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ザ・耽美!
tsuioku kitan
『追憶忌憚』―このネーミングセンスが好きすぎる!
只今ダダハマリ中の作家・辰巳ドロ子さん。
フルカラー作品も美しいが(『誑惑遊び』『癖になる液』等)
本作品や『醒めない夢』『恋文』等、モノクロでも素敵。
昔の邦画のような、ときに水墨画で描いた幽霊画のような?
独特のノスタルジー溢れる作風が堪りません。
本作品は、妻を病気で失った男が
義弟に妻の面影をみて、執着していくという話。
妻に先立たれ、抜け殻のようになっていた男は
自分を心配し、足繁く家に通ってくれる義弟のおかげで
立ち直りそうに思われた。
だが、それは妻の代わりを義弟に求めているにすぎず…。
義弟は、押し倒され、「志津子」と呼んでくる
義兄の接吻を受け入れる。
自分なしでは義兄が生きていけないと悟り、
妻の代わりになることを覚悟するかのような
切なげな瞳がとても印象的。
これから一緒に時を重ねることで、
いつか男は妻ではなく義弟を見てくれる日がくるのか。
義弟の健気さは何らかの形で報われるのか。
彼らの今後に思いを馳せずにはいられない、
切なく儚い余韻の残る作品です。
これで現在出ている辰巳ドロ子さん作品のレビューが
全て終わってしまいました(寂しい…)。
なるべく早く新作が読みたいものです。
今のところ短編が多いが、長編だとどんな感じになるのか。
新人作家なのか、はたまた別名義で何か執筆されているのか。
謎も多く、興味の尽きない作家さんです。