あさだ2枚
よしながふみ先生は素晴らしい作品を生み出し続けているんだな、ということがよくわかる20年以上前の単行本です。白泉社文庫で新装版が出ています。
◾︎こどもの体温
妻を病気で亡くした酒井の息子、紘一が、彼女を妊娠させたかもしれないと言い出して。中学一年生でこの真面目そうなお2人が…と。しかし真面目そうであってもやはり、こどもはこどもである。その塩梅がうまい。
よしなが先生の描く女性は儚さを持ちつつも強くて好きです。「踊る王子様」に登場する女性しかり。
◾︎ホームパーティー
妻が亡くなって1年の春、妻の両親の家に泊まる酒井父子。愛し合っていても多少の喧嘩はする義理の夫婦の描き方が好き。お綺麗なものだけ描こうとしているわけでは決してない。
◾︎僕の見た風景
最もBLの香りがするのはこちら。ただ、どれも男と男がどうのというか、人間と人間の話なのだ。
亡くなった高木の妻が、旦那のことをずっと高木ということに違和感。自分も高木だから名前で呼ぶのでは…
黒田は高木が来るから登山に来たんだろうなと思うと切ない。
◾︎踊る王子様
好きです。
◾︎よくある一日
「踊る王子様」の大人びた紘一と、この作品のそれでもしっかり"見栄"がある人間らしい紘一と。それを描く先生の作品が、先生が大好きだ。
◾︎たまにあった一日
最後このカットで終わる良さ。
父と子二人だけで暮らす酒井父子を軸に、
その周辺の人々を描く短編が、表題作を含めて全部で6篇入っている。
中学1年の息子から「彼女を妊娠されてしまったかもしれない」という
衝撃の告白をされた父の話の表題作に始まり、
亡くなった息子の母の両親の話や(ホームパーティ)、
息子の同級生でローザンヌコンクールを目指す男の子の話(踊る王子様)、などなど。
どの話も、人間関係の機微や些細な心の動きを、細やかで優しい視線で描いており、
暖かな読後感があります。
BL的には、酒井父の後輩達の話が(僕の見た風景)すごくいい。
親友だった三人組、一緒に出かけた先で亡くなった友を巡る
二人の男の同性愛を秘めた友情の話。
プラトニックだからこそ、胸を打たれます。
この一編だけでも、☆4つかな〜と。
食べ物に拘りが見られるのは、相変わらず(笑)
よしながふみ先生らしい、秀作短編集だと思います。