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yogoto mitsu ha shitatarite
リンクスロマンスから出ていた清澗寺家シリーズの文庫化第2弾。
1冊目の「この罪深き夜に」から読んでもいいですし、1話完結なのでこちらから読んでも問題ありません。
没落貴族清澗寺家の次男で色狂いと噂される和貴と穏和な好青年の同僚・深沢の物語。家を憎んでいる和貴は深沢の誠実さに苛立ち、彼を使って一族を滅ぼして罪悪感を与えようと、深沢を一族に迎え入れます。しかし深沢はただ穏和なだけの人物ではなく……という話。
1冊目に引き続き大幅に加筆修正とのことで、こちらも読んでいてあくの強さが抜けて読みやすくなったと感じました。とはいえ、売りの濃厚な調教エロのエロさは健在で、それどころか濡れ場にあちこち加筆されてさらにいやらしさが増していたのには驚きました。
深沢の手によって和貴が心身共に追い詰められているところは苦しくなりますが、深沢の和貴に対する強い愛情と執着が透けて見えるようになっているので、不安はありません。
ただエロいだけではなく、和貴の繊細な心の動きがこの作品のメインだと思いますが、読み返すたびにそこに共感してしまいます。愛情を知らず好きな人に素直になれない、強がってしまう和貴には、深沢がいなくてはだめなのだろうと思います。
20ページほどのSS書き下ろしは「初体験」。これまでシリーズを読んでいて気になっていた部分が払拭されました。密かに「初めて」にこだわる深沢が可愛く、またいろいろなプレイスタイルを知っているのだと感心しました。
表紙イラスト等は新書と一緒ですが、デザインが一新されて今風になっています。
いくら時が経っているからといってこんなに少ないレビュー数なの!?
そんなことあっていいはずない!!!!
と騒がしいのはここまでにして、大好きなシリーズの推し編。
堪能させていただきました。
もうね、これはね、説明なんていらない。
読んでとことん感じてくれ、としか言いたくない。
この二人だからこその仄暗くもとろけきった愛。
抱くんじゃないです、犯すんですよ。
傍から見れば酷いとしか思えない現場も当人からしたらめっちゃラブラブなんですよね。
この破滅的な愛を与えられるのも受け取ることができるのも深沢と和貴だけ。
唯一無二の二人のお話だと思える。
この厄介な関係はしっかりした掘り下げ、書き込みがないと心に響かないと思うんですよ。
これも巧みな和泉先生の文才あってこそ。今回も光っています。
願わくばドラマCDも聴いてほしい。
深沢を小西さん。和貴を野島健児さんが見事に演じてくださっています。
CDから原作の順だった私は脳内で音声再生できて最高でした。
聴きすぎてこにたんとノジケンが結婚している、って言われても「なにを今更」って思っちゃう。
それくらい全てがベストカップルです。
尊い…
三男編でも会えそうなので楽しみです。
新書版が2003年、文庫版が2015年発売とのことで、文庫版ですら発売から8年経っている2023年にレビューさせていただきます!
電子版は新書の内容なので、加筆修正や書き下ろしSSを堪能したい方はこちらの文庫版がお勧めになります(2023年7月現在、通販や和泉先生が出店されている共同書店でサイン入りの書籍も購入できる状態です ※いつまで継続されるか不明のため、作者さまの公式サイト等をご確認ください)。
新書版と文庫版を読み比べてみると、後書きにもある通りセリフにはほぼ手を加えておられず、地の文の加筆修正が目立ちます。
特に受けである和貴のモノローグ加筆が印象的で、彼の繊細さや極端な自己否定が読者にも伝わって切なく…。
鳩やブランコを擬人化(?)して『綺麗な妹』と『汚い自分』を比較するのは「鳩やブランコはそんなこと考えないよ!!」と若干面白く、しかしながらそこまで思い詰めざるを得なかった境遇が可哀想で可愛いとつい攻め目線になって読んでしまいました。
こちらの作品は初読だけで終わるのではなく、最初から読み返すことで「この時の攻めはどんな気持ちで受けの言動を見ていたんだろう(ニヤニヤ)」と楽しめるのが『謎解き後に読み返すミステリー小説』のようで大好きです!
加えて続刊でも出番が多いカップリングのため、シリーズを最後まで読み終えてからこの巻に戻るのも様々な発見があって最高の読書体験ですね。
まだ文庫化されていない巻の文庫化や、正規手段では入手困難となっているドラマCDの配信版リリースなどを心から待ち望んでいます……!!