amazonの電子書籍版です
trade
今のところ電子書籍限定です。私はRenta! さんで読みました。
「完結」とは書かれていませんので もしかしたら続くのかもしれない...と思っていましたが、作家さんが第6話を「最終話」と表現しておられたので このままハッピーエンドです。
良かったです。幸せそうな主人公の二人の間に 波風を立てないであげて欲しいな と思っていましたから。
権力者の愛人の立場であった美しい青年が 運命のひとと出会って本当の愛を知り... というお話です。
美しく繊細なタッチの絵柄で、主人公二人の表情も 切なげな愁いを帯びています。
高校時代に両親を事故で亡くした田村愁は、彼の才能を見出した美大の教授を頼ることとなります。
教授は未成年の愁の後見人となり、絵の才能を伸ばせる環境を整えてくれたまでは良いのですが、愁の身体をも求めるようになります。
愁は教授に愛情があった訳ではありませんが、恩人ですし、教授の望む通りにしないとまた「独り」になってしまうという恐怖感から、それと... 教授の庇護下にいれば、自分の作品に対して強力な後押しをして貰えるという 少しばかりの打算から、身体を求められても拒めずにいました。
けれど いろいろ嫌になってきて逃げだします。
教授の愛人などという立場でありながらも心根が美しく、ぜんぜんスレていない愁。一方的に与えて貰うことを良しとせず、きちんとお礼も言える青年です。
一度は抱いてくれたものの、その後 全く自分に触れてこない佐伯さんに不安を覚えます。
もともと佐伯さんはノンケだったのだから、本当は自分とあんなことをするのはイヤだったんじゃないか、と。
佐伯さんが好きだという気持ちを伝えることも躊躇います。
新幹線で隣りの席に座っていた愁を なりゆきで保護したサラリーマンの佐伯涼。
佐伯さんは両親の愛情をあまり感じられずに育ち、他人に対して興味が薄いまま大人になってしまいました。
けれど 愁と一緒に暮らすうちに様々な感情が芽生え始めてきたことを自覚します。
愁を好きになりつつあることみも気づきますが、彼は誰とでもすぐ関係を持つのか、自分が特別な訳ではないのか、と苦しみます。
お互いに言葉が足りません。二人とも訊きたいことを訊けず、誤解したまま煩悶しています。じれったいです。
そんな二人が岐路に立たされます。教授に居所を見つけられてしまうのです。
感情をぶつけ合い、話し合い、いろいろ... いろいろあって、愁は晴れて自由の身になります。
教授がもっと粘着質なタイプで、愁のことは絶対に手放さない!と執着を見せたらどうしようかとハラハラしました。
教授がゴネたら もっとドロドロ愛憎劇に発展していったかもしれませんので、ある意味、このお話の方向性を決定したのは教授の性格だったと思います。
きっと愁の身体が目的で後見人になった訳ではなく、元々は本当に純粋に絵の才能を伸ばしてやりたかったんでしょう。
ただのエロジジイかと思いましたが、大人の対応ができるところを見せてくれました。