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ぜんぶ忘れた、あなたのことも、あの夜のことも。
wasuretai otoko
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
どこが良いのかよくわからないけど何かツボに入った、というお話ってあると思うのですが、これがまさにそうでした。
どこが良いのかと聞かれたらやっぱりよくわからないありふれたお話なんですが・・・。
サラリーマン4人の恋愛を描いたオムニバス形式で一冊まるまるリンクしたお話です。
どこにでも居そうなサラリーマンなんですが4人にそれぞれの役割があり、楽しんで読めました。
ありきたりなんだけど、波乱万丈なお話を読むよりも、衝撃的なラストを見るよりも、こういうのが一番意識しなくても自然に萌えてしまう。
こういうの好きだなぁって思います。
瀧澤と加藤は同期入社、加藤は抜けたところが多いわんこ系で、瀧澤は要領のいい美形です。
加藤が勝手に瀧澤をライバル視していますが、瀧澤は最初から加藤を恋愛的な意味で意識しています。
ここに2人の教育係である丸谷と、主任の渡部が絡んでくるのですが、別に4人でこんがらがった関係になるというわけではなく、それぞれの相手ははっきりしています。
渡部と丸谷は酔った勢いで過去に一度だけ関係をもち、それをなかったフリをしている微妙な関係です。
丸谷はしっかり者のツンデレだけど酔ったら危なっかしいタイプで、渡部は温厚な男前。
最初は瀧澤と加藤メインでお話が進むのですが、トータルでみると丸谷と渡部のお話のほうが多い構成です。
ラストは瀧澤と丸谷が互いの悩みを打ち明けあい、そのせいで誤解をまねいていくという、この2人には共犯関係のようなものが出来上がっている感じです。
4人しっかり立ち位置や内面を書き分けられていて、それがよかったと思う。
丸谷が放っておけないタイプで、3人全員相手に少なくとも1度は誤解をまねくというかなり美味しいキャラクターなのですが、丸谷がこのお話のキーなのかな。。と。
もうちょっとこじれてくれたら面白かったかもしれませんが、4人とも素直で良い性格をしているので、そんなにドロドロしたことにはなりません。
えろさはそんなにないのに、ただ寝苦しくないようにネクタイをほどいてあげるシーンとか、片手だけネクタイでベッドの端にくくりつけるシーンとか、ソフトな表現なのにベッドシーンよりも何気にどきんとする場面が多くて素敵でした。
個人的に惜しいのは丸谷が危うい行動をいっぱいしてるのに渡部があんまり顔に出ないこと。も少し過剰に焼いてくれたらBLとして素敵なのにな~と思いました。
「男同士でいつもベッタリは無理だけど、片手ぐらいはいつも伸ばしていて欲しい」という渡部の台詞が、男性同士で同じ会社だという距離感を表していて好きな台詞です。
ほんとになんてないのに、読み返したくなるスルメ的なBLって感じです。
どうしても気になったのが、加藤って、貴金属を捻じ曲げてしまう体質なのかな?不思議系な?
それがキーになってる話がいくつかあるのにその辺の説明が本文中になくてちょっと「???」でした。
なんかみんな嫉妬の仕方が同じなんだよな~と思いながら読みました。
リーマンばかりなんですが、仕事上で気安い会話したりしてる相手みんなに嫉妬してる感じ。女性相手じゃなく、男にもナチュラルに嫉妬している。
「仲良く誰かと会話してる男を見つめつつ、やたら切ない顔をしてる男」ってシーン、人物が入れ替わりつつこの一冊で何回見たか。
こういうのってキュンとする場所なんだろうな~と思うんだけど、私は苦手です。
ピンポイントでやってくれると萌えるんだけど、毎度毎度やられると「またこれか!」と思ってしまう。
あと女性とふたりでいる恋人を見て勘違いして、くるっと逃げ出して…みたいな場面。これもう20年前にはすでに使い古されてるのネタな気が。
なんていうか、「ここ普通は切なくなるべきシーンなんだろうな…」と思えば思うほど萎えていく感じ。
あと、相手の言葉を必ずマイナス方向に深読みした勘違いをするとか。
絵はかなり好きなので趣味じゃない評価ではなく中立評価にしましたが、ストーリーはかなり苦手でした。