碧のかたみ

ao no katami

碧のかたみ
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神153
  • 萌×224
  • 萌10
  • 中立3
  • しゅみじゃない28

--

レビュー数
29
得点
894
評価数
218
平均
4.2 / 5
神率
70.2%
著者
尾上与一 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
 
媒体
小説
出版社
蒼竜社
レーベル
Holly Novels
シリーズ
1945シリーズ
発売日
価格
¥857(税抜)  
ISBN
9784883864201

あらすじ

昭和十八年。
全盛を誇る南の要塞・ラバウル航空隊に着任した六郎は、喧嘩に明け暮れている戦闘機乗りの琴平恒に出会う。
問題児だが優秀なパイロットの恒と「夜間戦闘機・月光」でペアを組むことになった六郎は、行動を共にするうちに
故郷の家族を守りたいという彼の深い思いと純粋さを知り、恒に惹かれていく。
命の危険と隣り合わせの日々の中で、二人は互いを大切なペアとして愛しく思うように。しかし、ラバウル航空隊にも
敗戦の足音が近づきつつあった。

表題作碧のかたみ

21歳,恒のペアとなる偵察員
19歳,若手随一の操縦士

その他の収録作品

  • 雨のあと
  • 約束の月

レビュー投稿数29

「俺と一緒に、空で死ぬか?」の帯で泣ける

『天球儀の海』も持っているのに、なぜかスピンオフの方から読んでしまいました;

昭和18年。
太平洋戦争真っ只中のラバウル航空隊が舞台の切なく儚い青春BL。

優秀だけど問題児の恒とペアを組むことになった六郎。
優勢から劣勢へ、目眩く変わる戦況。
散っていく同胞たち。
明日生きているかも分からない過酷な状況下で、本土の家族を守るために命がけで戦う空の男たちに、胸が締め付けられる思いでした。

悲惨で過酷な環境なのに前向きで、直向きな恒が魅力的です。
その恒を理解して寄り添う六郎は献身的で健気。
惹かれ合う二人が当たり前のように理解できました。

燃料も弾もないまま出撃する若者たちが悲しくて、最期の手段として選んだ特攻の場面では涙が止まりませんでした。
諦めきれない生への希望。
敵兵に縋ってでも恒を生かしたいという六郎の思いが胸を打ちます。

二人が……というよりも、当時の若者たちに思いを馳せてしまいました。
明らかに劣勢で物資も途絶えて、一体どうしろというのか?
大人たちの理不尽さに腹が立って仕方がなかった。

せっかく理解し合えそうだった同僚・斎藤も還らぬ人となり、本当に悲しかったです。
ハッピーエンドは嬉しかったけれど、それだけでは終われない余韻も残りました。

その後の『約束の月』も泣いた。
青い花火が上がった瞬間……二人が乗っていた「月光」の名がついた花火。
それを見て号泣する恒と、作り上げた六郎の思いを想像すると、また泣けます。
きっと、色んなことを思い出してるんだろうなあ。

2

夢をあきらめる悲しみが胸に迫ります

第二次世界大戦中のラバウル。二人乗りの航空機でペアを組んだ、六郎と恒の青春の日々を描いています。
飛行機をこよなく愛するやんちゃな天才操縦士・恒と、温かくおおらかに恒を支える六郎は、飛行を重ねるたびに信頼を深め、やがて身も心も結ばれていきます。死と隣り合わせの中、命を分け合うように一つになりたいと願う二人に、頷きながら読みました。紺碧の空で命を懸けることに心満たされる若者らしさも、眩しく感じました。

でも、実際にあった戦争が元になっているため、どのような距離感で読んだらいいのか、ずっと迷いました。たくさんの若者が戦死したことを思うと、六郎と恒に共感しつつも、物語に深く浸ることができなくて。
ラバウルは終戦まで自給自足で籠城を続けたそうですから(Wikipedia参照)、飢え死にや玉砕で大勢の兵士が亡くなったほかの戦場よりは、物語の舞台にしやすかったのかな、と考えたりもしました。

物語に強く引き込まれたのは、終盤、敗戦が濃厚になる中で、六郎の胸に戦争の理不尽さがこみ上げる場面でした。人を殺すためでなく、恒を飛行機に自由にのせてやりたい。自分は火薬で爆弾を作るのではなく、内地で修行して、恒のために愛機「月光」の名をつけた打ち上げ花火を作ってやりたい。でも、死にゆく自分たちにそんな未来は決して来ない…。抗うすべもなく夢をあきらめなければならない悲しみが、私の胸にも押し寄せてきて、戦争のリアルを感じました。勝っている時は、戦争の空しさは見えないのかもしれません。
最後の出撃を前に、夕暮れの浜辺で二人が手をつないで星を待つ姿が、とても印象的です。夜になる一瞬に永遠を感じる二人は、前半の生き生きとした様子とは対照的で、静かな描写に胸を打たれます。

偶然が重なり生き延びた六郎と恒は、約八年後に帰国を果たします。六郎が作り上げた打ち上げ花火「月光」を見て号泣する恒の胸にあふれたのは、ラバウルの空を愛機で翔けた日々と戦争へのやるせなさ、死んだ仲間たちへの思いではないかと感じました。この青い花火が、二人にとっての青春の形見なのでしょう。タイトルが切なく胸に響きました。

4

最後はこう来るかー!と。。。

尾上先生の作品は今回初めてでした。たまたまHOLLY MIX で別の小説を読みたくて購入。その中に碧の・・があり、内容が知りたく取り寄せました。読み進むうちに、どんどんストーリーに引き込まれ、一気に1冊読んでしまいました。戦時中の内容であり、しかも明日命があるかどうかも判らない、命を懸けた若者が日本国を守るという使命を持ち、毎日ひたむきに、純粋に生きている。。確かに物語ではあるけれど、実際の太平洋戦争・最前線・ラバウルであればやはり戦争は過去であるにもかかわらず、たくさんの若い兵士が亡くなったというのは事実、心に響くものがありました。
そんな中でも六郎と恒の友情を超えた2人の深い絆に熱いロマンを感じます。ストーリーの所々に出てくる星の話や、花火の話。夜の飛行風景。そしてそれは、六郎と恒と愛機”月光”が飛び回る風景と重なります。訓練の合間に何気なく話した〟降参”という英語が最後にこう来るかー!と。かなりのどんでん返しでしたが、これで良かったのだと安心しました。
最後のほうで、数年後日本に帰国し、花火師として修行した六郎の作った花火が打ち上げられます。それを万感の思いで見上げている恒。そして2人が固い絆で愛機と共に飛んでいたラバウルの空を思わせる様な大きな青い花火。そしてそれは六郎が恒に約束したその名も ”月光”! もう。。最後まで感動させられました。
恒の弟のストーリーもあるとのこと。是非是非読ませていただきます。
良い作品に出逢えるのは嬉しいことです。

4

戦友もの

最近、以前まとめ買いした蒼竜社のノベルを読んでいます。尾上さんは苦手な作者さんだということは分かっているのですが、前の作品を読んでからしばらく経ち、ほとぼりも冷めたのでまた手にとってみました。

全体に、ラバウルでの戦時下における時代物で、戦友から恋愛に、というお話。受けの琴平が、なかなか懐かない猫がモデルのようで、喧嘩っ早いが仲良くなれば気のいいやつ、というキャラなのですが、弟への愛情表現も事実上いじめだったりと理解できないところが多い。
攻めはいいやつですが、琴平の魅力がよく分からないので、なぜ惚れるのかな、と思ってしまう。

しかし色々なエピソードがあり、最後は戦後の二人まで書かれていて読み応えはありました。最後に約束していた大きな花火で号泣っていうのにはおセンチで参りましたが。。

全体に、パイロットのかっこよさが強調され、戦争を肯定するような調子であったのに違和感を持ちました。また尾上本はしばらくお蔵入りかな。。

3

一番大好きな作品

とにかく好きすぎる。終わってしまったのが寂しくて仕方がない。読了後の感想でした。
恒のイメージは「繊細」でした。
なにかの拍子に壊れてしまうのではないかというほど尊い。溺死しかけたり、マラリアに感染したりと、なんども恒の死を感じました。
明日には死んでしまうのではないか。ここで別れたら二度と会えないのではないか。
六郎目線の恒の描き方が壊れそうなほど美しいので、死んでしまうのではないかという恐怖が常にありました。
最後の米兵に囲まれた時は終わりだと思いました。
しかし、六郎は諦めなかった。
恒だけでも助けてほしいと懇願しました。
意識のない恒を助けたい一心で。

「あの夏も海も空も」の歌詞があまりにも合いすぎていて、驚きました。

この二人の話をもっと読みたいと思いました。

4

文句無く大好きな作品です

2014年の「このBLがやばい!」の小説部門の二位の異名は、伊達じゃないなーと実感しました。
前作の1945シリーズ一作目の「天球儀の海」を読み、その設定と展開が絶妙だなーと感じましたが、期待していた特攻隊の青春部分は余り描かれていない所に少し拍子抜けした面がありました。

今巻では特攻隊の戦地での日常や青春に焦点を合わせ、陽の面と陰の面も合わせてリアルに現状が描かれています。その時代のラバウル基地での生活や戦闘機の事など、調べ尽くされている感があるので、安心して話に没頭できます。その反面、飛行機命の無邪気な恒少年が余りにも愛すべきキャラクターなので、六郎と一緒になって終始ハラハラさせられる心境になりました。二人にのしかかってくる戦争の余りにも過酷な現実に、心が苦しかったです。

後半の展開に賛否両論もあるでしょうが、尾上先生から、このシリーズを通して読者に「何としてでも生き延びること」を伝えたいのかなーと思っています。戦後に六郎が恒に示した愛には、ぐっと心が打たれました。六郎は職人気質のせいか恒を見守る姿勢とか真摯で、こういう相手に愛される恒は幸せ者・・と思いました。六郎こそ本物のスパダリだなー。

JUNEや昔のニアホモ少女漫画で、パートナーが亡くなったり、結ばれずに別の女性と一緒に・・という作品を多く目にしてきた自分には、最後はハッピーエンドという展開は、ご都合主義の面は多少あれ、正直ホッとします。主要キャラの死は確かに心に残るし、確実に作品を名作化する側面はあると思います。そこをあえて避け、「何としてでも二人で生き延びること」を主題に物語りを締めくくる先生の姿勢に拍手したいです。

7

語彙力返せ!!

この本を読んだのは2年くらい前ですがティッシュ箱片手にガチ泣した記憶が...( ;∀;)
読後はどうしたらいいかわからずとりあえずウロウロ....。
そしてまた開いて泣く。
2年経った今でも、青い大きな花火を見るとこの作品を思い出して泣く始末...。
いい意味でトラウマ!!!

2

戦争と青春

1945シリーズの存在を知ったとき、単純に「よくこのテーマでBL小説が出たなぁ」と思いました。ここまで太平洋戦争に真正面から向き合った作品はない…という点でも是非いちどは読んでほしいと思う作品です。

「戦争×BL」というイメージだけで不謹慎だとか、日常を忘れるためにBLを読むのにテーマが戦争なんて言語道断…という意見も分かるのです。私も学生の頃だったらそう思って手に取らなかったと思います。

私も長年「戦争」と「青春」は相容れないものだと思っていましたが、大人になって霞ヶ浦の予科練平和記念館に行ってから考えが変わりました。あの時代にも確かに青春はあって、若者はやっぱり若者で、男の子で、大袈裟ではなく誰もが明日とも知れない命懸けの時間の中で、日本を…大切な人を守ろうという共通の想いを抱えて喜怒哀楽しながら日々を過ごしていたんだなーと、彼らがとても身近に、愛おしく感じました。

本作は、激戦地であったラバウル基地の通称「ラバウル航空隊」に属する日本海軍のパイロット・恒と、彼とペアを組むことになった主人公・六郎の物語です。海軍内の理不尽すぎるような描写はなく、ラバウル基地の様子も淡々としていてそこまで過酷なものではありませんでした。あくまでも六郎と恒の交流と、二人の愛機である「月光」にフォーカスしながら物語が進んで行きます。この辺はちゃんとBL作品としてのバランスが取れていて感心しました。

「月光」ってフィクションかと思ったのですが実在した飛行機なんですね~。ちなみに「ラバウルの五連星」は本作のフィクションですが、実際にラバウル航空隊に属して名を轟かせたエースパイロット(撃墜王)は何人か実在します。現実では復員した誰もが穏やかな日々を送れるようになったわけではないので、フィクションとはいえ、恒には甘やかされることに慣れて、これから沢山幸せになってほしいです。

エロは少なめですが、それ以外の描写が淡々としている分、とても甘く感じました。冒頭の感想に戻りますが、あまり「戦争×BL」というイメージに捕らわれず楽しむことができる作品だと思います。

「神」評価とするか迷いましたが、クライマックス以降の展開が早すぎてもっと余韻があっても良かった気がするので「萌x2」とします。あと、序盤にとんでもない誤植があって気が抜けました(笑) まぁ…本編にはまったく関係ない部分ですが。

6

マキヲ

まりぽん812様
コメントありがとうございます。嬉しいです。(そして1年越しの返信、ご容赦ください…。) 戦争のことを考えると、市井の人々の日常を忘れがちだなぁと私も改めて思いました。

まりぽん812

初めまして。
「あの時代にも確かに青春はあって」というところに、とても共感しました。
戦争は良くないけれど、彼らはひたむきに生きたんだろうな、と私も思いました。
霞ヶ浦の予科練平和祈念館に私も行ってみたくなりました。情報、ありがとうございました。

どら猫

戦闘機、星、宮沢賢治、そしてツンデレな受け…これだけ私の大好物を詰め込んでいて、“神”以外の評価をつけられるはずありません!
戦闘機を操縦する腕は天下一品で、愛らしい見た目なのにあまり人に懐かない猫みたいな恒が本当に可愛かったです。恒は前作で戦死したとされていたし、タイトルにも「かたみ」とあるから、悲劇的な最後になるかとヒヤヒヤしました。
せっかく仲良くできそうだった斉藤が戦死してしまったのは少しジワリときました。秋山は無事日本に帰れたのかなぁ。
私は古本屋で買ったため、ペーパーと書き下ろしのSSは読めず。気になってしょうがないので、いずれ本にしてくれないかなぁ。尾上さんの作品の番外編やSSは同人誌で発表されてたり、ネットでしか見れなかったりするからいつか全部商業誌にしてほしいなぁ、と思っています。

2

一番星

シリーズ2作目。
前作の受である希のお兄さんのお話ですね。
前作のイメージで、けっこうごつい男をイメージしてたんですが、
や、兄弟だものねww小柄でヤンチャな兄が可愛かった。

というよりも、前作がわりと殺伐としているというか、
強姦ありスプラッタありだったので、ドキドキしていたのですが
雰囲気がガラッとかわってにぎやかな1作でした。

赴任先のラバウル。
問題児と噂される恒とペアを組まされた六郎。
出会いがしらからトラブルに巻き込まれさんざん。。
しかし、人柄に触れ、近づくにつれて六郎は恒の
人柄に惚れていく。その惚れはいつしか~という流れでございます。
最初から恋愛ではなく、人柄に惚れるというのが好き。
好きな部分が、ひとつ増え、二つ増え。
気づいた時にはストンと恋に落ちていた。
イイじゃないの!!(≧◇≦)ノシ

懐かない小動物、、もとい、恒が六郎との距離を
いつのまにか詰めてきているのも可愛くて良。
「お前以外は・・・」な言葉も特別っぽくて好き。
可と思えば「ハメる」だなんだと言葉のチョイスも嫌いじゃない。

二人が体の関係を持ってからも
恒から発せられなかった「好き」の言葉を
そこに持ってきますか。な後半が良かったです。
大団円なラストではホッと胸をなでおろしました。
だって兄が死んだとかいうからさ。。。前作orz

なにはともあれ、次回作がまた楽しみです

5

このペア凄い好き

【天球儀の海】のスピンオフです。
前作主人公の希のお兄ちゃんである恒編。
【天球儀の海】では、恒はラバウルで戦死、という結末になっていたので、久々のJune的バッドエンド覚悟で読み始めたのですが……。


やっぱりBLはハピエンだからBLなのだと感心しました。


それをご都合主義だとか予定調和と言ってしまったら元も子もないのですが、こんなにハピエンで良かったと思った作品も珍しいです。
私バッドエンドも大好物ですが、このCPにおいてだけは、どうにか幸せな結末であって欲しかったのです。
そのくらい、魅力的なふたりでした。
正直前作が霞みます。
希が自分の為に生きてるとすれば、恒は正に真逆で、希や家族を守る為に、勝ち目のない戦に挑んでたわけで。
それは六郎と気持ちが通じ合ったあとでも変わることなく、一貫して内地の家族に思いが向いてるのが非常に印象深い。

六郎が恒のために作った線香花火を灯した後に、
「好きだ、恒」
と呟くシーンでほろりほろり……。
そっからはもう、転がり落ちるように先がない展開に、何度もこみ上げてくるものがあり、読むのが息苦しかった。
挿絵の効果もかなり大きいと思います。
前作ではいまいちなレーターさんだな……というのが正直な感想だったのですが、本当に同じ人が描いたの? というくらい画力がアップしています。
読み終わって表紙を眺めながら、よかったねー……としみじみと思い、口絵を見てまた、ほーっと一息。

個人的にもの凄くツボなのがふたりの性格でした。
泣き虫攻と、泣かない受。
強気なやんちゃ受は数あれど、見た目が小さくって小動物系なのに、ここまで男らしく格好いい受ってあまりいない。
攻の方が涙ばかり零していて(別に弱いわけじゃないです)そんな攻をしょーがねーな、って弟の希でも見るような優しい瞳で見つめる恒に萌え死ぬ。
年上を包み込む受の包容力が半端無かったです。

帯の煽りも神掛かっていて素晴らしい。
挿絵の入れ方も、BL小説にはあまりない試みで非常に新鮮でした。

6

最後までお前とペアだ

なんて美しい文章。戦争という重いテーマとblをここまでしっくりマッチさせるとは、さすが尾上さん。さすがこのblがやばい第二位を取った作品。

まあ、こんなに綺麗なはず無くて、もっとどろどろでぐちゃぐちゃな男たちがいたはずなんだけど、そこはいいです。飛行機を4度も撃墜されてそれでも生きてるというのもありえんと思うんだけど、嫌嫌そこも生きていてくれただけで良いです。六郎と恒が生きていてくれて、本当に良かったな。

恒は、「天球儀の海」に出てきた琴平希のお兄ちゃん。希と違って非常に男らしい性格。かと思いきや、ものすごいツンデレ。六郎の前で見せる表情や言動が可愛すぎた。天才飛行機乗りが、六郎に
「お前だからいい」
「他の奴に守られるのはいやだ」
という。六郎と一緒に私もメロメロになってしまった。ずっとこんな日が続けばいいと願わずにいられなかった。けれど、彼らは軍人。
最後、敗戦必至の中、ボロボロの戦闘機に乗って敵に突っ込んで行く二人を見て、泣けて泣けて仕方なかった。

戦争という雨に濡れないひとはいなかったんだ。当時を生きた人たちに改めて敬意を感じずにいられない。

4

碧々とした空と海と、そして

タイトル、帯、そして表紙の二人の全開の笑顔を見ただけで胸にこみ上げてくるものがあります。
碧の中…空で死ぬか、海で死ぬか。
戦時下、日本を離れ常夏の最前線でペアとして戦う二人。航空機月光の沈没にマラリア…何度も生死の境をさ迷いながら、ラパウルでの穏やかな一時の日常も描かれる。戦いの切迫感と星空や小さな線香花火の元で穏やかに笑い合う二人が繰り返されるのは、まるで航空機の上と下、何十度もの気温差と気圧の変化のよう。その中で芽生え育まれる互いの信頼と厚い情にたまらなく胸が熱くなった。
空と航空機を愛する真っ直ぐな恒も懐が深く泣き虫な六郎もとても愛しい。これからも永遠に青い花火が打ち上がりますように。

3

読み閉す

この本はここまででいいやと思って付箋を貼って私なりのラストにしました。燃料が尽きて海に落ちるのを待つだけよりは、と敵機に突撃していくシーン、p241の6行目、「不思議と心は静かだった。」まで。
正規ラストも含めるとあちゃー…と思ったんです。が、この本が私に語りかけてきてくれたことはここまででいいんだな、とここで切ることにしました。神評価です。
史実を臭わせるパラレルワールドの世界のお話と受け取っています。輝ける2人に幸あれ!!

9

難しいテーマ

天球儀の海の琴平希の兄、琴平恒とその相棒、厚谷六郎の物語。
希と恒の性格の違いがそのまま天球儀の海と碧のかたみに反映されたように思う。
とにかくこちらは元気が良いというか青春小説そのもので物語の背景が戦時下というのを忘れてしまうくらい明るい雰囲気に包まれている。
しかし、ついには、ふたりを乗せた「月光」は落ち恒も六郎も負傷する。
敵に必死に恒の命乞いをする六郎・・・
そして、敵国に助けられ戦後6年も経ってから帰国。
後日談として恒の帰国を知った希と・・・約束の青い花火を打ち上げた六郎と・・・それを見守った恒と・・・。
彼らの戦後に痛みや哀しみを感じずにはいられないと思う。

天球儀の海と碧のかたみ
どちらもBLとして取り上げるのには難しいテーマだと思うけれど、たくさんの人を引きつけた尾上さんの作品を読めて良かったと思う。

1

今までの3本指に入るレベルのおもしろさ

レビューを見たのがきっかけで読んだ本でした。
切ない系で戦争が絡んでくるという内容だったので、ちょっと自分には合わないかなー…と思いながら読みました。全然そんなことはなかった…‼︎
何度も死に直面しながらも、必死に生きる2人の姿に心を打たれました。悲劇的な場面が多いのかと思っていましたが、生きようとしている人達の力強さが伝わる場面の方が多かったです。BL小説としても、ただ小説という面で見てもとても良い作品でした。
濃いBLとしての絡みは少なめなんですが、さりげない絡みが多くて、初々しい感じが非常に萌えました!六郎が恒のことを好きだと自覚したシーン、かわいかったです(笑)
上記でも言ったように絡みが少なめだったので、ラブラブな感じを求めている方にはあまりオススメできないかもしれません。

尾上先生の作品は初めて読んだのですが、とても良かったです。描写が繊細ですごく引きこまれました。この本で早速ファンになりました(笑)

余談ですが、この作品で航空機オタになりかけてしまいました(笑)航空機のかっこよさも引き出した「BL」だけの面では語れない作品です。

6

前作までネタバレのレビューです。




とても面白いけど、悲劇的な最後にしなかったのは勿体なかったんじゃないかな、と思い、前作と合わせ、ずっと評価を迷っていましたが、先日ハッピーエンドではない本を読んで、これは「神」で良いんだと納得しました。

有名なBL小説家の先生が、BLの基本はハッピーエンドです、とインタビューに答えていらっしゃったのは、実は大層奥深い意味のあることだったのだと思います。

二人を死に別れさせなかった尾上先生、ありがとうございます。

16

鮮やかな碧の世界の中で

前作「天球儀の海」で登場した希の兄の恒と、彼とともに「夜間戦闘機・月光」でペアを組む六郎の物語です。

初めのうちこそ六郎の想いにとまどいを見せていた恒ですが、彼の気持ちを受けとめると決めてからの男前な様子が微笑ましくて。恒の少年のような無邪気な部分と、一度ペアと決めた相手をまっすぐに想う強い意志が渾然一体となって不思議な魅力を放ち、六郎が惹かれるのも当然かと。

ラスト手前まで資紀の心が見えない前作よりも、二人の心が通じ合っている恒と六郎はBLとしての糖度が高いですが。戦地が舞台である分、死と隣りあわせで生きているという緊張感が常につきまとい、恋愛というよりペアとしての絆の深さに心が揺さぶられました。
六郎のお手製の線香花火や撃墜マークのエピソードなど、きらめくようなまぶしいエピソード・・・この生きている一瞬一瞬が、貴くかけがえのない物だと感じさせてくれます。

戦局は悪化の一途を辿り、二人の命もいつ散らされてもおかしくないような状況に突入し。恒が月光ごと海に墜落し溺死しそうになったり、マラリアで生死の境をさまよったり・・・いくら二人の絆が強くても、戦争は一瞬のうちに命を刈り取っていってしまう・・・そんなギリギリの状況下で、六郎は静かに死の覚悟をします。
空で恒と生きて死のう。潔い決意に胸が痛み、切なくて切なくて涙がこぼれそうでした。

前作の中で恒の戦死の報があったので、ラストが近づくにつれて「奇跡でもいいから、生きていてほしい!!」と心の底から願いながらページをめくり続けました。寄せ集めの複座零戦が炎上し、「どうしても守りたいんだ」と敵機に突っ込もうとする恒に「お前とならいい。俺たちはペアだ」と言い切る六郎・・・読んでいる私は、ただもう祈ることしかできなくて。
戦争に巻き込まれ、ただただ航空機が好きで内地の家族を守りたい一心で戦闘機に乗り続けた恒。そんな恒を優しくサポートし、懸命に生きた六郎・・・なんて戦争は理不尽に命を奪っていくのだろうかと、悲しい怒りでいっぱいになり・・・とうとうBAD ENDかと諦めかけたのですが。

あああ、この運命を選んでくださった尾上さんに本当に感謝します!!
睦合いのさなかに恒が教えた“surrender”という単語が、ここでつかわれるとは。鮮やかな伏線にうならされました。恒だけ!恒だけでいいから助けて欲しい!という思いで、必死に叫ぶ六郎の姿。もし二人の怪我の状況が逆であったら、きっと恒と六郎は死を選んでいたでしょう・・・生きていてくれて本当によかった!!

本作は、登場する人物一人一人が本当に愛おしいです。
恒や六郎は言わずもがな、整備士の秋山や恒をいじめていた斉藤ですら魅力的で。
斉藤:「お前みたいな(可愛い)(←ここ、本人無自覚・笑)ちびは、危ない前線に出て来るんじゃない!俺たちが守ってやるから後ろに引っ込んでろ!」くらい内心で思ってそうで(←でもあくまでも無自覚・笑)」
斉藤の死に恒と一緒に泣いたのは、私だけではないと(確信) 尾上さんがサイトにおまけのssを載せてくださっていて、最近“その3”として斉藤のお話が追加され・・・ああ、やっぱり・・・と深くうなずいています。

また恒の希に対する愛情表現は、尾上さんの独特なユーモアのセンスを感じさせてくれました(笑)家族思いで、内地にいる弟の希を想い寝言にまでユキの名前を呼ぶ恒ですが。希を泣かせたうえに、おいうちのように怖い話をする兄ちゃん^^;・・・心から希をかわいがっているが故の恒のこの行動に、なんとも笑えて。でも、もし他の人が希を泣かせようものなら、恒は相手をこてんぱんにやっつけるんだろうなぁと想像してしまいました(ニヤリ)

牧さんのイラストもとても素敵で。恒の笑顔のまぶしいこと。優しい中にも一本芯の通った六郎もすごくかっこいいです。本編中月光に初搭乗したシーンが漫画としても入っていて、最初は驚いたのですが読み返すうちに大好きな部分になりました。月光を見た時の恒の目の輝きは反則ですね・・・これは六郎じゃなくてもおとされそうです。牧さんはツイッターにも水彩で描いた“月光と月光のお父さんとお母さん(笑)”の絵をあげてくださっています。これもとても素敵ですよぉ。

それから・・・ここに書いていいのかどうか分からないのですが(間違っていたらごめんなさい)・・・ホリーさんのサイトでパスワード入れると読めるお話が、もう素晴らしくて。これは、ぜひぜひ本編を読み終わった皆さんにご覧になっていただきたいと思います。本編は身構えていたので、それほど泣かずに済んだのですが。このお話は決して悲しいわけではないのに、ポロポロ涙がこぼれるほど感動しました。優しくあたたかいお話です。

そして、来月末に出る“HOLLY MIX”に“碧のかたみ”の番外編も載るという情報をゲット。今からワクワクが止まらない私です♪

15

ペアという絆

複座戦闘機でのペアという日常とはかけ離れた状況。
その中でお互い相手を信頼していき、それがいつのまにか愛情に変わっていく。
命をかけた戦闘の中で育まれる愛だからこその強くて固い絆。
この二人が離れることなんて考えられないと思った。

恒を強く愛している六郎のけなげさに胸がしめつけられました。
何度も死にかける恒を助ける六郎が不憫で不憫で・・・。
好きな人が目の前で弱っていったり、苦しむ姿は誰もみたいはずもありません。

それが何度もあるなんて可哀想すぎだ、六郎。
でも、そんな辛い経験を何度も乗り越える度に、二人の絆はより強固になっていったと思う。

この本が大好きすぎて死にそうですが、こんなに神評価と趣味じゃない評価が両極端に分かれるのも珍しいのではないかと思います。

「戦争」という今の日本では非日常的なことが題材になっているので、日常でのお話が好みな人には好かれない内容なのかな~と思ったりもします。

でも!約70年前はこれが日常でした。その中の出来事です。
日常のお話が好きな人もこれが日常のことだと想像してみてください。

より切なく、より二人が愛しくなってくる。
「碧のかたみ」はそんなお話でした。

10

美しいお話でした。

BLという言葉で片付けたくはない。
作中で何度も出てくる言葉
『ペア』というものがとても大切で愛おしいものに聞こえます。

ただ好き好き言い合って、体を重ねて…
というモノではない。
唯一無二の存在、深い深い絆、とても気持ちのいい読後感でした。

前作では作者様の腕は認めるものの、話の筋的に微妙でしたが、
今回は読んでよかったと思わされました。

8

鮮やかな碧い季節 〜そして尾上先生再評価〜

「天球儀の海」の主人公だった希の兄、ラバウルの5連星、恒と、
共に夜間戦闘機「月光」に乗り組むペア六郎の物語。

前作は、素晴らしいところと納得できないところが両方ある作品だった。
この作品は、ずっとまとまりがよくて破綻を感じずに最後まで読み切ることができ
今まで読んだ尾上作品の中では一番好きだし、個人的には再評価です。


読み始める前に知っていたのは、希の兄恒が南方戦線の英雄の飛行機乗りで、
最後は戦死の知らせが届いた、ということだった。
その兄の生き様と、彼を愛した男の話。

今まで読んだ尾上作品に出て来る人物は、
なんとなくジメッとした感覚があってどうも好きになれなかったのだが
今回の二人は、若く、無垢で、強くてまっすぐだ。
ただそれだけではなく、彼らの面白みが生活の様やセリフから伝わり
それが過酷な南方戦線という舞台の中で、なんとも言えない味をになっている。

ラバウルの光景、基地での暮らし、
航空機について、そして星空の飛行……
本格的な戦争小説に比べるとどうなのかは分からないが
その世界に疎い人間にとっては、十分読みでがある描写だった。
悲惨さ、という意味ではかなり割り引かれている感は致し方ないが、
BLとしての性交シーンもあるにはあるのだが、希望のある結末といい、
ジュブナイルとして若い世代に読んで欲しいような本だった。


ペア、お互いに唯一無二の存在。
明日の命も知れぬ中、お互いだけを信じて命を預け合い
お互いだけが特別になるのは、説得力がある。
それを恋愛というべきか?という話はあるが、
そういうカテゴリーを超えた想いはあるだろう。

そして、ちょっと出来過ぎの素晴らしさではあるが、
花火というもう一つのモチーフも素晴らしい。
40ページ辺りで突然数ページの漫画として描かれている挿絵も
新鮮でなかなか良かった。


ここで触れていいのか分からないのだが、
私が思わず泣けたのは、実は本編ではない。
後ろに掲載された二編も読み終わり、
更にはパーパー二枚も読み終わり、
最後に出版社HOLLY NOVELSのWEB特典SS「郵便飛行機より愛をこめて」を開き……
その殆ど最後近くになって、涙がドッと溢れ声を出して泣いてしまった。
3ヶ月の期間限定公開だそうですが、必読だと思います!

そこまで加えると、評価は「神」かもしれません。



 あかいめだまの さそり、ひろげた鷲の つばさ
 あをいめだまの 小いぬ ひかりのへびの とぐろ
 オリオンは高く うたひ つゆとしもとを おとす

 アンドロメダの くもは、さかなのくちの かたち
 大ぐまのあしを きたに 五つのばした ところ
 小熊のひたいの うへは そらのめぐりの めあて。
            「星めぐりの歌」作詞作曲 宮沢賢治

19

自分にとっても一番(!)の作品となりました

この感動をどうあらわせばよいのか、うまい言葉が見つかりません。
ただもう、後半は涙が止まらず(悲しい涙ではなく、二人のつながりに胸をしめつけられる涙)、読後に他の本を読む気力も興味もすっかり失うくらい、この本に溺れてしまいました。

二人の生きた時代や戦闘の描写だけでなく、南洋戦線下におかれた当時の若者たちが、内地に残る大切な人たちをを守るために、どんな生活をしながらどんな気持ちで日々を生きたのか、戦争小説家の小説を読む以上に心に響きました。別のレビュアの方も書いていますが、本当に作者の筆の力にただただ感激です。

そして二人が種類は違えど、どちらも空と星をバックグランド(育った家庭環境)に持つ世界観を共有し、それが軸になり二人の関係が始まり、そして極限で生き抜く強い支えになる。
度々出てくる宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』も二重三重の複線となり、後半の二人は、まるで中有(あの世とこの世の境の世界)にいるカンパネルラとジョバンニのようにもかんじました。カンパネルラたちと違って、離れることはなく、二人手に手をとってこの世に帰ってきますが・・・。

頭の中にずっと『星めぐりの歌』がぐるぐる廻ってます。完全にやられました・・・。


22

好きな物は、ビール。嫌いなモノは戦争!メソポタミア人マンボウです。

戦時ものは、大嫌い!なので、前作(天球儀の海)は、パスしました。
chillchillレビューを読んで購入。いや~~!これ、BL枠でいいの?!ってぐらいハマりました!
戦時もの嫌いと言いながら「大空のサムライ」坂井中尉とか、「零戦撃墜王」岩本徹三氏、バロン西とか、(美しい心)を冠されたロブサンサンボー、「慟哭のキャタピラー」の現場の人々、松本零士先生の「成層圏の蛍」…絵画で言えば、香月先生のシベリアシリーズ、一番好きなのは、「海軍飯炊き物語」!…他、フィクション、ノンフィクション、芸術、問わず、思い返せば山ほど読んでます。ナシュジオの、戦慄映像見てます。…どんな状況でも、(運もあるけど)どこまでも生き抜いた人達のお話しが、好きです!!どれもこれもBLじゃ無いんで困ったものです~( ̄∇ ̄)~
「碧のかたみ」読んで、慌てて前作、探しに行きましたが…無い。今作も、売り切れ…(BLコーナー充実してる、お気に入りのお店なんですが…)…chillchillユーザー様、よくあんなに、…と、思ってましたが、30日以内のレビュー書き直せるんですね♪ん~!!。どこ、つついていいんだかよく解らないま、つついてたら…。なんとかレビュー追加出来ました!!…おっ!こうして、皆さん200字越えして行くのでしょうか?!★ネタバレどころか、全く役に立たないレビューです(^◇^;)

4

大好きなお話です

『天球儀の海』のスピンオフです。
前作で、恒の戦死の知らせが届いていたので、覚悟して発売を待っていました。

まず、表紙が発表になったとき、見た瞬間に魅了されました。
恒と六郎の笑顔が本当に素敵で、素敵な分、二人の行く末が心配で心配で。

でも、こんなに素晴らしい笑顔の二人のお話なら、たとえ何が起きても
二人が幸せな時間を精一杯、生きたことは間違いないと確信しました。

そして、本編は、私のヘタクソな文章では伝えきれない素晴らしいお話でした。

恒は、曲がったことが嫌いで、周りからの嫉妬や妬みで意地悪をされても
真っ向から立ち向かい、毎日のようにケンカに明け暮れてます。
そのたびに、キツイ罰があっても、お構いなしです。
乱暴で粗野な性格かと誤解されがちですが、とても素直で航空機と家族を心から愛して大切に思っています。

そんな恒とペアを組んで『夜間戦闘機 月光』に乗り、恒のことを知って行くうちに、六郎はどんどん惹かれて行きます。
好きにならずにいられない。まさにそんな感じです。
恒もペアとして絶大な信頼を六郎に寄せて、信頼と同じくらい
愛情を感じるようになります。
二人の気持ちが寄り添って行く様子が、とても自然に描かれています。

星の話や花火の話が、ほんのひと時、二人の穏やかな時間として書かれていて、
忘れられないエピソードになっています。

そしていつしか、誰もが認める「黄金ペア」として、戦場でも名を馳せていきます。

戦況はどんどん悪くなり、戦闘機の数も激減し出撃すらできなくなってきた時、
整備員たちが拾った部品などで戦闘機を組み立てます。
そんなことができるのかと、機械音痴の私は思ったのですが、
整備員たちの技術のすごさに圧倒されました。

そして、その『複座の零戦』で恒と六郎は最後の出撃をします。

ラストは、読んで頂きたいので内緒のままで。
本編の他にSSが2編あります。
読み終わった後は、出版社のWEB特典を時間を置かずに読んで欲しいです。

私は、尾上先生が描かれた、恒や六郎、他の登場人物のような方が、実際にいたんじゃないかと思います。

戦争はいけない。

戦中戦後は、辛くて、苦しくて、悲しくて、悲惨なことがたくさんあった。
それは大前提です。誰にでも分かることです。

でも、そんな当時でも、楽しいこと面白いことがあったら笑っただろうし、
それが生活のほんの一部であり、一瞬の出来事だったとしても、
間違いない事実だと思います。
過酷な状況でも笑えるのは、人の強さでたくましさではないでしょうか。

そう思わせてくださる尾上先生の作品が大好きです。

20

自分にとっての1番

既刊『天球儀の海』に続く戦争を背景にした命の儚さ、
人の弱さを否応無く感じさせる作品でした。

『天球儀の海』の受けの琴平希の兄が優秀な操縦士として出てくるスピンオフ
更に番外編のように『天球儀の海』の二人の話も収録されていて、
今回の作品と是非セットで読んで欲しいと思える作品になっていました。
個人的には戦争ものは実は苦手、尊い命が呆気なく散っていく話は
BLに限らず映画でも文学小説でも出来れば避けたいと思ってしまう。
それでも、前作のスピンオフでこの作家の作品だと思うと読んで見ようと
思ってしまう魅力があるのです。

前作の希と本当に兄弟なのかと思えるくらい手の付けられないような
暴れん坊の兄、理不尽な事や納得がいかない事にはとことん立ち向かう。
頑固で意地っ張りなのに、飛行機を相手にしている姿はやんちゃな子供みたいに
目をキラキラさせて一目で好きだと解る態度。
それでも飛行機から離れると途端に我慢と言う言葉が皆無になる困り者。

そんなケンカ早い恒とペアになるのが花火職人の息子の六郎で
六郎は恒とペアを組んだことでかなり散々な目に合いますが
かなり我慢強くて忍耐力がある誠実なタイプ。
二人で「夜間戦闘機・月光」にペアで乗ることが決まり、初めは恒に
一方的に邪険にされていたりしますが、次第に信頼しあえるペアになる。

恒はまだ年若いのに、操縦の腕がピカイチなので妬まれたりして
嫌がらせやいじめを受けていたりして、人間不信気味だったりしますが、
六郎だけはペアとして認めてそれ以上の関係を築く事になります。
飛行機を見るキラキラした瞳を碧い星空の星よりも綺麗だと思ってしまった
六郎は惚れた方が負けを実践するみたいな雰囲気もありましたね。

早い段階で六郎の1番は恒になるのですが、恒の1番は月光だったり
内地にいる家族だったりしますが、それが六郎が1番になって周りとの
ケンカも納まってきたりと成長します。
それでも、戦場へと向かう二人、恒は最後まで空で最後を迎えようと
六郎はそんな恒と共に有ろうとする姿は戦争の残酷さを感じさせる。
最後の方で六郎のとった行動が、戦争の最中で正しかったのか、
それでも、1番を失えば全てが生きる意味すら無くなると言う六郎の気持ちが
悲しいくらい伝わって来ました。
愛する者を守る為の行動が、後の幸せに繋がって欲しいと、そしてそれが
確実に、二人のあの日の約束を果たせることが出来た結末は感動ものでした。


12

唯一無二のペア

前作「天球儀の海」は、ちるちるさんのランキングで上位に入っているのが気になり、読んでみました。
しかし、欠損表現が地雷の私には読むのが辛く、高評価であっても私には合わない作品でした。
そのため今作は購入するつもりがなかったのですが、フリーペーパー「羽ばたく日」を読み、気が変わって、購入に至りました。
とはいえ欠損表現と並び、死ネタもかなり苦手なので躊躇はありましたが、思い切って読んでみました。
結果、途中涙する場面もありましたが心配していた結末ではなかったので、安心して読み返す事が出来ます。
三ヶ月限定のWeb限定SSも読みましたが、限定なのがもったいない程に素敵なSSでした。
六郎と恒は本当に魅力的なペアで、それぞれ個人で見ても素敵ですが二人一緒だともっと魅力的です。大好きです。
しばらくはこの二人の事が頭から離れそうにありません。
この本を読んでいた時、ちょうど近所の花火大会の日で、花火の音を聴きながら読めたのも幸せでした。

8

戦争ものに弱いんです。

面白かったです。

先のレビューを読んでから、本書を開きました。
話の内容は先のレビュアーさんが書かれているので省略しますが、この初読作家さんの文章はとても読み易く、主人公達がとても好ましかったです。
地形の説明~シンプソン湾や花吹山、帝国軍・南方最重要基地ラバウルの景色が浮かんできます。
なにより、主人公達が死ななかったのが1番良かったです。

はじめ、『天球儀~』のあらすじを読んで、
「戦争ものBL?」
「すみませんです、受け付けませんです」
と、最初から排除していました。
個人的なことですが、お盆に行った親戚宅の居間に飾られていた兵服や学生服の若者のモノクロの遺影への恐怖感(遺書や死に方の説明を行く度に受けたのです)は、今も強いです。
反して、自分にとってBLはソープドラマの位置。
だから先の戦争ものって、最初からブレーキが掛かって楽しめないと踏んでいました。
「悲しさや虚しさや理不尽さが胸に広がるんでしょう?」って。

じゃ何故、本作を読んでみようと思ったのか?(苦笑)゛
「BLの基本はハピエン」を思い出したから(笑)
最初の方では、つい、文章の端々で史実合わせをしてましたが、後半の戦況悪化~終戦間近は淡々と書かれていたので、気持ちが主人公達の心情の方に向けられました。
それに、いろいろなエピソード(斎藤・エース・パイロットへの優遇・禁句など)や、何かに付けて「ロマンチック」な2人でもあって、明暗とも適度で地雷の少ないBL戦争ものだと思います。
橘と同じ様に思われている方、だから大丈夫でしたよ。
お薦めです。

12

橘盾

むぼちさん コメントを有難うございます!

自分は、気が付いた頃には戦記や戦史ものが好んで読んでまして、好きな歌は【海ゆかば】【戦友】だったりです。
この夏は【終わらざる夏/浅田次郎/集英社文庫・上中下巻】を読みました。
非業の死やどうしようもない閉塞感はこちらで十分に受け取りました。
太平洋戦争ものなら「死ネタは通常」でしょうが、BLエンタメのネタにするなら、主人公の行く先に光が、どーしても欲しいもんです^^

むぼち

橘盾さんの「死ななかったのが一番」とのレビューにとても共感します。

恥ずかしながら私は、読んでからしばらくは、「死んでなかったのは嬉しいけど話としては惜しかった」と思っていたのです。なにも分かっていませんでした。

「BLの基本はハピエン」、本当に素晴らしいですね、BL。

空と海と青春の碧

『天球儀の海』のスピンで希の兄・恒のお話。
待ち遠しくて待ち遠しくて、本を手にした時興奮のあまり目が滑ってまともに読めませんでした。
すみません、自分、海軍オタなんです。。。
だからラバウル航空隊が舞台だとか、二式夜間戦闘機月光乗りだとか、ラバウルの五連星と呼ばれるとか知り、ドキワクが収まらず、頭の中にラバウル小唄(!?)が流れてくる始末(汗)・・・本当は作中は宮沢賢治の星めぐりの歌ですが・・・
やっと興奮を収めて読み終えることが出来ました。

時代的に、ミッドウェーで大敗して航空部隊がラエからラバウルへ撤収、これが攻めになる六郎がラバウルにやってきた背景ですね。
そこへ出会ったのが、複数を相手に喧嘩をしていた小柄な戦闘機乗りの恒。
彼は19歳という若さでラバウルの五連星と呼ばれる撃墜率の高い優秀なパイロット。
ラバウルに二式の月光が採用されることになり、操縦の恒・後ろに偵察の六郎、この二人で乗り込むペアが誕生し、彼等が離れられない互いの一番(ペア)となっていく姿が戦況の変化と共に綴られていきます。

六郎視点で描かれていきます。
厳しい戦況の最中で生死のかかった状況でありますが、二人の絆が結ばれていく様子はそれを背景としながらもとても穏やかな見せ方をしていたと思います。
初めて月光に乗ってテスト夜間飛行をする場面。
それまでとても不満そうだった恒がとても嬉しそうに、飛ぶ姿。
ここでイラストが牧さんのマンガ展開ページになっています!文章だけでも気持ちが伝わってくるのに、漫画がついていてよりイメージが膨らみます。
星を見せてやるといった恒ですが、六郎には目をキラキラ輝かせている恒の瞳を見せられたら本物の星もかすむと…
そして浜辺での星の話、六郎の花火の話。
宮沢賢治の「星めぐりの歌」が引用されていますが、自分それをBGMにしてその場面を読んでみました。
何とぴったりくることでしょうか。再読の時は最初からそれをエンドレスにしてずっとかけてこの本を読みましたが、実に実にこの本の雰囲気を表わすのです。

月光から片時も離れず、まるで自分の子供のように愛する恒。
恒は月光のお母さんで六郎はお父さん。
もちろん、恒の人となりを見てその家族への深い愛情と愛機への深い愛情と、恒の強さは愛情からくるものだと、だからこそ六郎は惹かれたのだと思います。
お前に墜とされたと、身体に撃墜マークと称してキスマークをつける二人がくすぐったかった。

クライマックスは、多分43年年末からの二カ月集中したラバウル航空決戦辺りが該当するのだと思われます。
恒に嫉妬し苛めていた斎藤が帰らぬ人となり、二機目の月光も失い、度重なる空襲で物資も燃料も不足している中、回収した機体で作られたツギハギの二式。

この話も大切な人を守りたい気持ちが根底に流れています。
前作と違い最前線の話ですので、ほんとうに「死」が目の前にあります。
二人が約束した「死ぬまで生きよう」の言葉は切なかったが決して後ろ向きではなくて生への執着を感じなくもないのです。

前作や過去作に比べると、確かにモチーフや会話や展開はとても素敵なのですが、何となく文章が荒削りな印象を受けました。
それは作家さんのパトス?

天球儀より、こちらの方が入り込みやすいキャラクターと背景ではないでしょうか。
現実をリアルに投影するのではなく、これはあくまで物語ときちんと切り離して読むことが出来ました。
またオタ趣味の部分も想像と妄想の範疇で満足させていただきました。

※月光は現在スミソニアン博物館で実物が展示されています。

24

「あお」に託したすべて

『天球儀の海』スピンオフです。そちらの主人公・希の兄である恒(酒のラベル送ってきた五連星の兄ちゃん)の話。

舞台が太平洋戦争も佳境に至って以降の最前線・ラバウルである以上、”死”は前作より更に近く、常に懐に抱え込んでいるようなもの。その”死”に磨り減らされた…磨かれた人の心、物語のどこまでも美しい純粋さが哀しくて、胸が引き絞られました。
美化し過ぎだと笑うことすら出来ません。存分に、敬虔に、ロマンに浸るべき作品です。
最後のまとめ方が若干、易きに流れたというか印象が弱い気がしなくもないですが…作品全体を読み通した満足感の前では些事、ですね。
うーん…これ以上は何書いても蛇足になってしまいそうで、レビュー出来ません。とりあえず、前作に少しでも感じるものがあったなら読め!としか←

あ、一つ難を付けるとすれば、ちょっと誤字脱字が目立ちすぎることでしょうか。
まあそれも、八月初めに間に合わせるために編集部さんが超特急で頑張ったんだと思えば
、ご愛嬌(笑
とかく様々な面で難しいであろう戦中、それも最前線をここまで描き切った作者さんに脱帽です。戦闘機もかなり出張っていて嬉しかった…

…ちなみに。月光が雲の上に出るシーンは紅の豚を彷彿とさせたりだとか、自分がちょうど明日、風立ちぬを見に行く予定だったりだとか、個人的には妙にジ○リと関連づけられる作品ともなりました。

25

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