恋を綴るひと

koi wo tsuduru hiro

恋を綴るひと
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神44
  • 萌×227
  • 萌18
  • 中立2
  • しゅみじゃない7

--

レビュー数
17
得点
384
評価数
98
平均
4 / 5
神率
44.9%
著者
杉原理生 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
葛西リカコ 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
価格
¥600(税抜)  
ISBN
9784199007446

あらすじ

…「俺の魂の半分は、竜神の棲む池に沈んでるんだ」
  人嫌いで、時折奇妙なことを呟く幻想小説家の和久井。
  その世話を焼くのは大学時代からの親友・蓮見だ。
  興味はないと言うくせに、和久井は蓮見の訪問を待っている。
  こいつ自覚はないけど、俺が好きなんじゃないのか…?
  けれどある日、彼女ができたと告げると、態度が一変!!
  「小説の参考にするから彼女のように抱いてくれ」と求められ…!?

表題作恋を綴るひと

蓮見徹,20代,医療系システムエンジニア
和久井柊一,20代,幻想・官能小説家

その他の収録作品

  • 恋の刺
  • 恋を綴る人
  • あとがき

レビュー投稿数17

竜が棲む池、竜に盗られた心

攻め視点の「恋の棘」、受け視点の「恋を綴るひと」の2編構成。
前半の「恋の棘」は比較的あっさりと読めたんだけど、後半の表題作は何というか…
しんとして、
さびしくてほの暗くて、
息がしづらくて。


「恋の棘」
もちろんシリアスで切ない、といえるけれど。
変わり者の友人に、付き合っている女性にしている事と同じ事をしてほしい、と言われてヘンな雰囲気になっていく…
というのはどこかトンデモのにおいもするわけで。
思わずキス、忘れられずどんどんおかしくなる感情。

「恋を綴るひと」
蓮見にしてみれば、きれいな男に誘われて、腕の中で乱れられたら。
もう恋人同士っていう感覚で、和久井の家に通いますよね。
しかし、この受け視点の内容が始まると…
和久井側の感情/内面は、全く甘いものではない。
彼の抱え込んでいる内面、それは子供の頃からの色々な「可哀想さ」に満ちていて、蓮見が惑わされた「同じようにしてほしい」という願望には何の恋愛要素も性的要素も含まれてはいなかった。
例えば「恋の棘」内ではサラリと語られた「子供の時は叔父さんと暮らしてた」というエピソード。
和久井の真実として回想されるそれは、深い哀しみに彩られている。
全てにおいてそう。
母の死、父のネグレクト、母の不貞、叔父との距離感、人恋しさ、そして池の竜神への恐怖感と同じだけの異世界への憧憬…
自分が負ってきた全ての不条理、全ての哀しみ。
そんなものは平気だ、大丈夫だ、最後は水の中に沈めばいい。そうやってやり過ごしてきた年月。
それらが蓮見の作り話で全て変容していってしまうのです。
自分でも何がどうなっていくのか、自分を好きだという蓮見との関係性を見失うのだけれど。
蓮見の一言。「おまえは平気じゃないんだよ。だから俺が必要だ」
天啓のように。

後半の表題作は、繰り返し和久井の心の傷と水に沈めばという心境が出てきて、希死念慮のイメージがまとわりついているようで、何とも薄暗くて息苦しい。
変人をほっとけないオカンと、不能で不感症のコミュ障。
2人の思い込みと誤解から始まった「何か」が、実は恋であり愛である何かであった…
そんな物語。

1

怖い話

読んで痛い。と思う作品は大好物でよく読むんですが、こちらは痛い。より怖い。がより鮮明に描かれていました。
得ることより、得たものを失うのが怖い。


咳をしても一人。
それが安寧だと思ってしまったらどんな幸福も恐怖でしかない

1

仄暗い雰囲気がとてもいい

読み込み型の不思議な話。

攻の蓮見は面倒見の良い、しっかりした男。
大学時代に出会った和久井の不摂生な生活を気にして、時折家に伺い食事を作って泊まっていくという友人関係。
一方和久井は、食事は冷凍食品で一週間人と話さないで篭って執筆している作家。家の近くに竜神が住むと言われる池があり、怖さを感じながらも惹かれている。

最初は蓮見目線。サクサク読めます。
次に、和久井目線。こちらが何とも不思議な感覚が出てきて、和久井の危うさが感じられます。
幼少期の家族関係。男性からのイタズラ。叔父との生活。
苦しさ、寂しさ、辛さを池に沈めて「大丈夫、平気」と自分に言い聞かせて生きてきた和久井だからこそ、蓮見との関係で一番大切な言葉が出ない。
本当は簡単なことなのに、分からない。
恋を恋と認識できない人間が、恋を綴る話です。

2

静寂

風景の描写が素晴らしかった。

蓮見視点では謎が多かった和久井だが、すべての行動の意味を知ってから見ると可愛くて思えてくる。
こういう不器用な生き方しかできないのが切なく、愛おしい。
寂しいことを寂しいと言えず、心の傷を気づかないふりをして池の底に沈めることで自分を守る幼い子供を想像するだけで胸が苦しくなる。

蓮見も自己主張が激しすぎず、大人しい性格だが面倒見が良く、和久井をずっと支えてくれてとても良い友人だと思った。

静かな夜に読みたい作品。

1

静雨の中で

作品全体にしとしとと雨が降っているような、モヤがかった雰囲気があります。
梅雨の時期にぴったりですね。
淡々と、じっくり、静かに進む物語でした。
作品を俯瞰で見ているような…ちょっと不思議な感覚になるかも。
葛西リカコ先生の挿絵が本当にぴったり。

古い日本家屋に1人で住む、どこか浮世離れをしている小説家・和久井と、大学時代からの同期で腐れ縁のような面倒見の良い蓮見。
蓮見視点「恋の棘」と、和久井視点「恋を綴るひと」の短編2作からなる今作。
大学時代のアパートの隣人という関係性から、社会人になってもずるずると周りから見れば奇妙な関係を続けたままの2人が、些細なきっかけから恋人同士のような関係になるまでのお話。

長男気質で世話焼きの蓮見は、大学の頃からアパートの隣人だった生活能力皆無の美しい青年・和久井の事を放って置けず、月に1〜2回、生存確認と称して都心からわざわざ車で40分もかけて和久井の元を訪れ、せっせと料理を作っては世話を焼く。
どう考えてもある種依存のような関係性で、周りの友人達も言うように、当に友人の域を超えているように思うのだけれど、本人ばかりが気付かないのです。
「相手はきっと自分の事が好きなんだろう」と思い込み、それに対して心地良さすら感じているというのに自身の感情には疎い2人。
相手の出方を探るというか、非常に厄介な両片思い。
もどかしい2人の距離を縮めていく小さな嘘。
嘘をきっかけに蓮見はようやく思いを自覚するものの、それより先に和久井の方が自らに寄せられる蓮見からの好意に気付いていたというのが良いですね。
蓮見はきっと一目惚れだったんじゃないのかな。

攻めの蓮見視点の前半では、和久井の世捨て人のような掴み所の無さに、蓮見に執着しているのは分かるものの、彼が何を考えていてどういう人間なのかが読み手は全く分からない。
ところが後半の和久井視点になると印象がガラッと変化します。
広すぎる玄関の板の間で死体のように眠りながら蓮見を待っていた和久井。
蓮見視点だと「変わり者」なのだけれど、和久井視点でこのシーンを読むと、なんと言うか、いじらしくて可愛くなってしまったりもする。
この和久井という人間がただの変わり者ではなくて、過去の出来事や生い立ちから、その中身は思っていたよりも複雑でぐちゃぐちゃとした重たいものが詰まっている人でした。
一言で言うのならば闇が深い。
愛情を知らず、与えられず、自分に「平気」「大丈夫」と言い聞かせて1人で感情を仕舞い込んで育った和久井は、大人になった今でも自分が何が欲しくて何が分からないのかが分からない。
蓮見に対する執着は凄まじいと思うのだけれど、その気持ちに付ける名前も分からないのです。
だから、ただ蓮見についてを記録として綴る。
大学生時代の、感情が動いたあの日からずっと続けている。
ノートをつけ始めた理由に気付いた瞬間の和久井に愛おしくなってしまう。
ノートだけではなく、和久井視点のすべてが蓮見への壮大なラブレターのようにも感じました。
ラストまで読むと「恋を綴るひと」というタイトルが妙に美しく、しっくり来る。
とても好きなラストシーンでした。

読んでいて、すごく繊細で難しい受けだなと思いました。
これは相手が蓮見じゃなければ上手くいかない気がする。
逆を言えば、蓮見とならきっとこれからも上手くいくのではないでしょうか。

物語全体に漂う独特の雰囲気に馴染めるかどうかによって感想が変わって来る作品かなと思います。
竜神や池の設定は、ファンタジックなものなのか?と思いきやそうでもなかったりして。
うーん、こちらはあっても無くても良かったような気がします。

0

じわじわときます

受けの心象風景として竜神や水の底に沈んでいくイメージが何度も登場するので、まるで揺らめく水の中を思わせるようななんとも不思議で幻想的な雰囲気が作品を包み込んでいます。

前半はオカン気質な攻め・蓮見視点。
後半は受け視点という二部構成ですが、後半が断然良かったです。

というのも、主人公である受け・和久井は一言でいうと不思議ちゃんで、思考回路が解りづらい!!
彼は魂を半分持っていく竜神がいると言われる不気味な池のほとりに住み、いつも死を夢想するような幻想小説を細々と書いて暮らしています。

そんな浮世離れした和久井を見放せず、定期的に訪れては何かと面倒を見る蓮見。
きっと和久井は蓮見の事が好きなんだろうなぁと思っていたし、蓮見自身もそう思ったのだけど、きみとはそういうつもりはない、ときっぱり言う和久井。
負け惜しみとか、ツンデレとか、意地っ張りとかそういうのではなく、あっさりとただそう言う。

蓮見に対しての独特の執着はちらちら見えるくせに、それが「好き」には繋がっていない様子にただただ面食らうのが前半部分。

だけど和久井視点に切り替わった後半で、「俺の魂の半分は、竜神の棲む池に沈んでるんだ」と事あるごとに呟く和久井の内側が少しずつ見え始めます。

「辛い気持ちは池の底に沈めてしまえばいい」とかつて一緒に暮らしていた叔父から何度も言い聞かされて育った和久井少年。
だから封印したい記憶は全て池の底に沈めて生きてきた。
そしていざとなったら水の中へ…と水に沈んでいく自分を想像する事で生を実感している。
周囲の事には鋭い観察眼を持ち合わせている一方で、己の心は沈めて生きてきたせいで、自分のことは何一つわかっていない。

溺れていることにすら気づかず静かに死にかけているような和久井。
そんな彼に向かって、蓮見がある事をズバッと単刀直入に言うのだけど、そこが物凄く良かったです。
真っ直ぐ差し伸べた手のように感じるあの言葉。

そして明かされる10冊にもわたる「蓮見記録」。
「恋を綴る」とあるけれど「好き」という言葉は一回も登場しない。
だけど蓮見との会話内容や服装、食事の内容など蓮見に関する事が詳細に綴られている。
和久井は自覚していなかったけれどそこには確かに和久井の恋が綴られている……
これを恋と呼ばずして何と呼ぶ、そんな気持ちになれる読後感も良かったです。

そして再読すると分かりづらいと感じていた前半部分ですら、何だか愛おしく感じてきてそれもまた良かったです。


残念ながら電子(シーモア)には挿絵が収録されていなかったので、そこが壮絶に無念すぎます!

3

さびしい子供

竜神が棲むという池の近くに住んでいる受けは、まるで霞を食っているのではないかと疑われるくらいに浮世離れしている変人。
そんな変人にロックオンされて、世話を焼く羽目になっている攻め。
前半「恋の棘」はそんな攻め視点、後半「恋を綴るひと」が受け視点という構成です。

内容は、あとがきで杉原先生ご自身が「長年、友人だったふたりが、「作り話」という小さなきっかけによって関係を変化させるお話」とまとめられている通り。
しかし二人の関係が変化する前半よりも、受けのことが明らかになる後半の方が私には強く印象に残りました。
いつも物静かで凪いだ水面のようで、観察眼は鋭いのに物事の受け止め方が普通とは違う受け。
そんな人間がどうやってできたのか、受けはどうしてそんな人間になってしまったのかが明らかになったとき、なるほどそういうことなのかと納得せざるを得ない。
さびしい、悲しい、切ない。でも前半部で二人の関係性が変化していてよかった、この関係があってよかったと心から思いました。

静かに淡々と描かれる心情が重々しい。
しかしだからこそ、何度でも読むに耐える、心に沁みる作品だなと感じました。
静かな作品が苦手な人には向かない作品かもしれません。
でも同じ杉原先生作品の『スローリズム』などがお好きな方にはいいかと思います。

1

ほんとに龍でも出てくるかと思いました

ファンタジー好きなもので、おわ、龍か?と思いきや。
出てきませんでした。★3.5 という気分です。
不思議な印象の漂うお話でした。
この先生って、私の中では男っぽい理論的な文章のイメージ(思い込みだったかも)だったのですが、ふんわり霧の中のようなお話。

受けさんが、親からきちんと認められていなかった
&抱きしめてこられなかったから???なのか
きちんと自己肯定できてない、どうやって人とかかわって
どうやって生きていったらいいのか、
わかっていない自分にすら気付いていないという感じに読めました。
うーん、子供をちゃんと見つめて肯定してあげることって
大切なんじゃんとしみじみ思った次第。
(小説ならではの設定もあるとは思うけど)

ごはん一緒に食べよ と声かけられた時に、
嬉しく思った自分に気付けてなかった攻めさんが、
何年もたってから その自分に気付くところが好き。
おおー 扉があいたぞーという気分。
少しずつ感情を覚えて、ゆっくり二人で歩んでいけるといいね
と幸せになった本でした。

こういうほんわり本が二冊続いたので、ちと評価辛め。
ほんわりしみじみ本がお好きな方はよろしいのでは。
あらすじだけたどれば王道なんでしょうが
とてもとても不思議な不思議な お話でした。
色々読みあきたーという方にもよろしいかと。

1

相性の問題

杉原理生さんの作品はいくつか読んだことがあり、評価の高いものも含まれているのですが…どーも毎回、なんだか残念な気持ちで読了することになります。あらすじを読んで「今度こそ」と思ったこの作品も結局…。

世話焼きの蓮見と変わり者の和久井。大学時代からの友人同士の二人がゆっくりと恋を自覚してゆく物語です。他の作品同様、丁寧に書かれていて、とても優しい物語だと思いました。…思ったんですけどね。

うまく表現できないのですが、自分とは歩調が合わないとでも言うのでしょうか。私が早く歩き過ぎなのか、気づくと物語は数メートル後ろにあって、それが追い付くのを苛々しながら待っているような気持ちになることが度々ありました。

蓮見の静かな情熱や、妙に素直で可笑しみを感じる和久井の言動に確かに萌えたのですが。ま…単純に、あまり相性の良い作家さんではないということで「中立」です。

2

和久井に萌えました。

挿絵の葛西リカコさんが大好きで購入したものの、積んでいました。
最近、小説に手を出し始めたので読んでみたのですが

何故、今まで読まなかったんだ?私よ!

個人的には、今年で最大ヒットきました!去年の作品だけど!(笑)

大学時代の友達同士が、想いを自覚して恋人になる話です。
とにかく受けの和久井が分かり辛い子なのですが、後半の和久井視点で納得。
全てをうちにしまい込んでしまう子でした。
恋愛も何も自分が何処にもいないため、蓮見への想いが何だったか分からなかったという切ないオチでした。
悲しい!寂しい!つらい!と感情を押し付けるよりも、悲しくてもそれが当たり前だから分からない方が辛い気がします。
あ、ARUKUさんの漫画がそうかもしれません。不幸なのに不幸が当たり前だから気にならないみたいな。

でも、最初から二人とも駄々漏れなので、色々あっても心穏やかに読めました。
物語の閉じ方とタイトルが秀逸で、読み終わった後暫く萌えでほわほわしてました。

本当、好みな話しすぎて、未だに興奮しております!
ただ、読む人をかなり選びますね。地味で淡々としたお話が好きな方には、かなりしみると思います。
おすすめ。

5

キリヱ

>ココナッツさん
こんばんは。杉原さんは初読みなのですが、こういう感じの話を描かれる方なのでしょうか。今度、別の作品も読んでみます!
和久井が本当好みで!!
私もまた読んで腹の立たない大人になってきます!※結構短気。

ココナッツ

キリヱさま、こんばんは。
杉原さんらしい派手さのない、そして染み渡る作品でしたよね。
余韻が残るというか。
しばらくは向かっ腹のたたない立派な大人になっていました(^^;;

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