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yuki no tenshi Icecapade
『アドリアン・イングリッシュ』でおなじみのジョシュ・ラニヨンさんの雑誌掲載短編の電子版。
2000年の1月、宝石泥棒のノエルは自分を2年ほど追っていたFBI特別捜査官のカフェと一夜を共にします。
カフェを気に入っていたノエルにとっては仕事の流れでありつつも、心のどこかに充足とそして後ろめたさが…
そして現在。10年経った今、まるで過去の自分とカフェをモデルにしたかのような作品でノエルは作家として成功しており、反面カフェはその作品のモデルとされていることが知れ、左遷されてしまっています。
そのこともありこの10年、毎年12月31日にカフェへと電話を入れるノエル。
最初はカフェをモデルとしたことへの詫びとして。
しかし今では、電話に一度として出ることのないカフェの声をいつか聞けるのではという、諦めに似た感情と共に…
最初あらすじではピンとこなかったのですが、やはり読むとなるほどラニヨンさんの作品でした、文章とちょっと捻くれたキャラが。
ただアドリアンよりもこの作品は地の文がかなり海外物に良く見られる書かれ方(視点主は受けですが、筆者が時々説明風に登場するような)をされているので、もしかしたら好き嫌いがあるかもしれません。
10年以上昔のBL小説にはこういう書かれ方があったので、わたし自身はなんだか懐かしいという感じがしました。
イラストは金ひかるさん。
二人の歳は38と37なんですが、金さんの絵がそこまでの年齢に見えずかえってわたしにはありがたかったです。
どうしてもM/Mのキャラは年齢層が高く、個人的には苦手な部類なので。
ノエルは38歳とは思えない初心い可愛らしさがあるので、金さんのイラストと相まって30代後半ということを意識せずにいられました。
電子での海外BL中編。作者はあのジョシュ・ラニヨン。
これね、読んでる途中から頭に浮かんじゃったのが「BL版・銭形警部xルパン」なのよね…
主人公は宝石泥棒のノエル。
その昔、FBIのカフェと一夜を過ごし、カフェが目覚める前に静かにベッドから逃げて隠していた宝石を回収して逃げた…
そして今、ノエルは小説家になって「美形の宝石泥棒と彼を追う刑事」が主人公の人気シリーズの作者になっている。
だが、今年のクリスマス。
なんとカフェがノエルを訪ねてきて、ここ3ヶ月NYで起きている宝石窃盗とお前との関係を調べてやる、と言う…
10年間忘れられなかったカフェが目の前に…!
のっけから笑顔もなくノエルを疑ってかかるカフェだけど、言葉の端々、瞳の中の影に自分への欲望を感じるノエル。しかし過去の事があるのでノエルの方からはいけない。
そんなモダモダは海外BLでは珍しいような気もしました。
ただ…リャマの救出劇や、近所のおばさんの発電機の話は…長い。これ必要だった?
というのが私的にはマイナス点。
やっぱり銭形とルパンからコミカルテイストを抜いた追っかけっこ、プラスちょっとクリスマスのロマンス、的なお話に読めてしまった。
なんとも不思議な設定のお話。平衡感覚にハンデを持つ元怪盗(?)・現作家と、元FBI捜査官。かつて敵対していた二人が、十年後に再会を果たす。
離れていた間に直接的でない一方通行のあれこれがあり、そこに潜む気持ちを考えれば萌えポイントになりそう。
現役時代に自分を追いかけていたカフェ捜査官に、年に一度だけ留守電を残すノエル。その原動力となるのは自身の著作物で、カフェを笑いものにした謝罪のためだったという。そんなノエルを訪ねてきたカフェも、ありもしない犯罪をでっちあげていて回りくどい。
二人とも設定を捻りすぎていて、ただでさえ面倒な立ち位置と関係性がさらにこんがらがってしまっていた。
ちょっと素直になるだけで、すんなりカップル成立。ラストの締め方がとても好き。また都会の街並みや田舎の風景描写などが生き生きしていて良かった。
文庫化された「So This is Christmas」内に、後日談SSが載っていた。こちらも終わり方が最高。
短編なのでサラッと読めます。
怪盗とFBIのお話。
探り探りの雰囲気、二人の距離感や空気がすごく良かったです。
設定がわりとモリモリで、やや置いてけぼりになってしまいました。
短編集の『So This is Christmas』に、こちらの作品と、その続編のショートストーリーが収録されています。
短編集には『アドリアン・イングリッシュ』の番外編と、短編の『欠けた情景』が収録されているので、そちらを未読かつ購入予定の方は、短編集の方で購入することをオススメします。