翼なき彼ら【電子限定】

tsubasa naki kare ra

翼なき彼ら【電子限定】
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神5
  • 萌×20
  • 萌1
  • 中立1
  • しゅみじゃない0

--

レビュー数
3
得点
29
評価数
7
平均
4.3 / 5
神率
71.4%
著者
西田ヒガシ 

作家さんの新作発表
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媒体
漫画(コミック)
出版社
茜新社
レーベル
電子発売日
価格
ISBN

あらすじ

木田は幼少期を過ごしたふるさとへ数十年ぶりに立ち寄ることに。導かれるように母校を訪れた木田は学校の修繕を手伝っていたという藤井睦と再会する。幼い頃は恋人のように触れあっていたが、藤井は見違える程に成長し背中には天使のような翼が生えていた。ある日突然生えたという翼は木田以外に見えないというが──。

表題作翼なき彼ら【電子限定】

木田英彦、自営業(修理関係)
藤井睦、同級生、建設会社勤務

レビュー投稿数3

呪縛

漫画の方でかなり性癖を鍛えてくれた作家様です。かつて答姐の印象に残ってる台詞トピで地味に参加させてもらってました笑。再会ものに萌えがちなのは西田先生の影響があるような気がしてきた…

ということで、電子オンリーで配信された新作は「再会」もの。大人になるとふと過去を振り返ってしまうことがあったりして、それが初恋の人だったら…をBLバージョンで妄想するとむっちゃ萌えます!

木田と藤井は小学時代の同級生。一時期だけ仲良くしていた二人ですが、中学進学を機に木田が地元を離れ、友情が途切れます。ところが、40歳を過ぎていいオヤジになった頃、小学生の時に二人が助けた野鳥の導き?によって運命的な再会を果たすことになり——なので、ヒゲがある方になぜか翼が生えているんですね笑

木田と藤井はキャラ的には正反対なんだけれど、男として抱える孤独の部分ではどこかで共鳴しているところがある。西田せんせの作品で描かれるところの、男性を苦しめる男性性の呪縛です。

木田はバリバリヘテロだし、どっちかっていうと雄の本能が強すぎるタイプで、小学生当時は藤井のことを女の子みたいに可愛いと思っていたんですよね。だけど男なんだ、と。大人なってからも特定の相手は決めず、自由を謳歌しながら海辺の近くに家を買って犬と暮らすのが目下の夢。

逆に母親からひ弱さを蔑まれて育った藤井は、男は結婚して子供を作ってその後はATMと化すことが正しい姿だと思い込んでいたし、そうあるべく努力する道を選びます。だから、当時木田に抱いていた思いを封印するかわりに、大好きな人といつまでも一緒にいたいと鳥に願いを託したのです。

お話の中で二人にはもう一つ、呪縛があります。それは、羽が生えている方は死ぬ(もしくはすでに死んでいる)かもしれないという迷信じみた不安です。ここがたとえ話として機能している秀逸なファンタジー要素だと思う。誰かを助けたら誰かに助けてもらえるかもしれない。何かを得たら、引き換えに何かを失うかもしれないという、教訓めいたものが見え隠れするんです。

人生の岐路に立った二人が、子供の頃に助けた鳥に恩返しをしてもらえる筋書きなのであれば、二人のその後はハッピーエンドなのかもしれません。その後を描かずに終わっていることで、答えは読者に委ねられてしまっているところがずるいっていうか笑、考えさせてくれますよね〜。この、あっさり突き放されたあとの余韻ですよ笑。自分はハッピーだと信じていますよ、、BLですからっ!

6

翼とは何か

西田ヒガシ先生の電子限定長編作品。2022年1月発表。
一時期、引退⁉︎的なお話がありファンとして焦ってましたが。
新作が届いて大変嬉しいです。

一読して、「ん?わからん……」
2019年の「ロマンティック」からの難解さが〜とか思ったけど、よく考えたら2010年頃の「社長桃井くん」にも妙なズレ感があった。
非常にリアル感のあるリーマンものを描かれている西田先生ですが、以前から不思議で難解な作品もありますね。
本作は半分ファンタジーのような、何かを比喩しているのかも?のような。

一応カタギ、女たらしの木田。
数十年ぶりに故郷へ立ち寄るが、何の偶然か幼馴染の藤井睦と再会する。
しかし、藤井にはなぜか天使の翼のようなものが生えていて、それは自分と木田にしか見えてない…
…という冒頭。
どうやら、藤井は家族で交通事故に遭い妻子と別居している。しかも幼い娘さんはその事故後昏睡状態らしい。
そして、藤井は今にも死んでしまいそうな自分の子供よりも愛したい何かがあるようで。
その「罰」が人には見えない翼、なのか⁉︎

読み進めていくと、木田と藤井の関わり合い方が色々見えてくる。
子供の頃ませていた木田は、藤井のカラダをいたずらしていた。
それが原因かは知らないけど藤井はゲイになり、それでも結婚して子供も産まれて。だけど妻とはうまくいかず子供は今病院にいる。
そんな中で運命的に再会し、しかも翼の見える木田への想いを募らせていく藤井。

…といっていいのかどうかも曖昧な筋立てが続きます。
藤井と木田との愛があるのかどうかも曖昧。
そもそもBLなのかどうかも曖昧。
ただ、別にBLの枠組みの中でなくとも作者様のイマジネーションは自由なわけで、その意味でこの作品は「不思議」であると同時にやはり「愛」や「愛着/愛情」を語っているとも思う。
そしてまた、子供よりも求めたい何か、を示す残酷さがあるように感じた。
何を描いているのか一種難解といえる作品だと思うけれど、読む人/読む状況、それによって何通りにも感じられる作品なのかも知れない。

9

愛ってことを

今作は『難解』方面の西田さん作品です。
実はかなり前に読み終わっておりまして、私の心の本棚では『大切にして何度も読み返すお話』に分類しました。読み返し3度目で、本日レビューを書いています。

正直な話、ヒジョーにレビューが書きづらいお話です。
おまけに大層、人に薦めづらい(だから『中立』評価です)。

でも、ここには私の大好きな『西田さんテイスト』が満載なんだよな。
例えば、中年に入りかけた男性に恋について語る(恋を語るんじゃないのよ。概念としての恋について語るの)初老の女性が出ているのとかすごく好みだし、木田の片目が『若い頃、チンピラの女に手を出して潰された。でもそのかわり詫びとして組から建築系の仕事を斡旋してもらった』なんていうエピソードなんか、もう震える位好き。

そして何と言っても木田と藤井にしか見えない翼の存在です。
見えたり見えなかったり、時折移動したり。
恩返しの証の様にも見えますが、とんでもない呪いの刻印みたいな仄めかしもある。
何の比喩なのか解らない、って言うか、その存在が確定していないんですよ。
常に揺らいでいるの。

藤井の独白の中で「一番好きな人」という科白が何度がありました。
『好き』って何なんでしょうね?
彼は、事故で意識が戻らないで入院中の、幼い娘を愛しています。
でも、小学生の頃は、木田と「ずっと一緒にいたい」と思う位、彼のことが好きでした。
大人になった後はゲイとして遊んでもいたようなので、好きな人もいたでしょう。
愛という存在も、前述の翼の様に確定せず、常に揺らいでいます。
お話のラストを読むと、飄々としていて何ものにも固執していない様に見える木田ですら、実は藤井と同じ様な揺らぎを隠し持っている様に私には感じられました。

実際、愛ってこんな感じですよね。
私たちはいつもチラチラと移り変わる感情の揺らぎと共に生きています。
安定したものなど何もない。
ないけれど、でも確かに、そこに『愛』というものがあった。
あるいは、ある時がある。

難解なお話を読みながら、そんな事を考えました。

3

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