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elevator
古い作品ですが、かけあい漫才のような会話が楽しいです。
芳崎さんの「永田町〜」をずいぶん前に読んだことがあって、ポンポンやり合う会話の軽妙さと世界観に「こういうBL 作品もあるんだ。面白いなあ」と思ったものですが、こちらも本当に面白かったです。
同じ会社に勤める永島と津野。
エレベーターで会う度にガン見してくる津野のことが気に入らない永島は、ある日意を決して声をかけるが…。
という始まりで、出会い→告白→デート(?)→プロポーズ→同居とエレベーターが階を上がるようにステップアップしていく2人の関係が描かれています。
絵柄は古いのですが、本当に話が面白い!
1話ごとの長さは短いのだけれど、その短い中に起承転結がテンポよくきれいに収まっているのもポイントが高いです。
見ただけで話もしていないのに相手の内面が分かるという津野。
疑うことを知らず、すぐに騙されてしまう永島。
2人の基本情報だけを見ても津野が何枚も上手なのは明々白々なのですが、永島もやすやすと津野の策略に流されるほどのお人好しではなくて頑固者。
この頑固な部分を1話ごとに解きほぐす感じが、見ていて心地良い2人の関係を生み出してました。
自分のテリトリーに引き込んでしまえばこっちのもの!家に入った途端に野獣!という作品も多い中、この作品は最後までえろすなシーンは出てきません。
ネタバレしてしまうとキス止まりです。
だけどいいのです。
「どうしてオレは同居したんだろう?」
「どうしてオレの中で津野は他のやつとは別物なんだろう?」
「どうして他の人と写っている津野の写真を見て、こんな気持ちになるんだろう?」
自分の中に生じた疑問に一個ずつ答えを出していく永島を、ただ見守る津野。
だけど相手の内面が分かる津野には永島の変化も伝わっていて、だから焦って手に入れようとはしないのです。
一過性の相手ではなくて「生涯の伴侶」にしたいからこそ、体ではなく心を攻略していく。
周到に種まきをして、育つのを待つような津野の辛抱強さも見ものです。
「えろすはなくていい。ただ心が惹きあっていくさまが見たい」という方、
「強引な攻めに性的にではなく心情的に、絆されるのではなくてきちんと恋に落ちる受けが見たい」という方、
あなたの求めるものはこちらです!!
1ヶ所、津野が津転になっているところがありました。
津軽じゃなかった、惜しい!
同時収録は電車の車掌さんの恋の話で、こちらは切ないけれどよくあるパターンでした。