Krovopizza
katsute ani wa
久々に読み返しましたが、やっぱり怖い(笑)。
ラストに至るまでの過程がもっと読みたかったなーとも思うのですが。構成の上手さや演出の迫力に呑まれ、読後の充足感は半端ないという。不思議な魅力のある作品です。
SM、エログロ、猟奇趣味なシーンは(短い作品なのでページ数としては少ないですが)、読む人を選ぶかなとは思います。『ミ・ディアブロ』や『高3限定』とはまた違った衝撃がありました。
ダークな展開の中にも情熱を感じる上記2作品と比べ、本作品はひたすら退廃的な世界観です。しかし、一見ごく普通の人間が些細なことがきっかけで自分の本質に気づき、堕ちていくまでの描写に説得力があり。自分には関係ない世界だと跳ね除けられない何かがあります。
実家に仕送りする孝行息子だが、自分のことはどこか投げやりな宮田。
そんな宮田の一面に薄々気づいている部下・嵯島。二人は共に、身近な人の死を目撃した過去があり…。
「縛られたい」宮田と「縛りたい」嵯島が迎える、衝撃的な結末。なぜ宮田は地に足をつけることを放棄したのか。縛りたい筈の嵯島はなぜそれを許し、あのような行動に出たのか。そもそもあれは宮田の意志だったのか。
はっきりと答えは明示されませんが、本編中の台詞から推測できるところもあり、消化不良感はそれほどありません。
嵯島にとっては束縛同様、解放してやることもまた愛情であり。あの行動は、地を蹴る勇気のない宮田への力添えだったのかもしれないと考えると、これも一つの愛の形という気がします(猟奇的な執着も感じますが)。
梶本さんの作品は(まだそれほど多くは読んでいませんが…)、どんなに常軌を逸して見える人物にも過去や家族やバックグランドが与えられていて、彼らの人生が説得力をもって迫ってくる点が大好きです。
とくに表題作は、妹から見た宮田の輝かしい子供時代~社会人になってからの姿が描かれます。兄の変貌に驚きつつもどこかで納得している妹に同調してしまうのは、宮田という人物像が短いページの中でしっかり描かれているからだと思います。
所謂エロ・グロ・ナンセンスな雰囲気や童謡から取ったタイトルなど、退廃的でレトロな魅力があって個人的にとても好きです。
こういう暗い話も含め、もっともっと梶本さんの色んな作品を読んでみたいと改めて思いました。