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tantie aoneko
探偵青猫シリーズの完結編です。
感無量でした。
一巻からイチオシで大好きだった虎人くんが見事なイケメンに成長してた…!といっても二巻だったか三巻だったか、青猫の「夢」のなかにすでに成長した虎人くんが登場してたのですが。やっぱりあの夢は、夢ではなかったんだね。
ただ、虎人くんは、成長してもド凶悪な目付きのままで良かったと思います。目付き良くなりすぎ!いや文句はないんですがw
苦悩する虎人くんにはハゲ萌えました。ガキの頃のほうが甲斐性があった、ほんと鶯の言葉通り。でも、少年虎人が老成しすぎてたから、青年虎人の苦悩が逆に染みました。悩むのは大人への階段ですね。
二人を見守る青猫と鶯にも萌えました。
ちなみにこのシリーズの世界観は、登場人物総光源氏化って感じです。
みんながみんな、複数の男女と「本気の恋」をしてるんですよ。ただ、光源氏に紫の上がいたように、それぞれの登場人物に紫の上的な相手がいたりもします。
虎人くんにとって、洵くんかそれに当たる。
青猫にとっては鶯がそれに当たるのかな。
早乙女男爵には、青猫父が…
硝子蝙蝠は、ネペンテス?それとも青猫?
こんがらがりまくった「みんな穴兄弟♪」ってノリのシリーズなんですが、この作品のキモはそこじゃないのもポイントなんですよね。
これだけみんな穴兄弟でありながら、モラルの崩壊を描いてるんじゃなく、きっちりした「愛」を描いてるんですよ。
それは、最終話である『ネペンテスの袋』できっちり証明されます。
これ、誰のセリフをも誰のモノローグをも「そのまんま」に受け止めてはいけないお話でした。
囁く愛は、いったい誰に向けての愛だったのか。
誰がどんな誤解をしていて、なにを望み、なにを得たのか。
心の表層で求めていたものと、心の奥で求めていたものの違い。
どこまでが計算だったのか。どこまで自覚があったのか。
文字数があったら、一ページごと一つのセリフごとに、誰得な持論を語り倒したいぐらいなんですけどね…w
作者の本仁戻さんが「とても苦しみました。歳をとるごとにシンプルなものの奥にある複雑なものに惑わされて、ろくでもありません。」と書かれてましたが、確かに説明できない感情をここまで濃縮して詰め込もむのは、本当に大変なことだっただろうと思います。しかも、言葉通り出口はシンプルなんです。素晴らしいものを生み出されたと思います。
シリーズ通して傑作でした。
複数の視線による交錯する愛情。
1巻に登場した洵くんと宝石:マリアの涙に関連する話が収録されています。
【夜の骨牌(かるた)】
1巻で苦難の末、幸せを掴んだ洵(まこと)くんに再び重くのしかかる過去。
引きとられて5年、緑川夫妻のもとで健やかに暮らしていた洵を待ち受けていたのは家庭教師からの凌辱。
それをキッカケに封印されていた男娼だった過去の記憶が甦り自分を汚い人間だと自らを責めるように。
洵を苦しめるのはあの暗闇ともいえる日々の中、青猫を愛し愛された眩い想いを忘れてしまった申し訳なさと今、想う虎人への罪悪感。
忘れてしまうということはゼロに戻す作業であって、そのままではプラスにはならない。
そこを越えて洵くんが何かを得ることができるように青猫と鶯が一肌脱ぐわけですが…。
ここで『対(つい)は一つとは限らないという』という青猫シリーズのひとつの主題が若いふたりが次へ進むためのおまじないのように語られます。
洵を抱きしめる虎人の想いや、そんな二人を見守る青猫と鶯の姿に涙が溢れてとまりません。
人は相手によって見せる姿、映る姿が違う。
それぞれの対の相手の光に照らされ違う輝きを見せる…一般的に複数の相手というのは疑問視されがちですが、いっぱい好きな人がいて両立しててもいいじゃないという青猫の理屈に夜空に浮かぶ洵と虎人の固く結ばれた手が重なり妙に納得してしまうのです。
独占したい気持ちも嫉妬も存在しつつ愛情を共有し、それが救いになり希望となるなら不可思議な理屈も有りですよね。
虎人くん、彼もまた屈辱的な幼少期を過ごし
てきたのですが青猫との小さな物語の数々と想い、洵への想いが、強くて素敵な若者へと成長させてくれたようで、すごく嬉しいです。
【ネペンテスの袋】
硝子蝙蝠の恋人だった女盗賊ネペンテス。
彼女は硝子蝙蝠の『特別』である青猫恭次郎を手に入れようとします。
女賊は過去、飽きられることを恐れ硝子蝙蝠の元を自ら去りましたが、それは硝子蝙蝠にとっても彼女に対する興味を失わないという点では都合が良かったのではないかと思います。
手に入れたもの(人)に飽きて捨ててしまう人種は確かにいます。
それでなくとも人の気持ちはずっと同じのままでいるというのは難しい。
青猫もまた、かつて女賊と同じ行動をとった…そして今また、硝子蝙蝠の手に掛かり永遠の存在となるという野望(夢)を抱くネペンテスと青猫。
硝子蝙蝠を挟み、青猫の心情とネペンテスの苦悩をリンクさせているのか…いやぁ、ホントに難しいです、この話。
結局ふたりは硝子蝙蝠の『本当』を知りたかったのだろうか?
モノローグがこれでもか!!と頭に雪崩れ込んでくるのですが、それは女賊ネペンテスとしてなのか、ひとりの女性としての心情なのか、ちゃんとつかみきれていない私です(笑)
BLにおける『女』という存在はとても微妙なのですが彼女はとてもエグくて大胆で魅力的でした。
アクが強すぎて彼女に集中するあまり、青猫から意識が逸れがちになりましたが(汗)
読むたびに印象が変わります。
この巻で終わりかと思いきや、どうやら続いてくれるようで安心しました。
青猫中心に硝子蝙蝠、鶯、早乙女伯爵、虎人、洵くん、、ついでに蜂王子刑事も、彼らの『対の骨牌』のエピソードをのんびり待ち続けることにします。
よく何度も読むと味わい深いという表現を使いますが、本仁作品に限ってはそれはそれは甘美な香水の香りが変化して匂いを変えてなおその香りが頭に心に残ると言う意味を例えに使いたい。
途中で中断し、再開までに間があいて実に2年ちかく待った作品。
作者さんのスランプの間、HPを見ながらただただ見守るしかなく、復活された時、まるで以前に戻ったかのような耽美の世界が繰り広げられていたことに、やはりこの青猫を見るにつけその深さを思い知らされます。
この6巻は1巻と深い繋がりがあります。
『夜の骨牌』は1巻に登場した虎人の友人マコくん=子供の頃親に売られ男娼をさせられていた過去を持つ、頭の発達が身体に追いつかない子。
青猫の知り合いの緑川夫妻に引き取られ幸せな生活を送っていたはずなのに様子がおかしいとの連絡が。
あの1巻のマコくんの過去を知ってこそこの話の骨格がみえると思いますので、未読の方にはわかりづらいかも?
過去を封印したはずなのに、何かがきっかけでそれを思い出してしまった。
自らを汚いというマコくんの、その拙い言葉の意味を一番解って理解してるのは青猫だった。
しかし、出張ることなく虎人にそれとなくその役割を与える青猫。
夜のパズルの意味。
マコにとって愛する存在は青猫であり、汚してはならない存在は虎人であり、
虎人にとって汚してならない存在であるのはマコくんであり、青猫は愛する存在で、
互いに互いを思いやる余りのそのすれ違いは、本当は無器用な子供たちの恋愛の姿に見えました。
ここでの青猫と鶯が、まるで夫婦のように(番ではある)若者を導く姿は彼等の親のようだった。
マコくんと虎人は番えたのだろうか♪
幸せな結末。
『ネペンテスの袋』硝子蝙蝠の元恋人女怪盗ネペンテス
これも1巻で登場した「マリアの涙」という宝石を巡っての出来事になります。
狙ったものは逃さない硝子蝙蝠が唯一手に入れられなかった宝石「マリアの涙」
それを持っているのは青猫。
ネペンテスはそのマリアの涙をそしてそれにも勝る宝石と言う青猫を自分のものにすると硝子蝙蝠に宣言する。
細かい話はしますまい。
唯一愛しい男の愛が本当は欲しかった。
老いることのない美が欲しかった悲しい女の話。
彼女に与えられた死は、本当に欲しかった愛する男の唯一の愛だったのかもしれない。
硝子蝙蝠の愛と執着も織り込みながらこのネペンテスが主人公でもある話でした。
実に耽美を最大限に生かし、至高の愛をドラマティックに表現した秀作に仕上がっていると思えました。
本仁さんが表現したかったもの。
そのために生みの苦しみを味わった作品。
さらっと読んでしまえば実にあっけない数十ページのものだが、そこに作者の汗と涙もつまっているのだと思うと、ネペンテスが作者に重なって見えてくる。
次はスタンレーホークです。
これで何とか調子を取り戻して、本仁さんにしか表現できない耽美世界をまだ存分に見せてほしいと切望します。
本仁先生の卓越したストーリー、構成力、絵にいたるまでもうこの先生にしか出せない表現みたいなもので満たされています。
とりわけ【ネペンテスの袋】が、青猫、硝子蝙蝠、女怪盗ネペンテスの三者三様の思惑が絡み合い、何度読んでも答えは一つではない複雑な作りになっています。
ネペンテスの毒によって死に近づく青猫。
解毒剤を使わず死を選ぼうとする青猫の思惑に気付いてしまう硝子蝙蝠。
女怪盗ネペンテスか美しい京子なのか。
手に入れてしまえば飽きてしまう、自分が飽きてしまう前に相手に飽きられてしまわれたい、飽きる恐怖。
いろいろな思いが絡み合う中、ただ一つ決定的なことが起きる。
今までけして破られることのなかった蝙蝠の掟。
呆然と掟が破られていくのを見ている青猫。
そしてその事実に気付く。
もうお腹いっぱいになりました。
「夜の骨牌」
また少し未来のお話しとなります。
三十路の青猫とあんなことこんなことを知ってしまった小林青年。
そして体だけが大きく、心は純粋なままの洵。
身に降りかかる浅ましい行為に苦しむ洵に昔日の記憶が蘇り、青猫への贖罪、虎人への背徳感。
たった一人とではなく情を交わす「探偵青猫」の世界で、心の寄り添う対となる相手が必ずしも一人ではない。
説明の難しい気持ちの部分を鶯の説得で感覚的に理解出来た洵と虎人のこれから。
そうして青猫が、自分がそうされたように、虎人と洵を見守り続けて道を照らす先人の役割をきちんと担っている姿に、どきどきとほんわかした気持ちが入り混じって嬉しい気持ちになってしまいます。
「ネペンテスの袋」
青猫と硝子蝙蝠。そして硝子蝙蝠の昔の女、ネペンテスを交えたトライアングル。
瑞々しい気持ちの変化を厭い蝙蝠を捨てたはずが舞い戻ってきた理由。
生きていれば必ず老いる。
その、いずれやってくるグロテスクな姿に怯える女の性と、そんな事に思い悩むこと事態を呪ってしまうネペンテスのジレンマ。
美しいものをこよなく愛する蝙蝠の心を繋ぎ止める術を、ネペンテスは捨てることで心の平穏を得た。
青猫は逃げることで、同じように不安を解消した。
ネペンテスと青猫の恋のさや当てのはずが、蝙蝠を交えてそれぞれの思惑へと変化し、蝙蝠が誘ったのか、ネペンテスが元々望んでいたのか。
若い青猫を場外へ追い出し、蝙蝠とネペンテスのお互いが持つ未練を断ち切る為の、多分、最善の方法。
蝙蝠の掟にこだわり、それを覆す唯一無二を求めて差し出されるもの。
悲しみと絶望に、より美しさを感じる結末に酔いしれてしまいました。
何故か、ずっと続くと思っていたのですがこれで完結となります。
再読して、話しの巧さに引き込まれ新鮮な気持ちと懐かしい気持ちで読み終わりました。
6巻。
一応ラスト巻です。2つの物語収録。
「夜の骨牌」(上)(下)
再び大人の虎人と、同じく大人の洵(まこと)の切なすぎる物語。
自殺未遂の果てに、男娼だった過去や青猫に愛された記憶を失い、緑川伯爵の家で暮らす洵。
しかし、言葉の家庭教師に襲われて快楽と共に全てを思い出し、自分は汚れているからもう虎人と会えないと言い出す。
舌ったらずな洵の一生懸命な言葉の切なさ。
「対のカルタは1つじゃない」
これがこの「探偵青猫」の大きなテーマの1つのような気がする…
ともかく、洵が大好きな虎人は、星座の模様でいっぱいの星空の下でしっかりと洵を抱き締める。
「ネペンテスの袋」序章、其の壱〜参
こちらはまた趣向が変わった物語で、女賊ネペンテスと青猫、そして硝子蝙蝠の対決。
そしてこれは「黒蜥蜴」だと思いました。
1巻の最初のエピソードだった「マリアの涙」を奪いにくる黒江夫人ことネペンテスだが、これは女性には少しキツい物語だと思う。
稀代の女賊ネペンテスも老いて色恋が効かなくなってきて、自身の非情さも弱り…
彼女のやり口はその愛液に毒を仕込むことだから、男と抱き合わないと彼女の犯罪は成立しない。
やってくる硝子蝙蝠の言葉の辛辣さ!
しかしながらこのネペンテス。女性に見えないんですよね…
このラストの1編はコミカルさは全くなく、非常にまた非情にシリアスでありまるで映画を見たような読後感です。
この1編によって、一層「探偵青猫」に凄みが出た。神寄りの「萌x2」で。
成長した虎人と洵と青猫の複雑な関係もまたいいですね。3人とも後の2人を愛していて、単純な嫉妬で片付けられないところがややこしいけれど、この3人らしくて好きです。この3人は情が深いから、今後も3人で上手くやれると思います。後半の硝子蝙蝠と女賊ネペンテスと青猫の対決は、濃厚な腐臭が漂うような物語でした。こちらも蝙蝠と女賊の関係、蝙蝠と青猫の関係が鍵となっており、前半とは異なる大人の三角関係です。永遠に相手を愛するためにとる行動がそれぞれ違うところが面白い。この1冊でお腹いっぱいになりました。