『キャッスルマンゴー』の十亀の高校生時代。

リバーズエンド

rivers end

リバーズエンド
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神141
  • 萌×240
  • 萌18
  • 中立6
  • しゅみじゃない11

--

レビュー数
40
得点
925
評価数
216
平均
4.4 / 5
神率
65.3%
著者
木原音瀬 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
小椋ムク 
媒体
小説
出版社
蒼竜社
レーベル
Holly Novels
シリーズ
キャッスルマンゴー
発売日
価格
¥857(税抜)  
ISBN
9784883864133

あらすじ

十亀にとって、高校も友達もどうでもよくて父親の作った借金の返済に追われ、バイトをしながら姉弟と一日をなんとか食べて生きること、それがすべてだった。
そんな時、ふとしたきっかけから同じクラスの二宮と口を利くようになり、彼の明るさに十亀の心は少しずつ癒されていく。
しかし二宮にほのかな想いを感じはじめた矢先、悲しい運命が十七歳の十亀を待ちかまえていた――。
表題作に加え、大人に成長した十亀が優しい恋人・万と出会い、映画監督への道を歩み始めた「今」の葛藤を描いた書き下ろしを収録。

(出版社より)

表題作リバーズエンド

貧乏な高校1年生
同級生

同時収録作品god bless you

元AV監督
大学生

その他の収録作品

  • プロローグ
  • あとがき

レビュー投稿数40

それでも映画は作られる。それでも映画を愛してる。

 金城一紀さんの『映画篇』など、映画を主題にしたり、モチーフにした小説は数多くありますが。
 その中でもこの作品から感じるのは。

  木原音瀬さんの
 「映画への愛情。」
 「演ずるもの、制作する者たちへの限りない尊敬と興味と情熱」です。
 
 『水のナイフ』『セカンドセレナーデ』など映画をモチーフにしたものはもちろん、俳優さんが出てくる作品は他にもいくつもあります。
 かなり昔に『水の中のナイフ』というロマン ポランスキーの映画があるのを知り、「木原さんはもしかしてここからこのタイトルはとられたのかしら?」と考えて、同タイトルのレンタルは見つけることができなかったので、同じ監督の次の作品の『反撥』という作品を見ました。
 まさに『セカンドセレナーデ』の中に出てくる自主製作映画の空気感にかなり近いものを感じました。ものすごい歪みと閉塞感と絶望感。
 もちろん、これは私の独りよがりの妄想なのですが。
 それでもその後も木原さんの小説やコメントの端々から映画や演ずるものがお好きなのではないかなと。それもきっとちょっと普通でないものが(笑)

 ずっとそう思っていて。もう一つなるほどなあ…と思っていることがあります。
 それは木原音瀬という作家さんはご自分の作品がBLCD化される際、なるべくメインに同じ声優さんは使わない。脇役で使うことはあっても同じ人を主役に起用しない。
 と、いうことです。

 たとえば(すいません、以下敬称略です)
 『WEED』 櫻井孝宏×千葉進歩
 『don't worry mama 』 檜山修之×山口勝平
 『こどもの瞳』 成田剣×神谷浩史
 『牛泥棒』 谷山紀章×岸尾だいすけ
 『COLD SLEEP』『COLD LIGHT』『COLD FEVER』 羽多野渉×野島裕史
 『美しいこと』『愛しいこと』 杉田智和×鈴木達央
 『now here』 鳥海浩輔×飛田展男
 『薔薇色の人生』 吉野裕行×前野智昭
 『吸血鬼と愉快な仲間たち』 平川大輔×緑川光
 『キャッスルマンゴー』 石川英郎×近藤隆
 『セカンドセレナーデ』 井上剛×立花慎之介
 『パラスティック ソウル』 小野友樹×武内健
 (unit vanila名義のものは担当が明記されていないので除外させて頂きました)
 
 一人としてだぶっていないのです。同じ声優さんを何度も自分の作品に指名することが比較的多いBLCD界において、こうもバラバラなのは。
 意図して木原さんが選んでおられるのではないかなと思うのです。
 その真意はもちろん各々のキャラがお互いニアミスする可能性を考えてのこともあるかと思うのですが。
 木原さんが「なるべくたくさんの声優さんの演技を聴きたい。いろんな声優さんにいろんなキャラクターを演じて欲しい。」そう思っていらっしゃるのではないかなと一人で想像しているのです。
 それはまさに木原さんが声優さんの演技の可能性を無限に信じているから。
 そして制作する人たちが素晴らしい作品にしてくれると信じてるから。

 こういう点が木原さんが演ずること、作品を制作することへの絶え間ない情熱と興味と愛情をお持ちであることの証しなのではないかと私は勝手に推測しているわけです。

 表題作の『リバーズエンド』を付録で初めて読んだとき。
 初期のころの木原作品を思い出しました。
 しかしノベルスを読んだとき。これはやはり序章なのだと思いました。
 『キャッスルマンゴー』へとつづく道の。
 そして『god bless you』 読んだとき。
 「ああ、生きるって素晴らしいことだなあ。映画が大好きだなあ。いっぱい映画見たいなあ。」そう思いました。できれば十亀さんの作った映画がみたいよ。
 でも見れないから。映画館に行こう。この作品を読んでいて思い出したいくつかの作品をレンタルしてこよう…そう思いました。
 
 「俳優にもっとも必要な才能は待つことができるということだ」というような文章を何処かで読んだのをこの小説を読んでいて思い出しました。
 先生、今度は映画が出来上がるお話、読ませてくださいね!
 タイトルで思い出したブラピの『リバーランズスルーイット』や大林監督の尾道三部作を見ながら待ってますからね!(笑)

 

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

22

名作は何年たってもやっぱり名作だった

本棚を整理していたら何となく目についたので再読してみました。ちょっとだけ読むつもりがすっかり引き込まれ、本棚が全然整理できなかった…(爆)。木原さんは痛い作品が多いということであまり読んでいないのです。この作品も作家買いしてるムクさんが挿絵を描かれていたから買った作品でした。しかしすごい。すごい神作品です。

内容はすでに書いてくださっているので感想を。

前半は十亀の過去編「リバーズエンド」。
貧しくてひもじい。けれど家族の愛があって、それだけが唯一の支えだった彼にとって、あの悲劇はどれだけの負荷を十亀に与えたのでしょう。
家族以外何も持たない彼が初めて安らぎを得た友達の二宮。親友であり、そして初恋の相手であり、その二宮をああいう形で自分自身の手で手放してしまった彼の孤独と切なさに泣いた。
この「リバーズエンド」はCab創刊号の付録だったということも驚き。実ははまりにはまってこの付録の小冊子も中古でゲットしたのだけれど、付録の範囲を超えてます。

そして現在の十亀と万の話の「god bless you」
ムクさんがコミカライズした「キャッスルマンゴー」は「リバーズエンド」と「god bless you」の間の話になります。
十亀視点で書かれてますが、これがすごく良かった。十亀も万も、自分の気持ちや感情をはっきりと表現するタイプではないので、万視点だった「キャッスルマンゴー」と対になっていてよかった。

十亀の仕事(ある映画のメイキングビデオの撮影)の話がメインになっていて、万は全く出てこない。けれど、仕事の合間に十亀が思い出すのは万のことで。諦めることを知っている男の不器用さがすごく上手に表現されていて、すれ違う二人にやきもきしてしまった。

自分の手に持てないものは諦めるしかないと生きてきた十亀。
人に頼ることができず、すべてを自分で抱え込んでしまう万。

不器用で、でも何事においても誠実な二人の男たちがカッコよくて仕方なかった。そんな二人が、唯一自分をさらけ出せる相手に巡り合えて、本当に良かった。

再読して、この二人のその後が載っているという「HOLLY MIX」が読みたくて仕方ない。これから密林さんでポチってこよう。
そして本が増え、やっぱり本棚は整理できないってことなんですね…

17

十亀の過去

私はリバーズエンド本編+プロローグ→キャッスルマンゴー2巻→小椋ムクさんのペーパー→god bless you→木原音瀬さんのペーパーという順番で読みました。

やはり、漫画の2巻より先にリバーズエンドを読んで良かったです。十亀の過去を知った上で2巻を読むのと、知らないで読むのとでは十亀の印象が違うのではないでしょうか。正直、私も小説を読んでいなければ何故あんなにも十亀は諦めが良すぎるのか不思議になるかと思います。そして急に万を避けだす十亀にモヤモヤしていたに違いない!1巻の甘さは何処へやら、という感じですからね。
でも小説を読んで十亀の過去、心の傷を知っているとその行動の訳が分かるので、2巻の展開をより受け入れやすくなる気がします。
…と、このままだと漫画の感想になってしまうので続きはキャッスルマンゴー2巻の方で語ります。

リバーズエンド本編は十亀が高校生の頃のお話です。読む前から覚悟はしていたのですが、十亀の過去は想像以上に壮絶で後半は涙が止まりませんでした。
特に後半は立て続けにショックを受け続け、途中本気で落ち込んでしまいました。
でも、全く救いがないという訳ではありません。二宮との交流には心が温まりました。特に、十亀の姉に二宮が髪をカットしてもらうシーンはすごく好き。あのイラストをみると涙が出そうになる。
そして、大人になってからの再会のシーンも良かったです。二宮は素敵な男に成長していました。あと、元担任もすごく良い先生で嬉しかった。
プロローグを読んだ後は妙に胸が高鳴って、このまますぐに漫画も読まなければいけない!と思い、とりあえず泣いた後のティッシュの残骸をまとめて捨てて、すぐさま漫画の2巻を読み出しました。

god bless youはキャッスルマンゴー2巻の後の二人です。というか十亀のお仕事メインのお話。
万と旅行に行く約束をしていたのに、映画のメイキングの仕事を引き受けた十亀。それが原因で、ちょっとした口論になり万を怒らせてしまいます。結局、そのまま仕事へ行きますが、万への毎日のメールは欠かしません。メールがマメなのは過去の教訓からのようです。ただ、返信が来ないのにも関わらず送り続けるのは、万と別れたくないという気持ちがあるから。漫画の2巻から完全に万→十亀ばかりだったので、十亀→万な所を見ると嬉しくなります。
ただ、全体的にこのお話はラブ度は低めなのでラブラブな二人を見たい!という方は少しがっかりかも。でも、十亀のことは益々好きになってしまうはずです。仕事の出来る男な十亀が素敵過ぎます。あとお話としてもすごく面白いので、BL要素抜きにしても単純に楽しめるかと思います。でも、エッチシーンもちゃんとあるのでご安心を。序盤と後半ですね。求める十亀に萌えますな~。

あと、後半の方にある十亀の「不運だったが不幸ではなかった」という独白部分。これを読んだ時、妙に納得して気持ちがスッとしました。

長々と語ってしまい申し訳ございません。毎回、思い入れのある作品ほど感想を上手くまとめられない(苦笑)小椋さんのイラストも素敵でした。リバーズエンドの十亀がスポーツバックを逆さにしているイラストが目に焼き付いています。

13

十亀俊司という男の生き方

『キャッスルマンゴー』がコミック原作として掲載されるにあたり、導入としてCabの付録に付いた十亀の過去編『リバーズエンド』が、コミックのその後の話を入れて単行本になりました。
キャッスルマンゴー発売の当初から是非読んで!と叫んでおりましたが、この本が出来上がったことで、キャスマンとリバーズの融合と一体となった完全体としての作品の姿を見せているのではないでしょうか?

キャスマン2のレビューにも書きましたが、この本はBL臭は非常に薄いです。
どちらかというと、表題通りの十亀俊司という男の過去と未来を綴ることで見せる、彼の生き方の物語です。
彼の生まれ育った環境と過去、それがゆえに人に執着できないこだわりとトラウマ。
彼の人というものがとてもよくわかり、その上で、キャスマンでの彼の態度に十分な納得と裏付けを与えているのです。
ですから”萌え”とか”BLとして”とか持ち出しちゃうと、全然範疇外の作品だと思います。
しかし、木原作品はそこから逸脱していても当然というか、それが持ち味ですし、コミックと合わせてと、考えればこれはこれでとても良い作品なのです。
むしろ、そういうこだわりとかカテゴライズを捨てて読んで欲しいです。
特に『リバーズエンド』は過去編として受け入れることができても、『Gby』は仕事の描写が多く、読者に戸惑いを与えるかもしれないということだけ言及しておいてもいいでしょうか?

【リバーズエンド】
十亀の壮絶な過去の物語でした。
子供の頃、家族でホームレスだったという過去。
酒好きの父親が身体を壊して入院して、中卒の21歳の姉がひとりでなにもかも背負って極貧生活を送っている。
昔を思えば、ひもじくても屋根があり雨露をしのげる場所で生活できている、家族が一緒にいられることの幸せはあると考えている十亀。
自分が高校を辞めて働きさえすれば、少しは姉の助けになるのに、自分が散々中卒の辛さを味わったから弟にはそんな思いをさせたくないと、その意思を汲んで、悶々としたものを抱えながら日常生活を送っている。
そんな人を寄せ付けない日々を送っている彼と偶然公園で寝ているところに遭遇した二宮と、仲がよくなっていく。
二宮という存在に、ひと時極貧の暮らしにも明るさが垣間見えていた矢先、父親の仮退院を迎えに行ったときの自動車事故による、父・姉・弟の死。
家族で昔に一緒に見たという映画の題名「リバーズエンド」、それと家族の遺骨の散骨、
海で皆一緒になれる。。。
そんな切ない、とても切なくて苦しくてやりきれない、十亀の高校時代は、愛するものを失う恐怖の元となる話でもありました。

【God bless you】
”神の祝福あれ”クリスチャンのやり取りの締めの言葉だったり、色々なアーチストの曲の題名にもなっている、一文。
それとも、くしゃみをしたときの魔除けの言葉としての意味だろうか?
しかし、やはり”神の祝福あれ”なんだよな~とラストに思える1本。
この話は、コミックその後の話になります。
コミックの中でも、夏休みに旅行に行くという話が流れて万ががっかりするという話がありましたが、今回も、恋人となった二人だけど、十亀の仕事の都合でそれが流れてしまうことに端を発します。
仲違いしたまま、長期のロケの仕事に入り尾道に行く十亀。
メールを送るけど返事はない、万からも連絡がない、その中で撮影にトラブルや人間関係のトラブルが発生して、、、というかなり十亀の仕事の描写で場面が進んでいきます。
そこの中で、見えたのは、十亀との対比するべき人間です。
十亀と正反対の彼が持っていないものを、うまく使えば宝物になる、それに気がつかずあぐらをかく人物。
それが十亀に何の?というところだろうが、十亀の生き方の物語とすれば、仕事に執着はしていないが、映像の仕事を心から愛していて、それが亡くなった家族への愛になっているんだという奥底が見えるような気がするのです。
だからこそ、蛋白だけど彼は同じ映像を愛する人間からは好かれるのです。
彼が家族を失って東京へ出るときに遺骨を入れて持ってきたスポーツバッグ。
ボロボロになってもまだ持っていて、それを壊されて普段温和な姿な彼が激怒します。
ここに彼の想いの底が見えました。

ただ、恋愛面の1対1になると、いくら恋人になったからといってもやはり十亀は素直になれたわけではなく、仕事に忙殺されながらも気にはなっていても、自分からは動けない。
むしろ、万のほうが素直でした。
十亀を理解してきているということですね。
コミックのときも、万に甘えるようにして寝る十亀の姿がありましたが、今回も・・・
大人でありながら、その時は子供のような。
万と十亀はどことなく似ています。
互いに与え与えられる関係に、年齢差は関係ないように見えました。

12

鍵は万が持っていました

キャッスルマンゴーが万の視点で描かれていたのと対称的にこちらは過去も未来も十亀の視点で書かれていました。
リバーズエンドは小冊子で既読でした。
また、予告編のショートコミックが収録されていて嬉しかったです♪
書き下ろしの「god bless you」コミックのラストシーンから始まっています。
結ばれてからも相変わらずのすれ違いぶりです。
十亀の仕事は不定期で万との約束を反故にすることも度々あります。
けれど、すれ違う根本はそんなことではありませんでした。
知らず知らずのうちに人との距離を置く十亀・・・彼は、失うことを怖れ、失って自分が傷つかないように常に予防線をはっています。
それは、仕事でも、恋人の万に対しても同じでした。
映画の撮影ロケの中で話は進んでいきます。
万は序盤と終盤にしか出てこないので、この本は、万ファンには物足りないかも知れません。
最後、十亀が自分でも意識の奥に押し込めていた臆病な部分をこじ開けてその中に入ったのは万でした。
十亀の涙とそれを包む万の腕・・・本当に良かった。
読み終わってとても幸せです。

こちらには小椋さんのショートコミックのペーパーがついていました。
前髪をあげて、ちょっぴり大人っぽい万。
自分を撮影する十亀に近づき笑ってビデオカメラを取り上げるあたり、もしかしたら十亀は尻に敷かれているのかも知れないな~と(笑)

9

過去に傷のある男が包まれていくお話です

 木原さんの作品は、エロで読ませるBLものと明らかに一線を画している。話の構成が巧い。下調べが十分だ。映画撮影の描写とか、ほんと勉強になった。
 そして、エロ声無しでエロを読ませる作家さんもこの人くらいなものだ。

 食べるのも困るほど貧乏な高校生、十亀が家族も友人もすべて失って、空っぽのかばんを持って地元から去るところから、かばんいっぱいに詰めた家族の骨を川に流すところとか、もう悲しくて切なくて、読んでて心が痛かった。

 地元から逃げるように東京に出てきた十亀のその後がすこんと抜けているし、十亀と万の出会いも書かれていないし、ああ、そこは、やはり、知りたい。「キャッスル・マンゴー」と読まないとならない。

 高校時代にあそこまでぼろぼろにされた十亀は、大人になってもやっぱり大切なものを作るのが怖くて、でも万の一途な優しさや彼の体温にすがる。素敵だったな。「恋人の横顔を見ながら、自分は幸せなのかもしれないと気づいた。いや、幸せなんだとそう思った」という、くだりは最高だった。

 万くん、ずっと、十亀の側にいてやって欲しい。あの不器用で臆病な男を、包んでいてやって欲しい。

8

仕事の出来る男はカッコ良いですね!

リバーズエンド
手に入らなかった小冊子の再録と言うことで嬉々としながら読みました。色々なところでネタバレ感想を読んで覚悟していましたが、それでも壮絶。
私が3兄弟の長子なので、十亀より寧ろ小春に感情移入してました。頑張っちゃうんですよね。私も昔母が入院した時、食事も洗濯も後片付けも全部一人でやりました。誰に言われた訳でもないのに、何故か自分がやっちゃうんですよね。程度の差はあれ、長子の特性ですかね。
あと、散骨する十亀の挿絵は印象深かったです。泣けない十亀の切なさ満点のあの表情。お金がないって切ないと、改めて感じました。

god bless You
十亀が良い男過ぎて…!!一々大人なんですよ。余裕があるって言うか。自分が折れて治まることは平気で折れるし、我慢する。でもそれは、プライドなんてなんの腹の足しにもならないことを知っているから。十亀にとってはこれまでの人生で身に付けた、一番楽に生きる術なのかなぁ、って。でもその諦めの良さと執着のなさがカッコ良いんですよ。やっぱり影のある男はカッコ良いです。
そんな十亀と対称的なのが、羽部ですね。なんでも手に入る恵まれた環境にいる彼は、子供です。でも嫌いじゃない。彼は自分を信じていて、自分の周りを絶対的に信じている人だと思います。佐藤のことも、本当に信じていたんじゃないかな。それだけに世界が狭い、対人スキルの低い人ですね。プライドが山のように高いから絶対折れないし、自分が間違ってても謝れない。
でも嫌いじゃない。初めて父親から離れた現場での仕事で、何一つ上手くいかない焦りが切ないです。リテイクが多くてスケジュール通りに撮影は進まないし、体調は崩すし。彼は彼なりに一生懸命なのに、独り善がりすぎて誰もついてきてくれないし、代理の十亀の方が良いと言われる始末。挫折知らずの坊っちゃんの初めての挫折。才能はあるはずなので、これからを応援したいです。根は悪い人ではないと思います。彼は、良い受になる気がする(笑)
ちなみに佐藤は嫌いです。

何故か羽部語りになっちゃいましたが、とにかく一見の価値ある本です。BLとしてもヒューマンドラマとしても楽しめるはずです。十亀がホント良い男!

7

十亀の過去が壮絶すぎる、よくグレなかったと思う。

相変わらず小説上手すぎ。物語に引き込まれるとはまさにこの事。
前半は悲しいことの連続。
一瞬にして全てを失ったとあるがまさに言葉の通りだし,
ヤクザが十亀で保険金を取るつもりだったというシーンは本当に冷や冷やする。
そして強姦しかけた二宮くんと再開するシーンで
二宮お前いいヤツだなあと噛み締めて終わる良い読後感。
後半,万とちょっと喧嘩するも上手く仕事をこなす十亀。
映画を撮っているシチュエーションで様々な役職や映画撮影に関する描写が
出てくるけど分かりやすいし,
嫌なヤツも複数出てくるけどそこまでモヤモヤするわけでもない。
すべてのキャラの動かし方が上手すぎる。
そして万(受け)とのイチャイチャもある。
もう一度いう木原さん小説上手すぎる。
全体を通して心に残るのは何度か出てきた十亀の
『不運だったが、不幸ではなかった。』というフレーズ。
貧しいながらにがんばってきたのに家族をなくし
非道な借金取りから逃れるため、唯一の友達のもとからも離れて一生懸命生きてきた彼。
それでも不幸ではないという十亀の幸せを願わずにはいられない。

6

ななこあ

わかります。わかります。「不運だったが、不幸ではなかった」いいフレーズです。

後から読みましたが。。。

本当は「リバーズエンド(小説前半・十亀の学生時代の話)/プロローグ」→「キャッスルマンゴー1」→「キャッスルマンゴー2」→「god bless you(小説後半/十亀お仕事編)」の順番で読むといいようです。

「リバーズエンド」は十亀の過去のお話し。
ありえないくらい悲惨な状況の中、姉と弟と寄り添いながら暮らしている。
お金のないせいで、たまに情緒不安定になって泣きじゃくる姉を抱きしめるしかできない高校生の十亀。
そんな彼に普通に接してくれる同級生の二宮。
明るい彼の存在が十亀と、ほんの一瞬だけど姉や弟にも楽しいひと時を与えてくれました。
しかし交通事故で家族全員を一瞬のうちになくしてしまい、残された借金が十亀ひとりの肩にのしかかろうとします。
自分に保険金をかけて殺す計画があると知った彼はカバンに家族の骨だけをつめて家を飛び出します。最後の最後。ほのかに思いをよせていた二宮に乱暴してしまう十亀。
全てをなくし、東京行きのバスに乗ります。
10代で。家族も友だちもなく。お金もなく。
冊子付録の噂をきいて壮絶な過去があったらしい・・・とは知っていたのですが、ここまでとは思わなかったので、なんともやるせない気持ちでした。
最後、AV監督になった十亀は東京で、二宮に再会します。
あんなことがあったのに、昔と全く変わらない態度で接する二宮。ほんとこの人もいい人だわ。
サクサクと連絡先を交換して、どうせ十亀からは連絡してこないから俺がするから返事しろよーと去っていく。ここから二人の新しい友情がはじまるんですね。
結婚したという二宮に「幸せになれよ」と声をかける。「そのまま返すよ」と笑いながら帰っていく。
悲しいというより、つらくて痛くて。そんな十亀の過去に二宮という存在があったことが本当によかったと思いました。

「プロローグ」はこの場面から、十亀が撮影場所として「キャッスルマンゴー」を見つけるまでをムクさんのイラストで。その後「キャッスルマンゴー1」に続く感じです。

「god bless you」は「キャッスルマンゴー2」の続きですね。
といっても、どちらかというと十亀のお仕事の話。
急遽、仕事が入り万との北海道旅行が中止になってしまいます。そこで喧嘩別れしたまんま十亀は映画の撮影のため尾道へ。
話の中心はほぼ撮影現場でのお話し。合間合間に万に連絡いれてるけど返信なく・・・。
だけど万は来ちゃうんですよ。ナイショで。エキストラとして(笑)(ここでも吉田さんの尽力が!)
なんやかんやで映画はダメダメ主演俳優のせいでお蔵入りとなりますが、十亀と万は仲直り。
漫画よりもしっかりとした濡れ場あり(笑)
十亀も撮影スタッフには頼りにされ、監督からも最後、連絡先を聞かれて今後の仕事に希望が持てそうな終わり方でした。

小説・コミックと全部読むのは骨が折れましたが(汗)これでひとつにつながって、理解が深まる感じがします。ちょっと泣きすぎて目が痛いですけども!

小説、ちょっとつらくて☆4でも・・・と思ったけど「萌え」ではないかなと思って☆5で。←増えてる(笑)

5

この作品にはムクさんのイラストで正解

cabの創刊号付録で途中まで読んでいたけど、もしかしてこの話はこれっきりなんだろうかと思っていました。
『キャッスルマンゴー』の付属的なお話として華を添えたのかなあと。
なのでノベルズになり、しかも『キャッスルマンゴー』のその後の話をたっぷり読むことができて、嬉しい驚きでした。
不運な生い立ちの十亀の悲惨な高校時代。
家族で路上生活をしていたこともあるから、屋根と畳がある家に住めるだけありがたいというような、姉と弟との貧乏生活で、父親の借金返済に追われる日々の中、畳み掛けるような不幸に襲われる十亀。
これはもう木原さんならではの…ってやつですが、これまでの木原作品を知っていればなんのその。
読んでいていつものようにドーン(´Д`|||)とならないのは、先に『キャッスルマンゴー』で、十亀の将来を知ってしまっているというところが大きいのだと思います。
何の後ろ盾もない状態で映画の道を逞しく進んでいる十亀を漫画で見ているから、安心して…というのは語弊があるけど、さほど苦しくならない。
腹の立つ登場人物は数人出てくるけど、殺したいほどじゃないし。登場人物どころか主役が酷い男ってのがよくあるので、今回はちっとも辛くないのです。
第二章の「god bess you」では、すっかり映画作りの世界に入り込んでしまいました。
実際こんな感じなんだろうなあと頷けるほど、熱気を感じる臨場感があり、やっぱり木原作品は別格だと嘆息。
実力と人柄で、徐々に上り詰めていき、そのうちカンヌを取るような監督になるだろうという予感が伺える十亀の仕事ぶりもじっくり伺えて、先の幸せが見えたエンディングに心はほっこりです。
おかしい。
癒されたくてBL読んでるのに、なんでこんなに嫌な思いしなけりゃいかんの…って、ならないところがらしくない。
どうも最近の木原作品は、柔らかい気がしますがどうでしょか。
油断してるとそのうち来るかな…ドーン(´Д`|||)が。

5

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