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生きることに無気力な羽良多と、小さな罪を犯してしまった森崎。 うまく社会に適合できない二人の逃避行の終着地とは――
akudama
恶玉
前作「ルールの染みた身体」がお気に入りだったわたしとしては、待ちに待った2作目・・・!
とても楽しみにして読みました。
結果、想像以上におもしろかった。
でも、前作の繊細な雰囲気とはほぼ正反対の雰囲気になっています。
前半、「悪玉」。
背表紙にもかいてありますが、森崎くんの万引きを誰かに言わないかわりに羽良多さんが「暇潰しに付き合って」といって付き合うお話です。
最初の方は羽良多さんがただただ勝手な大人にみえてしまいますが、読み進めていくうちになんだか憎めなくなってしまう。
森崎くんの「いい子って何だっけ」という言葉がこの漫画の全てを表しているような気がします。
そして後半、「ノンフィクション」。
同性愛がテーマのドラマで主演を演じる、一ノ瀬くんと田淵くんのお話です。
このお話は説明してしまうとおもしろさがほぼゼロになってしまうのであえて言いません。
どうでもいいですが、田淵くんのめがねをかけた姿に萌えたのはわたしだけではないはず・・・。
吉田ゆうこさんの繊細な絵と、少し重い作品の雰囲気がとても合っていていい漫画でした。
吉田ゆうこさんは最近の「HEARTY」を読んでとてもすきだったので
ずっと以前の作品も読んでみたいいなと思っていたので
こちらの「悪玉」を本屋で見かけたので買ってみました。
「HEARTY」の作風と似ている感じがありました。
登場人物が心に何かしらうしろめたさだったり、見せない部分であったり、こういうミステリアスな雰囲気を醸し出す感じの人が自分はすきなんだと思わされました。
一冊を半々に二作品入っているのですが、他のレビューでもあるようにどちらも短編映画を観ているような感じで、読んだあとはあの映画館の明かりがつくときのようななんともいえない静寂さのようになりました。
わたしは表題作よりも後半の”ノンフィクション”の方がすきです。
場面展開が現実だったり夢だったり撮影のシーンだったり...何度か読んで、あっこの服だからこれとこれは別だ、と気づけました。
一ノ瀬くんの部屋で文世くんが眼鏡をとってソファに頭を持たれたところの色気にはやられました。
あまり書くとこのお話の展開がきっと楽しめなくなると思うのでこの辺で。
「ドラマみたいにやり直しがきかない
台本もないから次の言葉もでてこない
けれどそれこそがノンフィクションの醍醐味なんだろう
人の 幸せなんだろう」 ああ、この言葉いいな。
わたしには吉田ゆうこさんの作風が合っているだと思います、なのでこれからの作品も読み続けていきます。 !是非!
昨年『ルールの染みたからだ』がデビューコミックの作家さん。
そちらのレビューにも書きましたが、今井ゆうみさんとか、少し前のカシオさんを連想させる絵と、ショートフィルムのような気持ちの機微を魅せる作家さんです。
前回、短編集だったので長編になったらどんな?と言及しましたが、今回、中編が2本です。
やはり、登場人物たちの「気持ち」というのが大きくクローズアップされます。
その心の見せ方はストーリー展開的にも、映画的だと思いました。
はっきりした明確な恋愛感情というより、それに至る過程というのに趣きをおいているような感じがします。
更に付け加えるとちょっぴり痛い。
ほかのどの作家さんとも違う、”吉田ゆうこワールド”とでもいいましょうか。
激しい萌えが訪れたりするわけではないのですが、とても印象的で心に一点の染みを残すような作品を描かれる作家さんだなーというのが総評です。
表題:
主人公・正彦は、コンビニでシャープペンの芯を万引きしているところを写メに取られる。
有名私立学校に通い、親や親類のプレッシャーのある彼はこのことを公にしてほしくないと、撮った男・羽良田と話あうのですが、黙っておく御礼に自分の言うことを聞いて暇つぶしに付き合って欲しいということだった。
友達も恋人もない趣味もない暇だという彼と、正彦は平日の昼間に呼び出され割り勘で映画を一緒に見たり、フェラをさせられたり、遊園地に行ったり、とうとうホテルに連れ込まれたり・・・
そこでわかった羽良田の真意。
話的にはシンプルです。普通の腐った目のあれやこれやの予想する真意はそこにはありません。
あったのは、罪の意識。
罰されたい意識。
逃げたい現実。
漬け込まれた高校生というあり方だったかもしれないが、そこに生まれたのは同情?哀れみ?愛情?
年下の高校生に心配される、情けない大人。彼が抱きしめてあげたくなるほどに脆い存在なのが、愛おしく感じる。
心がツキーンと痛みを覚える、ちょっと寂しくて悲しい、でも少しあったかい
それがどんな感情であれ、物語として心に刻み込まれます。
【ノンフィクション】
同性愛を描いたドラマに主演している一ノ瀬は上手く演じることができない。
共演の文世は上手くできているのに。
マネージャーのアドバイスもあり、一ノ瀬は文世と練習をし何とかペースを掴むのだが、その練習にいつか本気になってしまう一之瀬。
ドラマとリアルがコンフュージョンを起こし、心が傷つく現実が。
芸能モノというと、ついチャラチャラしたり、華やかな世界を描いたり、無駄に無節操とかイケメンとか、ありがちな設定が全くない。
この設定は、普段自分たちがドラマや映画を見て想像して妄想する範疇を漫画した物語に違いない♪と思うのです。
何よりカメラワークに惚れました。
台詞も少なめで、収録作二作どちらも短かい映画を見ているようでした。
どちらも、読んだ後の切なさがたまらないです。
特に表題作は、加害者への気持ちが愛情へ変わっていく流れが自然で見事でした。共依存、たまらないです。
「ノンフィクション」は書き下ろしもあって、このまま二人は纏まるんだろうなあと思うので安心なのですが、表題作の二人の今後が心配で。
寄る辺のない似た物同志の二人の行く先は、何処になるのでしょうか。
普通の高校生が泣き出しそうな顔をしてる表紙。
下は帯で隠れてるしズボンは履いてるとしか思ってなかった。
裏返すと高校生の下半身だけが描かれている。
素足で制服のシャツでお尻が隠れてるけどたぶんパンツ履いてないんだろうなと。
ハラタさん自分のことおじさんと言ってるけどおじさんには見えないな。
季節は冬で外にいて鼻の頭が赤くなっていくのが可愛いな。
ノンフィクションのほうが好きです。
切ないけどハッピーエンド。
若手俳優たちが同性愛をテーマにした映画を撮影していて、一ノ瀬が告白のシーンで何度もミスをしてしまう。
相手役の文世と距離が縮まったことから上手くいくようになるんだけど、文世の表情が可愛いすぎて萌えます。
これは好きにならずにはいられないと思う。
キスシーンを演じるのに、文世に前に演じたキスシーンを再現してもらうんだけど、ソファに頭を預けて上目使いで見つめてくる文世に思わずキスしちゃう一ノ瀬。
その表情はキスせずにいられないですね。
さすが俳優さん。
恋は始まったばかりの二人が可愛いです。
1冊に2編の物語が収録されているのですが、どちらの話も言葉少なくストーリ展開されています。
私は吉田ゆうこ作品に合う合わないがあるのですが、『悪玉』は合う作品でした。ショート映画を観ている気分になります。
表題作は静かに謎は謎のまま終了する形でした。
魔が差し万引きをしようとしたところを写真に撮られた受けは、黙っている変わりに攻めからの要求に応えることになります。
受け側の感情はしっかりと描写されており、脅されているにも関わらず、攻めに対する感情が”愛”に変わっていく過程が見事でした。
どちらもはっきりとした言葉を使わないため、とても危うく脆い関係性。
彼らのバックボーンに関する情報はとても少なく、散りばめられた要素から推測することしかできません。
この不透明な部分が物語により雰囲気をプラスしています。
言葉少なく進むので、読み手に解釈が委ねられていると思います。
一度は攻めの毒牙から抜け出せたはずの受け。
けれど結局”彼の手から逃れる”ことを放棄してしまうところが、この物語の結末としては一番合うなと思いました。
個人的に、『悪玉』の後日談がないところがまた良いですね...あの2人の行きつく先を知っているのは彼らだけなんです。
同時収録は、若手俳優の2人がドラマを通して感情を交わしていく話。とてもぴゅあな恋の話です。
めちゃくちゃに明るい話では無く、演技と真実の恋で悩む若者の脆い感情がほろほろと零れ落ちてくる話でした。
どちらの話も、恋愛感情をはっきりと描写しているというよりは、そこへ至る過程を濃く描いていました。
人間の脆さとか危うさを織り込みつつ、自分たちの世界だけで完結する道を選んだ2人と、不安定さを乗越えて明るい道を選んだ2人の物語。
答えのないしっとりした物語が読みたいときにおすすめです。
珍しい、オレンジの表紙に受けのピン絵という表紙が気になって購入しました。
ここでの神評価の多さに期待して読みましたが、良くも悪くも同人誌の延長、という印象を受けました。
ここの神評価の数字はちょっと疑問です。
辛そうな表紙から、もっとえぐいのかな、暗いのかな、と思っていましたが、想像以上にあっさりでした。内容にも突っ込みどころは少なくないです。『悪玉』は、人物描写や設定を細かくじっくり書いて良い長編にしたらとても面白そうなのに残念です。
同人誌を読むように雰囲気を楽しむことができれば、オススメできる本です。
個人的にはこの本の雰囲気はとても好きで、例えば些細な小道具(メリーゴーランドや風船)とか、繊細な表情とか、少し薄暗いマイナーな映画のよう。
実際、『悪玉』は万引きしているところを撮影されるところから始まり、『ノンフィクション』はドラマのワンシーンから始まり、どちらもカメラに映った表情から始まっているのが面白いなぁと思いました。狙っているのかはわかりませんが。
個人的には、表題の『悪玉』より、好意が演技か真実かわからなくなってしまう『ノンフィクション』のほうが好きでした。
基本的に攻め視点で描かれているので深く描写されてませんが、性格が良さそうで、いろいろ溜め込みそうで、かつ色っぽいこの受けの子がとてもいじらしくて萌え!
これは『悪玉』の受けの子にも共通なので、「黒髪で、いい子そうで、でもそれ故にいろいろ溜め込んでていじらしい子」というのが吉田さんの萌えなのでしょうね。
私もそういう子大好きです。そんな男の子が好きなら是非!
また、商業誌らしい安定した作品を読み慣れちゃったな、独特な新しい雰囲気を味わいたいな、という人にはお勧めしたいです。
お話の方も、繊細。
表題作の「悪玉」は、微妙にテレビの連続ドラマっぽいストーリー。
後半の「ノンフィクション」はTVドラマに出演中のタレントさんのお話。
どちらの作品も、登場キャラたちの動きや佇まいが、年若いアイドルタレントさんの演技がたどたどしい感じに通じる物があって、絶妙に連続ドラマっぽくて、生もの系や中の人系の薄い本みたいなドキドキ感が味わえる。
これがもし、本当に中の人系とか生もの系の薄い本だったら直接頒布価格で約6倍相当の感じだから、そう考えると商業コミックスって実にリーズナブルよねぇ。
表題作の真意は、静かに暈されています。
決して難解な韜晦をされている訳ではありません。
きっと無造作に提示されてはいるのでしょう。
しかし見えない。
見える様な道筋が、静かにはぐらかされている。
表題作の二人の間には確実に何らかの感情は
あります。
二人にとっての初めての共同作業は、きっと
それを見極めて行く事なのでしょう。
併録作とその続編は表題作に比べると読んでいる
こちらが恥じらってしまいそうに素直ですね。
そう感じるのも表題作があってこそ、の
からくりかも知れませんが。
嘘と本当が混じり合ってるのが世の中というもので。
普段はその社会の輪の中で疑問もなく過ごしているのに、相手がその他大勢からトクベツに変わった瞬間、相手を好ましく思えば思うほど本当だけを欲しがってしまう。
マイナスからのスタートだから彼らにはお互いが交わるこれからの道が作れたんだと思う。
痛みを抱いて、それでも繋げる手があったなら......淡々とした画から淡々と流れ出る彼らの感情、最後に残るのは...
(2013.3.16)