ココナッツ
owari no 3gatsu de kimi wo matsu
高校三年、卒業式当日。
制服のボタンのやりとりだとか、そういう些細なことで不安そうな及川を見て、この二人の強弱は相変わらずなんだなぁなんて思ったり。
一緒の大学へ進んで、一緒に住んで、これならずっと一緒の道を歩めると思っていたのはまだどこか子供だったからなのかな。
そんな二人に現実は容赦なくて…
タイトル通り、二人の三月だけに絞ったお話になっています、
交わったと思ったらまた離れていく道に、お互いがお互いを思って離別するのが本当に読んでいて辛かった。
その辺りはすごく台詞が少なくて岩泉のモノローグ中心なんだけれど、及川の方の身を切られる辛さも絵だけで充分伝わってきました。
なんというかやっぱり同じ世界に身を置くって、ライバル意識や羨望や嫉妬が必ずどこかにあったりしますよね。
それプラス及川の場合は、実力差のある岩泉への遠慮や気遣い。
そして岩泉の場合は、自分がいつか及川の足枷になり彼の行く道を邪魔することは耐えられなかった。
そんな二人には、離れてまったく違う世界に身を置き、個々に成長する時間が必要だったのかなあと思うと仕方ないのだけれど、でも岩ちゃんアドレス変えるとか無しで〜(涙
及川は変えることが出来なかったのにね。
そういう点では及川の方がやっぱり依存というか、弱いのかな。
『いつか』という希望に縋っていたいと思ってしまう。
でもそんな及川相手だからこそ、岩泉は駆け寄って行けたんだと思う。
及川は弱いけれど、岩泉への想いは強い。
そのアンバランスさを幼馴染みの岩泉は良くわかってるのだろうと思います。
作画が激しく崩れたりもせず、ストーリーももの凄く練られている。
二次とはいえ、一ノ瀬さんの底力を感じた一冊でした。
及岩が好きな方で、もしまだこの同人誌を読んでいない方がいたら、
ぜひ読んでほしいです。
ふたりの辿る道がものすごくリアルに思えて、
だからこそ感情を入れ過ぎて、
途中うまく息ができなくなるほど胸が苦しかったです…
でも、最後はちゃんと幸せに満ちたふたりを見届けられて、
こんなにも想いを揺さぶる作品に出会えて、とても幸せだと感じます。
このお話は、3月だけが描かれて進んでいきます。
そして現在半分ほどのページを、
一ノ瀬さんのpixivで読むことができます。
青城高校3年生、及川、岩泉、卒業。
でも、及川と岩泉は卒業後は同じ大学に進んで、同居予定。
今までと変わらない日々が続くと思っていた、高校生最後の3月。
それから1年後、
ふたりの道はすでにもう、少しずつずれている。
大学バレー部、1部リーグで活躍する及川。
努力しても、その場所に届かない岩泉。
高校時代はチームメイトとしても誰よりも近い存在だったふたりが、
一緒に組んで練習することもままならない。
更に1年後、もうすぐ大学3年生になる春。
就活をすると当たり前のように言う岩泉に、及川の感情が溢れだす。
そして気持ちを絞り出すように告白する及川。
でも「すきだよ…あいしてる…」の言葉をもってしても、
バレーから離れていく岩泉を引き止められないことを、
及川はよく分かっている…
だからこそ続くのは、同居解消の言葉。
今のまま一緒にいても、
自分も相手も、深く傷つだけだと互いに分かっているんでしょう…
このまま離れてしまう流れを、どちらも断ち切らない。
でもそれは、どちらにとっても半身を失くすほど辛いはず…
別々の部屋で、それぞれ苦しそうに泣くふたりの姿が涙で滲みます。
それからまた時は過ぎ、大学も卒業し岩泉は百貨店靴売り場の販売員に。
ただの販売員じゃなくて、シューフィッターを目指しているといいな。
ビシッと着込んだスーツも、接客も板に付いている。
でも、及川とは疎遠のまま。
東京に出て来た花巻に、
及川が練習中に故障したことを聞いても、連絡はまだ、できない…
“ また ひとりの3月が すぎたよ ”
その言葉がさらに、胸を切なさで満たします…
岩泉が及川に会いに行けたのは、大学卒業から3年後…
及川の所属するプロバレーチームが、
怪我から完全復活した及川の活躍もあって、リーグ戦で優勝した日。
(この再会の直前までを、pixivで読むことができます)
試合後の会場で、
ふたりは3年ぶりに互いの姿を見ますが、
沢山のファンの女の子たちや及川のチームメイトに邪魔をされ、
選手は会場を出る時間になり、近づくことも叶わず。
この時の、必死で岩泉と話をしようとする及川の姿が胸を打ちます。
そんな及川の元に、
「優勝おめでとう」と岩泉からメールが。
そしてそのメールをずっと下にスクロールすると現れたのは、
「本当はあの時言いたかった 俺も好きだ。」という言葉。
そしてその後、時と場所を変えて、改めて再会するふたり。
嗚咽と共に途切れ途切れの言葉で、
別れたあの日、どうして想いを伝えられなかったのかを吐露し、
強く強く及川の身体を抱きしめる岩泉。
ふたりで一緒に涙を流して、
その後、唇も身体も繋げる姿が描かれます…
最後にいるのは、頭を寄せ合って眠る幸せそうなふたり。
きっとどんな未来があっても、心は決して離れない…
そう確信させるあたたかなラストでした。
本が届く前に、pixivで途中まで読んで、
今までずっと一緒にいて誰よりも相手の事が分っているからこそ、
反対に一緒にいられなくなってしまうなんて、
今までのふたりの時間って、一体何だったんだろう?
そう思ってしまって、すごくすごく悲しくて苦しかったです。
でも、
ずっと隣りにいたその深い絆があるから、
別れてから4年も待ってられてたし、信じていられたし、
離れていた時間を一瞬で飛び越えられるほど、
求め合う存在だったのだと、本を繰り返し噛みしめながら思えました。
やっぱり、及川さんの隣りには岩ちゃんがいなきゃ…
互いの隣りが、互いの居場所……阿吽だもの、そうじゃなきゃね。
個人的には、すごく辛かった分、
甘いふたりをもっと見ていたかった…っていうのが本音ですが、
それはまた違う一ノ瀬さんの作品と脳内で補完したいと思います。
今までで一番長いレビューになってしまったかも…
長々と読んでくださり、ありがとうございます m(__)m
江名
ココナッツさん、コメントありがとうございました(*^^*)
わたしの長――ーーいレビューを読んでくれて、しかもお優しい言葉まで!
感謝ですm(__)m
この同人誌は本当に素晴らしくて、苦しくなりつつも感動…!ですよね、
同じように感じて下さる方がいると知って、わたしも嬉しいです。
他の一ノ瀬さんの同人誌もココナッツさんがレビューして下さってるのを見て、それもとても嬉しく思っていました。
色んな方の目にとまって、手に取るきっかけになるといいな。
わたしもいつか、他のレビューも書けたらと思います。