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love&catastrophes
語シスコ先生の作品、近年稀に見ない作風でパンチがきいてるわ!
短編集なのに、アップダウンが仰山だわ。
この時代のBLはよく分からないが、絵柄からセリフまわしから、素晴らしい。
全話通して、あまりのはちゃめちゃぶりに途中で大笑い。。。
なぜ、そこでそうなるの?って、奇想天外www
大体が、イカれてる。
容赦のないいかれたヤロー達の行動と、ホロっと見せる弱さ。グッと深くなるね。
何気に、「何処へも帰らない」の、脇役のカツローがいい奴だったな。
語シスコの世界観〜神!
◆ESCAPE
最後は3編からなる表題作の受けの話で締められるので、読み終わった後、この冒頭の作品の記憶はすっかり薄れてしまうのですが、再度読み返すとやっぱりいいなぁと思いました。青春の中の儚い逃避行。悪行を繰り返しながら逞しく生きるアキオと、箱入り息子で親からの愛も十分足りてそうだけど、学校と家だけの狭い世界に閉塞感を感じているキョーヘイ。進んで犯罪に手を染められるほどぶっ飛びはできないけれど、アキオの側にい続けたいというキョーヘイの幼くも純粋な感情が切なくて。2人がその後再会できたかは分かりませんが、キョーヘイの記憶には永遠にきらきらと焼きつくのだろうなぁと思いました。
◆何処へも帰らない
これは一番萌えた作品かな。施設育ちでちょっと頭の弱い、裕倫。恵まれない子供が施しを受けた見返りに相手に奉仕する、というのはBLではそこそこ見かける展開。ですが、彼の場合はそこに悲愴感や後悔もなく、お金がないから代わりに性行為、という単純な報酬の構図になっているようで。でも、穏やかな愛を注いでくれる元春とは、体の関係以上にちゃんと心も通い合うようになるんですよね。臆病な元春を追いかけた裕倫の気持ちが、沁みました。字が読めないと言えなかったいじらしさも。そして、悪役だと思っていたカツローの思わぬ優しさに泣かされました。
◆明日どーやって笑えっちゅーの〜LOVE&CATASTROPHES(表題作)
表紙を飾る、漫画家の菊ちゃんの物語。最初は担当編集の鮫島との関係から始まって。これも、よくあるエロ漫画を描くための担当と作家の恋なのかと思いきや、物語は想像よりずっとヘビーな方向へ進んでいく。鮫島を憎みきるしかなかった彼の想いが、痛々しかったです。後ろ2編は新たな恋。暴力こそないけれど、ほぼレイプと言ってもいい行為を繰り返すイチローがとんでもない男なのですが、菊ちゃんも読者もなぜか憎めないのは、確かに菊ちゃんへの一途さを感じるからでしょうか。責める時も歯の浮くというか笑ってしまうほどの状況描写をするタイプで、それもあながち冗談でもなさそうな所がまた面白く。不毛かもしれないけれど、一度は一緒に突っ走ってみればいい、2人にもそんな青春を楽しんで欲しいと思います。
これがデビュー作とは…恐るべし。
先に「ラブ?YES」を読んでしまい、元の作品「何処へも帰らない」を目当てに読んだわけですが、どの短編も濃い!
「ESCAPE」
これはラスト1行に全てが詰まってると思ったな…
『窓の向こうには別の世界があって オレはしばらくそこの住人だった』
アキオの強烈な存在感と、コイズミの焦燥。
「ソウルフルチェリーボム」
可愛いお話!
男と不倫する妻帯者のズルさ。そこをバッサリ斬ってくれる年下のラテンボーイ。誠実ってのはこういう事だよね。
「何処へも帰らない」
先に「ラブ?YES」に収録の後日譚から読んでしまって失敗した…と思ったんだけど、逆にコッチを後に読んで良かったような気がしている。
小田桐と裕倫の出会いは、こうだったのか…
この出会い方、カツローの造形あっての2人の暮らし、そして小田桐の達観だったのか、と腑に落ちた。
「明日どーやって笑えっちゅーの」
ここからエロマンガ家の菊地春人の物語になります。
まずこちら。初めてホモマンガを描く事になって行き詰まる春人に、目の前でプロの男の子と緊縛Hをしてみせる編集者。
しかし彼は…?この事実は重すぎる…!
「昔の名前で出てんじゃねェよ。」
出版社のパーティー、いや単なる宴会に出席した春人。そこで1人の作家を紹介されたのだが、そいつにいきなりトイレでヤられ。
作家というのは嘘で実は同級生だと言うが、調べたらその子は事故死していた。一体ダレなんだ⁉︎というどこかミステリアスな話。
だけど春人はこの男に恋するのです。
「ラブ&カタストロフィー」
もう会えない、もう会わないと思っていた好きな男がフラリと舞い戻ったと思ったら、自分の借金のカタにゲイビ撮影させられたり。
でも春人はそんじょそこらの恋にかまけるヤツらとは全然違う。
この男がスキだ。でもオレは1人でいいんだ。アイツはもうすぐ出て行こうとしている。でも止めなかった…
さて、ラストにどんな結末が待っていたのか。これは是非読んでみてください。私は涙が出てきたよ…
ちるちるのあらすじ、紹介文から強烈な個性がぷんぷん漂ってます。
「抱き合えば何もかもどうでもよくなる気がした。よりかかれるものなんて失うくらいなら欲しくはない」ホモエロマンガ家・菊池春人(21才)。
行きずりでワルで調子こきのイカレヤローにナメられそのあげく、永遠の恋に落ちた。愛と孤独と欲望に生きれば、未来は明るい。
このノリ。
正直怯んだのですが、心配ご無用!
ぐいぐいとした勢いに巻き込まれて一気に読み終えてしまいました。そしてクセになります。(早速、「上等だベイビー」も読む事にしました。)
ろくでなし、バイオレンス、アウトロー、セックスに満ちていて、刹那的。とんでもないやつばかりが登場してその勢いに圧倒&油断しているとまさかの純愛が描かれていて思いもよらぬ切なさが心臓を突き刺してくるところがいい。
特に気に入ったのは以下。
「ソウルフルチェリーボム」
不倫の恋をしている河井の前に登場したドレッドヘアの男の子。マシンガントークで攻めてくるワンコ。
好きなところはセックスシーンの「見て オレたちひとつになってる そう言ってユータはぎゅうっと抱くので まるで愛しくってたまんないってカンジでぎゅうっと抱くので」というところ。
ここだけ時が止まったような静けさ、あたたかさ、愛に満ちていてこの作品の中で一番穏やかな部分とも言えます。ここが最高です。セックスの基本ってこれだよね、みたいなものを今更ですけど認識させられたと言うんでしょうか。数多のBL読んでてあまりにも濡れ場慣れしちゃったような私ですけど、原点を思い出させてくれたというか。
それを全編ピュアピュアほのぼのBLではなく、他作品はアウトローやらゲスやらに満ち満ちたシスコさんの本の中に、こんなシーンとセリフがあるもんだからここのピュアさが突き抜けて感じられるという。
「何処へも帰らない」
読み書きを知らない施設育ちの裕倫と小説家とのお話。身体を売って生きてきた裕倫の元締めみたいな存在だと思われたカツローに身請け金500万の小切手を支払った小説家だったが…。
このカツローがまぁ見るからに凶悪そうな面構えなんだわ。しかし!裕倫と小説家のラブストーリーというよりも裕倫とカツローとの絆のほうがグッときます。
ああ、菊ちゃんとアキラもいいなぁ。アキラなんて自分の借金のカタに菊ちゃんとの絡みをゲイビ撮影させちゃうくらいのとんでもないヤローなんだけど、嫌いになれない。酷いやつなのに。
私がトピ立てした「ちるちるのランキング圏外だけど、心の琴線に触れた作品を教えてください」
http://www.chil-chil.net/answerList/question_id/4967/#IndexNews
で教えていただいたのが、こちらの作品です。
短編集なんだけど、どの短編も捨てがたくどれも良かったです。一度読んだら忘れない類の作品ばかりでした。
読むきっかけを与えてくださり本当にありがとうございました。
備忘録的レビュー
映画館でセックス、ドレッド中学生、刺青をつぶした鮫島、イチローと菊ちゃん、どれもいい。
なかでも特に『何処へも帰らない』
これがめっちゃ好きです。
カツローがいいキャラしてる。
全体的に世紀末の懐かしい感じ。
刹那的な、それでいてその中で永遠を探しているような。
出てくるキャラクターもいわゆる普通とはかけ離れていて、施設育ちだったり不良(というか犯罪者w)だったりヤクザだったりエロ漫画家などなど……
みんなそれぞれ家庭や過去に様々なカゲがある。
でも全然暗くない。
どれもPOPで明るい。
ファッションなら古着、音楽ならPUFFY、漫画ならご近所物語のようなあの時代を感じさせるBL。
語シスコ先生のデビューコミックスにして私を虜にした作品。初めて読んだ時の衝撃は忘れられません。先にレビューした『三十二歳の地図』は初心者向きと書きましたが、毛色の変わったものでも大丈夫と言う方には、この『LOVE&CATASTROPHES』から読むことを強くお勧めします!
・『ESCAPE』
ロードムービーのような作品。大好きです。
とんでもない悪党のアキオと、閉塞感を抱えた箱入り息子のキョーヘー。外の世界へ飛び出して、抱きあって悪さして、逃亡しながら何度も抱きあって、目的も理由もなく、どんな感情なのかもわからずにただ抱きあう。10代という設定がたまらなく切ない。
“アキオはいつも胸のつまるようなキスをした”というモノローグに私の胸も苦しくなる。「いつか迎えにいってやるよ」というアキオの台詞が、カタルワールドなら本当になりそうに思えて涙が出た。
・『 ソウルフルチェリーボム』
結婚してしまった年上の彼氏とずるずると不倫関係を続けている修二。ある日出会った年下のユータに突然告白されて…。
最後に勝つのは愛だな~ってじんわり来ちゃう作品です。修二とユータのHが楽しくて愛がいっぱいで、文字もいっぱいで、エロくって、こういうHはカタル先生の真骨頂です。見ていてすっごく幸せな気持ちになれます!
・『何処へも帰らない』
大好きな作品です。読み書きも知らない裕倫の素直さが心に沁みます。裕倫が美少年なのも、ファッションがお洒落で可愛いのもツボです。
作中で“裕倫たちが捨て子だった話”を聞いて、「村上龍の小説を思いだした」とあるのですが、私は『コインロッカーベイビーズ』のキクとハシよりも、裕倫とカツローの方がずっと好きだな。格好良くって逞しくて優しくて、社会的に弱者であるはずの彼らの存在が鮮烈だ。裕倫の荷物にしのばせたカツローのメモは、思い出すだけで号泣してしまいます。このカツローのキャラ紹介が先生が溺愛した攻めキャラとして『上等だベイビー』に載っています。
彼らのお話は『ラブ?YES』に同時収録の『色は匂へど散りぬるを』に続きますが、もっと続編が読みたいと思う魅力的な作品です。
・『明日どーやって笑えっちゅーの 』『昔の名前で出てんじゃねェよ。』『ラブ&カタストロフィー』
菊ちゃん&イチローシリーズの始まり編。菊ちゃんのタフさと、アウトローなイチローが魅力的なシリーズ。愛すべきロクでなしを描かせたらカタル先生の右に出るものはいないと思う。
表題作の『ラブ&カタストロフィー』が描き下ろしという変わったコミックスなのですが、目隠しされてゲイビ撮影、しかも借金の肩代わりなんていうとんでもない始まりなのですが、思わぬ展開に涙です。
別れを意識した二人が右手と右手を繋いで前後になって歩く海辺のシーンがとても印象的で、青春映画のワンシーンのように目に焼き付いています。カタル先生の作品はどれもごちゃごちゃした画面なのに、アナログ撮影された映画のような雰囲気があるんですよね。魅力的だなぁ。
語シスコ先生は私世代にはカリスマ作家様です。とんでもない男たちが描かれているのにどれも愛がいっぱいで、大笑いして、呆れて、泣いて、そして「人生って悪くない」と心がぽかぽかしてくるのです。
沢山のコミックスがあるのですが、次は菊ちゃんとイチローのその後が読める『世界の中心で愛なんか叫べねーよ』がお勧めです!
*追記
語シスコ作品の中で下の3冊はA5サイズです。
『LOVE&CATASTROPHES』
『こどもの時間』
『おとなの時間』
サイズが違うのは収納に困るけど、読みやすくていいですよ!
茜新社から出ている「世界の中心で愛なんか叫べねーよ」の前編にあたる作品で、菊ちゃんの過去や菊ちゃんとイチローの馴れ初めが読めます。
菊ちゃん&イチローシリーズは全部で3編入っています。
どれもかなりイカレた内容なので、最初こちらの作品だけ読んだ際はそこまでハマらずさらっと読み終えていたのですが、「世界の中心で~」を読んでから改めて読み返すとめちゃくちゃじわっときました。
何度も読み返しています。
『明日どーやって笑えっちゅーの』
菊ちゃんと菊ちゃんが初めてホモエロ漫画を描くことになった出版社の担当編集〔鮫島〕の話。
(鮫島は「その町で男はバスを降りた」収録の『シークレットエージェントマン?』にもチラッと出てきますよー)
勢いで受けたホモエロの仕事に苦戦している菊ちゃんのためにデリヘルボーイの〔麗二〕を呼んで自分のセックス行為を見せ始める鮫島に、菊ちゃんは戸惑いながらも創作意欲を掻き立てられ一気に描き上げます。
漫画は読者にも受け、その後も鮫島は創作の度に幾度となく同じような協力を繰り返すのですが、担当の仕事の域を越える鮫島の献身の裏には理由があって……明かされる鮫島の秘密と菊ちゃんの過去が悲しいのです(涙)
『昔の名前で出てんじゃねェよ。』
菊ちゃんとイチローの出会い。
見ず知らずの男に出会ったその場で訳が分からないままめちゃくちゃに犯され、その男は〔岡田ユージ〕と名乗り「オレを探してくれるんだろ?待ってるぜ」と気になる言葉を言い残して去っていきます。
菊ちゃんとイチローはある男によって引き合わされた二人なんですが、こちらのお話にも中々に悲しいエピソードが隠されています。
『ラブ&カタストロフィー』
半年振りの再会~二度目の別れと、2年を経て再び再会するまで。
この話がめっちゃイイ。
とんでもない冒頭シーンからは想像出来ない感動的な結末でした。
最初に会ったときから、すでに二人は恋に落ちてるんです。
だけどイチローの破天荒っぷりに現実主義者の菊ちゃんの頭はイチローに落ちてはいけないとしきりに警鐘を鳴らす……菊ちゃんの苦しい葛藤が綴られ、そして一度は別々に生きていこうとする二人ですが、菊ちゃんはイチローのいなくなった世界にそのまま取り残され、周りがどんどん変化していく中で、菊ちゃんの心はイチローとの過去に囚われてしまいます。
ストーリーは菊ちゃん視点なのでイチローの心は分からないけど、離れていた2年間囚われていたのは菊ちゃんだけじゃなかったんだろうなって想像出来るイチローの決断が泣けます…
これと『世界の中心で愛なんか叫べねーよ』の2編は、繰り返して読めば読むほどどんどん好きになっていきます。
以下は読み切りの短編です。
『ESCAPE』
誰でもいいから今いる世界とは別の世界に連れ出してほしかった主人公と、自分と真逆の真っ当な人生を歩む主人公に羨望と憎悪のないまぜになった感情を抱いてきた不良の、束の間の逃避行モノ。
毎日のように抱き合って、恋人のようなキスをして、お互いの服を交互に交換して着合ってたりしているけど、恋とも愛とも呼べない二人の関係には何の未来も見えなくて悲しさを誘います…
孤独や閉塞感を感じたとき、一度はこの主人公のようなことを思うんじゃなかろうか。
10代の頃にハマって何度も見た「未成年」ってドラマを思い出しました。
『ソウルフルチェリーボム』
不倫に疲れた主人公が、年下の少年から与えられる真っ直ぐな純愛に救われる話。
心がじわっとあたたかくなりました。
『何処へも帰らない』
自分の存在価値がわからなくなった小説家が、大学生時代に住んでいたボロアパートで、偶然知り合ったあどけない少年と束の間のままごと遊びのような生活に興じる話。
親に捨てられてもタフに生きてきた少年の姿が弱った小説家を救います。
「ラブ?YES」に、この二人のその後のお話『色は匂へど散りぬるを』が収録されていて、そちらもすごくいいお話です。
心が弱っている時や行き詰まりを感じた時に読むと染みる一冊じゃないかと思います。
今のところマイベストBL本。
6つのお話が入っていますが、ひとつとして捨話はないと思っています。
絵柄やストーリー展開などで好みはわかれる部分はあるかなぁと思う作品及び作家さんですが、個人的にはなかなかこれを超えるものはないというくらいの神作品です。
受けも攻めもみっともなくてバカみたいだったりふざけすぎてたりするんですが、それ故に根っこの部分のシリアスで痛々しい感情の描写が生々しく感じられ、キュンキュンします。
コメディ部分とシリアス部分のアップダウンが激しく、息もつけないかんじがとても良いです。
レビューでは、受け攻めの傾向を書いていこうと思っているのですが、そんなものはもはや関係ないくらい素敵な作品です。
攻めはかっこよく、受けはかわいいめという基本はあるものの、どちらもどこかで崩れていて突っ込みどころのあるかんじ。そんなシーンは画面の枠でしろよ!と言われかねないようなの素な一面も描写しているところが個人的にすごく好きです。
全体の傾向として、性にたいしてあっけらかんとした感じの受けが多いです。そして登場人物は、定職についていなさそうな人が多め。特に本作は90年代チーマータイプの不良文化というか、そっち方面のアウトローな雰囲気が強いので、そういうのがお好みの方におすすめ。
1999年の作品なので、服装だとか空気感だとかに90年代の雰囲気が現れています。90年代好き・懐かしい雰囲気に浸りたい人におすすめ。かといって「古くさい」というかんじはまったくしないと思います。
主観によるざっくりとした表記の仕方ではありますが、傾向としては以下のようなものになるかなと思います。
■ESCAPE
大人びた不良×ちょっとすれたボンボン
■ソウルフルチェリーボブ
チャラく見えて純情な年下×それなりに世慣れた強気
■何処へも帰らない
ヘタレ小説家×白痴ショタ
■明日どうやって笑えっちゅーの
寡黙無口×ちょっとスレたエロ漫画家
■昔の名前ででてんじゃねーよ(上記の受けが再登場)/■LOVE & CATASTROPHES
自信過剰なアウトロー系自由人×ちょっとスレたエロ漫画家
『愛と孤独と欲望に生きれば、未来は明るい。』
…カバーに記されているコピーですが、この一言に尽きますね。色々あったりしてちょっとヤケになってる時とかに見ると更に沁みる作品集じゃないでしょうか。
一見何も考えず気楽に好き勝手やってるように見えるけど、実は自分ではどうしようもない澱みが心の奥底に有る。そんな少年・青年ばかり出て来ます。
なので、描かれている行為はみんなどこか切なくて滑稽で歯がゆい。いつバランスを崩すか分からない危うさ。しかしそのバランスが崩れた後に目に映る景色、その眩しさが心を打ちます。これぞ語シスコパワー!(初読みだけど。)
読んだ後にはカラッとした明るさが残り「そうだよきっとどうにかなるさ!」って前向きな気分になれます。
それから、トリッキーな設定が多いのも特徴かな。
例)
●一通りのヤバい事はやらかして来た不良が同じクラスのボンボンを連れ出し映画みたいに逃避行。盗んだクルマで走り出せ!みたいな。
●不倫の恋に疑問を持ち始めた大学生。コインランドリーで洗濯してたらちょっとイカれ気味なドレッドヘアーの奴(半裸)がやって来て告りやがったよ!?
●なぜか少女向けホモ漫画を描く事になった成人向け漫画家。どう描けばいいのか分からないって言ったら編集がデリヘルボーイ連れて来て参考にしろって緊縛ショーおっ始めてそりゃあもうびっくりしたワケで…。
1999年刊…ということで全体的に時代を感じるけれど古臭いワケでは無く、上手く時代の空気感が出ていてなおかつ現在に通じるテーマが有るというか。
今の10~20代前半の人達が読んだら何を思うんだろうな。興味あります。
”世界の中心で愛なんか叫べねーよ”の主人公達の過去と出会い編、語シスコさんのジュネでの1stコミックなんですね♪
95年頃の作品よりは、コマ割も絵柄も安定しているから読みやすいです。
この方のマンガはどれもいわゆる不良というアウトローな人間が主人公なことが多く、だからか、ハチャメチャな行動の割に切ない部分が必ずあってホロっとさせられちゃうのですよ。
まさにこの一冊もそんな構成で、思わずウルっとくるものもあるのです。
あ、もちろんエロいんですけど・・・
表題は、『明日どーやって笑え~』で菊ちゃんの過去、『昔の名前~』でイチローとの出会い、そして『ラヴ&~』でトワの恋に落ちる二人、という菊ちゃんを中心にした3本で一本のシリーズになっています。
菊ちゃんがホモエロマンガを描くことになったきっかけの担当編集との過去は結構悲しいのです。
初めてホモエロを描くからと自宅にデリヘルボーイを呼んで編集自らSMの実演を見せる様、元ヤクザだったという彼の背中の刺青を消した痕がとても痛々しい。
そして、イチローの出会いはとんでもないトイレファック(半ば強姦)
菊ちゃんは本来ゲイではないのですが・・・イチローが菊ちゃんの元にやってきたのは鑑別所で昔菊ちゃんを好きだったユージという青年から菊ちゃんの事を聞いていて、そのユージが事故で20歳で死んでしまったから、代わりに抱きにきたという・・・結構悲しいものがあるのですが。
そうして菊ちゃんの前からイチローが消えた時にはすでに彼に恋に落ちていて・・・
しかし!半年後再会はいきなり拘束されて、イチローの借金のカタにエロビ撮られて、とんでもねーヤツ!!
そんな出会いと別れを繰り返して、イチローと菊ちゃんは離れられない本物の恋人になるのです。
いい加減そうなイチローだけど、本当は寂しい菊ちゃんを包み込んでやさしくして、ジゴロの要素タップリ。
それでも、二人の時はとても誠実なのです。もちろん体の相性もあるのでしょう。
”世界の中心で~”の後で読むと、そんなことがあったんだ~と目から鱗な感じです。
逆にこちらから読むと、次のラブが納得の感じに。
イチローの髪型がストレート黒髪なのであまり悪い人っぽく見えない、”世界~”の方がワルに見えますね。
『エスケープ』はアメリカ映画な作りの不良の話。痛い!
『ソウルフルチェリーボム』不倫の行き詰まりを感じる主人公は、猛アタックする少年によって救われる・・中学3年!?
『何処へも帰らない』”コインロッカーベイビーズ”を連想させる少年とよりどころとなるものを失くし、生きがいを失くした小説家との出会い。
少年の生活が悲惨を感じさせないのは愛があるから?
ネガな小説家の最後の決断に涙を誘われた。
語さんの作品、どれも映画みたいなんですよね。
80~90年代のあの切なさを含んだロック系のアメリカ映画の雰囲気、それが切なさの元なのかな?