在が小田桐を救った裕倫ですが、今回は小田桐が彼にコンプレックスを抱く松坂を救います。それは裕倫が松坂を「許した」からです。そして松坂は妻を許し、前を向くことが出来ました。
カツローと裕倫はチワワも救っているんですよ。今回はカツローは姿を現さないのですが、とにかく徹底してカッコいいオトコです。そして裕倫は天使でした。いつかまたこの二人に会いたいなと思います。
ところで表紙裏のあらすじ(宣伝文?)が的を得ていて素敵なので、ここに記しておきたいと思います。(どうしてちるちるやアマゾンなどのあらすじがこれじゃないのだろう?と不思議です)
「ラブ、フォーエバー!人生、悪いことばかりじゃないさ。オンナ泣かせんのも、ホモセクハラに悩むのも、意に添わない仕事でヘコむのも、ひとり変態Hに溺れるのも、妻に逃げられるのも、みんなみんな、ひとつの出会いを結ぶための、夢の伏線。7つの愛の形がハートの芯を貫く、天才カタルワールド最新のラブ!!」
運命の出会いが描かれた短編集。大好きな本です。
デビュー作の「LOVE&CATASTROPHES」に収録されていた「何処へも帰らない」の続きがあるので読んでみました。
「LOVE&CATASTROPHES」や「上等だベイビー」に比べると、バイオレンス、アウトロー風味が激減したけどクセのある(クセになるともいう)独特のテンポ、モノローグの多さは変わらずで決してちんまり大人しくなっちゃった訳ではありません。
そしてゲス野郎は減ったどころか、すっごく遊び慣れていそうなのに相手一筋みたいな男が二人もいて、なんだかこそばゆい。
好きかどうかは別として圧巻だと思ったのは「マイ ビューティフル ライフ」
マコと凛が高校で出会ってからの15年間を描いた作品。高校の頃からセックスし始めた二人。マコは凛とのセックスを「プロレスの延長」として捉えていて凛のことは「真のマブダチ」と思っているのだけど……
唯一付き合った彼女だけが真実を鋭く見抜いていて時々警告を投げかけているけど、本人は気づいていない。自分の気持ちは本人が一番わかっておらず、真実に気づくまでの15年間を怒涛の勢いで描いています。
ときどき出てくるマコのお兄ちゃんが安定のゲスさ(笑)。びっしりと埋め尽くすかのようなマコのモノローグ、そして絵。長編作品としても充分成り立つ題材をあえて40P程度の短編にしたけど破綻しておらず、無理がない。すごいな。
「何処へも帰らない」で描かれていた作家・小田切と少年の続きのお話は「色は匂えど散りぬるを」
小田切と少年の続きもさる事ながら、小田切の担当となった松坂という男を描いたお話です。一言で言えば許しと救済のお話でした。
私生活もうまくいかず、全てを持っているように見える小田切にコンプレックスを抱く松坂。そのコンプレックスは小田切に憎しみを覚えるまでになるが、本当はそんな弱い自分がこの世で一番嫌い。
そんなある日、小田切の不在時に少年を強姦してしまう。少年は小田切に出会う以前なら抵抗なく抱かれていただろうに頑と拒否していて、少年の変化と二人で築き上げたものを感じされるなぁと思ったらそれもそのはず、小田切はその日養子縁組の手続きをしに行ったところだった…。
「人を許すことで自分も救われる」というカツローからの教えを口にする少年。今回は名前しか出てこなかったけどカツローがこう言っていたよ、と少年の口から語られる言葉の数々は相変わらず深い。カツロー、やってる事はエグいし顔も極悪なのに。
最後、松坂本人が救われる過程が描かれていましたがそこが格別良かったです。
この他、結婚詐欺に会って捨て鉢になっている警官と野良の美少年のお話「どーにもやるせナイト」も印象に残りました。
出会って、愛して、救われる というごく普通の筋道なのに、どうして語シスコさんが描くとこうも強烈になるんでしょうね。
面白くも沁みる作品ばかりの短編集。
「どーにもやるせナイト」
やる気を失ってる交番勤務のお巡りさんに拾われる訳ありの少年。だけど彼は実は…!
彼との時間は小さなカサブタ、それともヘソの横のホクロ、このセンスがカッコいいんだよなぁ。
「人生は上等だ」
口先だけで甘く生きてたホストのマサキだが、客に刺されて休職中。
偶然出会った、かなり年上のオヤジに恋している男の子に絆されて…空虚な世界から足を洗うお話。
「ラブ?YES」
同僚の三品からセクハラをされている教師の宮坂。
三品は市議の息子なので抵抗も告発もできず、悔しいがされるままになっている。それを学内でも学外でも人気のイケメン生徒・スーパー高校生の森沢に見られ…
森沢は宮坂を助け、朝礼で壇上に上り全校生徒の前で三品をレイプマンと呼び、もう先生のチンポをしゃぶるのは真っ平ゴメンと言い放つ…!
それは森沢の、宮坂へのラブなのです。
「色は匂へど散りぬるを」
作家・小田桐の担当編集者・松坂が主人公。
松坂は妻と別居中。松坂の心はすさんでいます。
松坂は小田桐に歪んだ劣等感を抱き、小田桐の大切な同居少年・裕倫(ひろとも)をレイプし小田桐を傷つけようとするが…
この裕倫がなんというか全てを超越した透明さで生きているんですよね。彼の話が「ラブ&カタストロフィー」にあるそうなので、まずそちらを読むべきだったけど…速攻読もう。
「ラブでもくらえ!」
リーマンの恋人・高文がいる大学生のヒカル。お気楽なヒカルだけど高文の方は働いているから色々あって…
でもヒカルがお気楽だったのは高文が何も話してくれなかったから。遠距離になってからの方が言葉にしてるんじゃないでしょうかね。
「天使の恋わずらい」
まだ恋は知らず、自分の妄想を相手にソロプレイが習慣の基(はじめ)。
クラスメートの藤原を好きになって妄想のマスターが消えていったよ、というヰタ・セクスアリス。
「マイビューティフルライフ」
ケンカに明け暮れるチョイ不良の真彦とダチの凛との、すれ違い分かり合えず、向き合おうとしなかった愛の年代記、なのかな。
愛情を取り違え、何度も凛を抱きながらダチとして考えていた真彦と、そんな鈍感な真彦に合わせていた実は切ない凛の真意。
真彦が気づくのが遅すぎたけど、これからは2人で寄り添ってやっていけそうな前向きラスト。
短編なのに超中身濃くて、さすが語シスコ!と唸る感じです。
表題は、同僚からエロセクハラを受けていた教師の宮坂が、学内イケメンのセイジに救われるという話です。
生徒から自信を与えてもらうという情けない大人だね~というところだが、相手の一途がある為に流され恋愛話になって、要は愛に大人も子供も敷居はないよ、ってな話になるということだろうか。
あまり、これには深さはない気がする。
『色は匂へど散りぬるを』
は、珍しくエロ表現の全くといっていいほどない作品で、しかもダメ大人丸出し作品で、これが一番この本の中で胸を打つ作品でした。
「ラブ&カタストロフィー」に入っている"何処へも帰らない”の続きになっています。
ヤリ手の編集松坂は妻との別居が何年も続いて子供にあわせてもらえない。
担当の作家小田切が少年を養子にしたと知り、その少年へ向けられる愛を羨み、憎み、嫌がらせをするのだが、それさえも許してしまう小田切に降参する。
前作を見るとこの少年の事がわかるが、それによって作家も救われたと同時に松坂も救われているのです。
この憎しみはひとえに松坂の小田切のコンプレックスによるものなのです。
彼と語りあうことでふっきれた松坂の最後に流す涙にちょっとこちらまでウルウルきてしまいました。
あの、少年と一緒に暮らしていたカツローは名前だけの登場でしたが、ほんとう顔に似合わずイイ奴でしたよ♪
是非顔を見てビックリしてほしいですww
他には家出少年と警官、元ホストと教授との不倫に悩む大学生、大人のオモチャ好きなリーマンと大学生のバカップル、マスターに導かれ恋を知る高校生モノ、高校時代の悪友との15年かけての恋愛。
と、今回の本の中にはそれほどのいい加減ヤローは出てこなくて、少し内容の薄いものもありますが、ちょっとした切なさが入っている物語は健在です。
少しパワーの落ちた感じはありますが、充分に読ませる作品になっています。
ネームやモノローグが多いのも慣れると快感?
こちらの短編集はおバカ度はだいぶんおさえ目で、救済とカタルシスがテーマになっているものが多かったです。
『ラブ?YES』
同僚(♂)からセクハラを受けている自分に自信のない高校教師〔宮坂〕が、生徒〔森沢〕に救われるお話。
表題ですが、これは結構サラッとした内容でした。
『どーにもやるせナイト』
語シスコさんの短編集に大抵ひとつは入っている行きずりの少年との束の間の同棲物語。
今回は、結婚詐欺にあって以来情熱も勤労意欲もすっかり失くしてしまったおまわりさんと、不釣り合いな毛皮のコートに身を包んだ謎の家出少年で、双方が救われるいいお話だった。
『人生は上等だ!』
仕事を辞めて無気力に過ごしていた元ナンバーワンホストが、宅配ビデオの配達に来た訳アリっぽい少年と出会ったのをきっかけに、それぞれのすったもんだな人生に決着をつけて、二人で第二の人生を歩み始めるお話。
『色は匂へど散りぬるを』
「ラブ&カタストロフィー」に収録されている『何処へも帰らない』の続編。
前作で救済された小説家が、今度は新しく自分の担当になった編集を救うお話。
このシリーズ好きです。深イイ。
救いの連鎖って美しいな。
『ラブでもくらえ!』
エッチしたい盛りの大学生と、仕事で苛々気味のサラリーマンの年の差モノ。
喧嘩してエッチして仲直りして~のお決まり展開。
この短編集では唯一のおバカテイストかな。
『天使の恋わずらい』
中学受験にも高校受験にも失敗した主人公は「ここは自分のいるべき場所じゃない」とクラスにも馴染まず、どんどん過激になっていくマスターベーションでストレスを発散する日々を過ごしていて、ある日誰もいない教室の教卓で致していたところをクラスの不良にみられてしまうのですが、それをきっかけに一緒にいるようになった彼との時間がすごく楽しくて、反対に自慰が虚しく感じるようになり…
他人と交流する楽しさや、好きな人とセックスする幸福感を知るお話。
『マイビューティフルライフ』
思いのほか壮大な話だった…!
40ページでも語シスコさんの怒濤の文字数で描かれると物凄い大作を読んだような錯覚に陥ります。
中学からの悪友であり初体験の相手でもある〔凛〕と離れたり再会したりを繰り返しながら、けれども付き合うことは決してなく身体の関係だけをもって、10年もの間不可解な関係を続ける話。
ヤクザの抗争で死にかけた凛がようやく明かしたその理由がネガティブで悲し過ぎる……超純愛です。