ねぇ、今——弟のこと、考えてた?

青を抱く

ao wo daku

青を抱く
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神42
  • 萌×236
  • 萌22
  • 中立3
  • しゅみじゃない9

--

レビュー数
17
得点
423
評価数
112
平均
3.9 / 5
神率
37.5%
著者
一穂ミチ 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
藤たまき 
媒体
小説
出版社
KADOKAWA(メディアファクトリー)
レーベル
フルール文庫ブルーライン
発売日
価格
¥700(税抜)  
ISBN
9784040676807

あらすじ

静かな海辺の街で暮らす和佐泉は、毎朝の日課で海岸を散歩中、ひとりの男と出逢う。少し猫背の立ち姿、振り向いて自分を映した黒目がちの瞳――叶宗清は、海での事故以来、病院で2年間目覚めないままの弟の靖野に良く似ていた。旅行中だという宗清の飾らない人柄を疎ましくも羨ましく、眩しく感じてだんだんと惹かれていく泉。だが泉には、同じように好意を寄せてくれる宗清には応えられないある秘密があって……。

表題作青を抱く

外資系スーパー勤務,26歳
テクニカルライター(メーカー勤務),26歳

その他の収録作品

  • 青が降る
  • あとがき

レビュー投稿数17

静かに深く 青に染む

今月出たばかりの『世界のまんなか』は、ジェリービーンズみたいに
カラフルでポップな作風だったが(百味ビーンズ風に胡椒味もあり?w)
こちらはまた色合いの違う作者の世界。

WEB連載で読んでいた時から、後半じわじわと涙が溢れたが
再度本を手にとって一気に読むと、その味わいはさらに深く
読後、潜水した世界からなかなか戻って来られなかった。

      …      …      …

東京から4時間、海辺の町。
泉の4歳下の弟・靖野(しずの)は、2年前海で溺れそのまま目覚めない。
飛び込みの選手で潜水のエキスパートだった弟は
なぜこんなところで溺れたのか……?
靖野の介護のために、在宅勤務に切り替えて実家に戻り
いつ終わるとも知れない閉じた日々を淡々と過ごしている泉の前に、
ある日弟によく似た面差しの宗清が現れる……。

透明な世界だけれど、見通しも身動きもつかないような
そんな不思議な感覚で読み進めるうちに段々と話に引き込まれ、
いつしか物語の大きな波に飲み込まれていく。


宗清が携えてきた秘密、泉が抱えていた苦悩、
小さなやりとりを重ねながら、少しずつ近ずいていく二人。
二人が惹かれ合う宿命的な必然。

どこか憂いを帯びて丁寧に生きる泉と、
おおらかだけれど繊細な優しさを持つ宗清。

泉の抱えていた苦悩の原因は、なんとなく見当がついたのだが
その後の展開は想像を越え、物語は最後奇跡のように着地する。

「所詮おはなし」という言葉で
カタをつけてしまうこともできるかもしれない。
そもそもの発端になった過去の出来事に対する
意見もさまざまかもしれない。
それでも、この物語は美しい。

善悪や常識では割り切れない人の想い、
家族にとっての血のつながりと共有した時間の意味、
セックスも含めた肉体を持った人間の、暖かさ愛おしさ、
そして切なさ。
そんなものが、作者一流の情景の描写や会話、印象的なモチーフを通じて
細やかに積み重ねられていく。


BLとして読んだ時に、評価が分かれる作品かもしれないとは思う。
でも私にとって彼らが求め合う様は、萌えを超えた萌え、
これは紛れもない純度の高い恋愛小説だった。
……神としか評価しようがない。

   「俺は、自分だけのためにこの人を好きでいていい。
   何も残らない。でも覚えてる。一人になっても覚えてる。
   そして歩いていく。」

      …      …      …

書き下ろしは、数ヶ月後東京にて。
再度それぞれの人々の優しさに涙し、
巡り会い共に生きる二人の交歓に、心満たされて本を閉じた。



*最後にボソッと……
 藤たまきさんは、好きな漫画家さん。
 挿絵も悪くなかったのだけれど……
 最後までイメージが微妙にずれた感覚が拭えなかったのは
 先にwebで読んでいたのが災いしたのか……

17

minika

*最後にボソッと
に、賛同です。私もたまきさんの絵もマンガもスキなのですが、
表紙の宗清は大人なイメージが強く、ちょっとズレていた気が
しました。作中の挿絵では少し安心しましたが。
つぶやきにコメント失礼しました。

情景が目に浮かびます

都心から少し離れた海辺の小さな町が舞台。
何度も出て来る、波が打ち寄せる砂浜。
その砂浜を散歩しながら、ごみを拾うのが泉の日課。
そして、弟が事故に合ったのも同じ海で・・・
人の命をも簡単に奪おうとする海、だけど見ているだけで
心穏やかにしてくれるのも海、2人が出会ったのもこの海で・・・

主人公泉と海で事故に合って植物状態の弟靖野
そして、泉たちの暮らす海辺の町へショートステイしている靖野に良く似た宗清。
この3人の関係が、このお話のカギとなって
読み進めるほどに、何とも言えない虚しさや苦しさ
そして逆に、ホッとする気持ちや嬉しくて泣きたくなるような気持ち
様々な感情に動かされる内容でした。

最初海辺で出会った泉と宗清。
読んでいくと、お互いを微妙に意識する2人。
簡単には恋人と呼べる仲になる雰囲気ではないんだけど
何か見えない糸でかなり強く結ばれているような・・・
そんな風に感じさせるエピソードがたくさん出てきます。
2人共、人には言えない心に秘めた何かをずっと1人で抱えてきて
それを打ち明けられるほどにお互いを必要とするまでを
とても丁寧に、表現されていました。
ほんの1か月くらいの時間、泉と宗清は一緒に過ごしますが
その中で2人の心の中を交互に覗き、ハラハラしたりじれったくなったり
楽しませてもらいました。

この2人と2年もの間眠り続けている4歳年下の弟靖野。
この3人が恋愛も含め、とても複雑な関係を持っています。
最後に「そういうことだったのか・・・」ときっと思います。
泉が驚くほど靖野に似ている宗清・・・
その謎となぜ宗清がこの町に来たかがつながるとスッキリしますよ。

何もかも受け入れて、そして心を解放した泉と
泉を想い続けた宗清が愛を確かめ合うシーンは
すごく2人らしいというか、ちょっと泣けてしまうほど良かったです。
Hの最中宗清は「泉っ」て呼ぶんだけど、
泉は抱かれている時も最後まで「叶さん・・」なんですね。
それがとても泉らしい感じがしました。
同い年なのに、いつまでも敬語感が抜けないのも泉らしくて・・

泉の想い、宗清の想い、そして眠り続ける弟の想い・・・
その全部が明らかになるとき、軌跡は起きるんですね。
号泣・・・というより
うっ・・良かった・・・ぐすっ・・・と泣けました。

「世界のまんなか」とはまったく雰囲気の違うものですが
前回に引き続き素敵なお話でした。
もちろん神で・・!!

7

物語の糸を引く

ある目的があって海辺を歩いていた攻めの宗清、目的を見失いかけた儚げな声で宗清を呼び止めた受けの泉。出会いまでの複雑さと恋に落ちるまでの優しい掛け合いに涙が出ました。
泉と宗清、それぞれの家族、幼馴染、と一穂先生ならではの広い世界観で二人にとっての大きな転機が描かれています。

一穂作品って登場人物が多いように思います。しかもそれぞれが物語の鍵を握っている。何重にも交差する登場人物たちの想いが、二人の結びつきをより強く、くっきりと浮き上がらせていたのが印象的でした。
「青を抱く」というタイトルも物語の糸を引いています。泉と宗清の会話は最後まで堅いような気もしますが、合間にのぞくくだけたやりとりに“らしさ”を感じました。

余談ですが、フルール文庫の文字組み(16行×38字)が好きです。ザ・文学という雰囲気が引き立てられていませんか。他文庫よりゆるやかな文面がこの作品にも合っているような気がしました。

4

ネタバレなしで読んで欲しい

いやいや、さすがの一穂さん、あっぱれ。

何もない海辺の街に、東京からふらっと旅行へきた宗清と、海の事故で意識不明の弟を2年間看病している泉。

2人が親しくなるにつれ、少しずつ明かされる事実。無関係に見えた糸が紡がれて…。

真実が明らかになったとき、あぁーといろいろ納得できました。

もちろん物語なので、いやいやそんな都合よく、という突っ込みもほんの少しありますが、そんなの問題じゃないぐらい読後感がいい!

最後の最後に、宗清の運転免許証の謎だけは笑いました。

海辺の情景が浮かんで、とっても素敵なお話でした。

4

かなり思い切った設定

設定がこの先生でなかったら、読めないくらいぶっ飛んだ設定で驚いた。
ネタバレはしないが、初めて読むのを投げようかと思った。
最後まで読んだのは、心情や描写がよかったから。
いつも思うのが、男男の設定より男女の設定の方がしっくりくる。
読み手を飽きさせない展開。
イラストを担当された藤先生も病気の描写が他人事とは思えなかったと書いてらっしゃるように、細々した設定に読まされた。
難しいけど、評価は神評価にします。

1

青を抱く

海の事故で2年間、意識不明の弟を持つ泉。
ふらりとその海に滞在しにきた宗清。
泉の弟に瓜二つな宗清とたまたま出会い、少しずつ近寄っていく。
泉の家族が献身的に弟を看病していて、事故の理由はわからないまま話は進んで。
宗清は泉に惹かれ、泉も宗清といるのは嫌ではなく。
終盤、驚く事実がわかりすごい話やなぁと。
泉のお母さんがある人にいう言葉がすごく心に残って。
それはとても冷たい表現かも知れないけれど、ぐっときた。
楽天的な話では無いけれど、暗くなり過ぎず、のめり込んで読みました。

0

評価に悩む

一穂さんらしい、爽やかな読後感の作品でした。

思わず風景が目に浮かんでくるような緻密な描写に、「へ~」と思わず感心してしまうトリビア。出てくるキャラたちがみんないい人たちばかりだし、そこかしこに撒かれた伏線を上手に回収しながら進んでいくストーリー。

出てくるキャラもみんな魅力的でした。
真っ直ぐで、苦労も知っているため人に対する思いやりも持っている宗清。
弟が海難事故に遭い、そのまま2年間目を覚まさないため自分の事は二の次で生活している泉。
表面上はそれだけなのだが、でも実はお互い深いところに秘密や葛藤を抱えていて。

ストーリーとしては二転三転する事実や両親たちも巻き込んだ壮絶な過去が展開され非常に面白い。面白いのだけれど、どうしても「ご都合主義」的なところが目について仕方なかった。
宗清と泉が出会えた奇跡や、二人の関係が、「リアルならこんなにうまくは行かないよね」とどこかで感じてしまう。

それに泉のお父さんが良い人すぎちゃって、それもちょっと嘘くさいというかなんというか…。そんなにできた人、いる?と思わずにいられなかった。

靖野も事故に遭う前に泉に告げた告白。あの気持ちを、事故から目覚めたあと、どうやって折り合いをつけたのかが分からなかった。泉が葛藤して、悩み、苦しんでいたそのことこそ、きっちり話をして気持ちの整理をつけるべきで、そこがストーリーのキモじゃないのかな、と思ったのですがその点をするっと流されてしまったのが残念でした。

がしかしそれでも泉と宗清、弟の靖野の関係は話としては非常に面白かったし、ストーリー展開の上手さは流石としか言いようがなかった。
ので評価に悩むのですが、☆4つで。

7

いい恋愛小説を読みました。

気持ちいい恋愛小説を読んだなという感想。
男女の話でも成り立つのかなとも思ったのですが、
これはやはり同性間の話でないと書けなかったなと。
それは、ただ血の繋がりのトリックだけではなく。

このお話は普通の同性間の恋愛小説といってもいいかも……
と、思っていたら、最後に濃厚なBL的展開が待っていました!

泉の心情が丁寧に丁寧に描かれていて、でも泣かされたのは宗清の方でした。

文章が、良くも悪くも一穂さんで、
擬音や、景色、心情の表現の仕方が独特だなと。
時々BLを読んでいて「これ、作者は誰だっけ?」と、
表紙を見返す時があるのですが、一穂さんの文章にはそれが無い。
時々引っ掛かりつつも、最後まで読ませてしまうのは流石です。

途中、泉がどちらを選ぶのか、はらはらしつつページをめくらされました。
そういう意味で、靖野の心情にももう少し突っ込んで欲しかったかな。

でも、清々しく読み終えたので「萌×2」

3

海辺の街の情景が浮かぶ、雰囲気ある小説。

良い意味で雰囲気小説だと思いました。海辺の街。病院でずっと目を覚まさない、泉(受け)の弟の靖野。靖野の目覚めを献身的な介護で待ち続ける泉と、泉の前に現れた、靖野によく似た旅行者の宗清(攻め)。
情景が浮かぶような描写が多い、雰囲気たっぷりの小説です。

靖野の事故に隠された秘密や、どうして靖野と宗清がそっくりなのか、という謎が少しずつ解き明かされていく。

大きな『謎』が常に居座ってはいるんだけど、泉と宗清の関係を進めるのは驚きの展開の連続とかではありません。それぞれに秘密を抱えるふたりが楽しんでいくのは、小さな非日常を一緒に経験すること、会話を重ねて相手を知っていくこと。ページを繰るごとに関係性がゆっくり進むようで、フルールのwebサイトで読んでいたときは続きが待ち遠しかったな。

一方で謎解きの方は、ちょっとむりやり整合性を持たせてる感があったかな。『謎』に向かってどんどん読者の期待が上がっていく小説の場合、『真相』でその期待にばっちり答えるのって難しいですよね。そういう意味では、ご都合主義も個人的には許容範囲内でした。

エッチはふたりの想いが通じてから。最後にドッと、っていうのも個人的には良かったです。本編ではけっこうツンだった泉(宗清はそのツンに萌え萌えのちょいMでしたが)ですが、付き合ったら一途に熱っぽくなりそう。長持ちカップルの予感がします。

2

『青が降る』をじっくり読んでほしい

一穂さんの作品は、色で入ってくる作品が多くて(自分の頭の中にという意味で)その中でもこれは特に色の感覚とか視覚的なインスピレーションを強く受ける作品でした。
結末というか真相?の部分には少し驚いて、『まさか一穂さんが~?』と思うところもあったんですが、それを呑み込んで『青が降る』を読み進めたところにもっと深い真相があったので納得して、読後感も格段に良くなった。それはもしかしたらサラッと読んでしまうと到達できなかったかもしれない。単に私の力不足ですが。
ネタバレ?になるので、未読の方でもしお嫌であれば一旦読むのをやめていただきたいのですが。。。。。

事故直前の件をなかったことにして普通の兄弟に戻ることが、兄が自分に捧げてくれた時間に対して弟として返せる唯一のことだった。
結局は忘れていなかった。
宗清の質問に靖野が答える形でその話をして、「この話も明日には忘れると思う」と言う。宗清も「ああ、俺も」と言う。一瞬にしてお互いが悟った「本当の兄弟であり他人としての暗黙の了解」。それで「今」の靖野の気持ちは?
実は1度目に読んだ時にはここまで考えられなくて、「ふんふん。ん?」という感じで先に進んでしまったんですね。でも読後どうしても気になってこのシーンに戻ったんです。そこで「そういうことか~」と。この危うさというかお互いが結局敢えてうやむやにした「色々」をようやく考えた。
一穂さんの作品はたまにこういうことがあって、私自身の力不足で、一穂さんの力を全部受け止めきれてないんじゃないかと不安になって読み返すことがあります。。。すみません。
「口にしないこと」の美しさをこうやって教えられているのに、自分の行動には反映されない。もどかしいです。どうでもいいけど(笑)
一穂さんにしては比較的長めで濃厚なエッチシーンも好きでした!


2

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